この物語は
前作品 序章 MIX×MISSON(スパイファミリー編)
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のネタバレ、微CP描写が含まれます。
ぐだ子(女性)・ぐだ男(男性)両方解釈できるような描写をしています。
libraさん
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のオリキャラがゲスト出演しています。
管制室は何とか無事だが、計器が壊され、スタッフたちを守っていた6人ほどのサーヴァントたちは気絶していた。ケガは一つもしていない。その中心に、巨大な光が鎮座している。
「スタッフさん、ケガはありませんか?」
「平気よ。来てくれてありがとう、立香さん」
スタッフの一人であるシルビアさんは、元気にサーヴァントを端の方に移動させていた。
彼女によると、出現した数分間は普通に暴れまわり、たまたま近くにいたサーヴァントたちと交戦していた。だが、会議室に異常を通信すると、ピタリと光の動きが停止し、それから何もしてこなかったという。
奇妙だ。あれには目がないのに、視線を向けられている感覚がする。少し、気味が悪い。凄まじいエネルギーが肌をビリビリさせている。特異点の観測に不可欠なカルデアスには一切手をつけない。
侵入者にしては動きが何かおかしい。何か意図があるのだろうか。
シルビアさんたちは自分たちと入れ替わるように、入口から避難する。
「立香さん、マシュさん。あとは頼んだわ!」
「「はい!」」
元気に返事をすると、シルビアさんは気絶したクー・フーリンを連れて去っていった。
『藤丸立香、人類最後のマスターと呼ばれる人間。間違いありませんね?』
直後、頭の中で声が響く。テレパシーで間違いなかった。びっくりして体が痙攣する。
「そうだけど……あなたは誰なんですか?」
『わたしはアリウス・カルデアに協力している神、アルセウスです』
「あなたが……!」
アリウス・カルデアが、神と同盟を組んでいることは、会議で聞いていた。メンバー全員が疑問を抱いたが、当の本人は頑なに答えないという。何かを恐れ、別の世界の住民には心を開いていないのだ。
マシュはその存在感に圧倒され、緊張している。自分も唾を呑むけど、疑念を真実にしたくて、口を開いた。
「あ、アルセウスさん。もしかして貴方がもう一つのカルデアを助けたんですか?」
『はい。わたしはあらゆる世界の宇宙を観測し、時には干渉することが出来るのです。残念ですが、何者かの妨害があり間に合いませんでしたが……。ところで、立香さん』
一呼吸置いて、神は指摘する。
『あなたは世界を滅ぼす存在や、人に害を為すモノを配下に入れていますね』
感情のない声で心臓が跳ねあがる。事実ではあるのだ、ビーストやフォーリナーなど、人類において危険なサーヴァントは多い。でも、みんな同じ世界を取り戻すために、召喚に応じてくれた。そういう人たちは、他のサーヴァントが見張ってくれているし、何も問題ないはずだ。
『ふむ。少々見立てが甘いのでは』
「え、何の、話」
『思考を読みました。立香さんはそれでもいいでしょう。しかし、我が子たちを悪人たちや恐ろしいモンスターが所属する組織と関わらせたくはありません。悪影響を及ぼす可能性があります』
光は次第に大きくなっていく。
『ビースト、フォーリナー、その他あらゆる危険なサーヴァントすべてを退去させなさい。さすれば協力しましょう』
沸々と苛立つ。神だか我が子を守るとか、なんだか知らないが、急に現れたヤツに、大切なサーヴァントの生死を、指図されたくない。
答えは、もう決まっている。
「確かにみんな一癖も二癖もある人たちばかりです。自分たちとはどうしても感覚が違ったりする人もいます。たまに裏切って、他のサーヴァントに怒られる人もいますけど」
一呼吸置いて、言ってやる。
「────断ります。みんなまだ自分たちの旅路に必要だし、みんなまだカルデアにいたいという意思がある」
みんなと積み上げた思い出があるのだ。それぞれ異なる事情はあるけど、みんなこの世界が何だかんだで好きで、守ろうとカルデアに来た。彼ら彼女らの譲れない意志や、過去に対する想い。それを、誰よりも知っている。
「身勝手で意見を変える神様なんて、こっちから願い下げだ!」
『交渉決裂ですね。ヒトと意見を違えたのは初めてです』
アルセウスの声に僅かな感情が入る。
『では、武力行使でわたしに従わせましょう』
神が巨大なエネルギー弾を一瞬で生成し、電撃を纏わせる。
