ありふれた破壊者と魔王は世界最強   作:マサヒロ (旧名デイブレイク)

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それではどうぞ!


十話 士脱走

チュンチュン、チュン

 

そんな鳥のさえずりと、カーテンの隙間から差し込む太陽の光で俺は目を覚ました。

 

「ふぁぁ・・・・・なんか懐かしい夢を見たな・・・・・・ってこれデジャブだな」

 

俺は、過去の自分への不甲斐無さを抱え立ち上がると寝巻のジャージモドキからマゼンタのサテンシャツの上に黒い皮コートを羽織り、一階の食堂に降りた。

そこにはほとんど全員がそろっており程なくして全員がそろう。

 

「いきなりだがお前達に報告する事がある。急なことではあるが今日ホアルドを発ち、王都へ帰還する!お前達は五分以内に支度を済ませ、エントランスで集合するように!以上だ!」

 

メルド団長はそれだけ言うと踵を返し自分の部屋へと戻っていき、状況を飲み込んだクラスメイト達も慌ただしく部屋へと戻っていく。

俺は部屋に戻ると手早く俺とハジメの荷物を纏めて部屋を後にした。

支度を終わらせエントランスに行くとメルド団長がテキパキとクラスメイトに指示を出し、クラスメイトを馬車に乗りこませていった。

そんな事を数回繰り返すと俺の番になり、俺が馬車に乗り込んでから少しして馬車が動き始めた。

高速馬車と言えどもどれだけ急いでも王都に帰還するまで数時間はかかる。

俺は荷物を足元に移すと、あまり使っていない支給された西洋剣を鞘から抜き、荷物の中から紙やすりを取り出すと刀身にうっすらとついた錆を削る。

番手の荒いやすりから少しずつ番手の細かいやすりへ、それを繰り返してある程度は奇麗になった。

最後にハジメに錬成で仕上げてもらおうと声を掛ける。

 

「ハジメ~手入れの仕上げよろし、く・・・」

 

帰ってきたのは静寂と居ないハジメと俺を見る痛々しい視線だった。

そうだ、ハジメは奈落に落ちた。

だから王都に帰還するんだ・・・

俺は視界をにじませながら誰も座ってない右の席に剣を置くとデザートイーグルのメンテナンスをし、終わらせた。

武器のメンテナンスが終わりひとしきり泣いて軽く考え事をしたら馬車が一度馬車が止まり、また動き始めた。

恐らく王都に着いたんだろう。

 

 

 

 

 

 

 

王城に帰還した俺達のうち殆どが自分の部屋に戻っていった。

メルド団長、天之河、龍太郎、谷口、中村、雫、俺で国王と教皇に報告をしに王座の間に向かいオルクスで起きたことの顛末をメルド団長と俺達で説明した。

勿論ハジメと白崎が奈落の底に消えたことも。、

貴族達がハジメ達が奈落の底に消えたと聞いたその時俺は何かが切れる音がした。

そして、

 

ダァン!

 

王座の間に炸裂音が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

三人称視点

 

 

「・・・今、安堵した奴全員出てこい」

 

あまりにも冷たく、低く、怒気すら伴った声音と共に濃密な殺気が放たれた。

 

「ッッ!?」

 

王座の間に発生した濃密な殺気に家臣、左右に控える家臣達がビクッと体を震わせる中、メルドは焦った表情でその発生源である背後へと視線を向ける。

視線の先には予想通りというべきか、それしかないというか、士がデザートイーグルを構えその銃口からは硝煙が出ていた。

彼はあまりにも冷酷な表情を浮かべ、その反面瞳には明確すぎるほどの怒りが宿っていた。

メルドや龍太郎、雫はギョッと目を見開いて士のこれ以上の暴走を止めようとする。

 

「もうやめろ士!」

 

「お、おい士!これ以上は!」

 

「もう止まって!士!」

 

三人が必死に止めようとするが、トマラナイ。

それどころか、手足に黒い靄を纏い体中から紫色の炎が噴き出しているようで、士に伸ばした手を全員引っ込めた。

怒りが宿った呪言で国王達に問う。

 

