止めてほしい?父親?同じマーマン族なのに?どういうことだ?
「お前の考えてることはわかる、なぜ同じマーマン族なのに倒してほしいとか言ってるのか、だろ?」
僕はああと一言だけ頷くと若いマーマンは僕に近づく。
「俺はバスコの息子ドレイクという、こいつらは皆反バスコ派だ」
「俺はソゲンだ、お前らはバスコの味方じゃないってことか?」
「ま、そういうとこだ」
いつの間にかドレイクと呼ばれるマーマンに敵意はなくなっていた。そして僕はバスコについてもっと深堀しようと質問する。
「あんたの親父は昔からああだったのか?」
「いや違う、数か月前に天から変な光が降り注いでからそれまで温厚だった親父が狂暴化したんだ」
「変な光?」
「あぁ、最近どうやら変な光を浴びた魔物とかが暴れてるってうわさが絶えなくてなおそらくは俺の親父も同じ光を浴びたのだろうと思う」
ということは、レグナーと戦ったオークらが起こした事件やイニシオ村を襲った魔竜兵も変な光浴びたせいだということか、少しずつではあるが点と点が繋がってきた。
ということはその光を作っている犯人もいるはず……。
「とにもかくにも、今の親父はスペッチオを復活させこの町をセイレーンと人間ごと破壊するつもりだ俺達には暴走した親父を止める事ができない……ソゲン!!頼む!!!このまま悪行を重ねる親父やマーマン族を見たくないんだ」
ドレイクはそういうと僕に向かって頭を下げる、頭を下げたのはドレイクだけではなかった。
周りにいたマーマン族もドレイクと一緒に頭を下げた。僕は彼らの姿勢に感銘を受けた、ここにいるやつらはバスコらのような平和を脅かすものではなく、平和に仲良く過ごしたいやつらなんだと。
「言われなくてもわかってるよ、僕がここにいるのもバスコをぶっ倒すためだしな」
「頼んだぞ」
ああと一言返事をした僕は祠に向かって走り出す。
決意に満ちた横顔を見たドレイクらは走っていく僕をずっと見つめていた。
その頃はバスコと戦っていたネレイスはまるで天を舞う白鳥のように華麗なジャンプでバスコの攻撃を避け続けながらバスコに銃弾を当て続ける。
「ちょこまかと……」
バスコははぁはぁと息を切らしながらサーベル状の剣をもって湖に飛び込む。
「水中に逃げた……?!」
ネレイスも湖に飛び込もうとするが、躊躇して少し考えた。
自分も泳ぎが得意だが、相手は自分よりも水中戦が得意な種族だ、できれば同じ土俵では戦いたくないとなれば……。
落ち着け、落ち着け集中しろ、ネレイスはバスコが水中から飛び出してくるのを待った。
「くたばれぇ!!」
「やっぱりきた……」
ネレイスは襲い掛かるバスコを華麗に避け反転するとバスコの背中に銃弾を撃ち込む。そしてさらにくるっと反転し水面を蹴るようにもう一度空中に浮かび上がるとバスコを陸に向かって蹴りつける。
「ぐはぁ!!!」
まるで釣りあげられた魚のように、陸に打ち上げられるとずざーと地面を滑る。
「つ、強い!!」
その様子を祠の近くで見ていたセレステはネレイスの強さに圧倒されていた。
だが、本当にこれで終わるのか?さすがにうまく行き過ぎていないか?とも少し疑問に思ってしまった。
「もう降参したらどうです?」
「貴様ぁ……」
傷だらけで弱った姿を見てネレイスは勝利を確信した。
やっぱり精霊の騎士なんて必要な私一人で十分だ、頭を打ちぬこうと近づこうと踏み出そうとする、だがなぜか足が動かせなくなっていた。
「フハハハハハ……油断したな」
自分の両足を見ると両側から自分の足が縛られている、そしてその紐をたどってみると、先ほどまで微動だにしていなかった兵士数人が自分の足を縛っている紐を持っている。
