生まれて初めて見る銃口は、冷たく光り輝く金属の筒の先端に突き出された暗黒色の穴だった。その穴は、命の火を吸い込むような深い淵のように感じられた。
僕は身を震わせながら、銃口を向けた人物をじーーっと見上げている。
「なぜ、あなたは精霊の力を使いこなせるんですの?」
(ソゲン君変身を解除して、私がこの娘と話すから)
僕は震えてセレステの声も、聞こえず何もできないでいた。
青い髪の少女は引き金に指を置いたままじっと僕を見つめていたが少女はようやく僕が銃を突きつけられた恐怖で動けないことに気づいない。
「貴方……銃を突きつけられて、怖くて動けなくなってますのね」
「!!」
(変身解除してって言ってるのに!)
変身解除をしてセレステを元に戻せばセレステに僕が精霊の騎士であるということを言ってもらえれば僕が言うよりも精霊本人の方が説得力があるだろう。
だが今は銃口を突きつけられたショックで手が震えてそれができないでいた。それを見て強い眼差しを向けていた少女は高飛車のような笑い声で笑う。
「殿方なのに、女性に銃を突きつけられただけで固まって動けなくなるの情けなくないんですの?ぷーくすくす」
「なんだと!?」
小馬鹿にするように笑う、青い髪の少女に僕はイライラして、ついカッとなって強く彼女にと当たってしまった。
「あっ、動いた!!こわーい!」
しかし、彼女は僕が強く当たってもビビるどころかなどとふざけた口調を続ける。
「僕は精霊の騎士だ!だから精霊の力を使える!」
「ぷっ、銃を突きつけられただけで固まってる殿方が精霊の騎士~??ぷーー絶対嘘ですわーー」
相手を小馬鹿にするような笑いを続ける少女は銃の引き金を引くと水で出来た銃弾を3発ほど発射し僕の顔にすべて直撃する。
「ぐへぇ!!」
「きゃあああ!!」
今まで聞いたことがなかったセレステの悲鳴が脳内に響いた。
「セレステ?大丈夫か?」
(ごめん、水はやばいかも…)
僕ははっとなって思い出した。
しまった!火は水に弱いんだ、そのことがこの世界に来てからすっかり頭から抜け落ちていたのだ。
「ぐへぇって情けない声ねー、ほーら!!ばーん!!、ばーん!!」
少女がいたずらに笑いながら水の弾を撃ってくる様子に、僕は憤りを感じた。しかし、少女はますます笑い続け、水の弾を次々と放ってきた。僕は必死にそれを避けることに専念する。
「やめろ!!僕は君と戦いたくない!!」
僕は必死に撃つのやめる事を懇願するが聞いてくれる気配がないそれよりも撃っている弾丸数が増えてきているようにも思えていた。
「なーんか楽しくなってきましたわ」
無我夢中で避け続けていたが、流石に体力の限界が近い。
そうして動きが鈍くなっていった僕に弾丸何発も直撃してしまい変身が解除されてしまう。
僕はセレステと共にその場にばたりと倒れてしまった。
「この野郎……」
「私の勝ちね」
青い髪の少女は銃を向けたまま、あざ笑いながら僕らに近づくと、隣にセレステが倒れていることに気づく。
「え、うそ、女の子!?さっきまでいなかったのに!?ま……まさか……精霊?てことは本当にこの殿方は……」
「ネレイス!」
威厳のある男の声がすると、一人の青いローブを付けた少し老いた男が、何人かの兵士とともに僕らの元へと駆け寄ってきた。
「お父様!?」
「お前、何をやっている……彼は精霊の騎士ソゲンさんだぞ?」
「嘘……絶対信じないですわ!!この人が精霊の騎士なんて…」
少女はかたくなに認めようとせず腕を組んでそっぽを向いた。
その様子を見たセレステが装着してあるドライバーを脱着し少女にみせる。
「これ……私のおでこにある紋章と同じ……」
「これを見ても信じてくれませんか?」
「信じればいいんでしょ……」
少し悔しそうな表情を見せた。
本当に信じる気になったのかわからないが。
その様子を見て安心したのか少女の父は僕に向かって改まって兵士とともに綺麗なお辞儀をみせた。
「先ほどはご無礼をしました、精霊の騎士ソゲンさん貴方をお待ちしていた」
「え?」
なぜこの人たちは僕らが精霊の騎士と知っているんだ?
