ありふれた破壊者と魔王は世界最強 作:マサヒロ (旧名デイブレイク)
そして、待たせたなァ!
レッドカーペットが敷かれ、先には祭壇のような場所と豪奢な玉座が見える。
だが、そこには似つかわしくない多くの命が散った跡があった。
そして、そこで二人の男・・・ジクウドライバーを腰に巻いたハジメとネオディケイドライバーを着けた士が向かい合っていた。
「もうやめろハジメ!ここで全てを破壊するつもりか!?白崎は、■■はどうするんだよ!?ここで全てを破壊する事よりも重要な事がお前にはあるだろ!!」
体中から血を流した士が叫ぶが、ハジメは腹部に穴をあけ今にも失血死しそうだが淡々とした声で返す。
「ああ・・・アイツは俺の香織や■■を、俺の『大切』の全てを奪ったんだ。だからアイツを・・・アイツが造ったこの世界を破壊する・・・」
ハジメの瞳には絶望しか映っていない。
大切な者の死、そして裏切り。
ハジメはそれを一度にたくさん経験してしまった。
「な、南雲!ここでお前を倒して世界を救う!エヒト様のためにも!」
そんな中ハジメの背後に怪物・・・『アナザージオウII』がハジメ目掛けて長短二振りの剣を振り下ろす。
だが、ハジメに当たる前に禍々しい赤い何かに当たり、半ばから消滅した。
「何っ!」
アナザージオウIIが驚愕と共に後ろに跳び後退すると、ハジメのジクウドライバーが金色のオーラがまとわり黄金のドライバーへと形が変わる。
そして、大理石の床からマグマが噴き出し、そのマグマで時計の『十時十分』を指し示した。
再びアナザージオウIIが突っ込んでくるがハジメは臆することなく
「変身」
ハジメが小さく呟き、黄金のドライバー、『オーマジオウドライバー』の右側の装飾『オーマクリエイザー』、左側の装飾『オーマデストリューザー』を押し込み、ドライバーが金色の輝きに包まれ、
【厄災の刻!】
【最低!最悪!最大!最恐王!オーマジオウ!!!】
おどろおどろしい音声が音声がベルトから鳴ると、ハジメを中心に天球技を模したリングが黒と黄金のアーマーをハジメに装着させる。
時計にあったマグマの『ライダー』の文字が宙に浮かび、複眼に禍々しい赤で文字が収まると凄まじい衝撃波が士とアナザージオウIIを襲い、ハジメと士の大切な人達の死骸を吹き飛ばしていった。
士が目を開けるとハジメの変身した最低最悪の魔王『オーマジオウ』が立っていた。
オーマジオウの黒い靄を纏った裏拳は赤く染まり、アナザージオウIIの頭は跡形もなく消えていた。
オーマジオウの足元には煌びやかな金色の鎧と折れた剣と頭だった肉塊だけが残っていた。
「こんのぉ!よくも光輝君を!」
そう叫びながら『アナザーゴースト』が突っ込んでくるがオーマジオウは黒い靄を纏った後ろ蹴りでアナザーゴーストを蹴りつけると、アナザーゴーストの上半身と下半身が血を噴き出しながら泣き別れになりそのまま動かなくなった。
「・・・この、馬鹿野郎!!」
【K-TOUCH!21!】
士がコートからケータッチ21を取り出すとディスプレイのライダーズクレストを押し始める。
【W OOO FOURZE WIZARD GAIM DRIVE GHOST EX-AID BUILD ZI-O ZERO-ONE!】
「変身!」
【FINAL KAMENRIDE DECADE】
士はすべてのライダーズクレストを押し、最後にFをタッチするとマゼンタのバックルを外し、ケータッチ21をベルトに装着した。
【COMPLETE 21!】
すると、『KAMENRIDE』の文字と共にディケイドのクレストが発生して無数のカードが出現。
一度散らばったカード群はディケイドの元へと集積して0と1のエフェクトを浮かべながら姿を変えていき、胸部中央のグランドジオウを起点に全身のカードの絵柄が浮かび上がる。
ディケイドコンプリートフォーム21に変身した士とオーマジオウに変身したハジメ。