「き、急に、戦闘態勢を!? ……マスター、宝具展開の許可を!」
マシュが前に出て、盾を床に固定する。魔力は安定している。いける。宝具、サーヴァントの切り札を、出せる。
「いいよ。令呪を以て……」
目の前の弾は既に発射されていた。盾が素早く前を覆うが、一気に閃光が近づいてくる。やばい、行動が早すぎる。
反射的に目を閉じた。
「おっと、遅れちまったな」
声に反応し、目を開けると、リブラが自分たちの前に飛び出していた。そして、弾を真っ二つに切り裂き、着地する。続いて、背後から白い矢が次々と光に襲い掛かる。が、バリアに防がれた。
「うう、ぜんぜんっ、当たらない。とにかく良かった。ケガしてなくて……」
スカリィの声が後ろから聴こえる。マシュは驚いて振り返った。
「お2人とも、起きたんですね!」
「あ、まー。何とかな。さっきの聞いてたよ。立香さん、神様相手に堂々としてたのカッケーな。スゲー人間だぜ」
「誉めてくれて嬉しいよ、あと、リブラさん、スカリィさん。立香さんじゃなくて立香で良いよ」
「ん、年齢近いもんな。了解。立……」
リブラが言い終わるか否かのところで、光を金色の鎖が覆う。
『この力……。困りましたね。わたしとの話し合いを邪魔しないように眠らせたのですが』
「光神よ、この狼藉は約定違反である。意見が異なるとはいえ、殺害を試みようとは乱暴が過ぎる」
響き渡る足音とともにやって来たのはギルだった。眠りから覚めたばかりの賢王は、不機嫌そうだ。光は一切攻撃もせず変化もしなくなった。
巨大な光の神を、無数に存在する彼の宝具の一つであっさりと縛り付ける。やはり英雄王は別格のサーヴァントだ。
ギルはこっちに向かってニコッとする。リブラとスカリィは今の瞬間が信じられない、という顔だ。
「どんだけ好きなんだよコイツのこと、ま、ありがとうな。オイラたちを守ってくれて』
「貴様らを守ったのではないぞ、雑種。[[rb:我 > オレ]]の想い人とそのパートナーを守ったのだ」
「ええ……ヒドーイ。私たちを守って」
心から、困惑する。好かれるのはいいけど、やっぱり好感度高いかも!
『あなたの別世界の大事な人の生命を、奪うつもりはありません。立香さんマシュさんたちがわたしの意見に賛同しないので』
「だからってさっきのはヒドイと思います。あんなの、マシュが防げるわけない!」
『防げると判断して、やってはみたのですが』
「ええ……」
ギルは低い声色で問いかけた。
「光神よ。貴公とカルデアが真に正義でないことが、気に食わぬか」
『ええ、世界を救う者は、一定の善良さがなくてはいけません。
ギルガメッシュ、あなたが庇うのは分かります。あなたは、並みの善悪では評価できない。ただ、王として、民の生活の記憶や歴史を護るため、黒幕を討とうとしている』
英雄王はわずかに口角を吊り上げている。けれども何か、その顔に引っ掛かるモノがあるようなのは気のせいだろうか。
『確かに、立香さんは今まで探した中で最も多くのサーヴァントと契約した人間です。その人間がトワイライトを倒すカギなのは理解しています。
しかし、リブラにスカリィ。人間に似て非なるもの、亜人よ。なぜ狂魔王と関係のないあなたたちが、彼らを庇うのですか? 他の平行世界の危機を救ったとしても、何もメリットはありません」
真名不明の神が、亜人たちに問うと、2人はアルセウスと向きあう。空色の髪を支える頭が、震えている。下手をしたら、神への反論が彼らの生命を刈り取ってしまうかもしれない。その頭を支えている肩に、青年が手を置いた。少女の恐怖で強張った表情が柔らかくなる。
誰もかも黙るしかないのだ、これは彼らへの質問なのだから。
「……庇うよ。この人がいなければ、トワイライトに勝てないって、言い切っていたのはアルセウスさんでしょう!」
「スカリィの言う通りだな。探しに探して、やっと見つけたのに……。神さまのくせに、そんなちっぽけな[[rb:理由>わけ]]を立香に押し付けるなんてな」
煽るリブラの声は神への怒りに満ちていた。彼らも必死に探していたんだ。狂魔王たちへの対抗策であるカルデアを探して。そして、あの特異点でマシュと自分を見つけたんだ。
「オイラたちNo Humanityのモットーは、平等であることだ。アルセウスの言う通り、救っても意味がないかもしれない。でもな」
沈黙の中、リブラは怒りのこもった低い声で、呟くように告白した。
「芥さんのカルデアに召喚されて、狂魔王に襲撃された平行世界を知ったんだ。ヤツらの爪痕を見たんだよ!