「奈落に落ちた神の使徒がハジメだと分かった瞬間、お前等は安堵したよなァ?ハジメが落ちたのを安堵したのみならず、優秀な治癒師を無理やり巻き添えにしたとでも思ってんだろ?ふざけんじゃねえぞ!」

 

士が激怒する理由。

それは彼らがハジメの死を安堵したからだ。

国王や教皇、家臣達は神の使徒が死亡したことに誰も彼もが愕然としたものの、それが“無能”のハジメと知ると安堵の吐息を漏らしたのだ。

それどころか、ハジメを追って落ちた香織もハジメが“優秀”な治癒師を無理やり巻き添えにした、として憤怒の表情を浮かべていたからだ。

強大な力を持った勇者一行が迷宮で死ぬことなどあってはならない。

迷宮から生還できない者が魔人族に勝てるのかと不安が広がっては困るのだ。

神の使徒たる勇者一行は無敵でなければならないのだから。

しかし、同じ神の使徒でも“無能”であるハジメが死んだことは不幸中の幸いとでも言いたいのだろう。

それが士の逆鱗に触れ、堪忍袋の緒を切れさせた。

士の問いに教皇が屁然とした態度で答える。

 

「ふざけてなどいない。神の使徒の死亡は人類に取って損失だ。だが・・・」

 

「奈落に落ちたのがハジメだから良かったってのか?」

 

「そうだ。勇者がしんで「黙れェッッ!!」ッッ!?」

 

ダァン!

 

ガッシャーン!

 

怒号と共に再び炸裂音が響き、教皇の座る豪華な椅子の飾りが粉砕された。

さらなる殺気が士から大瀑布のように襲い掛かり先ほどは平然としていた国王と教皇ですら体を震わせて額に冷や汗をにじませていた。

そして士の行為に、この場にいたほぼ全員が動揺する中、士は怒りのまま、肩を震わせながら叫ぶ。

 

「いいか、アイツは無能なんかじゃない!今俺の持つこれは報告した大迷宮の魔物を一撃で屠れる武器だ!覚えておけ!これを作れる奴を無能と呼ばないだろ!これを創り出す苦労を、いやこの世界に来てからのアイツの苦労を知らない、知ろうともしないお前ら如きが俺の親友(ダチ)を侮辱するなァ!」

 

「貴様っ、国王陛下と教皇様になんたる物言いだ!それでも神の使徒かっ!!」

 

「それはお前らが勝手に言ってるだけだろ。俺は元の世界へと帰るためにお前達を利用してるだけだ。勘違いするな!」

 

「なっ!?」

 

はっきり告げられた言葉に左右に控えていた騎士達や文官達が目を見開き、怒りを露わにする中、メルドが動いた。

士の肩に手を置いて懇願する。

 

「士、お前の気持ちはわかる。だが、頼むっ。ここは抑えてくれ。俺の方から後で陛下達には説明する」

 

「できません。こいつらはハジメを侮辱した。俺はアイツらの脳天に鉛玉をぶち込まきゃ、俺の気が済まない」

 

怒りを微塵も隠そうともしない士の口調にメルドは何も言えなくなる。

確かに士の言ってることはその通りだ。

ハジメと士の二人の絆はずっと見てきたからこそわかる。

それに何より、士は誰よりも近くでハジメを失ったのだ。

彼の胸中にある悔しさや、悲しみ、怒りは誰よりも大きいのは明らか。

そんな彼が、目の前で友の死を嘲笑われたのだ。怒りを感じないはずがない。

雫や龍太郎、鈴や恵理もそれを分かっているが故に、何も口出しできなかった。

だが、ただ一人それを分からない者がいた。

 

「犬飼!お前どういうつもりだ!」

 

そう、光輝だ。

光輝は国王と教皇を背に士の前に立つと聖剣を鞘から引き抜き、構えた。

 

「「「「「光輝(君)!?」」」」」

 

