悪の力? でもそれをどう使うかは私の勝手ですよね!?   作:蒼天 極

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私が女幹部に……あ、無理です

 ふぅ、今日の授業も全て終了……今日は五時から特売があるから、帰りにスーパーに寄らないとね。

 

「……今日は早く学校も終わりましたし、スイーツを堪能する時間はありますね。うてなも一緒にどうですか?」

 

「え、わ、私は良いよ……今日はもう帰る…………」

 

「……あなた今朝より落ち込んでません? それに今日途中でトイレで抜けてましたが結構時間をかけてましたし…………あぁ、今月は重かったんですね」

 

「ぇ? …………あ!! ち、違うよ! そっちじゃない!!」

 

「あら違うのですか? それじゃあどうしたんです?」

 

「あ、えーと……ごめんね。内緒!! またねえりすちゃん!」

 

 そう言って逃げるように帰ってしまったうてな。

 まぁ話す気がないのなら無理に追及するのも可哀想かな。いつか話してくれるまでは見守ってあげよう。

 でもこれ以上落ち込んだりする様なら無理矢理にも暴いてあげるから覚悟してね。フッフッフ…………。

 

 

 ◇

 

 

 私の日々の楽しみ。それは良さげな喫茶店なんかを見つけて、そこのスイーツを堪能する事。

 と言うのも我が家の天使、こりすちゃんは甘いものが苦手であり、だからと言ってそんな彼女の前で私だけお菓子を食べると言うのも流石に問題だ。

 でも甘い物が大好きな私にとって、お菓子とかを食べられないのは死ねと言ってる様なもの。だから放課後にこっそりと喫茶店でお菓子を食べるのが習慣になっているのだ。

 

「フフフ〜ン、今日はメイプルシロップとクリームがたくさん乗ったパンケーキ〜♪ 太るとか言われそうだけど、きちんと運動もしてるから知らないも〜ん♪ ……おや?」

 

 行きつけの喫茶店に向かう途中、街頭のテレビに映し出されたトレスマジアが目に入る。

 黄色の魔法少女、マジアサルファが怪人の攻撃からみんなを守り。

 青色の魔法少女、マジアアズールの攻撃が怪人の体勢を崩す。

 そしてその一瞬の隙を縫ってピンク色の魔法少女、マジアマゼンタの槍が怪人に鋭い一撃を叩き込む。

 そして最後は三人の力を合わせた合体技で怪人をやっつけて…………。

 

「魔法少女か……」

 

「興味があるのかい?」

 

「そりゃあ小さい頃までは魔法少女を目指して修行とかしてましたからね〜。まぁ今は魔法少女よりもお菓子ですけ「ならして見るかい? 変身」……え?」

 

 声の主を見るとそこにいたのは黒い妖精。ビックリした、あまりに自然に尋ねてくる物だから普通に返してしまったではないか。

 ……それにしても黒い妖精で、差し出されてるのは十字星型のエンブレム……あー、うん。そう言うパターンですか。

 

「杜乃えりす、君には選ばれし力が「お断りいたします」おや、何故だい? 興味のある魔法少女に変身できるんだよ? ほら、コレを使えば魔法少女に──」

 

「嘘はやめてください。魔法少女の変身アイテムは本来ハート型、星型ではありません」

 

「意外と魔法少女に詳しいみたいだね」

 

 それに私の場合、他でもない魔法少女本人に悪の才能はあれど、魔法少女の才能はないってはっきり言われてしまっているからねぇ。

 最も自分磨きをして私の本性と向き合ったら変身できるかもとは言われたけど、自分磨きなんてした事ないのに魔法少女への覚醒フラグなんて立つわけがない。

 

「つまりあなたの所属先は悪の組織……エノルミータですね?」

 

「……おや、こんなにあっさりバレてしまうなんてね。それじゃあここからは正直に言うけど、エノルミータに入る気は無いかい?」

 

 半ば騙す様に勧誘してきた黒い妖精だが看破してなお焦る様子も見せず、余裕そうな顔で尋ねてくる。

 

「さっきも言ったでしょう? お断りいたします。今更非日常に足を突っ込む気なんて無いですし、エノルミータだなんて論外です」

 

「そうかい、それは残念だな」

 

「それじゃあ私、コレからお菓子食べに行かないといけないので失礼しま「それじゃあ昨日勧誘した君の友達の柊うてなの変身バンクはSNSで拡散させてもらおうかな?」っ!!」

 

「フォロワー20万人くらいいるんだ」と話しながらコイツがスマホの画面を見せてくる。

 そこには悪の組織の女幹部っぽいなんとも露出の多い姿に変身したうてなの姿が映っていた。

 なるほど、今日のうてなのテンションの低さは魔法少女と騙されて悪の組織に変身して、トレスマジアと戦わされたからって感じかな?

