虎杖を活躍させる為だけに世界を地獄に変える転生者共 作:愉悦部員
『すまない悠仁! こっちも襲撃を受けててすぐに行けそうにない!!』
『こっちも同じくだ。緊急課題と言ったか…………参加人数無制限、とてもじゃないが普通の課題じゃない』
『何でこんな強い連中が徒党を組んでやって来るんだよ! 周囲を雑魚のように飛び交ってるのも最低基準が高すぎる…………!』
マスタールームにある円卓、そして法香の頭上に映し出されるモニターの数々。
モニターに映っているのは
「何だよ…………これ」
高専に属する術師の二人はモニターに映る地獄めいた光景に言葉を失う。
控えめに言って大惨事である。
呪霊が徒党を組んでいるだけでも警戒に値するというのにその群れの下限の強さも馬鹿に出来ない程強い。
単独の任務が許されている二級呪術師の恵の目から見ても異常だ。
「こんなの…………五条先生案件だろ」
恵の脳裏に「僕、最強だから」が口癖の教師の顔が浮かぶ。
常日頃からふざけた態度の尊敬するところが強さ以外無いのではないかと思ってしまうような人間だが強さだけは本物だ。戦っている呪術師達の実力が極めて高いから何とかなっているだけで、普通は対処出来ずに押し流されて終わりだ。
ついさっき襲い掛かって来て宿儺の指を奪った特級呪霊に至っては化け物としか言いようが無い。
自分の奥の手ですら何も出来ずに消し飛んだのだ。
「法香! 緊急課題について教えてくれ」
「緊急課題は通常の課題と違い、急に出される課題です。課題の受領時間も短く、失敗してもペナルティが無く、成功すれば通常の課題よりも報酬が良いのが特徴です」
「もし課題に失敗したら、呪霊はどうなる?」
「普通の課題と同じように結界が無くなったら自由になりますね」
「…………そうか」
法香からの説明を聞いて悠仁は拳に力を込める。
「あの呪霊の討伐は俺が参加する。他の所と同じ参加人数無制限なんだろ?」
「いえ、参加人数三人です。今回の緊急課題でこれだけが唯一参加人数が指定されています」
「…………マジか」
悠仁は出鼻を挫かれたかのような顔をしてその場にしゃがみ込む。
「おい虎杖、説明しろ。この結界と、あの呪霊について」
「ああ」
あの強力な力を有した呪霊とこの空間。
全くの無関係、という事は無いだろう。むしろ今の話から察するに関係があるのは明白だ。
そう考えた恵は悠仁から聞き出そうとし、悠仁も答える。
――――蜘糸釈迦羅天。
今から一万二千年前に十一人の呪術師が作り出したゲーム。
課題呪霊と呼ばれる人工的に産み出された呪霊と戦い、ポイントや報酬を獲得する事が出来る。
普通の呪霊でもポイントは稼げるが課題呪霊は強いかわりに多くのポイントを獲得する事が可能。
「んで、そのポイントや報酬を手に入れまくってラスボスの空亡ってやつを倒すのがこのゲームのクリア条件なんだよ」
「…………頭おかしいんじゃねぇのかそいつら?」
悠仁の口から語られた蜘糸釈迦羅天というゲームの内容を聞いて、恵は自分の頭がおかしくなったのかと錯覚する。
人工的に作り出された呪霊、その言葉は呪術師として生きて来た恵の脳ではとてもじゃないが受け入れられるものではなかった。
しかし聡明な頭脳を持つが故に恵は呪霊を産み出すという事が可能であるという答えに行き着く。
何故なら呪霊は非術師から漏れた呪力によって産み出されるから。
即ち、呪力さえあれば理論上呪霊を作るというのは可能なのだ。とはいえ、マトモな頭を持っていたらそんな真似は絶対にする訳が無い。
「俺は製作者の一人に会った事があるけど、本人が言うにはノリと勢いと愛と勇気に任せたら出来たらしいぜ」
「…………まだ生きてんのかよ」
「もう死んでるけどな」
一通りの情報を手に入れた恵は空いている席に座り、思わず空を見上げる。
真希も同様に上を見上げ、盛大に溜め息を吐く。
まさか五条悟よりもやべぇのが居るとは思わなかった。それも十一人も居て、そいつ等の残した遺産という名の呪いが現代に蘇った事も。ついでについ最近まで一人生き残っていた事も。
ついでに一万二千年という呪術全盛、平安の時代よりも遥か昔に造られたという事実からも目を逸らしたかった。
宿儺の指の回収からこんな大事に発展するとは思わなかった。と、いうか思い至ってたまるかこんなもの。
「今聞いたばっかりの伏黒、禪院さんにこんな事を頼むのは悪いと思うけど…………参加者として一緒に課題に参加してくれないか?」