突然の光輝の行動に雫達は更に驚く。

光輝は聖剣を士へと向けながら、怒りの表情で叫ぶ。

 

「なぜ国王陛下やイシュタルさんに銃を向け、発砲したんだ!すぐに銃を捨てろ!」

 

やはりというべきか光輝は士が国王達に剣をつけている理由がわからないようだ。

先ほど士がその理由を言っていたにも関わらずだ。

相変わらずのご都合解釈だろう。

だから、士はわざわざ光輝に説明しようとはせず、地獄への入り口を光輝へと向けて淡々と告げる。

 

「どけ。でなければ撃つ」

 

「やってみろ。お前にやられるほど俺は弱くはないっ!」

 

二人はお互いの武器を構え睨み合う。

もはや激突は避けられない。

一触即発の空気だ。

そして、いざ二人が動き出そうとした瞬間、老成した声音が光輝にかけられる。

 

「剣を納めてください。光輝殿」

 

「イシュタルさん?」

 

教皇は光輝にそう告げると、立ち上がり士の前へと歩き軽く頭を下げた。

 

「士殿。先の非礼を詫びましょう。確かに、戦友を失ったことに対しての我等の態度は失礼でした。ですので、どうかここは私の顔に免じて抑えてもらえないでしょうか?」

 

「・・・・・・チッ」

 

そう言ったイシュタルをしばらく見下ろしていた士は、やがて忌々しそうに舌打ちすると、デザートイーグルをホルスターへと納めた。

そして、殺気の篭った視線をイシュタルへと再び向けると口を開いた。

 

「・・・なら、後でここにいない貴族や部下共に伝えろ。今後一切、ハジメを無能だと、役立たずだと侮辱するなと。もしも、俺がそれを見てしまえば自分を抑えれる自信はない。彼らを死なせたくないなら、即刻これを全員に厳守させろ。破ったものは厳罰に処せ」

 

「畏まりました。しかと全てお伝え致しましょう」

 

確約させた士はそれ以上は話すつもりがないからか、イシュタルへ背を向けて玉座の間を去ろうとする。

しかし、まだ納得していない光輝は当然止めようとした。

 

「待て、犬飼っ!」

 

「よせ光輝!」

 

「光輝落ち着け!」

 

士へと詰め寄ろうとした光輝を、左右から龍太郎とメルドが止めた。

それでもなお、光輝が何かを士へと叫んでいたが、光輝の言い分を完全に無視している士はそのまま扉へと移動し、玉座の間から出ていく。

そして扉を閉めた直後、士は歯をギリッと噛み締めると不機嫌を隠さないままに立ち去った。

 

 

 

 

 

 

三人称視点end

 

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やっっっっちまっっっったぁ~~!

俺は思わず頭を抱えた。

ヤバイヤバイヤバイヤバイ!

さっきの報告、思わずプッツンして感情任せでガーッといったからな。

絶対面倒なことになって・・・元々仮面ライダーの力を報告した時点で面倒ごとになるのは変わりないか。

ってそうじゃない!

そんなことを延々と考えながら無駄に広い廊下を歩いていると、自分が使っている部屋に戻ってきた。

ゴテゴテ飾られた扉を開けて部屋に戻ると、そこには地球から持ってきたハードボイルダーではなくマシンディケイダーがあった。

いや!何で!?

いや、カッコいいからいいけど!

後、マシンディケイダーのデザイナーさんカッコ悪いなんて思ってごめんなさい!

そう思いながら近づくと、シートの部分に付箋が貼ってあった。

何だろうと、付箋を剥がしてみると、

 

『これは貴方のハードボイルダーです。神々の協議により貴方がディケイドとして覚醒した時に開放されるようになっていました。安心してください」

 

と妙に筆圧の強い字で書いてあった。

いったいなんのこっちゃ・・・あぁ!転生の時の女神様か!

