一級術師のお稲荷様   作:フォッサ

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死滅回游による弊害

 今日の任務は伏黒くんと一緒の任務だった。

 高専に転校したはいいが、人当たりのいい虎杖くんと同性の釘崎さんとはだいぶ馴染めた気はするが、伏黒くんだけは距離感が分からないんだよな。

 それに、あの日見た宿儺の顔を重ねてしまい、少し怖い。宿儺という化け物は遠目から見ただけでも怖かったし、多分あっちは私に気付いてたとは思うが有象無象だと気にしてなかったと思うと怖い。

 

「今日の任務だが……。おい、聞いてるのか」

「は、はひっ。聞いております……」

「ならいい。今日の任務の確認だが、この廃学校の調査だ。先日派遣された一級術師が何かによってやられたらしい」

「それの原因解明と解決だよね。わかってるわかってる」

「そうか。なら、さっさと行くぞ」

 

 伏黒くんはそう言って歩き出した。

 歩幅を私に合わせてくれてるのか、ぶっきらぼうながらも少し優しい。

 

「伏黒くん」

「なんだ?」

「つかぬことをお聞きしますが……。あの両面宿儺と親族だったりします?」

「……なぜそう思う」

「以前見た宿儺の顔が伏黒くんにそっくりだったから……」

 

 というと、伏黒くんは押し黙ってしまった。

 

「……あれは説明しづらいし、俺もあまり思い出したくはない。あまりそのことは聞かないでくれ」

「ごめん。今度から聞かないようにするよ……」

「……悪ぃ」

 

 伏黒くんは目を逸らした。

 

「で、気付いてるか?」

「んー、なんか視線みたいなの感じるね?」

「あぁ。呪霊のじゃねえ。明らかに人間だ」

「ってなると、ここは呪詛師の溜まり場みたいなもん?」

「そんな感じだろうな。お前と同じでその呪詛師が一級術師を返り討ちにしたんだろ」

「私の場合はきちんと生かして帰したし……」

 

 私もたしかにやっつけにきた呪術師を追い払ってたけど!

 これと一緒にされては困ります。

 

「で、どうする?」

「気付かぬふりをする。油断を誘って式神で先手を取る。できるか?」

無問題(モーマンタイ)

 

 気付かぬふりをしながら校舎へと向かっていく。

 気配に気を付けながら先へ進むと、背後から何者かの呪力を感じ、そのままキュウビを召喚しカウンターを喰らわせた。

 その式神を出した呪詛師は驚いた顔をし、そのまま校舎にぶつかる。

 

「ちっ、気付いていたのね」

「雑だよ呪力操作。わかりやす」

 

 モヒカン頭のサングラスをかけた世紀末風の人が立ち上がる。

 

「ま、気付かれたところで問題ないわね」

 

 その時、そのモヒカンが二人に増えた。

 

「二人!?」

「惑わされるな! やることは同じだ!」

「オッケー! キュウビ!」

「玉犬!」

 

 玉犬とキュウビの爪がモヒカンに攻撃するが擦りもしなかった。

 揺らいだように見えた。まさかこれは。

 

「幻覚……だ」

「正解。ホンモノはここよ」

 

 と、背後に回り込まれ釘バットで伏黒くんが殴られていた。

 

「伏黒くん!」

「この程度問題ねえ。あまり呪力が込められてねえ。覚醒したばかりだな」

「んふふー、そうよぉ。突然覚醒したの。ま、でもそれはあなたたちも同じでしょお?」

「俺は違えよ」

「あー、私は覚醒型……」

 

 死滅回游の泳者か。

 

「何だか知らないけど感謝してるわぁ。あのデスゲームのおかげでこんな素敵な力を手に入れることが出来たんだもの」

「素敵ってほどでもねえだろ。ただ幻覚を見せるだけの陰湿な術式ってだけだ」

「そうねぇ。でも、人は視覚情報が大半を占めるのよ。視覚が信じられないならあなたたちは何に頼るの?」

 

 幻覚か。とても厄介。

 でもそれを出来るのはお前だけじゃない。

 

「魔法モード」

 

 キュウビを取り憑かせ、魔法モードに切り替える。

 

「無駄よぉ! 死になさい!」

 

 と、モヒカンはどこともつかない場所に攻撃していた。

 だがしかし、幻覚を見せる術は私の方が上だ。私の幻覚にはキチンと手応えがある。だからこそ……。

 

「ひーっひっひ! 一人は始末完了。あとは一人ね」

 

 と、こうして勘違いをしてしまうのである。

 

「何言ってんだお前は」

「なにかしら。そこの女が倒されたのに随分と薄情ね」

「……狐につままれたな」

 

 伏黒くんはニヤリと笑う。

 

「何言って……」

「狐火」

 

 モヒカンの後ろから狐火を放った。

 モヒカンは驚いてこちらを見ている。

 

「倒したはずじゃ……」

「狐は嘘つきなんだよ。幻覚見せるのも私だって出来るんだ」

「……ふざけないでちょうだい!」

「ふざけてなんかない。幻覚見せるのはどうした。魔法モードは威力もそこまで出ないんだ。まだ元気だろ。幻覚見せないと」

「玉犬」

「うがっ!」

 

 玉犬がモヒカンを切り裂いた。

 丸坊主になってしまった元モヒカンは気絶し、手早く拘束する。

 

「いっちょ上がり」

「そうだな。幻覚とは厄介だった」

「そうだねぇ。でもこんなの増えてきてるね?」

「死滅回游による術式を持った者の増加が原因だろう。元々は術式を持って使えるのは少ねえんだよ。それが一気に覚醒してしまったからこういう奴が増える。お前みたいなちっぽけな奴だったり、こういう奴だったりな」

「死滅回游って碌なことがないね」

「まったくだ。俺も痛感してる」

 

 私も死滅回游で術式を手にしたからあまり人のことは言えないんだけどさ。

 

「それより血が垂れてるけど大丈夫?」

「後で家入さんに治してもらう」

「私治せるよ?」

「……反転をアウトプットできるのか?」

「いや、それもどき。キュウビ」

 

 私はキュウビを伏黒くんに取り憑かせる。

 キュウビは反転術式を使い始めた。

 

「キュウビを取り憑かせてキュウビに使わせるんだよ。私自身は出来ないからね」

「便利な術式だ……ん?」

 

 伏黒くんは自身に生えた尻尾を見ていた。

 

「なんだこれは」

「尻尾」

「なぜ俺に生えている」

「取り憑かれると耳と一緒に生えるの。一日で治るから」

「……」

 

 伏黒くんは複雑そうな顔をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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