「…………あいつの強さ見ただろ。分からねぇかもしれねぇけど、あれは高専の基準で特級に分類されるやばい奴だぞ? 俺達で勝てるような相手じゃねぇ」
「前にあれと同じくらいの奴を一人で倒した事があるから、多分大丈夫」
「マジかよ」
「それに後三十分で結界が無くなって自由になっちまうし、そうなったらあいつは間違いなく沢山の人を殺す。だからそうなる前にあいつを倒さなくちゃならねぇ」
悠仁の決意が秘められた言葉を前に恵は圧倒される。
こいつは呪術師にしては珍しい根明で、間違いなく善人だ。
善人を守る為に呪術師をやっている恵は悠仁の言葉を聞き溜め息を吐き、自身も決意を固める。
「分かった。俺も参加してやる。真希さんは――――」
「受けるに決まってるだろ。この話を聞いて、逃げ出すつもりはねぇよ」
「…………ありがとな。伏黒に禪院さん」
「禪院って呼ぶんじゃねぇ。あまり好きじゃねぇんだ」
「分かったよ真希さん――――法香、預けてた呪具を出してくれ!」
恵と真希の二人が参加する事に感謝した後、悠仁は法香に促す。
すると法香の背後の空間が波打ち、そこから三つの呪具が排出される。
排出された三つの呪具の内、鞘に収まった刀を悠仁が腰につけ、巨大な鉈のような剣を真希に、穂先が三叉に分かれている槍を恵に渡す。
「おい、これ」
「一緒に参加してくれたお礼だ。使ってくれ」
「良いじゃねぇか恵。使ってくれって言ってんだからありがたく使わせてもらうぜ」
巨大な鉈を背負う真希の発言に恵は仕方が無いと言わんばかりに槍を背負う。
武器を持ち、準備が整った二人から視線を法香に戻し、悠仁は宣言する。
「この緊急課題! 第一座・虎杖悠仁、第八座・伏黒恵、第九座・禪院真希の三人で挑む!」
「了承しました。緊急課題呪霊飛遊星の討伐を受理します」
その言葉を最後に悠仁達三人はマスタールームから現実世界、呪霊飛遊星が居るであろう小型の結界の前に転送。
そして地面に着地するよりも先に結界の中へ突入した。
+++
「はぁ…………はぁ…………助かった」
「本当、何でこんな大勢に襲われるんだよ…………」
夜の街中、緊急課題呪霊とその配下の呪霊達の襲撃を受けた凛とシャルル。
二人は呼吸を荒くしてその場にへたり込んでいた。
数も多かったがそれ以上に質も凄まじく、クリアさせる気なんて欠片も無い難易度。恐らく二人だけでは攻略する事は出来なかっただろう。
故に課題参加人数無制限。参加者でなくても関係無く戦闘に参加出来、参加者じゃない者が呪霊を倒しても可なのだろう。
「ありがとう、助かったよ」
「いえ、お気になさらず。術師が襲われていたら助けるのが道理ですよ。それよりも怪我は無いかい?」
凛は自分達を助けてくれた呪術師に感謝を述べようとする。
しかし助けてくれた五条袈裟を身に纏い、特徴的な前髪をした男は邪気を感じさせないような明るい顔で二人の怪我が無いかを問う。
まるで仏を思わせるかのような男だ。第一座の虎杖を思わせる。
「いや、怪我は無いんすよ。にしてもお兄さん強いっすね。術式の方も、呪霊を取り込んで戦力にする事が出来るなんて」
「呪霊操術と言うんだ。調伏した呪霊を式神のように操る事が出来るんだよ」
「凄まじく強い術式だな…………本人も相当強い」
身体を見れば分かるが相当鍛えられているし、何より身体の動き方も達人のそれだ。
こんな強い人が居るとは思わなかった。
「それじゃあ俺達はこれで、本当にありがとうございました」
「出来れば名前を教えて欲しい。今度お礼がしたい」
二人の言葉を聞いて男は笑みを浮かべながら語る。
「私の名前は夏油傑。二人とも、また今度会おう」
その言葉を最後に凛とシャルルの二人は駆け出し、その後ろ姿を見て夏油傑は笑みを深める。
「あれが蜘糸釈迦羅天とその参加者達か…………まさか本当に実在するとは思わなかったよ」
傑は顎に手を当てて考え込んだ後、愉快そうに笑う。
「蜘糸釈迦羅天の噂を聞いて乙骨憂太へと襲撃しなかったのは良かったよ。願いを叶えるゲームなんていうのは眉唾物だが、あれだけの強さを持つ呪霊が手に入るのなら祈本里香に固執する必要は無いね」
無いよりある方が良い事に違いは無いが、優秀な呪術師である乙骨を殺さなくて済んだのはプラスだ。
流石に一体だけでは不足だが話を察するにあれだけの強さを持った呪霊がまだ沢山居るらしい。
「さあて、どうやって蜘糸釈迦羅天を手に入れようか」
頭の中で思考を巡らせながら、傑は夜の街に消えていった。
蜘糸釈迦羅天の噂が広まった事で夏油は乙骨を襲いませんでした
なんで里香ちゃんも成仏してません