悪の力? でもそれをどう使うかは私の勝手ですよね!?   作:蒼天 極

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飛行機墜落……私なんか悪霊に憑かれてません!?

 学校が終わった私は、駅前の喫茶店を目指して歩いていた。

 駅前の喫茶店は普段放課後に寄る女子高生が多く結構待つから、スイーツ好きな私でも滅多に行かない喫茶店なのだが、現在そこで期間限定のスイーツを提供してるのだ。

 

「ピーチシュークリーム……シュークリームにスライスした白桃を挟んだだけでも最高なのに、さらに特製のピーチソースをこれでもかとかけた一品……絶対に見逃せません」

 

 期間限定メニューは普段からあるメニューと違い、特定の期間を過ぎるともう食べられなくなってしまう。

 だからこそ今日のうちに食べておいて、美味しかったら期間内に何回か食べてしっかりと味を覚えておこうと思ったのだ。

 味や食感をより正確に覚えていれば具現化させた時にしっかり再現できますからね。

 

「きゃ〜、マゼンタ〜!」

 

「握手して〜!!」

 

「みんな応援ありがと〜!」

 

 今日食べる予定のスイーツは少々お値段がするので、手持ちのお金で足りるかどうか財布を取り出して確認していると、昨日の公園にまたマゼンタがいた。

 

 …………。

 

「はぁ、仕方ありませんね……」

 

 別に無視をしても良いんだろうが、うてなは明日追試がある。

 流石にテスト前日くらいは集中してテスト勉強する時間を取らせてあげたほうがいいかもしれませんね。

 どうせ絡まれて今日喫茶店行けなくなったとしてもまた明日があります。たまにはスイーツよりも友人をとっても良いでしょう。

 

変身(トランスマジア)

 

 スマホでうてなに来なくていいから勉強に集中するようにと連絡を入れると、誰もいない事を確認して変身。

 公園に入りマジアマゼンタと相対する。

 

「っ! ノワールカーネリアン、今日はあなたが来たんだね!!」

 

「長いんでノワールでいいですよ。……申し訳ありませんがベーゼはプライベートで用事があるんで今日は来られません」

 

「え、そうなの!?」

 

「そして昨日も用事がありました」

 

「……えっと、ごめんねって伝えておいてくれる?」

 

「分かりました。……今回はそれを伝えに来ただけなので私は失礼しますね」

 

 え、戦わないのか? 私ちょっとグロいのに興奮するだけの一般女子中学生ですよ? 痛い思いなんてしたくありませんよ。

 ペコリと一礼すると踵を返して公園を出ようと「え、ちょっと待って!!」……したけどマゼンタに呼び止められてしまった。

 

「……なんです? ビンタした件については謝りませんよ?」

 

「そうじゃなくて……ねぇ、戦う気がないならちょっとお話ししよう?」

 

「肉体言語で?」

 

「違うよ!? 対話だよ対話!」

 

 別に逃げてもいいけど、そうしたらまた追いかけて来るに決まってる。ならばさっさと話を聞いて逃してもらおう。

 

「……分かりました。ですが私もこれからスイーツ食べに行く予定だったので、出来るだけ早くお願いします」

 

「分かった。それじゃあ単刀直入に聞くけど……ん?」

 

 何かを話そうとしたマゼンタだったけど、突如私の背後……空を見る。

 あの……空に何があるのか分かりませんが、先にこちらを優先してもらっても? そう言おうとしたがマゼンタが深刻な表情をしたのを見て、ただ事ではないのかと私もマゼンタの視線の先を追う。

 ……あれは飛行機? 近くに空港は無いのに結構低空飛行してるような……おや、エンジン部分に火がついて……もしかして…………!!

 

「墜落……ですか。……と言うかあの飛行機が向かってる方角って……!?」

 

 まずい、あっちは私の家がある!!

 それにお母さんは仕事だからともかく今こりすちゃんが家にいるなら……っ!!

