高専のこともたいてい覚えた。
今日から私も高専生として活動することに……なったは良いのだが。
「ここは廃病院……。第二次世界大戦で使用されていた精神病院の病棟になります」
「雰囲気あるぅ」
「ここで行方不明の少年がいるとのことなので捜索、呪霊がいるとのことなので呪霊の討伐をお願いいたします」
「わかりましたん」
早速高専編入から初めての任務。
呪霊というのは人間の負の感情から産まれる。そのため、負の感情が溜まりやすい場所……学校とか病院とか、そういう場所によく出現する。
精神病棟なんてまるでその良い例だ。ここは曰く付きの心霊スポット。そりゃ出るだろう呪霊は。
行方不明の少年もここで肝試しをして被害に遭ったっつー感じかな。
「キュウビ、呪霊探れる?」
「コン……」
「では帳を下ろします。ご武運を……。"闇より出でて……"」
帳が下ろされる。
帳が下ろされたことにより暗くなり、呪霊が活発に動く。
襲いかかってくる雑魚呪霊を蹴散らしながら廃病院の中を進んでいくのだった。
瓦礫の山で塞がれてる部屋もあり、随分とボロボロになった。取り壊せないのは呪霊が溜まるから。祓っても祓ってもこういう場所にはすぐ湧き出るんだよな。
「うおーい、誰かいるー?」
反応なし。
すると、伊地知さんから電話がかかってきたのだった。
『稲荷さん申し訳ありません。茂みに隠れるように何者かの車があり、中には人はおりませんでしたが、菓子の残骸などが転がっており、何者かがこの場所に肝試しに来ているのかもしれません……。中で被害に遭っている可能性もあるのでそちらの捜索も……。不手際申し訳ございません』
「茂みに隠されてる車ね……。わかりました」
確信犯だろ。
こういう場所って誰かの所有地だからあまり来てるのバレたくなかったんだな。だからせめて来てることだけ隠したかったとかそんな感じか。
と考えていると、人の気配が前からやってきた。
「だ、誰かいるのか……?」
「いますよ」
「た、助けてくれぇ……! 友達が……!」
「はいはい。助けます。あなたは急いで外に出て外にある黒い車の人のところへ」
いかつい男の人がか細い声でありがとうと呟いた。
先へ進んでいくと、顔に呪霊が引っ付いてる男の人がいて、その隣にはすでに呪いに犯された女性の姿があった。
解呪するにはまずこの呪霊を祓う必要があるな。
「助けて……誰か……」
「ほあたぁ!」
人間の顔を傷つけないよう狐の爪で引っ掻く。
顔から呪霊が剥がれ落ち、息を切らす男の人。
「た、たた、助かったの……か……?」
「いえ、まだです。意識あるようなので聞きますが女性二人を抱えて走れますか?」
「む、無理だ……。一人ならともかく……」
「では私も一緒に運ぶので着いてきてください。キュウビは私たちを守って」
私は一人を抱え伊地知さんのところに戻る。
先ほどの男性と、今女性を抱えて走る男性が合流し、生きてることを喜び分かち合っていた。
「あ、あの、連れは……彼女は大丈夫なのでしょうか……」
「ひどく呪いに侵食されているようですが……。まだ大事には至っておりません。すぐに解呪すれば大丈夫でしょう」
「よ、よかった……」
「肝試しなんてことするからこうなったんだぞ。反省しなさい」
「はい……。もうしません……」
「車は後ほど私どもが届けますのでひとまずは安全なところへ避難いたしましょう。稲荷さんは引き続き頼みます」
「オッケーです!」
私は再び廃病院の中に足を踏み入れた。
呪霊の気配がまだたくさん残っている。有象無象が多くて逆に探りにくい。
「匂いがわかれば辿れるんだけど」
男の子の匂いがわからないからどうしようも……。と思っているとランドセルが落ちていた。
黒いランドセルが床に落ちて、教科書が散乱している。ちょうど良い。
「キュウビ、この匂い覚えて辿れる?」
キュウビは頷いた。
「よーし、じゃ、いこうか」
ボス討伐。