悪の力? でもそれをどう使うかは私の勝手ですよね!? 作:蒼天 極
こりすちゃんがエノルミータに入ってから早いことで数日経過したが、私達の関係は以前と変わらず仲の良い姉妹であった。
と言うのもこりすちゃんは私やうてなみたいに変な性癖を待ち合わせてはいないし、キウィみたいに喧嘩っ早い訳ではない。
故に今まで一度もノワール、アリス状態で戦った事はなかった……。なかったんですが……
「え、私と戦いたい?」
「ん」
休日という事で録画してた旅番組を見ながら洗濯物を畳んでいるとこりすちゃんがそんな事を言い出した。
「一体どうしちゃったんですかこりすちゃん? 嫌な事とか悲しい事があったなら相談に乗りますよ?」
それともお姉ちゃんあなたを怒らせるような事しちゃいました? もしそうなら謝るんで何があったのか教えてもらっても良いですかね?
あ、それともキウィかうてなが変な事でも言ったんですかね? もしそうならあの二人を埋めなきゃいけなくなりますが……
「……」フルフル
「え、全部違う? それじゃあどうして……?」
「…………」バッ、シュバッ!! (ジェスチャー)
こりすちゃんのジャスチャーで理由を聞いてみると、どうやらトレスマジアの面々やベーゼ、レオパルトなんかの戦う姿は見たけど、私の戦闘シーンを見た事がないから気になってしまったとの事。
「なるほど、確かにトレスマジアとも敵対している訳では無いですし、ベーゼ達とも会ったからといって仕掛けられなければ戦いませんからね」
「?」(ダメ? っと言ったふうに首を傾げる)
「いえ、そういう理由でしたらあくまでも練習という形で、あんまり激しいのは無しでやりましょうか。丁度こりすちゃんを見て新しい戦い方を考案したので試してもいいですか?」
「ん」コクン
という事でこりすちゃん……ネロアリスと戦う事になったのだった。
今回はベーゼみたいに性的に食べるためでもなく、キウィみたいに殺意100%でも無いから、平和に戦えますかね?
「あ、お出かけする前に洗濯物だけ畳ませて下さいね?」
「……」コクン
◇
その後こりすちゃんと一緒に以前ベーゼと戦った河川敷に移動して変身、ノワールとアリス状態になる。
そしてアリスはボロボロの猫のぬいぐるみを巨大化させてその上に乗る。
『んなぁあああああああお!!』
「……それも随分ボロボロになっちゃいましたね。これが終わったらおもちゃ屋で新しいのでも買います?」
「……」フルフル
え、私のお下がりだからいや?
嬉しい事を言ってくれるではありませんか。かつて私のだったおもちゃを大切にしてくれてるなんて感慨深いです。
「それでは始めましょうか。さぁ、いつでもどうぞ!!」
「ん!」
戦闘開始と同時に猫のぬいぐるみで私に攻撃を加えてくるが、毎回毎回腕だと味気がないため、ちょっとメルヘンチックな感じの犬型の魔物を具現化してそれに向かい撃たせる。
『なあああああお!!』
『わぉおおおおん!!』
「さぁ、どっちが強いですかね?」
「!!」
私の犬の魔物とアリスちゃんの猫のぬいぐるみ。一見すると私の方が有利そうな気がするが、アリスちゃんの猫のぬいぐるみに搭載された爪や牙で割とあっさり倒されてしまった。
まぁ元々あの猫のぬいぐるみには私もお世話になったので、壊すのがもったいなくて犬の魔物に極力ダメージを与えるなって命令してしまったから仕方ないんでしょうが……。
「?」
「えぇ、ベーゼに聞いたと思いますがこれが私の能力です。腕や魔物など様々なものを具現化して、場合によっては物量で押しつぶすことも出来るんですよ?」
「……」ホエー
キラキラした顔で私を見るアリスちゃん。
そうでしょうそうでしょう? お姉ちゃんは凄いんですえっへん!
それではもっと驚かせてあげますよ〜!
「先ほど言っていた新しい戦い方をしちゃいますね?」
「ん」コクリ
イメージする衣装は女王よりも装飾が少なくて、ロングスカートも短く。下着が見えたら子供の教育に悪いのでスパッツにして、ハイヒールも普通のブーツに……動きやすさ全開といった感じ……。
直後私の衣服が女王様然としたものから一転、まるでトレスマジアの衣装のような感じの衣服になり、動きやすさが倍増する。
「!!」
「驚きました? 私自身に具現化の力を付与してみたんです。名付けてスピードスタイル!」
前々から思ってたのだ、私のあの服は動きずらいと。
変身したときに裾が引っかかって転びかけた事はあるし、ハイヒールなんて普段履かないから靴擦れに悩まされたこともある。
故にあんまり動く事は出来なかったんですが、この姿ならトレスマジア並みに動けるでしょうし、ジムで鍛えた運動神経なんかも充分に発揮できるのです!
