悪の力? でもそれをどう使うかは私の勝手ですよね!? 作:蒼天 極
「おはようございますうてな」
「……おはよう」
月曜日、目の前にうてながいたため早歩きで追いついて挨拶をするも、抑揚のない声で返事をするうてな。
「どうしたんですか? まぁ嫌に肌がツヤツヤしてますし、悪い事は起きなかったんでしょうが」
「べ、別になんでもないよ……」
「おや、隠し事ですか? えぇっとこの反応からしておそらく変身状態での話ですね。それにやけに肌艶がいいと言う事はまた相手を甚振ったのでしょうが相手は……ふむ、そこまで顔に陰りがないと言う事は推しの魔法少女と言うわけでは無さそうですねぇ。もしかして私と同じく……」
「やめて? 状況から推測するの本当にやめて?」
フフフ、蝋責めの仕返しに丸裸にしてやろうではありませんか。
さぁ、観念して今度は何をやらかしたのか、お姉さんに白状するのです。
「あ、うてなちゃんにえりすちゃーん!」
「あっはるかちゃん……お……おはよう……」
「おはようございます、はるかさん」
「うん、おはよーっ!」
チッ、はるかさんが来たから尋問はここまでですね。命拾いしましたねぇうてな?
「そろそろテストだねー」
「あっ、そっか……。もうそんな季節なんだね……」
「お二人は勉強はきちんとしてますか?」
「ゔ、実はあんまり」
「あたしも全然してないんだよねぇ。えりすちゃんは?」
「やってないです。勉強なんて面倒くさい」
と口では言っているが私は普通に勉強してる方。勉強できないお姉ちゃんだとこりすちゃんに悪影響を与えてしまいますからね。
「このままじゃまずいよね……。私なんて特に数学が……ねぇ、えりすちゃん、テスト前に勉強会しな──「うてなちゃ──────ん!!」ゔ!?」
ゴロゴロゴロドシャー!!
「「…………」」
………………えっと……今起こった事をありのまま話しますね?
うてなから勉強会のお誘いを頂いた瞬間、髪をお団子状に二つ結んだ女の子が結構な助走をつけてうてなに抱きつき、その勢いのままぶっ飛んで行きました。
何言ってるか分からないと思いますが、私も何故こうなったか分かりません。
と言うか抱きつかれた瞬間うてなの首からグキッて鈍い音がしたけど大丈夫ですかね? 明日はうてなのお葬式とか嫌ですよ?
「うてなちゃん大丈夫!?」
「う、うん。なんとか……。一体何が……って……き、キウィちゃん!?」
どうやら彼女はうてなの知り合いのようだ。
うてなは慌てながら「どうしてここに……!?」と彼女に問いかけるが、キウィと呼ばれた少女は笑いながら「うてなちゃんがまた逢おうって言ったんじゃん〜!」と答えた。
見れば分かる、彼女ギャルですね。私にとって苦手な人種だから正直勘弁して頂きたいところです。
「そ、その制服は……」
「そ〜、うてなちゃんといっしょ〜。アタシ転校してきたからうてなちゃんと同じがっこ〜。うてなちゃんよろちゅっちゅ〜♡」
「え、えぇえええええ!!??」
近所迷惑と言うものを知らないうてなは、あまりに急すぎる展開に絶叫するしかなかった。
いや、本当に週末何があった?
「はるかさん、どうやらキウィさんはうてなにゾッコンみたいです。お邪魔したら悪いですしお先に行きましょうか?」
「え、う、うん」
◇
「…………」
「……」ジー
「…………」
「……」ジー
み、見られてる。キウィってギャルの子にめっちゃ見られてる……。
私別にあなたに何もしてないでしょう?
うてなと仲良いから睨んでるとかなら、うてなを生贄に捧げますからそんなに私を凝視しないで下さい。
「はい、それでは授業終わります。日直の阿良河さん号令お願いします」
「あ〜、アタシ〜? ダルイからえりすお前やれよ〜」
「こら、杜乃さんに日直の仕事押し付けないの!!」
「チッ、きり〜つ、れ〜い」
うわぁ、完全に私標的にされてるよ……。
「えりすちゃん、一緒にご飯食べよ?」
そんなクソ面倒くさい状況を何一つ理解してないうてなが私をお昼に誘うが、なんかギャルの子さっきよりめっちゃこっち睨んでるんですけど……?
