仮面ライダーディーパ(新約)   作:瓜生史郎

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10話

 周りが一瞬、時が止まったように静まり返った。僕も今までなかった出来事に驚きを隠せなかった。

 

「ど、どうなってんだよ?これ……」

 

 僕はもう一度もドライバーにカードをセットするがバックルからは、発せられるはずの少女の声が聞こえない。

 

 焦っているのは僕だけではなかった、セレステもその一人だ。彼女も何が起こったのかわからず、呆然と立ち尽くしている。

 

「くそ!!動け!!」

 

 僕は何度も何度も、ドライバーにカードをセットするが、ドライバーからカードが飛び出し地面に静かに落ちると、そこに色鮮やかだったセレステの絵ではなく白黒になったセレステの絵に逆戻りしていたのだ。

 

「なんだよこれ……」

 

 悲しみと驚きが入り混じった声が出た。

 

「なーにメンコ遊びやってんだぁ?俺の事忘れてんじゃねぇ!!」

 

 痺れを切らしたマーマン族のリーダーはトライデントを持って僕に向かって襲い掛かる。だが茫然となって僕は白黒になったカードを拾い上げようとするのに必死で気づいていない。

 

 だがその刹那バーンと一発の銃弾が発射される音が響いた。

 

 それに驚いたリーダーは襲い掛かるのをやめ華麗に避け、体勢を立て直す。

 

「何やってるの!?」

 

 宝物庫から飛び出てきたネレイスが僕に向かって叫ぶ。

 

「そ、それがセレステと1つになれなくなって……」

「は、はぁ!!??」

 

 ネレイスも突然の発言に今まで見せたことがない驚いた顔を見せた。

 

「な、何がどうなっているんだ?」

 

 マーマン族のリーダーも何が起こっているかわかっていないようで困惑する。

 

 痺れを切らしたのか周りにいたマーマン族がリーダーに拳銃を手渡す。

 

「もうしゃらくせぇ!!!」

 

 バーンという音ともに大きな銃弾のようなものが発射される。

 

 そしてその銃弾がパコーンと空中で割れると大きな網となってネレイスに向かい飛ぶ。それに真っ先に気づいたのセレステだった。セレステは言葉を発するよりも体が先に動いた。

 

 網に捕まりそうになったネレイスと僕たちの方向に向かって走り出し僕ら二人を突き飛ばした。

 

「セレステ!?」

 

 僕らが突き飛ばされて気づいた時にはもうセレステは網の中であった。

 

 僕と目が合ったセレステは後は任せたよと言ったのだろうか?少し頷く。

 

「ちっ……赤いほうが入ったか、まぁいいこいつも精霊には変わりはない!野郎ども撤収だ!!」

 

 号令を受けたマーマン族は目にも留らぬ速さで網に入ったセレステを担ぎ上げ撤収する。

 

「待、待て!!!!」

 

 僕が追いかけようと即座に立ち上がり宝物庫の外に出たときはもう姿形すらなかった。

 

 前にリーダーが負傷し、担ぎ上げて撤収した時の事と言い、逃げることに関しては凄まじい連携力のようだ。

 

「マジかよ……」

 

 まさかセレステが連れ行かれてしまうなんて……しかもセレステの力も使えなくなる。

 

 脱力感、体が空っぽになったかのような感覚……になっていた時だった。

 

 ばちーーん!!!

 

 突然ぼーっと意識が遠のいていた僕の左頬に凄まじい音ともに激痛が走った。

 

 そして恐ろしい形相をしたネレイスの顔が現れ、僕の胸元の服を掴む。

 

「貴方本当に最低ですわ、史上最低の精霊の騎士ですわ!!自分の契約した精霊も守れないようなあんたはヘタレ以上のポンコツ役立たず騎士!!!」

 

 彼女の言ってる事に反論はしなかった、反論する余地もない。

 

 僕はネレイスに言われるがまま静かに彼女の言葉を噛みしめるように聞いていた。

 

 何も言わない僕を見てネレイスは胸元を掴んでいた手を放す。

 

「もう二度と私の前に現れないでください、もうこれ以上私の精霊の騎士を汚さないでください!!!」

 

 ネレイスは宝物庫の門を抜け出し走り去る。

 

 精霊にも嫌われるし、助ける側なのに助けられるし挙句の果てにはドライバーには見捨てられる、本当に最低な奴だ僕は……このままいっそ全てを投げ出してしまいたい気分だった。

 

 

 

 

「これか~封印されている祠って言うのは」

 

