「あ、いた!」
「お姉ちゃん?」
救出した行方不明者1人を安全なところまで送る最中。
一本道だったはずの曲がり角からひょっこりと、もう1人の行方不明者が姿を見せた。
2人は駆け寄って抱き合っている。この2人だけは緊張感がなく、まるで遠足にでも来ているかのよう。
「良かったですね、2人とも見つかって。」
「うーん...来る時に結構隅々まで調べた気がするけど、見落としてたのかしら?」
釈然としないけれど、見つかったなら良いか。
怪物が出るような廃墟からは、すぐにでも脱出するべきだ。
ノアの記憶を頼りに進んでいくと、何事もなく入り口の階段が見え始めた。
地下に足を踏み入れてから2時間ほど。微かな外の光がひどく眩しく感じられる。
「ノア...そういえば、さっきの場所で何か変な音しなかった?」
ふと思い出し、先程の廊下で聞いた、ひたり...といった音についてなんとなく聞いてみる。
「そうですね...駆動音のようなものが聞こえた気がします。」
駆動音?そんな気はしなかったけど。
「そうだユウカちゃん、今度エンジニア部の方々をここへ連れてきませんか?怪物も居ることですし、今後のためにも調査が必要かと。」
「そ、そう...?」
まあ、記憶力の良いノアがそういうのだから、奥には何かしらの機械があるのかもしれない。エンジニア部に見てさえもらえれば、何かは分かるだろう。
あの水音は、暗闇が私に与えた幻聴だったのかも。
階段を登ると、いよいよ光が差し込んでくる。
出口だ。
「......」
「...ノア?」
先行して走って行く呑気な姉妹の後を追おうとすると、ノアが立ち止まった。
「ユウカちゃん、先に行っててくれませんか?ちょっと落とし物をしちゃったみたいで。」
「ええ?も、戻るの...?」
「すぐに追いつきますから。2人をお願いします。」
そう言ってノアは踵を返す。
その後ろ姿を見送った後、少し躊躇いながらも私は姉妹の後を追った。
“ノア”は、階段を降りたすぐそばでしゃがみ込んだ。
視線の先には、足と頭に穴を開けた怪物。
ずりずり、ずりずりと腕を動かして、地面を張ってゆっくりこちらに近づいてくる。
怪物は、“ノア”の目の前で止まった。
『霑斐@縺ヲ』
「?」
掠れ声で怪物が叫ぶ。
『霑斐@縺ヲ!』
「...」
頭を撃たれてなお、身体を引きずってここまできた怪物を見下ろし。
“ノア”はにっこりと笑った。
「ダメ」
『......』
「知ッテル?世界ニ同ジ人ハ2人存在デキナイ」
『... 遘�』
「世界ハ私を“ノア”だと認識スル。ヘイローがアルカラ」
『蝌�...』
「コウヤって、天使ノ輪を食べテ、どんどん増えて、最後にソラの大きナ輪ッカも食べれタら!」
『......』
「世界ハ、空は、私たちのもの。」
“ノア”は怪物の顔面を踏み潰した。
「さようなら、ノア。」
今度こそ怪物は動かなくなり、指の先から散り散りになっていく。
もはや名前も分からないそれは空気に溶けて、最初かそこに存在しなかったかのように消え去った。
「こんにちは、“ノア”!」
“生塩ノア”は、笑う。
「私は“ノア”!私は“ノア”!あはっ、あはははははははははははっ!!」
鳴動する。
地上に響いた笑い声と共に、地下深くの肉塊が。
それそのものに意思は無く。
ただ本能のまま
キヴォトスを地獄に変える卵が脈動する。
すぐそこに。
その指先は、すぐそこに。
最後までお読みいただきありがとうございます。
よければ感想や評価をいただけると、あまりにも嬉しいです。
今夜あなたが眠る時、このノアを思い出して一瞬でもモヤっとしていただけるのなら幸い(?)です。
では、またどこかでお会いしましょう。