「すみません、今日別の人と約束してるんで、阿良河さんと楽しんで下さい。……積もる話もあるでしょうし」
「え、う、うん。分かった」
「お〜、アイツ意外と自分の立場分かってんだなぁ」
ふぅ、これぞ神回避と言うものです。
と言うか今立場と言いました? もしかしなくても下に見ていると言うんですね? もしそうなら近いうちに分からせてやるから覚悟してなさいよ?
「と言うわけでギャルに絡まれて大変なので、今日はこちらでご一緒してもよろしいですか?」
「あんたはんも大変やねぇ。別にかまへんよ」
「えぇ、歓迎するわ。杜乃さん」
仕方ないのではるかさんグループとお昼ご飯を一緒に食べ、はるかさんのキノコオンリーの弁当に軽くカルチャーショックを受けた私であった。
あなたのお父さんってマリオって名前じゃないですよねぇ?
その後学校も終わりこれ以上面倒に巻き込まれないようにとっとと帰ろうとしていると、うてなが私に話しかけてくる。
「ふぅ、今日はテスト勉強しないと……。えりすちゃん勉強会しない?」
勉強会……確かに私も少しくらいやっておかないと、テストで引っ掛かったら補習とかでスイーツ食べに行く時間が無くなりますよね。
「5時には帰りますがそれでよければ「ごめんね、うてなちゃ〜ん。ちょっとえりすとこの後約束してるからコイツ借りてくね〜」え?」
「そ、そう? 分かった。それじゃあまたねキウィちゃん、えりすちゃん」
ちょ、もしかしてコイツ完全に私を目の敵にしてる!?
本当に勘弁してくださいよ! と言うかギャルの言う約束ってダル絡みをするって意味なんで騙されないで下さいうてな!!
「それじゃあアタシにちょっと付き合えよ〜」
「ギャルの付き合えは大体酷い目に遭うと相場が決まってるんです。面倒ごとはもう沢山なので勘弁していただきたいですねぇ!」
私の訴えも虚しく、グイグイと腕を引かれて連れて行かれてしまった私であった。
◇
「……それで、こんな裏路地に連れて来て何をしようと言うんですかね? 阿良河さん……いえ、エノルミータの方?」
「なんだ、気づいてたのかよ」
そりゃあうてなにオタクと基本相容れないギャルと仲良くなるようなコミュ力なんて無いし、まさかと思って荷物の中にトランスアイテムがあったのは確認済みなのだ。
「それで何のご用ですか? 私別にあなたに何もして無いですよね?」
「まぁな〜。でもアタシ、お前にはムカついてんだよね〜」
直後こちらに投げ渡されるのは手榴弾……手榴弾!?ちょ、殺意高いですねぇ!?
咄嗟に手榴弾を蹴り飛ばして、ゴミ箱の背後に隠れて爆発に巻き込まれないようにしたけど、少しでも遅かったら爆発に巻き込まれてミンチになる所でしたよ!?
「アタシ魔法少女にムカついてエノルミータ入ったんだけどさぁ、お前エノルミータの癖にネットで見てみればやってる事は人助け人助け人助け……魔法少女の真似事かよ?」
いや、そう言われても……別に私エノルミータじゃ無いですし……。
爆発によって生じた煙が消えるとキウィは上半身だけ軍服で下半身はパンツとガーターベルトと露出の多い姿となっていた。
「まぁ別に今はうてなちゃんにかわいいって言ってもらえればそれで良いんだけど、うてなちゃんと仲良くてお前にムカつくってのは変わらないから〜…………アタシがぶっ飛ばしてやんよ」
直後、手に持っていたピストルを構えると、彼女の背後に複数の巨大な銃火器が姿を現し、その全てが私に照準を向けていた。
あーもう、うてなといい悪の組織って頭のネジ外れたやつばっかりなんですかねぇ!?
そう思いながら咄嗟に変身しようとすると、視界の端にいたのはヴェナリータ。
「チッ!!」
咄嗟に路地裏を曲がって射出された弾丸を回避する。
今変身したらヴェナリータに動画撮られてそれをネタに脅されるのは目に見えている。と言うかヴェナリータはそれを狙ってコイツをけしかけてきましたね!?
最悪撮られたとしてもトレスマジアに事情を話せば今なら少しは話を聞いてくれるだろうけど、それでも社会的なダメージは受けてしまう。出来ればそれは避けたい所だ。
「…………これは路地裏だからこその見通しの悪さを利用するしか無いですねぇ」
次回、ノワールカーネリアンVSレオパルト