女神様の苦労してんだな、今ならあなたのつらさがわかる気がします。

そんな同情をしたら、女神様が笑顔でサムズアップした・・・気がする。

ともかく、移動手段は何とかなる。

だが、食料は持てる食料の量が限られてくる。

どうにかならないもんかと思ったとき、手に何かが当たった。

何だろうと思い拾い上げると、俺のステータスプレートだった。

ただ、

 

「な、なんじゃこりゃ!?」

 

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犬飼士  17歳   男   レベル10

 

天職 戦士 破壊者

 

筋力:380

 

体力:420

 

耐性:400

 

俊敏:434

 

魔力:216

 

魔耐:385

 

技能:全属性耐性・物理耐性[+治癒力上昇][+衝撃緩和][+金剛]・剣術[+斬撃速度上昇]・精密射撃・剛力・縮地[+重縮地][+震脚]・先読・高速魔力回復・気配感知・S,E,E,D・■■■■・魔力破壊・■■■■・■■■■・魔力操作・異空間収納・言語理解

==============================

 

ステータスが化け物レベルで爆増していた。

なんか、派生技能も増えてるわ黒塗りの技能が増えてるし・・・

ただ、天職の破壊者のは予想通りだった、ってか破壊者だし。

そして気になる技能がある。

それは異空間収納だ。

何となくアイテムボックス的な何かかなと思いながら腕を伸ばすと腕が虚空に飲み込まれていった。

うん、ほとんどイメージ通りだな。

それらの確認を終わらせてすぐに行動に移した。

 

 

 

 

 

 

二日後。

食料や水などの物資を集めるのに思ったより時間がかかった。

それは俺たち一人一人に六十五階層であった出来事、特に俺とハジメの『仮面ライダー』の力についての尋問の時間が長かった。

というか、トータル一日以上は同じ質問の繰り返しで取調室みたいなところで拘束された。

まぁ無理もない。

『仮面ライダー』なんていう強大な力、量産できずとも縛り付けておけば戦争の勝利が確実なものに近づくからな。

勿論俺の力を誰かにゆだねるつもりなんて一切ない。

ただ、その際天之河は力を正義の為に使えだの、その力は勇者である俺の方が相応しいからよこせだの、俺がいくら説明しても聞く耳を持とうともしなかった。

俺がドライバーを渡さないと分かったら天之河の馬鹿は何をトチ狂ったのか、仮面ライダーの力は魔人族が俺達洗脳するために作った物。俺達は既に洗脳されている。と、ほざいたのだ。

クラスメイト殆どが同じ意見なのか俺が食堂なんかに行っても非難と嫌悪のまなざしを向けてくる。

その時、改めてこの国やクラスメイトの殆どに愛想が尽きた。

ただ、愛子先生と雫と龍太郎は最後まで俺を擁護してくれたが、結局は俺が悪人かつ裏切り者という結論まとまりそうな雰囲気だ。

その夜改めて俺は準備が完了したのを確認して、とある部屋のドアを叩いた。

 

「はい、何でしょうか。士!?どうしたのこんな遅くに!?」

 

「悪いな雫。別れのあいさつに来た」

 

「何でそんなことになるのよ!とにかく入って」

 

「悪いな。お邪魔しま~す」

 

そんな軽口をたたきながら俺は雫の部屋に入った。

雫がソファに腰掛け俺も向かいの椅子に腰かける。

そして、雫が口を開いた。

 

「それで、何でいきなり『別れのあいさつ』って話になるのよ」

 

「ハジメと白崎を探しに行く。そして、地球に変える方法を見つける。それだけだ」

 

「南雲君と香織を探しに、生きてるの!?」

 

雫が身を乗り出し声を張り上げた。

俺は雫をどうどうと抑え、座りなおすとはっきりと断言した。

 

「間違いない。二人は生きてる」

 

「でも二人はあそこから落ちて生きているわけが・・・」

 

「普通だったらそうだろうな」

 

「だったら!!」

 

雫が怒号を上げる。

その瞳には、名前通りの雫が浮かんでいた。

俺はそれをそっと拭うと言葉をつづけた。

 