 町から外れた湖の上流の草原にフォンセはいた。

 

 湖の真ん中に小さな島が浮かんでいてそこに厳重に封印された祠がありその島までは、石でできた一本道が続いている。

 近づこうとすると何やらこちらに向かって何人もの軍団が近づいて来ていたのが見えた。

 

「あれは……」

 

 近づいてきたのはマーマン族の軍団だった。

 

 何人、何十人もの軍団が2つの隊に分かれ、一直線に続いている。そしてその隊が向かっているのは紛れもなく祠がある小さな島だった。

 島に到着した軍団は何やら祠の周りに集まり準備を始める。その光景を見たフォンセは何をしようとしているのかすぐさまわかった。

 

「まさか、封印を解こうと……ふふふ~これはやばいね~」

 

 フォンセは不敵に笑いながらその光景を横目にこの場所を後にした。

 

 一刻も早くディーパと水の精霊を契約させないと。

 

 

 

 

 僕の足はなぜか勝手に襲われた宝物庫の中に足を踏み入れいていた。

 

 中を見渡すとそこはまるで現実世界の貨物倉庫のような広さで、凄まじい量の木箱が収納されている。

 

 これ何が盗まれたのかわかるのか?

 

「すみません、騎士様何が盗まれたのかわからなくて……」

 

 何のあてもなく歩いていると一人の兵士が僕に向かって頭を下げた。

 

 どうやら頭の中で思い浮かべていたと思っていたものが独り言になっていたようだった。

 

「そ、そうか……」

 

 そういえば前生きていた世界ではこのくらいの広さの倉庫を一人で備品リストを見ながら夜中に商品を全部チェックさせられたっけ?

 

 あの時は終わるまで朝になるまでかかったような……。

 

 そんな事を考えていると、目の前に1枚の紙が渡される。

 

 

「申し訳ないんですけど、何が盗まれたかチェックしてもらえませんか?」

 

 さっき妄想していたトラウマが頭にフラッシュバックした。だが僕はそれを振り払うように頭をぶんぶんと振る。

 

 まさか異世界に来てまでこんな作業をすることになるなんてな……拳を握りしめる気合を入れた。

 

「わかりました。手伝います」

 

 僕は兵士から渡されたリストを受け取った。

 

 リストには事細かにどこに何の宝物が収納されているかが記されている。だが実際にその置いてある場所に行ってみるとだいぶ散らかっているようだ。

 

 これは襲われて散らかったのもあると思うが、見渡した感じ整理整頓もあまりできていないようである。

 

 なるほど盗まれてもわからないわけだ……こうなれば、徹底的にここの宝物庫を整理するしかなさそうである。

 

 おそらく、今ここから見える範囲でも数人の兵士がいるから朝まではかからないであろう。

 

「なぁ?皆を呼んでくれるか?」

 

 僕は近くにいた兵士を呼び止め、周りにいた兵士をかき集めさせた。

 

 まず整理整頓することから始めることにした、むやみやたらに探すよりも、とりあえずは整頓した方がいいだろうという僕の考え方だ。

 整理しているといろいろな宝石やら、昔の出来事が描かれた書物が続々と出てくる、読みたい気持ちはあったがぐっとこらえて作業を続ける、そして作業を続けて数分経ったころ一人の兵士が僕に呼び掛ける。

 

「騎士様、ラグナ様が外でお呼びです。」

 

 まずい、ネレイスを怒らせたことがバレたか?

 あとセレステがさらわれたこともバレたか?

 

 やばい解雇かもしれない……僕はわかったと一言だけ言い宝物庫の外へ出ると少し厳しい表所をしたラグナが立っていた。

 

「何が盗まれたわかりましたか?」

「い、いえまだ何が盗まれたかはわかっていませんがもうすぐわかるかと思います」

 

 そうかと一言ラグナが言うと僕はすいませんでしたと頭を下げる。だけどラグナはいやいやと首を振って僕の肩をもつ。

 

「今回の事は誰も予期できなかったことです、君が謝ることではではないです。だが、水鏡の竜の封印を解除する3つの宝物が盗まれていないか心配だ」

「3つの宝物?」

「昔、精霊の騎士が封印したとされている水鏡の竜スペッチオそいつの封印を解除する宝物です、水鏡の真珠、水鏡の鏡、水鏡の剣この3つとあともう1つ何かが揃うと封印を解除できるというものなのですが」

「あともう一つ?」

 

