超昂大戦SS 次の適合者は君だっ! ダイビート超昂変身オーディション(自薦1名) 作:環 藍河
ししょーが…、姿を消した。
不肖の弟子・閃忍リルカに…さよならさえ告げずに。
ししょーの残した鍵で、ダイビート基地、戦闘スタッフのトランクルームを開けると、書き置きが。
〜ここを訪れたりるか、君にヒーローを託す。
ししょーは…自室のヒーローグッズ全てをあたしに託し…
行方をくらました。
「ししょーーーっ!! ドコ行っちゃったんですかあーーーっ!!」
……
…
「ただいま、りるか。」
「し…ししょおーっ!?」
ものの一日だった。
「と…とにかくっ、心配したんですよっ!!
…あ、昨日のロイダー、あたしが録画予約済みですよっ!
一緒に観るまでガマンしてました! 初見ですよっ!」
ふるふるっ。(首を左右に)
「もう…あたしは一生分、ヒーロー観ちゃったから。
揺るぎない高邁なその魂は、あたしの心の中に1つあればいいの。
だから…もう、十分。」
……?
「りるか…あたしの分まで、ヒーローを追いかけて。
あなたに託した私のヒーローたち…大事にするのよ。」
「…ほへっ?」
ぼとっ。(DVDを落とす)
…あり得ない。
春雛うらら。戦闘も私生活も、常にヒーローとともに歩む女。
全ての行動規範、一挙手一投足をヒーロー心得に照らし決断する女。
それが…たった一日の失踪で、全ての熱を喪ったかのように…!!
がしっ。だだだだだだっ…
…ばんっ!!
「セラフィールさんっ、ナオ先生っ! ししょーの精密検査、お願いしますっ!!」
「り…りるかさん? どうしました?!」
「落ち着いて…落ち着いて…!」
メディカルルームにうららを担ぎ込み、りるかは半泣きで直訴。
「うちのししょー、変なんですうううっっ!!!」
…
……
「はあ…今日はもう、4人目ですねえ。」
「よ…4人っ!?」
「誰一人、肉体的な異常はないんです。」
「精神的に、精神的に、達観してしまった、と言いますか…。」
がばっ!
「あ…あんたたちいいっ!?」
セラフィールたちの目線の先、ベンチに座る3人。
……………
…私、もう、大人です。だから、自立しました。
バブみも、オギャりも、今度は私が誰かに与える側にならなきゃ。
いつまでもママに甘えっぱなしじゃ、ないんですよ。
…作曲? ミモザちゃんはまだまだ未熟なのだ。
思いつきで奏でるだけの、たれ流しスタイルじゃだめなのだ。
先人たちの紡いだ偉大な曲に、もっと耳を傾けなければ、なのだ…!
ロリータ? イヤですねえ。
いたずらに騒いではしゃいで、愛しきつぼみたちを萎縮させちゃ…ダメ。
ロリータは心の奥底で、そっと愛でるものですよ…でゅふっ。
……………
「み…みんな、菩薩さまレベルの澄んだ目をしてるーーーっっ!?」
ぽんっ。(背後から肩を叩かれる)
りるか。激しいだけが情熱の炎じゃないわ。
私は私。これからも、静かにヒーロー道を求めていくから…ね。
きらきらっ…(澄んだ瞳)
「こ…こんなのっ…、
ししょーじゃ、ないいいいーーーーっっ!!」
ばんっ! だだだだだだだっっ!!
「り…りるかさん?」「どうしよう…どうしよう…?」
……
…
「やっぱり4人ともイマイチねえ、エナジー放出量。」
「やっぱりおんどれかあああーーーーっっ!!」
ラボにカチコミをかけたりるかと、諸悪の根源・さやか。
「ルビーやサファイア、マリナもそうだけど…
超昂変身を為し遂げた彼女たちの共通点…
それは、絶望の底に叩き落とされたこと…!!」
くわっ!!(さやか開眼)
「でも! 彼女たちは、そこから絶望を越えたの!
湧き上がる心の力が、きっと超昂変身の鍵なんだ…!」
「…で?」
「全力ぶっちぎりの心のエナジーを持った超昂戦士に、いったん虚無と達観を与える!
そこから立ち上がる彼女たちに、ご期待くださいっ!!」
「その前に苦情が出とるわーーーーっ!!
見てみなさいっ、あんたに尻子玉抜かれた4人を囲んで、メディカルルームは嗚咽がこだましてるわよおっ!」
【さやか被害者・近親者の会】
「ああっ…どうしましょう、どうしましょう…!
いやしくも精神科の医師として、無力、無力です、私…。」
「ポラリスちゃん…もう私、ぎゅ~ってできないのですか…?」
「ミ…ミモザちゃ~~んっ!!
お願いっ、戻ってよおおっ…心の向くまま歌を紡ぐ、いつものミモザちゃんにい~っ!!」
「お…落ち着くのよっ、カノープス!
