虎杖を活躍させる為だけに世界を地獄に変える転生者共 作:愉悦部員
「皆! 大変だ! このままだと原作が始まらぬえ!!」
転生者以外は存在しない結界の中で一人の転生者が叫んだ。
その叫びを聞いてこの場に居る天内の身体を乗っ取ったお腹が少し大きくなっている下劣畜生も含めて全員が一人の転生者の方を向いた。
「どうした、何か問題でもあったか?」
「いや、虎杖が強くなったせいで宿儺の指を取り込む機会がねぇんだ。てか宿儺の指を狙って襲って来た呪霊を楽に倒せるくらい強いし、そもそも呪術の知識がある程度あるし呪物を取り込む危険性もあるから普通は飲み込まないんだわ」
「あー、そうだね。呪胎九相図は悠仁に事前に説明していたし、何とかする特典や共存出来る人が取り込んでたりそもそも死んでる呪物だったから良かっただけだからね」
強くなった虎杖悠仁が頑張っているところを見れて狂喜乱舞していたが、これは本当に問題だ。
宿儺の指は現在悠仁が確保している為、そもそも戦闘が始まらないし五条悟に虎杖が既に宿儺の指を埋め込まれている事が気付かれてしまう。
別に問題が無いわけではないが、五条悟には天然物と思わせておきたい。
「加えて虎杖がこの時点で動いているから色々と原作が変わってるみたいだし」
「どんだけ変わってるんだ?」
「それがさ――――」
原作との変更点を語る転生者の一言によって皆が顔色を変えていく。
「あー、
「バタフライエフェクト発生し過ぎだろ…………って事はメロンパンはまだ動いてないのか?」
「あいつの事だから色々と動いているし多分なんとかしてるだろうけど」
「それよりも宿儺の指だよ。どうするんだ?」
転生者達は頭を悩ませながら話し合い、一つの結論を出す。
「うし、難易度調整しよ。緊急課題で特級呪霊をぶち込むぞ。それも結構強い奴」
「でも伏黒君がふるべゆらゆらしない?」
「それも何とかする奴をぶち込むから問題――――ありまくりだけどまあ、なんとかするわ。そもそも伏黒君一人に任務を任せるのが間違ってるし、二年も一人同行させるよう仕向けさせるわ。この時の真希っパイなら強過ぎないし良いだろ」
「一応伏黒君二級なんだけどなぁ、まぁ残当よ」
「蜘糸釈迦羅天を高専勢にも知られる時が来たと考えればしかたない。ノリと勢いに任せよう。羂索がなんとかフォローするだろ。いや、エンジョイ勢だからしないか。なら更にプルスウルトラしよう」
「じゃあ地球に行って上層部連中に進言して来るから。調整頼んだぞ」
「あーい。緊急課題はあまりやりたくないんだけどなぁ…………メリット多くし過ぎないといけないしペナルティ無いし、呪霊側にもメリットを沢山提示しなくちゃ――――いや、敵が強ければ強い程悠仁達が頑張ってるところが見られるからむしろプラスか。よし! ママ緊急課題呪霊に沢山ご褒美あげちゃうぞー!!」
かくして、物語の始まりが告げられた。
とびっきりのカスどもの善意と言う名の無茶ぶりを一緒に乗せて。
+++
「――――お前は強いから人を助けろ」
ついさっき亡くなった祖父、虎杖倭助の遺言を思い返しながら書類を書き終わり、事務の人に提出し終えた時だった。
「虎杖悠仁だな? ちょっと着いてこい」
声がした方向に視線を向けると、そこには同年代くらいのウニのようにツンツンとした黒髪の少年と眼鏡をかけたポニーテールの少女が立っていた。
少年の方は呪力を操作しており見るからに呪術師で、少女の方は一般人並の呪力しか持っていないが身体の動き方がどう見ても武術を会得している事が分かる。