そこには嘗ての共に笑いあい、共に戦った親友の『絆』は無かった。
「ハジメ、これ以上お前が壊れる前にお前を止める!」
「敵は殺す・・・それが今の俺の在り方だ。たとえそれが士だろうと!」
オーマジオウの右手に黒と金のオーラが纏われ、ディケイドコンプリートフォーム21の右手にも金とマゼンタのオーラが宿る。
「「・・・はあぁぁぁああああ!!!!」」
互いに叫びながら振り抜かれるディケイドコンプリートフォーム21とオーマジオウの拳。
それがぶつかった瞬間、強い光が走り・・・
「うわあぁぁぁ!!!!????」
派手にベッドから転がり落ちた。
「痛てて・・・何だったんだよさっきの、それにハジメの口調も変わってたし・・・それにハジメがオーマジオウに変身してるし、そして攻撃が『シン・仮面ライダー』以上にグロいし・・・俺もコンプリートフォーム21に変身してるし・・・」
落ちた衝撃で痛めた尻をさすりながらさっきの夢について考え始めた。
夢で俺とハジメに言っていた名前は誰だ?
あの場所には俺達以外に誰がいた?
夢に出てきた場所は何処だ?
少なくとも王城じゃない。
王城には玉座が複数あった。
・・・ダメだ、情報が少なすぎて訳が分からん。
悶々とした気持ちを抱えながら寝るためにベッドに戻ろうと立ち上がった時コンコンとドアがノックされる音が響いた。
「・・・どうぞ」
まさか小悪党共じゃないよな?
俺は警戒しながら入室を促すとドアが開き
「こんな時間にすまないな、士」
「お邪魔します、士」
そこにはのメルド団長と雫が居て、抱いていた心配は杞憂に終わった。
「団長、こんな時間に何か連絡事項があるんですか?雫はどうしてここに?」
「いや、お前にいくつか聞きたいことがあってな。それと、雫は、」
「メルド団長を見かけたからね、それと少し聞いてほしい事が・・・」
最も有り得そうな用件を予想して尋ねるが、そうではなかったらしい。
「俺に聞きたい事?・・・ディケイドの事ですか?」
俺が聞き返すとゆっくりと団長はゆっくりと頷き、肯定した。
「そうだ、その力について詳しく教えてくれ」
「・・・分かりました。中に入ってください。雫、コーヒーでも飲んでくか?」
俺の問いに雫はゆっくり頷き、
「そうね、お願い」
と、言った。
そうして俺は、二人を部屋の中に招き入れた。
俺は二人に、窓際に設置されたテーブルセットに座ってもらうよう促しコーヒーの準備をした。
と、言っても翔太郎や竜くんみたいに本格的なものではなく、ティーパックモドキ(コーヒーパックか?)から抽出したコーヒーモドキだが。
それを二つ用意して、雫用にカフェオレモドキを入れて二人に差し出す。
そして、向かいの席に座った。
「ありがとう」
「すまない」
二人はそう言うとコーヒーモドキとカフェオレモドキを受け取り、口を付けた。
メルド団長は驚いたような、うらやましいような視線を向けながらも全て飲み干す勢いでカップを傾ける。
雫は・・・
「熱ちゅっ!」
可愛らしい声を上げてカフェオレを息で冷ましながら飲んでいた。
窓から月明かりが差し込み雫を照らす。
黒髪にはエンジェルリングが浮かび、まるで本当の天使のようだ。
そんな事を考えながら見惚れていると雫が少し赤い顔で鋭い視線を向けてきた。
それを誤魔化すために自分のコーヒーモドキを飲み、
「「美味い・・・」」
自分の入れたコーヒーモドキの出来にビックリした。
「・・・士、お前カッファを淹れるのがこんなに上手いのか!?」
なるほど、この世界ではコーヒーの事を『カッファ』というのか。
だけど、俺は美味しいコーヒーを淹れる事が出来たのはこれが初めてだ。
いつも家で豆を挽く所からやっているが中々上手くいかない。
大概、アホみたいに苦くて不味いコーヒーしかできなくて噴き出してたな・・・
・・・そういえば、父さんからしつこく