「水の精霊ネレイス」
カフェデッキのテーブルで銀色の髪の毛を靡かせながら謎の男からもらった写真を見つめる少女がいた。
闇の精霊フォンセ彼女もまた二人と同じ精霊。
ある男からの任務でこの町に来ていた。
「火の精霊と違ってこっちは最初からパワー全開だから、すっごく大変そうーどうしよう」
フォンセが机に突っ伏していると綺麗なメイド服を着た女性のウェイトレスがフォンセの机にやってくる。
「お待たせしました~。あの……本当にホールサイズで良かったんですか?」
困惑しながら、持って来たホールサイズのチョコケーキをフォンセの前に置く。
「うん!大丈夫だよー。お姉ちゃんありがとうー」
フォンセは子供のように笑顔でチョコパフェを受け取ると、幸せそうな顔で一口ほおばった。
「で、ではごゆっくりー」
見た目以上に豪勢な食いっぷりをするフォンセを横目にウェイトレスは去って行く。
「とりあえず、火の精霊なんとかしないとねー……」
セレステと僕はネレイスと呼ばれる少女の父に案内され馬車に揺られている。
僕らは異様に雰囲気に内心ドキドキだった。
「なぁ……。俺たちそんなすごいことしたか?」
「多分イニシオ村の一件が広まってるんじゃないかな?でもまさか精霊の騎士が本当に実在してるとは……」
「そういえば、ここへ仕事へ来てるって言ってるやつもいたなぁ、広まるのも当然か」
自分たちが有名になっていることに、僕は不思議と嫌悪感を感じなかった。
現実世界とは異なり、ここでは自分が役立たずなんて言う人はいない。
必要としてくれる人たちがいるからだ。
「ソゲン君あれ見て!!」
「なんだあれ……」
驚いて指さした方を見て見ると、そこには煌びやかな豪邸が現れた。
建物を彩るサファイアを思わせる豪華絢爛な外装はこの家に住むものがかなりの実力者だと思わせるほどだ。
広さは一見ではわからないが、ざっと東京ドームくらいはあるのではないだろうか?
これはもうお城と言わず、どう表現すればいいのか……。
「あの精霊、すげぇとこのご令嬢だったのか……」
豪邸の入り口に到着したとき、私たちとネレイス親子は門番であろう兵士に案内され、豪邸までの道には色とりどりの花と透き通る水が、流れる水路があり、まるで楽園への入り口のようだ。
そして豪邸に入り僕達二人が案内されたのは客人室。
高級な絨毯と、革で作られたのではないかと思われるソファがあり、ネレイスの父親から「座ってください」と言われ、僕たちはネレイス親子と向かい合うようソファに座る。
「改めて、私はローレライ家の当主ラグナ・ローレライですよろしく、そしてこちらは……娘のネレイス」
ネレイスの方を見るが、ぷいっとそっぽを向いて目を合わせてくれなかった。
「ソゲンといいます」
「お付きのセレステです。」
ネレイスはセレステにはぺこりと笑顔で挨拶をした。
よっぽど僕は彼女に嫌がられてるらしい、お互いの自己紹介が終わったとこでラグナはゴホンと咳ばらいをした。
「さて、早速本題に入るのだがまずはあの半魚人のマーマン族について話しておかないといけない」
ラグナの話では、セイレーンとマーマン族は昔は仲が良く人間,セイレーン,マーマンという3種族が仲良く住んでいる町だったという。だが数十年前にマーマン族が起こした紛争によりセイレーンとマーマン族の仲は険悪に。
セイレーンはマーマン族との関係を断ち人間ともに手を組み、マーマン族を町から追い出し孤立してしまい人目につかないように水鏡の湖の湖底に住処を作り、そこで静かに暮らすようになる。
しかしこの数か月の間に状況が一変。マーマン族が突然狂暴化、人間やセイレーンを襲うことになったという。
「なんとなく状況はわかったが、マーマン族がそうなるきっかけはなかったんですか?」
僕がそう切り出すとラグナは1枚の写真を僕の前に置いた、そこには一人のマーマン族の男が写っていた僕は見ながらこれは?と聞く