二人とも明らかに一般人ではなく呪術関連の人間だ。
その事実に悠仁は警戒しながらも返事を返し、二人に着いていく。
「何の用だ?」
「お前が持っている呪物、両面宿儺の指について話がある」
黒髪の少年の言葉を聞き、悠仁は彼等が言っている呪物が何なのかを理解する。
「もしかして、先輩達から預かったこれか?」
そう言って悠仁は懐からより封印を強固にした呪物を、それが入った箱を取り出す。
つい最近、部活の先輩達が話の種になると言って持って来た本物の呪物だ。
かつての呪胎九相図と比べても放つ呪力が異様であまりにも危険だった為、先輩達から預かり封印を強固にした。とはいえ、こんな危険な代物を家に置いておくわけにもいかない為、普段法香が居るマスタールームで預かってもらう予定だったのだが――――。
「ああ、俺達はそれの回収に来た高専の呪術師だ。名前は伏黒恵、そしてこっちが――――」
「禪院真希だ。苗字で呼ぶなよ。あまり好きじゃねぇんだ」
伏黒恵と禪院真希の二人が言った高専という言葉に虎杖は目を細める。
「高専…………って、確か国の呪術師だよな。ブラック企業の社畜が公務員になったってやつ」
かつて天内から教わった事を思い返しながら悠仁は呟く。
正確には違うらしいが、大体はそれであっていると言っていたのを思い出す。
「ちが…………いや、違くないけどよ」
悠仁の解釈を聞いて真希は頭を抑えている。
「…………その間違っているようで間違っていない解釈を誰から教わったのか気になるが、その指を回収するのが俺達の仕事だ」
「別に良いんだけどよ。これを学校の百葉箱に置いとくのはどうかと思うぜ」
「ああ。本当にそう思う」
悠仁の発言に同意しつつ、恵は話を続ける。
「それでこの指、預かってくれんだろ? ならそっちに渡すよ」
「…………最悪呪詛師との戦闘も考えていたんだが、お前が善人で助かったよ…………まあ野良の呪術師みたいだから、流石に上に話さないといけないが」
「マジかー」
とはいうものの、今まで機会が無かっただけで高専と関わるのは別に悪い事では無い。
巻き込まれた人を新しい参加者にする必要も呪術のじも知らない人を戦いの場に出すような事も無くなる。今まではどうにも出来ず巻き込んでしまっていたが、高専ならちゃんとした強い呪術師が居る筈だ。
問題があるとするなら呪物を飲み込んだ自分や他三人だ。
何とか争わないで協力してもらいたいのだが――――何とかなるだろう。
楽観的に考えながら悠仁は恵に宿儺の指を渡す為に放り投げ――――、
「悪いがそうは問屋が卸さねぇぜ」
そして宙を舞った宿儺の指を突然現れた球体の爆弾と導火線によって構成されたような身体を持つ呪霊によって奪われた。
「は?」
突然現れた呪霊、それも特級クラスの呪力を持つ上に人並みの知性を持つ呪霊が唐突に出現した事に恵は呆気に取られ、悠仁はすぐさま攻撃を仕掛けようと呪力を込めた拳で殴ろうとする。
しかし悠仁の拳が呪霊に当たるよりも先に呪霊が振るった腕が悠仁の胴体を捉え、黒い光が迸った。
――――黒閃。
打撃との誤差0.000001秒以内に呪力が衝突した瞬間に発生する空間が歪むという現象。黒閃を発生させた者はスポーツにおける『ゾーン』に入った状態になり、普段は意識的に行っている呪力操作が自然に行えるようになる。
黒い火花は微笑む相手を選ぶ事は無く、黒閃を発生させた呪霊は予定外な誤算に思わず笑った。
「か、ハハハハハハハ!!」