「あそこは迷宮だ。あの下に何があるか誰も知らない。もしかしたら地下水が溜まっている場所があるかもしれないし、植物や柔らかい土や砂地がクッションになって助かっているかもしれない」

 

ハジメ達が助かった可能性はゼロじゃない。

俺は確信をもって言う。

雫は納得したが別の事が思い浮かんだのか俺に質問を投げかけてきた。

 

「じゃあ何で王国を出ていくの?帰ってくるまで待ってるっていう選択肢は?」

 

「ないな」

 

俺は断言する。

今の状況下此処にいるのは危険すぎる。

 

「今の状況だと確実に俺は処刑、よくて洗脳教育による狂信者(エヒト様万歳!)にされるからな」

 

俺は首を切られるジェスチャーと祈りをささげるジェスチャーをする。

 

「そう・・・」

 

「加えるならアイツは最高最善の魔王になるために旅に出るはずだ。俺はそれに同行したい。俺達を呼んだこの世界を俺自身の目で見て、写真にしたいんだ」

 

俺はそれを伝えるとどこか迷っている雫を尻目に椅子から立ち上がり扉に向かった。

 

「待って!」

 

扉のドアハンドルに手を掛けた時、雫に止められた。

 

「何だ?雫?」

 

俺はドアハンドルに手を掛けたまま振り返ると、覚悟を決めた顔で雫が真っすぐ俺を見ていた。

 

「私も二人の捜索についていかせてほしいの!」

 

・・・ナンデ?

 

「だって士は王国から脱走するんでしょ?」

 

「ま、まぁ広い目で見ればそういう事になるな」

 

「だったら、表立って町や村の施設は使えないでしょ?それに・・・」

 

「そ、そうなる可能性が高いな。ってそれに?」

 

スッゴイ嫌な予感がする。

俺の背筋がダラダラ冷や汗でかなり冷たくなってる。

 

「紅紫の破壊者、なんてどうかしら?」

 

「・・・なに?」

 

「他にも世界破壊(ブレイクザワールド)とか破壊の旅行者とかどうかしら?」

 

「グフッ!!」

 

最初は訝しい表情をして俺も雫が面白そうに眺めているのに気が付き、血の気が引いた。

多分今の俺の顔はグフ並みに真っ青だろう。

追加で俺のメンタルにつうこんのいきげきが入る!

脳裏に蘇るのはリアル中学生時代の黒歴史。

記憶の奥深くに封印したそれが、「呼んだ?」と顔をひょっこり覗かせる。

 

「ふふ、じゃあ連れて行ってね」

 

「だ、だけど・・・」

 

「破滅挽歌、復活災厄・・・」

 

「分かった!分かったから!そんなに痛い二つ名はやめてくれ!」

 

羞恥心に大打撃をくらい発狂寸前となって頭を抱える俺・・・

足は小鹿のようにプルプル震えている。

 

「あの・・・二人の生存確率上げるために40秒で支度してください・・・」

 

「わかったわ」

 

そう言うと雫はクローゼットの中身をリュックに詰め込み始めた。

 

 

40秒後。

ほんとに40秒で支度を終わらせた雫のリュックを預かるとアイテムボックスに仕舞った。

雫は物凄い驚いていたが、自分でもよくわからんのでスルーした。

 

「そう言えば、どうやって迷宮まで行く気?私達は外出が制限されてるから馬車も借りられないと思うけど・・・」

 

「策はある。取り敢えず外が見える広い場所に出る。中庭が妥当かな?」

 

俺がそう言うと、部屋を出ようとして、

 

「シッ!」

 

俺は扉の前で人差し指を口の前に立てる。

すると、ガシャガシャと鎧を着た兵士の複数の足音がした。

そして、ドンドンと扉を開ける音がして、

 

「ここを開けろ!開けなければ無理矢理にでも抉じ開ける!」

 

そう声がした。

距離からして俺の部屋の様だ。

 

「不味いな・・・想像よりも向こうが動くのが早かったか・・・…多分、俺を捕まえる気なんだろうな・・・クソッ!」

 

俺がそう言うと、

 