……大事なものを取り戻したいならさ、敵になるヤツでも、よく相手を知ってから戦いを挑むべきだ。オイラの場合は、歩み寄った。他のヤツの場合は、相手を分析し正々堂々と戦った。
でも、トワイライトは違う。なにも知らない人々が、一方的によそ者に蹂躙される。そんなやつらのは……ただの悪魔だよ。……許せるわけないだろ」
ギルは瞼を閉じていた。亜人の男が拳を握りしめ、神に答える。明るい声色で。
「それにさ。『サーヴァントという、ここの仲間という平等』が二つのカルデアにある。信じられない期間限定の平等。これが味わえるなんて、十分なメリットだぜ!」
スカリィは、リブラの負けん気に勇気付けられたのか、顔を上げて必死に自分の気持ちを伝える。
「私たちは、私は深く人間と関わったことはほとんどないけど、アイツを止めなきゃ平行世界中の亜人たちの生命が危ないの。だから、カルデアと手を組みたい。
その上で、サーヴァントとして色んな世界の危機を救うのにはきっちり、協力する。……これで良いでしょう、神さま!」
彼らのことについて不明な点も多い。けれど、様々な人やサーヴァントと出会った経験からわかる。
穏やかそうに見えるが、人のような義憤、人ではない故の信念を持っている。誰がなんと言おうと2人は、信頼に値する人ならざるものだと心から思えてならない。
「……リブラさん、スカリィさん」
マシュも膨れっ面で反論する。
「アルセウスさん。失礼ながら言わせていただきますけど、何も先輩たちのことを知らず襲うなんて、そんなの狂魔王とやっていることが同じだと思います!」
ギルはにやりとすると、最後にトドメを刺した。
「その通りだ。我が子可愛さに排斥する所業は、神々の沽券に関わるのではないか?」
『…………正論ですね。しかし』
神の声に動揺と後悔が滲む。突然、ギルが何かを思いつく。
「では、試験をしようではないか。善を測る試験を」
試験? あまりいい予感がしない。テストとか、テストとか……。
『詳しく、聞かせてください』
「最近発見した特異点があろう。そこに立香らを送り込み、調査しつつ善性を証明するのはいかがか」
アルセウスはしばらく考え込んでいたが、返事をした。
『なるほど、提案に乗りましょう。基準はこちらで決めます。……おや、放ってはいけませんね。もとに戻しましょうか』
チョウが花に止まったのを気づくかの如く、神は優しい口調になっている。ギルが鎖をほどくと、すぐに光が辺りを満たす。目を開ければ、見慣れた管制室になっていた。マシュがあちこちを見ながら感嘆する。
これは魔術ではないことはなんとなくわかるが、それでも修復と治癒を同時にやれるのはスゴイ技術だ。
ドクターとダヴィンチちゃん、芥さんが走ってきた。安心した表情の2人とは対照的に、黒髪の彼女は静かなアルセウスを視認し、なんとも言えない表情になっていた。
◈
マスターの無事が確認された後、スタッフは通常営業に戻った。アルセウスは力を使い果たしたのか、手のひらに乗せるほど縮んでいた。
本人曰く、この姿は真の姿ではなく分身であり、今のタイプは平行世界の観測と戦闘に特化しているという。そのため、人の感情の機微がわからないこともよくあるらしい。
「本当に申し訳ありません。冷静さを欠いたせいで、あなたたちの拠点を破壊してしまいました」
アルセウスは後々、マシュと自分たちスタッフひとりひとりに深く謝罪した。
彼(?) が行ったことは当然悪いことだが、声からは非常に反省しているようだし、大半のスタッフは『まー、カルデア直してくれたしな』と許した。
午後、自分たちは向こうのカルデアの所長代行兼マスターとリモートで話し合った。とは言っても、しっかりとした青年の声だとしか分からなかった。神さまの力でも、別世界からのカンペキな通信は苦手なようだ。アルセウスが万能ではないと、覚えておかなくては。
サーヴァントと関わる人同士、言いたいこともある。時間があればもっと話し合いたかったのだけど、残念だった。
狂魔王の情報提供で思い出した。彼はフーガリア特異点のとき、ジャンヌを全滅したカルデアの生き残りだと言っていた。あれは真っ赤なウソだったのか。きっと自分たちの動揺を誘いたかったから、そんなことをのたまったに違いない。
ベッドで考える。
そんなことより……。
◈
翌日の管制室。前日の会議メンバーにアルセウスを加え、改めて新たな任務が下された。