 しかもこの動画のせいで逆らう事が出来なくて……

 

「あなた……最低ですね」

 

「悪の組織だからね。協力する気になったかい?」

 

「…………〜〜っ!!」

 

 友達を人質に取られてしまえば、もはや抵抗することは不可能。

 潔く黒い妖精の手から十字星のエンブレムを奪い取ると、その瞬間エンブレムが輝き出す。

 そして私の服が消えて、一度生まれた直後の姿になると別の衣装が私の身体を包み込んで……

 

「……うてなとは違って結構露出は控えめなんですね」

 

「みたいだね」

 

 黒と赤を主体とした童話に出てくるお姫様といった感じかな……?

 はっきり言ってコレは戦闘向けの服では無いと思う。

 それにしても……

 

「はぁ……まさか悪の組織をやる事になるだなんて……」

 

「才能があるのがいけないんだよ。あ、今の変身バンクもキチンと撮っておいたから逆らったらネットにあげるからね?」

 

「いや、別にネットにあげても良いんですけどね。むしろそっちの方が色々都合がいいし……」

 

 もしそうなったらネットで叩かれるだろうし、我が家も特定されてお母さんや妹に迷惑かけるだろう。

 でも私が素直に警察に出頭してしまえば今ならまだ何も悪い事してないし、私による悪事の被害もないから、無理やり変身させられて協力させられそうになったって言ってギリギリ信じてもらえるかもしれない。

 

「そうなればあなたの手口とかが警察とかの司法関連に知れ渡って、注意喚起とかされるかもしれないんですがね。それでも良いならやってどうぞ?」

 

「……そうかい。ならお望み通り、柊うてなの変身バンクと一緒にネットに流すね」

 

「こいつ……」

 

「そこまでだよ!!」

 

 この際この妖精を捕まえて我が家のミキサーでジュースにでも加工してやろうかと考えていると、背後からテレビとかで聞いた声。

 振り向くとそこには先ほどまで街頭のテレビで見ていたトレスマジアの三人がいた。

 

「クソッ、今日二度目やぞ。ほんまええ加減にしてほしいなぁ……」

 

「さっきは酷い目に遭ったものね。次は油断しない様にしないと……」

 

「……あの、そこのピンクの……マジアマゼンタでしたっけ? 後ろの二人が嫌にイラついてますけど……何があったんですか? 私たった今無理やり入れられたから事情とか一切分からないんですが……」

 

「え、無理やり入れられた!? それは大変、すぐに助けてあげるから!!」

 

「マゼンタはん。それ昨日もアイツが言っとったで?」

 

「えぇ、この手の言葉はコイツらの常套手段なんでしょう」

 

 遠回しなSOSは通用しないか……困った。コレは本当に困った。一体どうしたら良いんだろうか。

 いや、信じさせる方法はあるにはある。こちらから一切の攻撃をせずにトレスマジアの攻撃を受け続けて信じるまで脅されて変身させられたと主張すれば良い。

 ……でもそれをしたら黒い妖精がうてなの変身をネットに流してしまうかもしれない。

 

「先手必勝! アンタには攻撃させへんわ。覚悟しい!!」

 

「来る! 私はどう戦えばよろしいので?」

 

「どうやら君にはイメージが重要みたいだね。イメージしてごらん、この状況をどうすれば切り抜けられるのか」

 

 イメージか……どうすれば切り抜けられる?