「5つ数える間に開けなければ突入する!ひとーつ!ふたーつ!」

 

兵士達がカウントを数え始める。

 

「ヤバいな………」

 

ここで何もしなかったら、おそらく兵士たちは虱潰しに探し始めるだろう。

そうなれば抜け出すのも困難になる。

 

「私に任せて」

 

雫がそう言うと、部屋から出る。

 

「どうしたんですか?こんな時間に・・・」

 

「あ、使徒様!お騒がせして申し訳ありません!使徒様達を裏切った者を捕えよと命令が下りまして・・・」

 

裏切ったと聞いた八重樫さんが一瞬顔を顰めるが、

 

「・・・・・・彼なら、さっき図書室の方へ行くのを見かけましたが」

 

「そうですか!情報、感謝いたします!」

 

兵士達は雫に敬礼すると、図書室に向かって駆け出す。

そのまま兵士達が廊下を曲がったことを確認して、

 

「今よ・・・!」

 

雫が手招きする。

 

「分かった。ちょっと離れてろ」

 

俺はそう言ってディケイドライバーを腰に装着した。

ドライバーのサイドハンドルを引き、ライドブッカーからカードを引き出すと正面に掲げた。

 

「変身!」

 

ライダーカードをスロットに差し込み、サイドハンドルを押し込んだ。

 

【KAMENRIDE!DECADE!】

 

俺を中心にライダーズクレストが展開され、俺に向かってくる。

それと同時に銀色の幻影が重なり、俺に全身を覆うアーマー『ディヴァインスーツ』が装着される。

更に、ドライバーからライドプレートが飛び出し頭に装着され、グレーのアーマーがマゼンタカラーに変化した。

アイテムボックスからマシンディケイダーとヘルメットを出すとマシンディケイダーに跨りヘルメットを雫に投げ渡した。

 

「乗れ!」

 

「わ、わかったわ!」

 

雫は少しびっくりしていたがすぐに頷くとヘルメットを被り俺の後ろに跨った。

 

「しっかりつかまってろ!」

 

俺はマシンディケイダーのスロットルを全開にし、静寂の廊下に爆音を響かせた。

 

 

 

 

 

特に兵士達に遭遇することも無く中庭に到着した。

中庭から見える夜空は、雲一つない星空が広がっている。

 

「よし、ここなら・・・!」

 

俺はこの場所なら大丈夫だと確信し、意識を集中し始めた。

その時、

 

「そこまでだ!」

 

天之河の声がした。

すると、中庭を囲う様に篝火が焚かれ、多くの兵士達が集まっているのが分かった。

 

「もう逃げられないぞ!」

 

問答無用で俺を悪と決めつけているその物言いに俺は溜息を吐く。

 

「自分だけ逃げだそうとするどころか、雫を人質に使うとは見下げ果てた奴め!!」

 

聖剣を抜いて俺に突き付ける天之河。

まぁ俺は天之河の事を仲間とは思ってるからどうでもいいが。

つーか、何処をどう見れば俺が雫を人質に取ってるように見えるのだろうか?

 

「雫!もう安心してもいい。こっちに来るんだ!」

 

天之河はそう言う。

つーか天之河は雫の事しか頭にないのか?

すると、

 

「ごめん光輝! 私は香織達を迎えに行かなきゃいけないの!」

 

「な、何を言ってるんだ雫? 南雲は死んだんだ!」

 

「そんな事無い!二人はきっと生きてる!だから私達が助けに行かないと!」

 

「雫!香織は助けに行く!だけど、南雲は死んだんだ!現実から目を背けるのは良くない!」

 

いや、お前が言うな。

俺がそう心の中でツッコむ。

ただ、雫の必死な言葉も、頭お花畑な天然勇者サマには届かないらしい。

この状況をどう切り抜こうか考えていた時。

 

「光輝、お前は少し黙ってろ」

 

そう言いながらメルド団長が前に出る。

 

「士、頼むから指示に従って欲しい。俺からも悪い様にならないよう尽力する事を約束する!」

 