そ…そうだっ、マリニャの歌をヘビロテなさいっ! ミモザの奥底に眠る琴線を刺激するのよっ!」
「マ…マリエル様はきゅんとするでしょうけど…ミモザちゃんには…?」
「ニコールさん…もうずっと、このままですか…?」
「ぴいっ…静かだけど…まとわりつかれないけど…」
「……。……こんなの…」
「やっぱりこんなの、ニコールお姉ちゃんじゃ、ないいいいーーーーっっ!!」
「うららっ、うららーーーっ!!
特撮魂に、卒業などあるものかーーーっ!!
思い出してくれえっ、変身に込めた正義の血潮をおおっ!」
ダイビート治療班のナオが、セラフィールが。
神騎鼓舞部隊のカノープスが、マリエルが。
ちびっこ魔女軍団、イーイー、クルル、リーマ、ラメールが。
そしてうららの魂の友・リリアムが。
抜け殻となった仲間を嘆き、いつまでもいつまでも嗚咽していた。
「ここからこのカオスにどう始末つけてくれんのよっ!
一生このままとか言わないわよねええっっ!?」
「ま…まあまあ、ものは考えようっ!」
「…どういう意味?」
「迷惑千万な人格部分が取れたんだから、おおむねハッピーじゃないの?」
「鬼かっ、あんたはあああああーーーーーっっっ!!!」
さやか、まだ見ぬ超昂変身に魂を売り渡した女。
「そもそもあんた、ししょーたちに何をしたのよっ!?
あのししょーが、ヒーロー魂を抜き取られるほどの…?」
はっ。
「ま…まさかっ、洗脳っ!?」
ぶんぶんぶんっ。
「そ、そんな後遺症の残りかねないハイリスクなこと、しないわよっ。ホント。
こちらをご覧下さいっ。」ぴっ。
【実験No.3ー1~3-4】
『ああ~~っ、ママっ、ママああ~~っ…!』
《お…おおっ、……わはあーーーっっ!!》
〈でゅ…でゅふっ、でゅふっ……でゅふーーーーっっっ!!!〉
(なっ…?!)
りるかが見た映像は…酒池肉林の修羅場。
…酒池肉林…?
『おぎゃあああーーーーーっっ!!
マ…ママがっ、ママがいっぱいいい〜〜っ!
抱っこしてえっ、ぎゅってしてえっ、ハスハスさせてえっ、お耳ふーふーしてええっ……
ああ~~っ!! おくちもおててもお胸もお腹も…わたしっ、ママにぜんぶ包まれてるよおお〜〜〜っっ!!
ちゅきっ、マっ、ママちゅきいい~っ!! ばぶっ、ばぶうっ……んん〜〜っ!!』
《…おっ、おっおっ、おほおおお~~~っ!!
しょうゆ、ウマ塩、ハニーマスタード、BBQ、バターしょうゆ…
ああ〜〜っ!! こ…こっちは、ミモザちゃんが食べ損ねて涙に暮れた、期間限定静岡おでん味-!!
ハ…ハニマからあげちゃん天国なのだーーーーっっ!!》
〈ああっ…身長もパイパイも、雌しべも小っちゃいころのヤブルーちゃん…!
…あっ、あぁっ…こっちはおしめが取れる前のっ、ユウガちゃんにピカちゃんっ!!!
はふっはふっはふっ、クルルちゃんリーマちゃんラメールちゃんも…
みんな…みんなっ、失われた、私の心の中だけのロリータがあああっ!
ア…アッ……、アイルビー・バア~~~ックッ!!!〉
(…何これ。)
欲望のままに喘ぎ叫ぶ被験者の姿に、りるか愕然。
(長官さんが現代知識をインストールした、学習システムの応用ね。
みんなの愛する対象を、VRで飽きるほど刺激したのっ。
もう一生分味わって、お腹いっぱい…ってなるくらいにねっ!!)
(ドヤるなっっ!!!)
「れ…歴代ロイダーがっ、昭和・平成・令和…全員集合っ…!!
あああーーーっっ!! こっちはレジェンド戦隊っ…メタルヒーローズが…!!
どうしてっ!? 一同に会するなんて…!」
(し…ししょ…?)
「ああっ…伝説の中心に、あたしが…エスカ・トパーズがっ、いりゅ……!
ここは…ここはっ、グラウンド・ゼロ……。
ヒーローのビッグバン……超新星爆発の中心だあああーーーーっっっ!!」
(…ししょーの理想が、憧れが、全てここに集結してるんだ…)
(…そりゃあ、悟りも開けるわよねえ…)
およそ100年分ものオギャバブ・からあげちゃん・ロリータ・ヒーローをインストール。
欲望の赴くままなりふり構わず一直線のポラリス・ミモザ・ニコール、そしてうらら…
この4人はすっかりすっきり、今や涅槃の境地であった。
「…で、ししょーたちはいつ、このお花畑から這い上がるのよっ!?」
「…あ。」
(「あ」?)
ふっ。
「それは…彼女たち次第。だから最悪、このひだまりにとろとろ浸かり続ける可能性も、微粒子レベルで存在するよ…!」
「………あ…ああ…」
(あ?)
「アホかあああーーーーっっっ!!!」
ぶんっ! どがしゃあああっっっ!!!
「ぎゃあああーーーーっ!!」
「戻せっ! ししょーをっ!