確認された特異点をフィニス・カルデアとアリウス・カルデア、合同で調査する。そして、原因となる聖杯を回収する。どの特異点も魔術王が生み出した特異点と肩を並べる規模であるという。
「何より大事なのは、ワタシに『善良な人』であると証明することです。つまりは他人を救う、他人の力になる働きをすればいい。立香さんと契約しているサーヴァント全員、示してもらいます」
「あ、あの。その他のマスターの役割は?」
マシュがドキドキと手を上げる。ドクターが資料をめくりつつ、唸る。
『ああ、試練を突破しない限り、他のマスターの協力は許しません。ずるになります。これは、ロマニさんがいる本物のカルデアのみを対象にした試練ですので』
「……頑張らなくちゃ」
眉に力が入った自分に、リブラとスカリィが笑いかける。
「ま、そんな肩肘張んなくてもいーんじゃない。アンタはもう色々変な世界で任務をこなしていんだろ。こっちも特殊な状況なら何度も経験してる。戦闘と亜人同士の交渉なら、NHにお任せだぜ。な、スカリィ!」
「うん、記録係サボらないでねリブラ!」
「お、おう、そうだな」
幸い、アリウス・カルデアの召喚式は、複数人のマスターで契約の共有が可能な仕様だ。うちのカルデア召喚式と連結させれば、課題の特異点にそっちのサーヴァントも連れていける。リブラたちも生き残りのサーヴァントも、みんな自分の力になってくれるだろう。
ダ・ヴィンチがメガネをくいと上げる。
「よし、アリウス・カルデアの全体の役割確認。アルセウスはこの管制室で全体のカルデアの動向の観測。
そっちの世界のサーヴァントのみんなは各特異点で数騎ずつ、案内役と監査役。加えてNH組は記録係として同行する、だったね。合ってますか、アルセウスさん?」
『ええ。同行できるサーヴァントの数は、状況次第でしょう。合格したら、アリウス・カルデアとの正式な同盟締結、そしてわたしの子たちの協力をお約束します。
とても強いですよ、我が子たち。サーヴァントにも引けを取らない、モンスター。ふふふっ。立香さん、期待していますよ」
「は、はい!」
ドクターは満足そうに頷くと、視線をとある人に向ける。
「このアイデアを出したのは、キミだよね」
その言葉に、芥さんが初めて会議中に本から視線をずらした。顔をわずかに赤らめている。
「……別世界の神ごときが、とても人間を正しく査定できるとは思えない。神が人間を完璧に理解できるわけないでしょう。生き残っているヤツの方が……。
何よ、みんなニヤニヤしちゃって」
テンションが上がるに決まっている。みんな物静かな彼女に、なにかしら発言して欲しいと内心願っていたのだ。アルセウスは雰囲気的にしょんぼりとしていたけど。
マシュがにこやかに英雄王に話しかける。
「ギルガメッシュさん。あの、ありがとうございました。先輩を助けてくれて。アルセウスが納得する案を出してくれて」
「……怒らぬのか、立香? 特異点での任務という、面倒な仕事が増えたのだぞ」
ダヴィンチちゃんとドクターは、彼のしなさそうな発言に驚いている。確かに面倒だけど……。
「全然気にしてないです。アルセウスの平行世界を観測する能力は、これから自分たちに必要だって、芥さんの仲間に聞きました。合格して神様の信頼を得られるなら、それで」
「なるほど、貴様らしいな」
ギルは穏やかな眼差しを自分に向けた。
「王様。あの、ずっと考えていたんです」
もう伝えなくてはいけない。彼と再会してから、ずっと頭の片隅に残っていたものを。
「抱きしめられたのは嬉しかったんです。けど、違います。自分は、ギルガメッシュ王の恋人じゃありません。恋人だったのは、もう1人の立香です。その人とは、他人なんです。その愛を押し付けないでください」
心が痛むけど、ここは一線を引きたい。向こうの自分が、彼らとサーヴァント以上の関係で、結ばれていたことは容易に想像できた。その上で突き放す。
エドモンもギルガメッシュのことも、仲間として信頼しているからこそ、一晩中考えて、決意した。
生き残りの英雄たちの苦悩と愛に対して、一つの区切りをつけたかったからである。ここで区切りをつけなければトワイライトを倒すために、試練を突破できない。
ギルガメッシュは傷ついた表情で、悔しそうに瞳を閉じた。