「・・・メルド団長、俺もメルド団長の事は信用しています。ですけど俺は人形ではなく一人の人間です。俺は王国のいや、教会の駒になってこの力を罪のない子供達を傷つけるつもりはありません!!」

 

「士・・・」

 

メルド団長は苦渋を噛み砕いた声を漏らした。

 

「頼みます。そこをどいてください。俺達はハジメ達を探しに行きたいだけなんです」

 

俺は誠意を持って懇願した。

だけどやっぱり空気の読めない奴はいるもので

 

「逃げられると思っているのか?」

 

天之河は剣を構えなおして俺を睨む。

だから俺は言い返した。

 

「逆に言ってやろう。その程度で俺達を止められると思っているのか?」

 

俺は一枚のカードを取り出すとスロットに差し込み、サイドハンドルを押し込んだ。

 

【KAMENRIDE!W!】

 

俺を中心に風が吹き荒れ、ソウルサイドが緑、ボディサイドが黒のアーマーに変化し、首にはマフラーが装着された。

 

「天之河。さぁ、お前の罪を数えろ!!」

 

俺は左手の人差し指で天之河を刺すと、天之河の方を向いた。

天之河は顔を真っ赤にして、

 

「罪だと・・・悪人はお前の方だろ!!」

 

聖剣を構え突っ込んできた。

俺は突風を巻き起こすと、馬鹿ごと俺達を囲んでいた兵士を上空に吹き飛ばした。

 

「メルド団長、短い間ですがお世話になりました」

 

上空に居るメルド団長に感謝を伝えると俺はオーロラカーテンを完成させ、マシンディケイダーをフルスロットルで走らせオーロラカーテンに突入した。

それを見送ったメルド団長は、

 

「・・・我々は、選択を誤ったのかもしれんな」

 

自嘲気味にそう呟き落下していくのだった。




時は少し先の未来

とある高校の一クラス全体が集団神隠しにあったとして世間を騒がせてから早数か月。
当初は、集団誘拐にしては日中の学校で他のクラスに気づかれることなく一瞬でさらうというあり得なさと、かといって自主的な集団失踪というには食べかけの昼食や、やりかけの宿題、蹴倒されたままの椅子などといった不自然さに、現代の学校で起きたメアリー・セレスト号事件だと、過剰なくらいメディアは加熱した。
しかし、世間の流れというのは中々に非情で、そんなオカルトチックな大事件に対しても関心が長く続くということはないようだった。
一月も経てば、短い時間で事件の進捗のなさを報道したり、賢しらなコメンテーターや、この事件を機にブレイクしようと下心を抱えた自称オカルト研究者などが様々な見解で話題を引き延ばそうとするくらいで、やれ芸能人夫婦の離婚だ熱愛だ、大物政治家の汚職発覚だ、とメディアは次から次へと新しい話題を振りまいた。
そんな風に、加熱していたメディアが落ち着いてきて、人々の関心が他に移り始めた頃においても、依然として、失踪した学生達の家族や警察が必死に行方を探していた。
しかし、手掛かりすら何一つ得ることができず、誰もが心身の疲労と諦念に侵され始めていた。
良太とカンナも同じで、消えてしまった息子の行方を捜し続け疲れ果てていた。
必死に、士は無事だと、必ず帰ってくると信じながら、それでも時が無情にも流れていく中で絶望がひたひたと歩み寄ってくる音を、確かに聞いたのだ。
いつ帰ってきても大丈夫なように、士の部屋の掃除を欠かしたことは一日たりとてない。
そして、その度に、主を失った部屋の寒々しさで身を震わせた。
リビングにいるときも、食事のときも、耳に響くのは息子の声。
幻だと分かっていながら、なんどハッと辺りを見渡したことか。
玄関先で鳴った小さな音に駆け出して扉を開けたことなど、もはや数えきれない。
失踪した学生達の家族とともに立ち上げた『家族会』でも、日に日に、表情を失っていく親達に、良太とカンナも引きずられるように心を塞いでいった。
そして、士が消えてから数か月が過ぎた。
それは、二人にとって絶望の影がより濃くなることを意味する。
チクタクと時計の音がやけに明瞭に響くリビングで、おもむろに、良太がパソコンのディスプレイを見たまま、マウスをカチカチと鳴らす手を止めずに口を開いた。