それか何なら、おんどれが開眼しやがれーーーっ!!」
ぐいっ…がぼっ。「うっ…!?」
……
………
「うふっ…うふふふふっ…
うひうひうひうひひっ…あへえっ…!」
りるかにかぶせられたHMDの下から、諸悪の根源がアヘる…?
「…あーーっはっはっはっ、はあーーーっっ!!」
(!?)
「………だ………」
…「だ」?
「ダイナライトがあ…石があ…いっぱいだあ〜っ…!!
うひゃひゃひゃひゃひゃっ、はひゃーーーーーーーーーっっっ!!
こんだけあれば、ビートポータル回し放題、タイムゲート開け放題っ!!
異界超昂戦士も喚び放題っ、ムツカちゃんの戦国時代どころかっ、ジュラ紀も60’sも大正ロマンも思いのままーーーっ!!
いや…いっそ未来だって行ってやるっ!
超昂戦士300人送り込んでっ、長官さんの世界をわたしらで救っちゃるうっ!!
いくぜ野郎どもっ、カチコミじゃーーーーっっっ!!!」
(…あ。)
さやかの欲望を剥き出しにすると、こうなるわけか…。
「どんどんでてこい、はたらくせん~し~~!!」
……
…
……いらない。
「…ほへ?」
全超昂戦士参戦済み、もちろん全員、最強化…完了。
つぼみばっかり溜まっていくけど、全員☆5じゃ使いようがない。
好感度も全戦士6桁、全ステータスフル覚醒済み。
「…あっ。」
引いても引いても引いても引いても…
嬉しくないのっ。
ピックアップを一発で引いても…ガチャだけで☆5突を何十人達成しても…
だって…だって…
外れても悔しくないからあああああっっっ!!!
「あんた…っ!?」
かっ…!!
「うあっ!?」
HMDが突如放つ虹の輝きが、迷える人の子2人を白く包む。
……よく、気づきましたね。
欲望に囚われないこと。願望にこだわらないこと。
幸運に偏らないこと。不遇に惑わないこと。
(め…)(女神…さま…?)
その悟りの境地に、応えましょう。
唱えなさい、心の奥底の、貴女の御名を…!!
「フラックスプロージョン! ビート・エヴォリューションっ!!」
(!!!)
じゃきいいいんっ!
がばっ! どしゅっ! ちゃきっ!!
「宇宙の神秘を探しあてっ! 胸の鼓動で解き明かす!!
昂ぶる心は科学の未来!
超昂戦士、エスカレイヤー・テクノライズ!!
未知の宇宙に只今参上っ!!」
「ぎゃあああーーーーーっ!!」
沙由香とユカの同位存在は、伊達ではなかったのかもしれない。
そもそも超昂戦士ですらなかった彼女が、言わば飛び級で2階級特進。
その飽くなき探究心と、仲間の犠牲を厭わぬ好奇心が生んだ奇跡。
12人目の超昂変身到達者、ここに爆誕……!!
その生き証人たちは驚愕し…
「《【[『アホかーーーーーーーっっっ!!!!』]】》」
「へぶんっ!!」
5人でロイダーキック。
「ママを返せえええっっ!!」
「ミモザちゃんのからあげちゃんっ、隠したなああーーっ!!」
「出しなさいよもう一度っ! 夢にまで見たあどけなき天使ちゃんたちをおおおっ!!」
「ヒーローを冒涜したその罪、アクー空間であがなええええっっっ!!」
「う…うぎゃああああーーーーっっっ!!?」
…魂の安寧をもたらす理想郷を奪われた、超昂戦士たちの闇は深い。
12人目の超昂変身、3分もたずに玉砕。
……
…
そして、結局。
「あ…あたしの超昂変身、来年に持ち越しいいいっっ!?」
「ししょー…おいたわしや…」
「あ…あががっ…!」
「諦めてはダメですっ! 我らネオノロイ党、来年こそ昇り龍となりましょうぞっ!!」
ちょいちょい。(……?)
「はーいっ、辰年はもうおしまーいっ!
次の巳年はこの年女、エスカアメイズ・ファンタスマが暴れちゃうんだもーん!!」
「うがあああーーーーっっ!!」「ししょーをアオるなあああっっ!!」
ダイビート技術部プロデュース・人為的超昂変身到達計画…今回も凍結。
作者です。無駄にブランク空けながら、何とか完結にこぎつけました。
トパーズの超昂変身、ちゃんと来年、チームレガリアを導くいいポジで炸裂するといいなあ…!
体調不良と慢性疲労に悩まされ、仕事とはいえ遠征旅行で疲弊しつくした老骨にムチ撃ちつつ…エターナル化だけは避けることができました。
Xではっちゃけてるヒマはあったくせに…でも、Xの読者様もあったかい…!
拙文駄文に有形無形の支えをいただき、いつもありがとうございます!
さて、次回作はどちらかと言うとpixiv様での読者層に寄り添う、R-15ギリギリ狙いの作品を温めております。
できればクリスマス前に第1話を間に合わせたいと思っています。なぜならネタがあの子だから…!!
乞うご期待ですっ!