「嘘!?いつの間に?」
「お前の事は研究済みだ、そのすぐに油断する癖もな」
「そんな!!」
悔しい!こんな単純な罠にひっかかるなんて、一生の不覚……しかもこんな野蛮な戦闘民族の罠だなんて、ネレイスは心の中で悔やんだ。
「ネレイスさん!!」
ネレイスがピンチになる様子を見て、セレステも戦えればと思うが今は紐で縛られている。
どうにもできない……手から火を出し紐を燃やそうと試みるが届かない、ならば火の玉を紐でぶつけようと考えるが、火の玉が自分に当たってしまえばどうなるか……。
いや待てよ?、ネレイスのように煌天翔鳴と叫べばあの時のように精霊の姿になることができこんな紐なんて引きちぎれるはず……けどまたあの時みたいに暴走してしまう可能性も捨てきれない、どうすればいい?セレステが悩んでいる内にバスコはネレイスに飛び掛かる。
「俺の勝ちだ!!くたばれ!!精霊の小娘!!」
「まだ私にはこれがある!!!」
銃を構えようとすると手首に突然飛んできた小石があたり銃を地面に落としてしまう。
しまった!!と思い拾い上げようとするが、もう一つ飛んできた小石が銃を遠くに追いやってしまう気が付くともうサーベルの刃先は自分の目の前まで迫ってきていた。
ここで私は死んでしまうの?いやだ!いやだ!助けて!!!ネレイスは死の恐怖で体が固まってしまう……そうかソゲンも銃を突きつけられたときこんな恐怖を感じていたんだと、死が迫る瞬間初めて感じてしまった。ごめんなさいソゲンこんな私を許して……
その刹那、サーベルの刃先が当たる寸前、目の前に白銀の正義のヒーローが現れ、迫りくるサーベルを腕で防ぐ。
「ふー、間に合ったぜ!ヒーローは遅れてやってくるなんてな」
「「ソゲン(くん)!!」」
「貴様……、何者だ!!」
「正義のヒーローとでも言っておく!!それにしてもお前らマーマン族は騙したり、卑怯な手を使うんだな」
「黙れ!!、勝てばいいのだ」
バスコは僕に向かって回し蹴りを一発お見舞いし数メートル吹き飛ばされる。
「ぐわぁ!!」
「大口叩いた割に弱いなぁ?精霊の騎士さんよぉ!!あぁん!?」
僕の腹の上にどーんと足をのせると、腹を足でぐりぐりとえぐるようにこねくり回す。
あまりの痛さで吐きそうだ……我慢しろ僕!!
「ソゲン……」
「所詮貴様は精霊の力がなければ戦うことができない落ちこぼれなんだよ!!!」
そう叫ぶと僕の背中をサッカーボールを勢いよく蹴るように蹴りつける。
「ぐわあああああ!!」
蹴りつけられた僕はネレイスの足元に転がる、彼女の顔を見ると悲しげな顔を僕に向けているのがみえた。つい数時間前まで僕を嫌っていたとは思えない表情である。
「精霊の小娘、今度こそお前の最後だ!」
サーベルを構えるとゆっくりとふ「ははは」と不敵な笑い声を上げながらネレイスに近寄る。
「い……いやだ……こないで……」
ネレイスの目からは死への恐怖で涙が流れる、だがネレイスの前にフラフラと立ち上がるヒーローがいた。
「精霊には一歩も触れさせはしない……」
はぁはぁと息を上がる、地面にたたきつけられたり、腹を足でえぐられるようにされたせいで体の節々が痛み、立っているのもやっとだ。
「ソゲン君……ネレイスさんを守るためにあそこまで……」
「しつこいぞ……役立たずはくたばってやがれ!」
サーベルを振るうとと僕の体に一太刀、二太刀、何度もサーベルで切り裂き続ける。
「ぐふッ……」
「たわいもない!!」
「ま……まだ……だ!!」
「な、なんだと!!?」
僕の体は限界寸前だった立っているのもやっとで意識も朦朧としている、だけど、ネレイスだけは……!!