 はいと一言だけ言うとラグナは一冊の書物を広げた。

 大昔の文字で僕には何が描かれているのかわからなかったがラグナによると、水鏡の竜を精霊の騎士が封印する時の話が事細かに書かれており、精霊の騎士は水鏡の竜の魂を3つの宝物に分けたと書かれている。

 

 それが先ほど言った水鏡の真珠、水鏡の鏡、水鏡の剣、そしてその3つの宝物を作成するときに使ったのが精霊の霊力によるものということらしい。

 

「てことは、もう1つの何かって精霊の霊力ってことなのか?」

「おそらくは……」

 

 なるほどようやくつながったネレイスをしつこくねらっていたのはそういう理由だったのか、けど今回誘拐されたのは火の精霊セレステだ。

 

 まさかとは思うが火の精霊でも封印解除はできるということなのか?僕が頭の中で考察していると、ラグナは何かを探すように辺りを見渡した。

 

「そういえば、セレステさんはどこか行かれたのですか?」

 

 僕はギクッとなるが、さすが嘘をつくわけにもいかず先ほど起こったことを説明する。

 

 セレステがネレイスの身代わりとなって、誘拐されたことやネレイスに嫌われてしまったことも。

 

「そうでしたか……」

「本当に何もできない僕が情けない、ネレイスの言う通り僕は精霊の騎士失格ですね」

 

 僕がはぁと落胆した様子を見せるとラグナは「そんなことはないです」と一言言った。

 

「貴方は選ばれた精霊の騎士です、それだけでも凄いことだと思いますよ」

 

「けど、僕は先代の精霊の騎士のようにすごい力をもっているわけではないです!!だから……」

 

 僕は言い放とうとするとそれを制止するように、ラグナは僕の両肩を持つ。

 

「力だけが正義じゃないです、貴方は貴方のままでいてください」

「僕は、僕のまま……??」

 

「先代の精霊の騎士は、確かに偉大な騎士でした一国の皇帝にまで上り詰めた方ですから、ですが力を求め過ぎたが故に暗殺されたのです、私は貴方にそんな方になってほしくない。だから貴方には貴方のままでいてほしい……」

「ラグナさん……」

 

「あぁ!!すいません!!つい熱くなってしまって……」

 不甲斐ない僕に対して熱く親のように語ってくれるラグナに少しうるっと来てしまった。だがそれを振り払うかのように宝物庫にいた兵士が僕らに慌てて近寄ってくる。

 

「盗まれたものが判明しました!やはり水鏡の3つの宝物でした」

 

 予想通りではあったが、いざ判明すると緊張が走るような感覚に襲われた。

 

 やっぱりバスコの狙いは水鏡の竜の復活だったようだ。そしてさらにもう一人別の場所から兵士が急いで走ってくる。

 

「ラグナ様、封印の祠にマーマン族が続々と押し寄せてきています!!」

 

 さらに緊張が走る、まずいことになってきたとラグナが頭を抱える。

 

 僕も今すぐにでも走りたかったが、精霊のいない僕には何も打つ手はなしだった。

 

 

 

 ネレイスは屋敷へと戻る道を歩いていた。早くお父様に知らせてあのへっぽこ騎士をこの町を追い出してもらおうと、追い出せばもう二度とあいつの顔を見なくて済む、ネレイスはそう頭の中で考えていた。屋敷へと戻る道を歩いているはずなのになぜか違和感があった。

 

 歩きなれた道を歩いているのに周りに人がいないし、同じ場所をぐるぐると回っている感覚だった。

 

「なにこの雰囲気……?」

 ネレイスが辺りを見渡しているとカフェテラスに一人ポツンと座る黒い髪のゴスロリ服を着た少女がみえた。彼女と目が合うとおいでおいでと、こちらに手招きする。

 

 ネレイスはそれに誘われるように黒い髪の少女の元へ足を運んだ。

 

「こんにちは水の精霊ネレイスさん」

 

 妖艶な声で黒い髪の少女はネレイスに呼び掛けるが、ネレイスは彼女が何者なのかそしてなぜ自分の名前を知っているかわからなかった。

 

「貴方は、一体?」

「まぁ、まぁ座ってよ~一緒にお茶でもしよ?ね?」

 

 けどネレイスにはわかっていた。

 

 無邪気に笑うこの娘からただならぬ気配を感じることを。ネレイスは無邪気に笑う黒い髪の少女に近づき銃を突きつける。

 

「私は名前を聞いてるんですわ、さぁ早く名乗りなさい」

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