 今この状況トレスマジアの皆さんはまっすぐこちらに突っ込んできている。ならば今必要なのは私を守る盾。

 

 直後、私の目の前に西洋風と言った鉄の盾が現れた。

 

「へぶっ!?」

 

「っ!? こ、コレって!!」

 

「盾やって!? こんな物一体どこから……」

 

「……なるほど、そう言う事ですか」

 

 なるほど、つまり私の力は具現化。

 イメージしたのもを実体化させて召喚する事が出来る能力と言ったところか……。うん、我ながらなんともチートな力を得たみたいで……。

 

「ですがそう言う事なら!!」

 

「しまった!!」

 

「マゼンタ、サルファ、気をつけて! 来るわよ!!」

 

「上等や、ウチが受け止めたる…………あれ?」

 

 私が手を突き出した事に警戒するトレスマジアの三人だったが、何も起きずに頭にハテナマークを浮かべる。

 それはそうだろう。私が仕掛けたのはあなた達では無いのだ。本当の狙いは……

 

「おや、このタイミングでボクを狙うのかい?」

 

「当たり前でしょう? 無理やり言う事を聞かせれば裏切られると言う事です」

 

 本当の狙いは黒い妖精……のスマホ。

 黒い妖精の背後に自立稼働する手袋を具現化させて、一瞬の隙をついて妖精からスマホを強奪してやったのだ。

 無論これで取り返されては笑えないので、他に具現化させた手で黒い妖精は鷲掴みにしておく。

 

「え? このタイミングで仲間割れ?」

 

「……コレって攻撃して良いのかな……?」

 

「あ、すみません。ちょっとだけタイムでよろしくお願いします」

 

 えっと……うん、完全に不意をつけたからスマホの画面とかは消されてない。ならばこのアカウントを削除して……写真フォルダに収められた私とうてなの変身シーンも削除……ついでに他の何人かの動画もあるから全部消しておいてあげよう。

 そんで持って……。

 

「せぇい!!」

 

「何するんだい。スマホを噴水の中に投げ込んで……いくら防水型と言ってもこんなに乱暴にしたら壊れるじゃないか」

 

「壊れて良いですよ! こんな誰かの弱みを握るくらいの使い方しか出来ないならば!!」

 

 この際この性悪妖精も握り潰してしまおうかと考えていたが、流石にそれは背後にいる魔法少女が許してはくれないだろう。

 ならば!

 

「これはあなた方に差し上げます! それではトレスマジアのお三方、申し訳ありませんが私はこれで失礼いたします!! お願いだから追っては来ないでくださいね!!」

 

 そう言って黒い妖精をマジアマゼンタに投げ渡すと踵を返してダッシュする。

 流石に証拠も隠滅したならばトレスマジアに捕まってやらなくてもいいだろう。今回のことは悪い夢という事にして日常に帰らせていただきます!!

 

「もう五時だし……結局喫茶店行けなかったですよ〜!!」

 

「ちょ、あなたも待ちなさい!!」

 

「嫌です!」

 

 マジアアズールが私を捕まえようと追ってきていたが、ここで捕まっては痛い目に遭うのも目に見えている。

 時代劇とかで忍者とかが使う煙幕弾を具現化すると地面に叩きつけて、アズールの視界を奪う。

 

「せっかくパンケーキ食べたかったのに……トレスマジアも妖精も恨みますからね〜!! 覚えてろ〜!!」

 

「あ、待って──痛ぁ!! くぅ……お尻のダメージが抜けてないみたいね……」

 

「大丈夫アズール? ……逃げられちゃったね」

 

「なにしに来たんやアイツ? ……まぁええわ。もう逃げたみたいやしウチらも帰ろか」

 

「まさか一度使い方を教えただけでここまでのことが出来るなんてね。本当に素晴らしいよ……なに、証拠に関してはまた集まれば良い。必ずその力を──」

 

「それでコイツどうするん?」

 

「一応縛ってヴァーツの所にでも連れて行こっか?」

 

「そうね」

 

「……全く、やってくれるじゃ無いか」

 

 その後なんとかトレスマジアの元から逃げ出した黒い妖精……ヴェナリータであった。




 エリスの変身姿──ネロアリスの服にお姫様然とした装飾を足し、腹部に穴が空いておへそが見える様にした感じの服。配色は赤と黒であり不思議な国のアリスに出てくるハートの女王を意識している。

 変身アイテムの位置ーーハーフアップにした髪の結び目

 星の位置──手の甲にあるが、手袋で隠されている

 星の数──まだ秘密♡

 具現化──イメージした物を実体化させる能力。ベーゼやネロアリスのように何かを媒体にする必要が無いため色々と応用が効く反面、具現化には割と魔力と体力を使う。
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