 

「大変! このままじゃ乗客の人達が……街のみんなが!!」

 

「サルファとアズールに連絡しなさい! なんとか止めてきます!!」

 

「あ、ノワール!!」

 

 あぁ、もう!! なんでこうも次々とトラブルが……私なんか悪霊に憑かれてるんですか!? お祓い行ったほうが良いですかねぇ!!

 変身したら飛行能力を得るため、それを利用して飛行機の上部に乗ると巨大な腕を具現化して飛行機の右翼と左翼を掴む。

 

「ふんっ!!」

 

 そして腕を操って飛行機を持ち上げようとするが、流石に重い。重過ぎる……!!

 こ、こうなれば手袋の数を増やして……あと翼が折れたら不味いし飛行機の底面もしっかり支えて……

 

「〜〜っ!!」

 

 な、なんとか飛行機の落下速度を落とせた。これでなんとか我が家に飛行機が墜落する事態は防ぐことが出来ましたかね。

 ……本当はこれで見捨てても良いですけど、このまま見捨てたら街がメチャクチャになって電気が止まったりとか火災とか色々ありますよね。

 

「……なんとか安全な所に降ろすしか無さそうですね。ですがこれ以上は……!」

 

 落下の速度を落とせたと言っても、落下を完全に防げた訳ではない。

 どうすれば機体を持ち上げることが出来る……? ただ持ち上げるだけでは不可能……、一体どうすれば……イメージ……想像力を膨らませて……!!

 

「っ! これでどうですか!!」

 

 イメージはロケットパンチ、現在飛行機を支えていた腕にエンジンを搭載して、ロケット噴射で機体を持ち上げる。

 魔法でダメなら機械の力というやつです。

 ぶっちゃけエンジンの機構なんて知らないから大丈夫か不安だったがなんとかなったようだ。

 

「ふぅ……これでなんとか機体も上昇。後は降ろせるところを探せば……」

 

「ノワール!」

 

「おや、ナイスタイミングですね」

 

 トレスマジアの三人がこちらに合流する。

 流石はトレスマジア、来るのが早いですね。

 

「ありがとう、あなたが時間を稼いでくれたのね!」

 

「礼は後で! 降ろせるところはありませんか!?」

 

「大丈夫です!」

 

 そう言って私の近くに白いヴェナリータがやってくる。

 トレスマジアの妖精でしょうか? ヴェナリータには色々腹が立ってるので出来れば近寄らないで欲しいものです。

 

「ここから一番近い飛行場まで転移門開きます。そこに降ろして下さい!」

 

「了解で────っ!?」

 

 直後物凄い脱力感に襲われて身体に力が入らなくなり、膝をついてしまう。

 

「っ! もしかして魔力が!?」

 

「えぇ……ジェット噴射は魔力の消費が凄まじいようで……!」

 

 別に魔力切れはまだ大丈夫そうだけど一度に大量の魔力を消費してしまうため身体の力が抜けてしまうのだ。

 

「なら急いで降ろしましょう! マゼンタ、あなたは機長さんに降着装置を出してエンジンを止めるように伝えて! その後はヴァーツと一緒に転移門を開いてちょうだい!! 私はエンジンの火災を消火するわ!!」

 

「わ、分かった!!」

 

「ならウチはノワールを手伝うさかい、アンタはんもしっかり耐えるんやで!!」

 

「ええ、分かってますよ!! あーもう、ほんとどうなってんですか私の運命!?」

 

 ですがもうすぐ降ろせると言うのなら後もうちょっと無茶してやろうじゃありませんか!!

 

 

 それから底面に移動して飛行機を持ち上げるサルファと共に飛行機が落ちないように支えながらしばらく耐えていると、飛行機のエンジンの音が止まる。

 どうやら無事にエンジンを止められたようですね。

 

「転移門開いたよ! サルファ、ノワールゆっくり前に移動して!!」

 

「了解、しっかり合わせるんやで!?」

 

「えぇ!」

 

 底面のサルファの呼びかけに合わせて具現化した腕を少し傾けて前方にゆっくり進ませ、マゼンタが開いた光に入るとそこは二つ隣の市にある飛行場。

 どうやら機長が空港に連絡をして滑走路を開けてもらったみたいですね。まぁそれくらいはしてもらわないとこっちが困るんですけど。

 