「ソゲン……なんで貴方はそこまで私を……貴方に私を助ける理由なんてないはずなのに!!」
「り、理由なんてねーよ……、た、ただ目の前にいる奴を守りたいそれだけで十分だ!」
「わからない、わからないですわ……」
ネレイスはどうしてもわからなかった、ボロボロになってまでソゲンが自分を守る理由が。ひどいことを言ったりしたし、いじめたりもした、そして挙句の果てには最低!!と言いながらビンタもしてしまった、自分の事を嫌いになってても当然の事をしたのに……。
「ま、わからなくて当然だろうな」
「何言ってるんだぁ!?さっさとくたばりやがれぇぇぇ!!」
しつこく立ち上がる僕の体に暴れるようにサーベルを何太刀も浴びせる。
「ぐわあああああ!!」
もう立ってられない……僕はその場に膝立ちで倒れる。
「ソゲン君……もうやめて……本当に死んじゃうよ!」
「ソゲン……なんで貴方はそこまで……」
僕はフラフラと立ち上がりながら力を振り絞って立ち上がるとバスコにゆっくり歩み寄る。
「俺を動かすのは、あんたが精霊だとか、セイレーンだとかそんなのは全く関係ない。たった一つの命を守りたい、それが俺の原動力だ!!!!」
それを聞いたネレイスは心の中で何かが揺さぶられる感覚に陥った。ヘタレとか最低なやつだと思っていたソゲンの印象が180度変わったのだ、この男になら私は……。
「くらいやがれぇぇぇ!!!!!」
僕は最後の力を振り絞って殴りかかる。
「本当に死にたいらしいなあ!!??」
殴りかかる僕にサーベルを大きく振りかぶると渾身の一撃を繰り出す。
「うわぁぁぁぁぁ!!!」
あまりの衝撃に僕は吹き飛ばされ、湖の中に沈んでしまう。
「「ソゲン!!!」」
「はっはっは、今度こそ終わりだな!」
ソゲンが、湖の底に……ネレイスは膝から崩れ落ちた。私のせいだ……もっと彼の気持ちをわかってあげればよかった、もっと彼の力と仲良くなっていればダメだ、自分の中で何かが壊れていくのを感じた、もうここで死んでもいいや私の存在意義ってなんだったんだろう?周りにいた兵士がネレイスに向かって槍を突き刺そうと近づいてくる。
ああ、もういっそのこと私を一突きで……。
「まだあきらめちゃだめ!!!はぁ!!!」
突如として周りが熱気に包まれると周りにいた兵士が次々と真っ二つになっていたり、炎の渦に飲まれたりした。突然の出来事に正気に戻ったネレイスは顔を上げると、赤い燃え上がるような巫女服を着た刀を持つ赤い髪の少女セレステが立っていた。
セレステはネレイスの足に巻きついていた紐を切り裂くと拾い上げた銃をネレイスに渡した。
「ネレイスさん、私が湖に潜ってソゲン君をを助けてくる!だからその間に時間を稼いで…」
セレステが話をしてる途中、銃も受け取ろうとせず、そして何も言わずにネレイスは湖に飛び込んだ。
「ちょ、ネレイスさん!?」
「まさか、異世界でも死ぬことになるとはな……」
ぽつりとつぶやきながらどんどんと見えなくなる水面に反射する外の景色をみつめていた。
すると突然目の前にネレイスのイラストが描かれたカードがホルダーから飛び出す。
こんな時に契約成立か?もう遅いよ。近くにネレイスもいないしな。僕はカードを掴もうとするが僕にはもう掴もうとする力はなかった、カードは水面に向かって浮いていくのただ見てるだけだった、あれ?誰かが湖に飛び込んで……セレステか?馬鹿だなアイツ冷たい水が苦手なのに……く、苦しい……!!も、もうだめだ……僕の意識はだんだんと遠のいていく……意識が飛ぼうとしたとき最後に見たのは足が魚になったネレイスだった。
「ソゲン!!今度は私が貴方を助けますわ!!」
ネレイス……?ドライバーを操作している?