「────すまなかったな。死んだ生き物は戻らぬ。[[rb:我 > オレ]]が友と別れた時から、な」
「……でも、知りたいんです」
「?」
「生き残っている皆さんから、もう一人の自分の旅路を聞かせてほしいんです。ゆっくりでいいですから、話してください。
マスターとして、みんなの気持ちを受け止めたい。だから、」
彼の前で、ゆっくりと右手を差し出した。生き残ったサーヴァントたちの心に、少しでも歩み寄るために。
「まず、恋人になるのは、仲良くなってから、です!」
王様は俯いてから、いつも通りの自信満々の顔で、人類最後のマスターの手を取り、握りしめる。
「……フハハハハハ! 面白い! あらゆる財を手に入れた[[rb:我 > オレ]]に、その言の葉を、言うとはな!」
そして、手を引っ張られた。耳元で囁かれる。
「忘れるな、雑種。再び貴様の心を[[rb:我 > オレ]]が奪ってやる。何、財宝はいくらでもあって良いのだ────」
耳まで一気に、赤くなってしまった。周囲は困惑とドキドキで溢れかえる。咄嗟に、リブラはスカリィの目を手で覆った。
「ち、近いよ、公衆の面前で! や、やっぱりキャラ変わってるよね、キミ!」
「ぎ、ギルガメッシュさん! 詳しい事情は存じませんが、先輩のファースト・サーヴァントは、わ、私です! 私であることをお忘れなく、先輩!」
慌てふためいてドクターとマシュが自分たちを引き離した。自分の影から黒い炎が出現し、ギルを狙う。彼は素早く空間から盾を出し、跳ね返す。そしてチベットスナギツネの如く、ドクターを睨み据えた。
「ハァ……医者。態度を改めよ。無礼だぞ」
「そんなこと言われてもさぁ……」
『んん。仲がよろしくて結構です』
アルセウスの咳払いで、我に返ったみんなは静まる。ギルガメッシュ王は自分の前で真剣な顔をした。
「まあ、なんだ。……魔術王と戦っている貴様なら、勤めを果たせるだろう。無論、その道行きは我らが示してやる。頼むぞ、藤丸立香よ」
「! はい!」
マシュが、自分の手を取った。
「先輩、どんな特異点でも私が、私たちが支えます。一人で頑張るのではなく、いつも通りみんなで支え合いましょう!」
みんなの言葉に、勇気が出てきた。マシュの手のぬくもりに応える。
「うん! やろう!」
アルセウスが宣言する。
『では、伝えましょう。作戦名は、試練を越えた試練───超克ノ試練(グレイトフル・トライアル)。何があっても善性を手放さないこと、期待しています』
◈
どこかの世界、暗い荒れ果てた街。青年にも少女にも見える人間が、浮かび上がる水晶から2つのカルデアの一部始終を観測していた。
「なんなの、英雄王! やっぱりアイツキライ!」
人間は、大きな何かを蹴り上げ3メートルほどある壁へと激突させる。否、岩ではなく男の死体だ。辺りには、人間や怪物らしきものが数人、ボスである人間の指示を待っていた。
「アルセウスめ、何のつもりで試練なぞ、馬鹿馬鹿しい! ヤツめ、なぜ私に悪夢を見せられたことを報告しない? ……余程あの子たちが気に入ってるのか。マシュ、マシュ、マシュ! お前の存在が羨ましい!」
ボスの正面で空間が歪み、男が姿を表した。白と黒の髪に、派手な和服を着たおぞましいほどの美貌の男である。
「芦屋道満。狂魔王はどうだ。こちらは精神干渉に失敗した」
「ンンンンンッ! これはこれは、災難でしたね『異界の悪魔』様!」
「フン……巌窟王が強かっただけだ。おまけにアビーにオベロンまでついてきた。やはり、あのカルデアは特別だ」
ケラケラと笑う道満に、周囲の人たちは不快な顔をした。空気を読んだか、すんっと道満は落ち着く。
「では、報告いたします。拙僧の予想通り、トワイライトは計画の準備でしばらく動きが悪いようですぞ」
「なるほど『ポケモン・クライシス』か。真に狂うモノがあのモンスターどもに、ね」
「狂魔王も大胆なことを。こちらも同盟を」
「いや、放っておこう。カルデアに仕掛けるなら今の内。こちらも、動くことにしよう」
「承知いたしました、マイマスター」
悪魔は天に向かい、叫んだ。すべてを呪うような、狂気の叫び。
「止めてみろ、藤丸立香! 戦おう、カルデアども!」
悪魔たちの頭上には、糸で吊り下げられた大量の像が見えていた。
「私は、俺たちは───すべての秩序を破壊する! すべては、すべては、お前たちのために!」
To be continued……