「俺の教えた通りに淹れれば美味いコーヒーが淹れられるのに・・・」
ってよく言われたな・・・
そんな事を思い出しながらカップをソーサーに置こうとしたら視界が急に揺れ始めた。
更に熱い雫が手に、足に、落ちていった。
俺は泣いていた。
しょっぱい味のする嗚咽を漏らし瞼から絶え間なく触れ出る涙を次々と雫に変えた。
「大丈夫か?」
とメルド団長が聞いてくるが、どうにか笑顔を作って
「大丈夫です。父さんに言われた事を思い出して悲しいような、懐かしいような感情が溢れ出しただけなので」
と答えた。
「・・・すまない。私達の身勝手でお前達の人生をメチャクチャにしてしまって」
メルド団長が謝ってくる。
やっぱりいい人だ。
「大丈夫です。ある意味、俺は戦う運命を持って生まれましたから」
「どういう事なの、運命って?」
ヤベッ
雫達には俺が転生者である事は伝えてないんだった。
「ゴ、ゴホン!だ、団長。聞きたいのはディケイドの力の事ですよね?」
「お、おう。どんな力なのか詳しく教えてくれ」
内心、滝のような冷や汗をかきながら咳払いで誤魔化す。
若干視線が痛いが、多分誤魔化せただろう。
その後俺は簡単に『仮面ライダー』について話し、俺の力についても簡潔に『世界を破壊し世界を繋ぐ力』と話した。
それを聞いたメルド団長は深いため息を吐いた。
「そうか・・・一応この事は王国に報告するがいいか?」
「大丈夫です。もし奪おうとするなら国を破壊してでも守ります。それに大いなる力には、大いなる責任が伴うって言いますし」
メルド団長が何かするとは思えないが一応釘を刺しておく。
「そうか。こんな時間にすまなかったな士」
メルド団長はそう言って自分の部屋に帰っていった。
「そういえば雫、聞いてほしい事って何だ?」
俺は雫に質問した。
雫は答えることなく俺に近づいてきて、俺の胸に顔を埋めた。
「・・・士。香織は、大丈夫よね?生きてるよね?」
雫の声は震えていた。
俺は雫の頭に腕を回すとできる限り明るい声で答えた。
「大丈夫、白崎の側にはハジメが絶対に居るはず。ハジメの『錬成』で地面なり、壁なりに穴を開けて避難所を作ってるはずだ」
それを聞いた雫は俺を見上げた。
俺が頷くと雫も頷き返し、彼女も部屋に戻っていく。
俺は出したコーヒーモドキを片付けるとベッドに戻った。
チュンチュン、チュン
朝を知らせる鳥のさえずりが薄いカーテンを通り部屋を明るく照らす。
そんな音が部屋の中に聞こえてくると部屋の主が身動ぎした。
「バシバシー、バシバシー、テヤンデー、ハロ、ラクス、ハロ、ラクス、オキロー!オキロー!ミトメタクナイ!オキタクナイ!ノカ?」
部屋の主はモゾモゾとベッドから腕を出すと目覚まし時計のスイッチを切った。
「ハロ、オキタ! オマエ、オキタカ?」
ピンクちゃんはそう言って黙った。
部屋の主がベッドからもそりと起き上がると寝ぼけ眼でパジャマから赤いサテンシャツ、その上から黒い前開きのパーカーに着替え母親が作った朝食を食べに階段を下りた。
「おはよ~母さん」
「おはよう士。もうすぐご飯出来るから少し待ってね」
士の母『犬飼カンナ』がキッチンでフライパンを持ちながら振り返ると、士にそう言った。
「おはよう士!今日は少し寝ぼけてるな~」
「あ、おはよう父さん」
士の父の『犬飼良太』が若干おちょくりながら士に話しかける。
その時士の後ろに人影が現れた。
「おはよう!オニイチャン!わが家ひでんの笑いのツボ!」
後ろから二歳年下の妹『犬飼夏海』が後ろから万民共通で右側の首筋にある『笑いのツボ』を満面の笑みで押す。
「何すん、アッヒャッヒャッ、ちょ、笑いが止まらない。アッヒャッヒャッ!」
十数分後窒息するほど笑いこけて未だに顔が青い士と顔を赤く腫らした夏海がテーブルで朝ご飯を食べていた。
「も~ひどいよお兄ちゃん。かわいい妹のささいないたずらでガチギレするなんて~」
「うるさい!