「いいよー。ゆっくり降ろしていって!!」

 

 マゼンタの指示に従って、腕のジェット噴射を少しずつ弱めてゆっくりと地面に降ろしていく。

 キツいけどゆっくり慎重に、失敗したら悪の組織の私が責任取らされるでしょうし。

 

「……オッケー! アズール、消火の方は?」

 

「大丈夫、終わったわよ!!」

 

 ……どうやら無事に飛行機を地面に降ろすことが出来たみたいですね。

 具現化してた腕を消すと、そのまま脱力感に身を任せて仰向けに倒れる。

 

「ゼェ……ゼェ……キッツイですねぇ。というかこれ謝礼金とか頂いてもいいかもしれませんねぇ……」

 

 ……あぁ、空が青い。

 達成感と疲労でなんだかすごく眠くなって来ました……。このまま意識を落としたら絶対にグッスリ寝られるでしょうね……。

 

「……ですが寝たら変身が解除されて身元が判明してしまう。寝るのは帰ってからにしましょう」

 

 マゼンタの使っていた転移門……あれを使えば帰ることが出来ますよね。

 マゼンタの転移門、マゼンタの転移門……

 残り少ない魔力をかき集めながら必死に先ほどの魔法のイメージをすると、目の前に光ではなく黒いモヤのようなものが見える。

 あぁ、これ以前ベーゼが使ってた……エノルミータ専用の転移門があるんですね。

 重い身体を引き摺りながら黒いモヤの中に入ってなんとかこの場から離脱した私であった。

 

「まさか急にエンジンが燃えてしまうとは……もうダメかと思いました。本当にありがとうございます!!」

 

「いえ、私達は何もしてないですよ!」

 

「えぇ、今回はノワールが頑張ってくれたから重大な墜落事故を防げた……お礼は彼女に言って下さい!」

 

「そうだったんですか? それでそのノワールさんは」

 

「飛行機の上にいてはります。いるんやろうノワール! 何もせえへんからちょい降りてこっち来て……おーい、聞いとるんか〜!?」

 

「おーい! ……あれ、いない?」

 

「帰っちゃったのね。お礼言いたかったんだけど……」

 

 

 ◇

 

 

「…………ごめんなさい、お姉ちゃん今日ちょっとダルくて動けなくって」

 

「……」フルフル

 

 はぁ、なんとか家に帰って来ましたけど疲れすぎてご飯作れないなんて……そのせいでこりすちゃんにお弁当買って来てもらって、姉として情けないったらないですね。

 

「?」

 

「あぁ、大丈夫、ただの疲労だからしっかりと休めば治りますよ…………」

 

『ここで、臨時ニュースをお伝えします』

 

 ……あら、こりすちゃんったらテレビを付けっぱなしにしてたんですね。

 全く、ご飯食べる時はテレビは消すように言ってるんですが……

 

『今日未明、〇〇空港着の**便にてエンジンが故障し飛行機が墜落する事故がありましたが、トレスマジアと悪の組織エノルミータの少女、ノワールカーネリアンの活躍で無事〇〇空港に着陸しました。乗員乗客は全員無事との事です。エノルミータのノワールカーネリアンですが、実は以前から少女をトラックから助ける、銀行強盗を捕縛するなどの慈善活動がトレスマジアへの取材で分かりました』

 

「ブフウッ!!」

 

「!?」ビクッ(急に吹き出したえりすにびっくりした)

 

 ちょ、え!? ニュースに取り上げられちゃってるじゃないですか私!!

 と言うか今までやったことまで取り上げられてるし……何やってんですかトレスマジア!?




 おまけ

 ────エノルミータのノワールカーネリアンですが、実は以前から少女をトラックから助ける、銀行強盗を捕縛するなどの慈善活動がトレスマジアへの取材で分かりました』

「……これはまずいね。いくらなんでも善行を積みすぎだ。これじゃあ例え変身シーンとかを録画したとしても脅しの材料にはならない……。これは別の手段を考える必要があるね」
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