「さぁ、今度は私から行きますよ?」
「ん」コクリ
『んなぁああああああお!!』
猫のぬいぐるみが爪を立てずに私に猫パンチをしてくるが、それをサイドステップで回避。
そのままジャンプして猫の背中に乗るとこりすちゃんを抱き上げる。
「!?」
「はい、私の勝ちです」
「……? ……?」
おやおや驚いちゃってますね。そりゃそうでしょう、なにせ攻撃を避けてからアリスちゃんを抱き上げるまでにかかった時間はほんの一秒。
何せこの姿は動きやすさ……移動速度を意識して具現化させた。だからこそこの姿になると、今までの数倍の速度で動けるようになるんです。
「……」ムー
「え? あっさり勝負がついちゃってつまらない? アハハ、なら今からもう一回やりましょうか? 実はスピードを意識したこのスタイルの他にも「そこまでだよ!」……え?」
「トレスマジア参上! エノルミータは……ってなーんだ、ノワールか。服が変わってるから気づかなかったよ。どうしたの?」
どうやら私達の反応を追ってトレスマジアがやって来てしまったようですね。
でもマゼンタ? 私の顔を見て警戒を解いたのはいかがなものなんですか?
「具現化の応用でちょっと……ところでアズール」
「どうしたの?」
「前回は私の性癖で大変なご迷惑をおかけしてしまい申し訳ありませんでした」
流石に前回の件で負い目があったので、一度深々と頭を下げて謝罪する。
いくら許可を取った上での行動だったとは言え、あの昂った状態で首を絞めるなんて……もしあのとき萎えなかったら殺してたかもしれない。そう考えると自分のした事に割と罪悪感が湧いてしまっていたのだ。
「え、ううん。元々説明を聞いた上でお願いを引き受けたのは私なんだから、気にしないで?」
まさか首絞めたのに許してくれるなんて……ですが何もお返しをしないなんて私の気がおさまりません。
「お詫びと言っては足りないものですが、こちらをどうぞ」
「え、これは……」
「わぁ、これ知ってる! 駅前の喫茶店の割引券!! え、くれるの!?」
「えぇ、どうか受け取ってください。この程度のものしか渡せなくて心苦しくはありますが……」
「そう? ならありがたく受け取らせてもらうわね?」
「ほんま殊勝なやっちゃなぁ。……ベーゼはんも団子娘もノワールはんを見習うたらええのに……。ところでノワールはん? 一つええやろか?」
「なんです?」
「なんでネロアリスと一緒におるん?」
そう言って私の隣にいるアリスちゃんを指差すサルファ。
あぁ、そう言えばトレスマジアは私とアリスちゃんの関係を知りませんでしたよね? ……でも姉妹関係って教えて良いんでしょうか? 万が一どちらかが身バレしたら面倒臭い事になるような……。
よし、誤魔化しましょう。
「この子最近知り合って仲良くなったんです」
「!?」
「私自身はエノルミータとは距離を置いてますが、この子結構私に懐いちゃってるんで、こうしてたまに一緒にいるんですよ?」
「……」ポロポロ
「……なぁノワールはん、本当に友達なん? ネロアリス泣き出したで?」
え、えぇ!? まさか泣いてしまうなんて……ダメなんですかお友達!? お姉ちゃんっ子なのは知ってましたがまさかこれほどとは……。
「えっと……ごめんなさい。ネロアリスとの関係は伏せさせていただいてもよろしいでしょうか?」
「よしマゼンタ、アズール。今ネロアリスは一人や。ノワールは中立やから邪魔せんやろしベーゼらがくる前にとっとと片付けるで」
「!?」
「ほう? 人の妹に手ェ出そうだなんて良い度胸じゃないです「なるほど妹なんやね」……あ」
バレてしまった……。
…………よし!
「逃げますよ、アリスちゃん!!」
「!!」
三十六計逃げるに如かず。
流石にこの状況でネロアリスとの姉妹関係がバレたなら、色々と問いただされる可能性があるためここは逃げさせて頂きますよ。
ただ一個あなた達に伝えておく言葉があります!!
「妹がご迷惑をおかけして申し訳ありませーん!!」
「またねノワールー! ……私達も帰ろっか」
「そうね」
「アンタらそれでええんか? ま、妹が世話になってる件はまた今度話せばええか……」
トレスマジアにネロアリスとの姉妹関係がバレた。
スタイルチェンジ──新たに編み出した具現化した衣服を見に纏う技。着込んだ衣装でノワール自身のステータスも変動する。