言い合いをしながら朝ご飯を食べる兄妹を両親はほほえましく見守る。
やがて良太が何か思いついたのかおもむろに立ち上がると棚に置いてあるカメラを手に取るとディスプレイをのぞき込み、ボタンを押した。
パシャッ
そんな何時も通りの朝を良太はカメラに収める。
「『朝ご飯の団欒』って感じかな?士、父さんは写真館に居るから何かあった時は写真館の電話番号に連絡してくれ」
良太は手早くカンナの朝ご飯を味わうとカメラを抱え立ち上がる。
「何だよ父さん。今日僕が何かやらかすと思ってるの?」
「ただの勘だよ。家の鍵も写真館にあるから覚えておけよ。じゃ行ってくる」
「は~い。行ってらっしゃい父さん。っても写真館まで徒歩1分だけどね」
良太は士達家族に見送られて徒歩1分の離れに歩いて行った。
「じゃあ母さん、夏海。学校に行ってきます!」
「行ってらっしゃい。怪我はしないでね」
士は首から誕生日プレゼントで買ってもらったトイカメラを首に下げ、黒色のランドセルを背負い、軽い足取りで学校へ登校してして行く。
そんなランドセルと制服とスーツの集団を駆け抜けていると
「おはよう雫」
「あら、おはよう士」
視界に入った女の子は八重樫雫。
士とは家族ぐるみの付き合いがある幼馴染だ。
「士、お爺ちゃんが『家の道場に入門しないか?』ってまた言ってきたけど、どうするの?」
「え~まだ言ってるの?もう菓子折り持って行って直接断ってるんだけどなぁ・・・」
こんな事になってるのは士が雫が七五三の写真撮影の為に士の家の写真館に来た時、雫の祖父『八重樫鷲三』に直接
『雫はロングヘアーの方が絶対に可愛い!』
とレポート付きで雫が写真を撮っている間に涙目になりながらプレゼンしたからだ。
因みにそのプレゼンを最後まで険しい顔で聞いていた鷲三氏。
最後まで聞き切ると
『ワッハッハ』
と、豪快に笑ったという。
そんなこんなで士は八重樫家に一目置かれる存在となりそれ以来事あるごとに八重樫家からのスカウトがあるという事らしい。
士はため息交じりに肩を落とすと雫がクスクス笑う。
ただ、どの世界にも空気の読めない奴は何処にでもいるもので
「お~い!おはよう雫~!」
「うわっ、出たよ・・・」
後ろから雫に対して声が掛かり二人が足を止めて後ろを見るとキラキラオーラを輝かせ、満面の笑みで『天之河光輝』が走ってくるがそれを見た士は溜息が深く、長いものになった。
「あぁ士居たのか。おはよう」
「ヘイヘイおはようさん。相変わらずのキラキラオーラがまぶしいこって」
「おぉそうなんだ!ありがとう!そうだ雫今日の訓練の事だけど・・・」
「ハイハイ。今日も私が相手するわよ」
光輝は士の皮肉交じりの挨拶をイケメン度MAXの笑顔で受け止めると
士はいつもの事に溜息をつき、後ろからのネバつくような視線を探し始め、それと同時にまた消える。
これも最近、光輝が八重樫家に入門してから起こるようになった事だ。
(厄介な事に巻き込まれないといいけど・・・)
士はそう思った。
午前の授業を乗り越え給食(今日の献立はドネルケバブでヨーグルトソースかチリソースかで軽い論争が起こった)をお替りした士は、昼休みの今、校庭で友人達とドッヂボールで遊んでいた。
「士!お前を当てる!」
「当てられるならやって見な、ユッキー!」
士はユッキーの投げた足狙いのボールをジャンプで躱し、同じチームの女子がユッキー目掛けてボールを投げるが躱される。
だが、その後ろの男子の腕にボールが当たった。
そのボールはバウンドし、士のチームの外野に飛んでいった。
「ボールゲット!」
「ナイスアビィ!」
