一級術師のお稲荷様   作:フォッサ

5 / 30
術式:狐憑き

 キュウビが少年の匂いを辿る。

 やってきた場所は何の変哲もない病室。だがしかし、ここだけが異様に呪いの気配が濃かった。

 ここに確実にいる。私は意を決して扉を開いた。

 

 白い服を着た女の人がポツンと立っている。

 

「フフ、フフフフフ」

「……あの生首」

 

 若い男の子の生首が吊るされていた。

 殺されていたか。血が固まってる辺り、死んでから結構な時間が経過している。

 

「ワタシハオカシクなんかナァイ!」

 

 そういってハサミを手にして襲いかかってくる呪霊。

 私はキュウビを取り憑かせ、パワーアップしてぶん殴る。

 

「キャハハハハ!」

 

 と、ハサミによる攻撃に呪力が篭っていた。

 呪力で防ぐがノーダメージとはいかない。なるほど。結構強い。っていうかこの病院自体少しおかしい気もしていたが、対面してわかった。

 この病院自体こいつの領域だ。

 

 さっき防いだはずの攻撃が当たったのはそのせい。

 領域の効果は術式の必中、そして術者本人へのバフ。

 

「一級以上ある呪霊じゃないのかこれ」

 

 なかなかドギツイ任務を初っ端から渡してくるじゃん。

 ま、やるしかないよな。

 

「こんだけ領域が広いと押し合いすらできねえでやんの」

 

 精神病院まるまる領域。

 ここまで範囲を広くすることは私には無理。だから領域使うのは時間の無駄。だから私の術式だけで倒すしかない。

 

「キャハハハハ!」

 

 と、今度はベッドが飛んできた。

 

「狐火」

 

 私は火を飛ばしベッドを燃やし尽くす。

 飛ばしたものを当てる術式か……? それが必中になってるのかもしれないな。

 

「狐憑き:治癒(ヒーリング)モード」

 

 私の術式、狐憑きには三つのモードがある。

 戦闘のための獣化(ビースト)モード、キュウビが反転術式を回し続ける治癒(ヒーリング)モード、そして遠距離攻撃に長けた魔法(ソーサラー)モード。

 それぞれに利点、欠点がある。獣化モードの時は反転術式が使えなくなること。また狐火以外の能力が使えなくなること。

 治癒モードは反転術式をキュウビが自動で回してくれる分、式神キュウビの呪力強化を受けられなくなること。

 魔法モードは呪力で炎を生成し操ったり、幻術を使って惑わすことも出来るが、呪力が篭った攻撃にめっぽう弱くなる。

 

 どれも一長一短。

 ここでは治癒モードのほうがいいと判断した。

 

「私の手で呪力強化してぶん殴りゃいいしなぁ!」

 

 私の首にハサミが掠め斬り裂かれる。その瞬間にキュウビが反転術式を使いすぐに治る。

 キュウビの呪力強化がない分、威力はガタ落ち。だがそれほど火力はいらないだろう。

 

「オカシイ!」

「おかしくねえよバーカ!」

 

 呪霊に華麗なドロップキックをかました。

 呪霊は勝てないと悟ったのか逃げる態勢をとっている。私はすぐに魔法モードに切り替えて呪霊相手に幻覚を見せた。

 追い詰められたと勝手に勘違いした呪霊はその場に留まり、足掻こうとこちらに攻撃を向けてきた。

 

 私は最大出力の狐火で焼き払うのだった。

 

「はい、任務完了。あの子の遺体と遺品は持ち帰ってあげないとね」

 

 人の死はいつ見ても嫌なものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。