転生者駆除業者 作:さん
椅子にくくりつけられた男がみっともなく喚き散らかす。顔を麻袋で覆われているが、黒いシミが目の当たりにできているから泣いているのがわかる。
「マジでさぁ、お前らのせいでこっちが大変なんだよ」
そう言ってガスマスクと黄色の防護服を着た彼は男の小指を掴み関節と反対方向に折った。
「あ"A“A"A"」
男は塞がれた口から絶叫を漏らす。その声は酷く汚く聞くに耐えない。次はペンチで指の爪を剥がす。耳が割れんばかりの叫びが狭く薄暗い部屋に響いた。
「泣きたいのはこっちだよ!!」
彼はそう
「転生前はよ、教室の隅っこでイジイジしてる6軍のインキャが神様に力もらって、転生先でイキリ散らかすせいでこっちの仕事が増えるんだわ!!ふざけんじゃねーぞマジで!」
そう言って芋虫みたい男の腹を四回ほど蹴り飛ばす。四回目くらいにグチュと内臓が潰れる感触した。
「どうだ、思い出したか?前世をよ」
そう言いながら強酸性の液体を男にかける。男は必死にもがいて助かろうとするが、肉の溶ける容赦ない音が叫び声に混じって飛ぶ。
「今月に入ってもう三人目だチクショウ!」
彼は動かなくなった男を黒いビニールの袋に詰めて担ぐ。そうして薄暗い部屋のドアを開けてどこかに消えていった。
「今は何番の焼却炉が空いてるんだ?」
次に彼が現れたのは人間の世界でいう火葬場のようなところである。男の前には黒いフードを被ったガイコツがいてそのガイコツはパソコンを見る。
「一三番なら空いてるぞ」
ガシャガシャと音を立てながら話すガイコツに感謝の言葉を彼は返す。
「この後、時間あるかケイン?」
ガイコツは彼にそう言ってパソコンをいじる。
「あ?この後はレポート書かないと行かねーから残業だクソッタレ」
彼ことケインは愚痴を漏らす。ガイコツはそれを聞いて音を立てながら笑った。
「今日は苦労したみたいだな、作業着が汚れてるぜ」
ガイコツはケインを指差す。ケインは後頭部を少しかいて口を開ける。
「ちげーよ、単純に俺がキレて汚しちまっただけだ」
血で汚れたところを手ではたく。はたくだけで血は落ちることはない。
「十三番ってここだよな?」
ケインは十三と書かれた焼却炉の前に立っていた。その焼却炉はじゃっかんサビている。
「えーっと、キー認証しないと」
首からかけられている職員証カードをとりタッチパネルにかざす。
『カードを認証しました。扉を開きます放熱に気を付けてください』
電子音が流れて焼却炉の扉が開くとムワッとした空気が流れる。これには相変わらず慣れない。
「よいしょっと」
掛け声を出し黒いビニール袋を投げ込む。はみ出てないのを確認すると扉を閉めた。しばらくしてピーッと電子音が鳴ると焼却が開始された。それを確認してから焼却炉を離れる。これで仕事は終わりだ。達成感と疲労感でケインの心は満たされた。
「あー、疲れた」
ケインはロッカーに入ってから防護服を脱いで私服に着替えた。白いパーカーに黒のカーゴパンツ、一見すると地味だが彼にとってはとても落ち着く格好だ。なぜならそれはその日の仕事が終わったことを意味するからだ。
ケインの仕事は転生者駆除業者、その仕事内容は名前の通り神とかいう害悪によって異世界に放たれた別世界の人間を駆除する仕事である。そして、株式会社死神ホールディングスの下請である。月の給料は19万ほどでそこから社会保険料、年金などもろもろ引いて手取りは14万。さらにそこから家賃、光熱費、ガス代、食費、携帯代など生活費を引くと5、6万くらいしか手元に残らないのだ。そして、残業しても残行代はスズメの涙。ほとんどサービス残業である。はっきし言ってこの職場ブラックなのだ。
「転職してぇ」
ケインは愚痴を漏らす。こんな環境だと愚痴が出てもおかしくない。彼は今、帰り道のコンビニで買った一番安いビールと枝豆と少しの惣菜で晩酌をしている。彼が住んでいる部屋は格安の社員寮だ。壁はベニヤ板くらいペラペラでエアコンが付いていない。洗濯機はあるのだが他の社員と共有である。しかし、とても安い。それだけで彼はここに住むことを決めたのだ。
「阪神勝ってるかな?」
そう言って前の入居者の人から譲ってもらったぼこぼこのテレビをつける。画面に映された数字は10−3、ベイスターズに負けていた。
「はぁぁぁ!?なんで負けてんだよぉぉ」
ケインは畳の床に大の字になって寝転ぶ。その姿はお菓子をねだる子供のようだ。ドンと壁を叩く音が聞こえる隣の部屋からだ。騒いでしまったためお隣さんのカミナリが落ちたようだ。
「あ、やべ」
ケインもそれに気づいて少し申し訳ない気持ちになった。ケインは少しだけ残ったビールを飲み干すと穴の空いた布団を引いてそれに潜って泥のように眠った。