そのボールは士の友人のアビィがキャッチし、すでに標的をロックしていた。
「こーすけ、今までどこに居たんだ!」
「最初っから居たよ!」
アビィの影の薄さが故のいつも通りのいつも通りのやり取りにアビィは泣いている・・・気がする。
そんなアビィの怨嗟の一撃はロックオンしていたユッキーに狙いたがわず放たれるがキャッチされる。
そんな中
「ん?なにあれ?」
士は異質な集団を見つけた。
クラスメイトの女子グループが一人の女子、雫を取り囲むような形で体育館の方に歩いていった。
士が何だろうと思った時、士の体に衝撃が走った。
「よっしゃー!士は外野だー!今日こそは勝ぁつ!」
途轍もないハイテンションのユッキにー士は我に返った。
どうやら考え事をしている間にユッキーにボールを当てられてしまったらしい。
士は外野に行くと壊れないようにカバーを掛けて置いてあったトイカメラを持つとアビィに小声で声を掛けた。
「アビィ、ちょっと悪いけど俺は少しの間抜ける。けど気にしないでくれ」
「う、うん分かった。でもできるだけすぐ戻ってこいよ」
アビィからの許可を取った士は雫の後を追い走っていった。
「何でオメーみたいな女男が光輝君の側にいるんだよ。消えろよ」
「もしかしてその髪も光輝君に振り向いてほしくて伸ばしてるの?気持ち悪~い」
「ち、ちがうの。そんなんじゃ」
「は?それ以外に何があるの?オメーはサッサと光輝君の前から消えて犬飼と居ろよ」
「うわ~。あんなオタクと一緒にいるなんてかわいそ~。オタク菌が感染るから近づかないで~」
士は動けなかった。
だが、直感的に理解した。
自分を、否、雫に対してのネバつくような視線を向けていたのはアイツ等だと。
士は自らの出来る限りを尽くして気配を消し、トイカメラのカバーを外しシャッターを下ろした。
後は何食わぬ顔で雫の所に行けばいいだけだが、動けなかった。
明日の我が身を考えて何度も唾を飲み、何度も一歩を踏み出そうとしたがダメだった。
そんな時
キーンコーンカーンコーン
昼休みの終わりを告げるチャイムが学校中に響き渡った。
「チッ。いいな。サッサと光輝君の前から消えろ。行こう皆」
「うん。早く消えてね。女男さん♪」
女子グループが踵を返し、士の方に近づいてくる。
士は慌てて近くの用務員の掃除用具が納められた倉庫の陰に身をひそめる。
だが、見つかった。
「何見てんの?」
「い、いや別に。ちょっと散歩してただけ」
「あっ、そう」
なんとかその場をやり過ごした士は雫の方に走っていった。
自分が傷つく事を恐れて助けに行けなかった自分の情けなさと悔しさをその心に押し込んで。
「士!?何でここに!?清水君と遠藤君達とドッヂボールで遊んでたんじゃ・・・」
「まぁ、そこはたまたま通りすがったって事で。それと、ごめん。イジメの事、気付けなくて」
多分士から出た謝罪の言葉は自己満足だったのだろう。
けれど、雫は目元を赤くはらした顔を横に振った。
「いいのよ。これは私の問題だし」
「それでも、ごめん。もしかして光輝が原因?」
その質問は士がネバついた、悪意の籠った視線が向けられた時には大概光輝が居た此処からのあてずっぽうだった。
二人の間をに泡わぬ沈黙が支配する。
だが、雫はゆっくりと口を開いた。
「・・・うん。光輝が家の道場に入門してから酷くなった。でも気にしないで!さっきも言ったけどこれは私の問題だから・・・」
「雫・・・」
再び二人の間に気まずい空気が流れ、教室に戻った士はその後の授業は殆ど頭に入らなかった。
「ただいま・・・」
「おーお帰りー。おやつはテーブルの上に置いてあるからー」