≪Aqueru!stand-by!≫
ベルトから音声が流れる。セレステの音声とは違うものだ
≪Aqueru!metamorphosis!≫
ネレイスの姿が粒子状となり消えると青い鎧が形成され腕やボディに装着されていき、目には勢いよく飛ぶイルカのような装飾が施され瞳は青く輝き、まるで水中の神殿を守る騎士のような姿となる。
その頃地上では、セレステとバスコが戦いの火花を散らしていた。
「小娘如きが調子に乗りやがって!!」
迷いを振り切ったセレステとバスコの攻防は一進一退、周りに刀とサーベルがぶつかり合う音が響いた。
「もう貴方を助けてくれる、兵士はいない!!大人しく観念しなさい!」
「黙れぇ!!!」
バスコは何度もサーベルを何度も振り回し続ける、そしてそれをセレステが何度も受け止めるだがもうセレステも体力の限界がきていた、少しずつ息が上がってきている、はぁはぁと息を荒げるの我慢していたが、もうそれも限界に近い。
人は無事なんだろうか?と湖をふと見つめると突然青い光とともに、ばしゃーん!!と飛び出してくる青い姿をした、正義のヒーローが登場したのだ。
「ソゲン君!!」
「よぉ!待たせたな!セレステ!ここまでよく持ちこたえてくれたありがとうな」
地上に足をついた僕は挨拶がわりと言わんばかりにバスコに銃弾を浴びせ、セレステに近づく。
「ぐはぁ……、貴様生きていただと!?」
「よぉ、バスコよくも俺の契約精霊をいじめてくれたな~、今度はこっちの番だ!」
銃を構えるとネレイスが僕の脳内に話しかける。
(ソゲン、私の武器の名前はアクエル・シューターよ覚えてくれましたわよね?)
「あぁ!頭に焼き付けたよ!」
「何ぶつぶつと言ってやがる!!さっさとあの世に行きやがれぇ!!」
「お前がな!!」
猛牛のようにサーベルを構え、突進してくるバスコにアクエル・シューターから何発もの水のエネルギー弾を何発も何発も発射する。
「ぐわぁぁ!!な、なんだこれは?同じ武器のはずなのに」
先ほどまで受けていた銃弾とは違って貫通力が何倍も増している。
例えマーマン族の体の鱗が固いとは言えどそれでさえも貫通してしまうのだ。
「罪を償う時だ、バスコ!!」
僕はそう言い放つとベルトを操作する。
≪Aqueru! final attack!≫
ベルトから音声から流れた瞬間に僕の後ろには水でできた竜の姿をした幻影が現れる。それはまさしく伝説の竜スペッチオそのものだった。
そして銃を両手で構え、銃口に水のエネルギーが集約し後ろに幻影もエネルギーを集約される。
「はぁぁぁぁぁ!!」
引き金を引き、銃口にみなぎっていたエネルギーが水流のように放たれ後ろにいる幻影も同じようにエネルギーを放つ、見事にバスコに命中するとぐわぁぁぁぁという叫びとともに爆散する。
「はぁ、はぁ……終わった」
僕はベルト脱着し変身を解除すると隣にネレイスが現れるそして僕の顔を見ると、その場に膝をつき僕の手を持った。
「ソゲン、いろいろと酷いこと言ってごめんなさい」
そういってネレイスは綺麗なお辞儀で僕に謝罪する。
「別に気にしてないよ」
僕は彼女の頭を撫でようとするが、振りほどきネレイスは優しく手を握った。
「まぁちょっとだけなら精霊の騎士として認めてあげてもいいですわよ?」
「なんだよそれ、まぁありがとうなネレイス」
「はい!」
ネレイスはニコっと今までに見せたことない笑顔をみせた。
元の姿に戻ったセレステはソゲンとネレイスの様子をほっとした表情で見ていた。そして彼女は改めて決心した、彼についてきたことは間違いではなかった、これからも彼とともに戦い続けると。