「カンナ、そろそろ寝たらどうだ? 昨日も遅かっただろう?」

「平気よ。そういうあなたこそ、寝た方がいいんじゃない? 昨日は、仕事の方も大変だったんでしょう? ほとんど寝る時間なんてなかったじゃない」

深夜、心労ですっかり痩せてしまった良太とカンナが、まるでプログラムされた機械のように、作業じみた動きで情報提供を呼びかけるビラの作製や、PCの掲示板チェックをしながら、お互い顔も上げずに言葉を交し合う。

「仕事の方は問題ないよ。撮影の前にエナドリ飲んでいるし。新しく雇ったアシスタントが良い仕事をしてくれているからな。むしろ、そんな幽鬼みたいな顔で出てこられても迷惑だって、追い出されたくらいだ。それよりカンナの方がヤバイんじゃないか?また会議欠席したんだろう?」

「・・・ええ。でも、一回だけよ。うちの秘書も優秀だから」

良太もカンナもこの数か月でかなり仕事を休みがちになっていた。
全ては、息子を見つけるためだ。普通なら社会的信用を失いそうな休みの連続も、その事情を知る二人の仕事仲間や部下達が理解を示して積極的に協力してくれているおかげで、失職するようなことにはなっていない。
それは本当にありがたいことで、仮に士が帰ってきたとき、両親が揃って無職というなんとも微妙な事態を見せずに済みそうだった。
鬱屈した心は、互いに休むわけがないと分かっていながら、白々しい休んだらどうだという言葉になって互いの間を行き交う。
しばらくの間、なんとも空虚な会話を続けていた良太とカンナだったが、やがて、インターネットの情報掲示板に有力な情報がないどころか、明らかにガセと分かる情報や、心無い書き込みがなされているのを見て、良太は遂に、ディスプレイから視線を外した。
そして、大きく溜息を吐きながらテーブルに両肘をついて、両手で目元を覆いながら項垂れた。

「・・・士。どこにいるんだ・・・」

「あなた・・・」

まだ三十代後半だというのに、まるで疲れ切った老人のような有様の良太を見て、カンナもまた、作業の手を止めて顔を上げた。

「やっぱり、少し休んだら?」

「・・・できないと分かってるだろう? どうせ、ろくに眠れない」

「そうだろうけど・・・」

カンナは言葉を詰まらせた。良太の言うことは全くもって、自分にも当てはまること。どれだけ心身ともに疲れ果てていても、一日ごとに、まるで火で炙られているかのような焦燥が募っていくのだ。
それが、二人から安眠というものを奪っていた。


「大丈夫だ。まだ、たったの数か月だ。たとえ、何年かかったって、必ず見つける。それまで倒れたりするものか」

「・・・そうね。その通りよ」

苦笑いしながら顔を上げた夫に微笑みを返しながら、それでも隠しきれない暗い影を憂慮して、カンナが寄り添おうと席から立ち上がる。
そして、良太が何気なしに付けたテレビに臨時ニュースが飛び込んできた。

『速報です。SAO事件で知られるゲーム『ソードアート・オンライン』がクリアされました。仮想現実の世界に囚われていたおよそ6000人が次々と目を覚ましています。詳しい情報が入り次第お伝えします』

「あなた・・・」

二人は顔を見合い頷きあった。

「ああ。彼らがデスゲームから帰ってきたんだ。士だって絶対に見つかるはずだ」

「・・・そうね」

二人の顔に少しだけ生気が戻りまた二人は作業に戻った。

雫をどのタイミングで香織(士)と合流させるか

  • 士よ、城から連れ去れ!
  • 原作の香織のタイミング
  • 原作と同じ
  • ウルの町
  • フューレンで合流(錯乱)
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