「はーい・・・」
士は家に帰っても何処か上の空で居た。
まぁそんな異常事態を父親の良太が見逃がすわけもなく階段を上り自分の部屋に戻ろうとする士に待ったをかけた。
「どうしたんだ士?父さんの目を見て話しなさい。今の士頭ハツカネズミになってるぞ」
「父さん・・・」
士は迷った。
このトイカメラに収められた写真と今日見た事を話せば教育委員会で働くカンナが直々に学校と女子グループに警告が行くだろう。
だが、その怒りの矛先が雫に向いたら?
けれどもそんな葛藤を知ってか知らずか良太の士の肩を掴む力はどんどん強くなる。
ミシミシと骨が悲鳴を上げ始めている。
「痛い!痛い!分かった!分かったから!取り合ずこのトイカメラの写真を現像して!」
「最初っからそうしてれば痛い思いをする事は無かったのに。で、この写真が。取り敢えずこの話は母さんが帰ってきたら最初から話してもらうからな」
「は~い・・・」
士が涙目になりながらトイカメラを良太に渡した。
相当痛かったらしい。
士は痛みをこらえながら自分の部屋に戻る。
そして、いつも通りのルーティーンをこなし夏海も寝静まった頃、リビングダイニングは重苦しい雰囲気に包まれていた。
夏海を起こさないように薄暗く調節された灯りがテーブルと一枚の写真と照らし、ダイニングテーブルの椅子に座る士、良太、カンナ、雫の父『八重樫虎一』の顔に影を落としていた。
「士君、正直に教えてくれ。
虎一の口調はいつも通りだったが語気と語調は強かった。
これとは士がトイカメラに収めて数時間前に現像したばかりの雫がいじめられている証拠写真である。
士は背中に冷や汗が流れるのを感じながら口を開いた。
「今日の昼休みにたまたま雫を囲んだ女子グループを見つけて、後を追って、そこで、見た光景です。女子グループは光輝の側に雫が居ることが気にいらないから雫が光輝の側から離れるようにするためにイジメていたんだと思います・・・」
「そうか・・・アイツは俺から見てもイケメン男子だからな。それで近くにいる雫が気に食わないと」
虎一は天井を見上げると深く椅子にもたれかかた。
「この女子グループ・・・私が親御さんに連絡を入れるから八重樫さんは何かあった時のバックアップとして動いてください。士、あなたは普通に学校に行きなさい」
「「分かった」」
カンナに心当たりがあるのか矢継ぎ早に次々と指示を出し犬飼家に一時の喧騒が走る。
ただ士もいくら転生者といえども子供、当然眠気も襲ってくるわけで
「はい、ところで、寝ていい?」
「もうそんな時間なのね。早く寝て明日に備えなさい」
「うん。おやすみなさい」
そうして士は部屋に戻るとピンクちゃんのスイッチを入れベッドに潜った。
結局朝まで爆睡した士はいつも通り(笑いのツボは防いだ。さすがに対処を覚えたらしい)の朝を迎え学校にユッキー達と登校する。
今日の昼休みの事や、仮面ライダーエグゼイドの事。
何のたわいのない話をしながら登校し、クラスに着いたとき異質な空気がクラスに充満していた。
「何があったんだろう?」
「さぁ?」
そんな話をしていると、いかにも不機嫌そうな顔をして光輝が士を見る。
そして足音を鳴らして士達に近づいてきた。
「お、おはよう天之河」
「・・・」
「おい!何すんだよ!」
ユッキーが挨拶をするが天之河は返さない。
それどころか、ユッキーに腕を振り払いのけると士の前に立った。
「おはよう光輝。それと、ユッキーに謝れ」
「・・・」
士の挨拶も返さない。
それどころか、手を震わせ拳は固く握られていた。
そして
ドゴッ!