「マーマン族の現長バスコ、このバスコの代に変わってから人々を襲うようになった」
「バスコ……」
ギロリと写真からこちらを見つめるまなざしに、僕は少し身震いをしてしまった。
「精霊であるネレイスが町を守ってくれてはいたが、それも限界に近づきつつある。お願いします、ネレイスと共にバスコを倒し町を守って頂きたい!」
ラグナは深々と頭を下げた。
その様子を見たネレイスは立ち上がる。
「私は反対です。銃を向けられただけで、恐怖で怯えて固まってしまうような殿方とは一緒に戦いたくありませんわ」
「だが彼はイニシオ村を襲った、ミノタウロスを倒したという実績がある!!」
「どうせ、ミノタウロスを倒したのもまぐれですわ。とにかく私はこの殿方と戦うのは反対です!」
キッパリと断言したネレイスは僕の顔を見てふんと威嚇すると、足早に客室を後にした。
「すいませんソゲンさん。うちの娘が……」
い、いえと僕は受け流すが、たしかに彼女の言う通り僕は強敵を目の前にしてしまうと体が動かなくなり固まってしまう。
もしそれで彼女に迷惑でもかけたりしたら……。
僕が弱気な顔をしていると、隣から僕の手をそっと握ってくれている人がいた。
そうセレステだ。
僕は彼女の顔を見ると笑顔で僕を見つめると、彼女は「がんばれ、がんばれ」といって応援してくれいるようなそんな感じがした。弱気になってる僕のために応援してる一生懸命な彼女を見て僕は決心する。
「わかりました、その依頼引き受けます!!」
僕が意気揚々と答える様子を見たラグナはほっとしたような表情浮かべ、深々と礼をした。
「くそぉ、あの野郎!!」
マーマン族の湖底のアジトの医務室、先ほどイグニスフォームの強烈なパンチを受けた、マーマンの男は治療を受けていた。するとそこに一人の他のマーマンとは違う風貌をした男が入る。
「バスコ様!」
そうこの男がマーマン族を牛耳る、リーダーバスコその人だった。
バスコは治療されているマーマンを睨みつける。
「すいません、バスコ様あの鎧をつけた変な男に邪魔をされて……」
バスコはくそぉ!!と雄たけびを上げながらその場にあった机を蹴りつける机は凄まじい勢いで宙を舞いガシャアン!!と音を立て薬品を破壊した。その様子を見たマーマン達は声を上げながら怯えている。
「あの鎧の野郎、俺たちの邪魔をしやがって」
バスコは内心焦っていた、ここまで自分らの思い通りにいってたのにあの鎧の男の登場によってすべてが狂ってしまったのだ。
どうします?バスコ様?という声もバスコには届いていなかった。もう目的のためには手段を選んではいられない。
「次の襲撃場所を教える……」
バスコは地図を広げ、指を指した。マーマン達は「あいあいさー」とだけいい、武器の準備にとりかかった。
「セイレンタウン、今に見ていろ……」
その声は憎悪、恨み、憎しみすべてを混ぜ合わせたような、気持ちがこもっていた。セイレンタウンを血の海にしなければ気が済まないそんなおぞましいことも考えるようになるまでに恨んでいたのだ。
「父さん、もうこんなことはやめよう」
医務室に現れた若いマーマンはバスコの息子ドレイクだった。
バスコはお前には関係のないことだとドレイクはぐらかす。
「こんなことをして何になる!父さんは間違っている!」
「黙れ!!!!」
バスコはドレイクに拳を振り上げる。だが実の息子を殴るのはダメだとためらったのか、何とか殴らず踏みとどまった。代わりに腰に備えていた剣を息子の首が斬れるか斬れないかの境目で止める。
「もし俺の言うことを聞けないのなら、この場でお前を殺すことはできるどうする?」
ドレイクは小さく、はいと答えたが、嫌だと言えない自分が情けなかった。
だが、嫌だと言えばここで自分は首をはねられ父を止める事が、できる人物がいなくなる。
それだけは避けないといけない、そのために今は従うふりをしよう。
そしてドレイクは願っていた、父親を止める人物の登場を……。