「くそっ…………!」
黒閃の威力は通常の2.5乗。その威力を受けてもなお五体満足な悠仁だったが殴りぶっ飛ばされた事で距離が出来てしまい、再度攻撃を仕掛けようにも間に合わない。
呪力が刀身に籠った槍で攻撃を仕掛けようとする真希の腹部に呪霊の拳が突き刺さる。
「カハッ!」
今度は黒閃ではなく、真希が天与呪縛のフィジカルギフテッドだった事もあり死ななかったものの悠仁と同じように吹っ飛ばされる。
「ぐっ、布瑠部由良由良…………!」
軽く見積もっても宿儺の指4〜5本分の実力を持つ明らかな格上、三人の内二人が吹っ飛ばされた事実に恵はすぐさま術式を行使する。
「恵っ!」
自分の持つ手札では勝てないと判断し、即座に奥の手を切る事を選択した恵に真希は名を叫ぶ。
悠仁は知らないが親戚である真希は恵がこれから何をしようとしているのかを理解していた。
確かにそれなら勝てる。が、間違いなく恵は死ぬ。そう知っていたからこそ止めようとしていた。
しかし止めるには距離が空いてしまい、間に合わない。
「癇癪、残光、星掛けの牡丹…………」
対する呪霊は恵の掌印と詠唱に自身も詠唱を紡ぎ始める。
そして先に恵の方が動いた。
「八握剣、異戒神将…………魔虚羅!!」
顕現するは伏黒恵の術式、十種影法術。
歴代の使い手が誰一人調伏する事が出来なかった最強の式神。
調伏の儀に巻き込むという形で呼び出し、相手を道連れにするという伏黒恵の奥の手である。
その奥の手が、呼び出した魔虚羅が起動し攻撃に転ずるよりも先に呪霊の右腕が魔虚羅の手に触れる。
「極ノ番万華鏡」
瞬間、魔虚羅の身体に火花が走り小規模の爆発が発生。
その爆発によって魔虚羅の身体が消し飛び、頭上にあった方陣が地面に転がってどろりと崩れ落ちた。
「――――は?」
「悪いなあ坊主、そいつは危険だから真っ先に潰させて貰ったわ」
自身の奥の手があっさりと処理された恵を嘲笑うかのように呪霊は語り掛ける。
魔虚羅を倒す唯一の方法、それは適応前に消し飛ばす事。
即ち、初手即死攻撃で魔虚羅を何もさせずに潰したのだ。
「お前、課題呪霊か?」
悠仁は恵の強そうな式神を何もさせずに消した呪霊に問う。
と、いいつつも確信は得てないまでもこの呪霊が課題呪霊である事は分かっていた。
蜘糸釈迦羅天で出て来る課題呪霊は高専基準で準一級から特級までの範囲が出て来る。しかし、出現する呪霊は同じ等級の呪霊であっても天と地の差がある。
何故なら課題呪霊は呪術の知識をダウンロードされ、戦闘経験を積み、術式を研鑽する時間を与えられた、黒閃を決めた事がある呪霊だけが選出されるのだ。
準一級相当の呪霊でも当然のように領域を展開してくるし、特級相当に至っては極ノ番を収めている連中ばかりだ。
さっきの魔虚羅という式神を倒したのも、本来広範囲を吹き飛ばす極ノ番を術式対象を限定しそれ以外は傷付けないという縛りを課した上で詠唱を加え、更に直接触れる事で威力を引き上げたのだろう。
「如何にも、その通りだ第一座」
呪霊は悠仁の思惑が当たっていると言わんばかりに笑みを浮かべる。
「尤も、これは緊急課題。普段の課題とは違ってペナルティは無いがな」
宿儺の指を弄びながら呪霊は宙に浮いて宣言する。
「我が名は飛遊星。この呪物が欲しいのなら俺の課題に挑戦し、倒して見せろ。参加人数は三人、場所はお前が通っている杉沢第三高校だ」
その言葉を最後に呪霊、飛遊星は空へと飛び立った。
悠仁はその後ろ姿を睨み付けながら、全身に呪力を漲らせた。