士に光輝の拳が飛び、鈍い音を立てて後ろに吹っ飛んだ。
教室の空気が凍り付いた。
「「何やってんだよ天之河ァ!」」
ユッキーとアビィがとびかからんばかりの勢いで問い詰めるが、光輝はゴミを見るような目で三人を見ていた。
そんな冷たい視線を受けながら士は二人を制止しゆっくりと立ち上がる。
「・・・で、どういうことだ光輝。説明の一つぐらいはしろよな」
士は口を拭いながら抑揚のない声で光輝に問い詰めた。
光輝は負の感情を瞳にこめ士を見ると、士とは対照的に声を荒らげて答えた。
「どういうことだ?ふざけるな!お前が彼女達をイジメていたことも!彼女達に雫をイジメるよう命令したのも!全部分かってるんだ!見ろ!彼女たちは俺に教えたことでイジメられるんじゃないかと泣いているんだぞ!」
「・・・は?」
光輝の意味不明な叱責に士は素っ頓狂な声を上げる。
士は光輝が指さす場所を見るとそこには肩を抱き合ってしくしく泣いている女子グループの姿があった。
女子グループは士と目が合うと嗚咽を漏らしさらに泣き始める。
士はそれを見て大体わかったらしい。
「あのクソビッチ共が・・・なあ光輝、俺がそんな事する奴だと思うのか?俺はそんなことはやってないし、やろうとも思わない。お前は騙されているんだよ」
士がサラっと毒を吐いたが光輝に弁明をする。
「嘘を言うな!正直に言うんだ!見苦しいぞ士!」
だが、正義の味方光輝マンにとっては悪人の弁明は聞くに値しない醜いウソなのか胸ぐらをつかみ上げるとそのまま士を壁に激突させ、首が閉まるんじゃないかというレベルで激しく詰め寄った。
士は視界がチカチカし始めた。
「だから、俺はやってねぇって言ってんだろ!」
士は無罪を主張しつつ光輝から距離を取るためにドロップキックをお見舞いすると、光輝は反撃されるとは思ってなかったのか面白いように机をなぎ倒しながら吹き飛んだ。
顔を少し青くした士が立ち上がると同時に光輝も立ち上がった。
士は大きく息をする中、光輝は確信を持ったのか勝ち誇った表情で高らかに宣言した。
「俺を蹴ったな!やっぱりお前は雫や彼女達をイジメていたんだな!卑怯だぞ士!早く本当の事を言え!」
「・・・ハァ」
士は滅茶苦茶な主張に反論する気も失せ、頭が痛いのかこめかみを抑え始めた。
この頭お花畑は士がこめかみを抑えているの見て油断しているとでも思って勢い良く突っ込んできた。
ただ、激情にかられた右拳を士は軽く体をひねるだけで躱す。
光輝は何度も士めがけて拳をふるうが士は体をひねらせるか受け流すかで士は光輝に攻撃を与えなかった。
しびれを切らしたのか光輝は今迄以上のスピードで拳をふるった、だがその拳を士は受け流し、その勢いで士は光輝の足を引っかけた。
勢いよく拳が空を切り、足を引っかけられた影響で光輝は前によろめき倒れかけた。
その隙を士は見逃さずに左腕を掴み上げ、抑えつけた。
「やめろよな。本気で喧嘩したところで、光輝が俺に敵うわけないだろ」
「クソっ、この卑怯者が!離せっ!」
拳を空振りさせて、足を掛けるのは卑怯者らしい。
あと士そのセリフはどうかと思うぞ。
士は追加で光輝の足を薙ぎ払うと光輝は地面に倒れ伏した。
士は背負っていたランドセルから結束バンドを取り出すと、光輝の腕を縛り上げた時、雫が教室のドアを開けた。
「ちょっとこれどういう状況!?」
雫は士に抑えられた光輝を見てビックリした表情で二人に問い詰めた。
「俺は雫の事をたsへブゥ!」
「あー、こいつの言い分は気にするな。今の状況は・・・デマに踊らされた暴徒を自分の身を守る球に抑えている正当防衛中ってところか」
士は光輝の言葉を床との熱いキッスで黙らせると雫に大体あってる説明をした。
雫はそれで詳しい根については分からないが今目の前の状況については大体わかったのかこめかみを抑え、眉間にしわを寄らせた。
「成程そういうことね。何をしてるのよ光輝・・・」
「おい八重樫~、一回コイツ本気で修正した方が良いんじゃないか?コイツこのままだととんでもない犯罪者になりそうな気がするんだけど・・・」
ユッキーから追加の爆撃が投下された!
アビィもウンウンと首を縦に振る。
その時だった。
「皆~席について~って。何!この状況!だれか説明して!」
彼等の担任である若い女の先生が教室に入ってきた。
担任も雫と同じ様に状況の説明を求めてきたので士が立ち上がった。
「先生これはあくm「先生!犬飼君が光輝君の事をイジメていてさっき殴ってけがさせました!」・・・は?」
士はぽかんとした顔で大声を出した方を見ると女子グループ全員が醜い顔に冷笑を浮かべて士を見ていた。
女担任は一瞬光輝に熱いまなざしを向けた後、士をゴミを見る目で睨みつけた。
「どういうことなの犬飼君!しっかりと説明してもらうわよ!」
「いや!俺はイジメなんてしてないですって!」
士は女担任に職員室に連行されていった。
それから士は何度も弁明したが聞き入れてもらえるどころか言い訳で逃げようとしようとしている卑怯な生徒として教師達に見られるようになった。
あの後の学校では雫へのイジメは減ったが士へのイジメが増えた。
ただ、士や雫をイジメていた生徒や若い女担任は半年もしないうちに町から消えたらしいがそれはまた別のお話。
士の今(オルクス脱出直後)のステータスです。
===============================
犬飼士 17歳 男 レベル10
天職 戦士 破壊者
筋力:380
体力:420
耐性:400
俊敏:434
魔力:216
魔耐:385
技能:全属性耐性・物理耐性[+治癒力上昇][+衝撃緩和][+金剛]・剣術[+斬撃速度上昇]・精密射撃・剛力・縮地[+重縮地][+震脚]・先読・高速魔力回復・気配感知・S,E,E,D・■■■■・魔力破壊・■■■■・■■■■・魔力操作・異空間収納・言語理解
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・・・盛りすぎだって?だが私は謝らない
皆さんアンケートに協力していただいてありがとうございます!
この話が投稿されてから一日以内にアンケートを締め切るため、回答をしていない人は回答をよろしくお願います!
雫をどのタイミングで香織(士)と合流させるか
-
士よ、城から連れ去れ!
-
原作の香織のタイミング
-
原作と同じ
-
ウルの町
-
フューレンで合流(錯乱)