悪の力? でもそれをどう使うかは私の勝手ですよね!?   作:蒼天 極

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なぜエノルミータに入っているか? 以前言ったでしょう?

 その日の放課後、今日は喫茶店でスイーツ食べようと思っていたけれど、徹夜をしてしまったせいでかなり眠いので、喫茶店は諦めて早々に帰宅して寝る事にした。

 

「ふわぁああ……こんな日に限って居眠りにうるさい先生が担当の授業って本当についてないですねぇ……」

 

 自らの不安に少しばかり嘆いていると、横断歩道に差し掛かった。

 寝ぼけてうっかり車に轢き飛ばされないように気をつけなければ……いつもよりもしっかりと車を見て帰った方がいいですね。

 …………あれ?

 

「あの車信号が赤なのに速度を落とさずに……あー、はいはい、今回は居眠り運転ですか。相変わらずのトラブル体質で笑えませんね。変身(トランスマジア)

 

 いつこちらに来ても対応できるように変身して構えていると、居眠り運転の車は速度を落とさずにまっすぐ交差点に突っ込んできて私達の方へ……。

 

「フフフ、最近は特殊な能力を持ったものすら具現化出来るようになったんですよっと!!」

 

 指を弾くと同時に車の車線上の床に速度ダウン床が具現化されて、車がそこを通った瞬間ブレーキをかけたかのように速度が落ちる。

 それでもやはりこちらに突っ込んでくるが、これくらい速度が落ちれば充分。いつも通り巨大な腕を召喚して物理的に止めて差し上げた。

 

「……ふぅ、よし。運転手の方は警察が叱るでしょうし、トレスマジアが来る前にさっさと帰りましょ「ノワールカーネリアンだ〜!!」ほぇ?」

 

「あの、飛行機事故の動画見ました! よければ握手していただけますか!?」

 

「わ、わたしはサインお願いします!!」

 

「ではわたくしは、オカズが欲しいので服を脱いで被写体になっていただいてもよろしいでしょうか!? ウヘヘヘヘ!」

 

「あ、すみません。誰かこのメガネを警察に通報していただいてもよろしいですか? 流石に公衆の面前で襲いかかったらトレスマジアに怒られるんで……」

 

 一応いかがわしい事を頼んできやがったメガネの女性は警察に補導して頂いたけど、もしかして私かなり人気になってしまっている?

 

「あ、あの〜、私帰りたいんでどいて頂いてもいいですか? 早くしないとトレスマジア来ちゃうんで「トレスマジア参上! エノルミータは……あ、ノワールだ」あ〜、来ちゃいましたよ……」

 

 私のファンの人達に帰るのを妨害されてどうしようかと思っていると、とうとうトレスマジアがやって来てしまった。

 うぅ……前回のこりすちゃんの一件で割と気まずいんですが……。

 

「今日はどうしたの?」

 

「居眠り運転でこちらに突っ込んで来たので止めただけです。別に悪事なんて考えていません、見逃してください」

 

「そうだったのね、助けてくれてありがとう。それと大丈夫よ、ノワールが悪い人ではないってことは知ってるもの」

 

 そう言って以前よりもフレンドリーに話してくるアズール。

 あ、あの……お互いの正体を明かし合ったとは言え、いささかフレンドリー過ぎやしませんかね? 私、世間では一応エノルミータ扱いなんで、周りからなんと言われるか分かったもんじゃないですよ?

 

「でもノワールだったなら丁度いいや。私達これから修行をするんだけどノワールも一緒にどう?」

 

「……え?」

 

 一度アズールを注意した方がいいかなと思っていると、マゼンタは笑顔でそう提案してきたのだった。

 

 

 ◇

 

 

 その後、眠いから次の機会にとやんわり断ったと言うのに半ば無理やり人のいない所へ連れて来られた私は、アズールとサルファの戦いを観戦していた。

 

「うぁあっ!!」

 

「アズールッ!!」

 

 サルファの剛拳でぶっ飛ばされ、地面に倒れ伏したアズールに駆け寄ろうとするマゼンタだが、それをサルファが諌めた。

 

「マゼンタぁ、助けたらあかんよ? ほぉら、はよ立たんとこれしきでへばっとったら修行になんてならへんよ?」

 

 そう言ってサルファはすっごいいい笑顔で自らの拳をぶつけ合わせながらアズールにそう告げる。

 アズールは不敵な笑みを浮かべると「その通りね……!」と言いながら起き上がり、氷の剣を構える。

 

「ほないくで♡」

 

「えぇ……!」

 

 そして再びアズールとサルファがぶつかり合った。

 ……いや、これ修行にしては明らかにハードじゃありません? 一歩間違えたら入院するレベルかと思うのですが……。

 マゼンタはしばらく二人を心配そうに見ていたが、ブンブンと頭を振るとこちらを向く。

 

「ちょっとあの二人は心配だけど……あたし達もしっかり修行をしないといけないよね?」

 

「えぇ、そうですね。半ば無理やり連れて来られたとはいえせっかくの機会。しっかり私も修行させていただきましょうか!!」

 

 ここで何も得ずに帰る事こそ時間の無駄というもの。

 ならばせっかくの機会です、トレスマジアとの戦いを通して少し鍛えるとしましょうか!!

 いつも通り無数の腕を召喚して、槍を構えたマゼンタと相対する。

 

「この際だから以前のリベンジをさせて貰うよ!!」

 

「上等です。なら私が勝ったら今度は紙やすりビンタですねぇ!!」

 

「ちょ、それはやめて!!」

 

 

 〜数分後〜

 

「は〜、は〜。ぜ、前回と同じ負け方しちゃった……」

 

「槍は持てるところが多い。一度掴んでしまえばこっちのものです」

 

 マゼンタは以前よりもキレのある動きで槍を振り回して召喚した腕を次々倒して行っていたが、今回も隙をついてマゼンタの槍を脇で止めて召喚した腕で取り押さえたのだ。

 それにしても……

 

「練習試合とは言え本気でしたね。トレスマジアの修行っていつもこんなにハードなんですか?」

 

「えっと……実は普段はもうちょっと軽めなんだけど……」

 

 マゼンタ曰く、昨日ベーゼに堕ちかけたアズールこと小夜さんであるが、今日二人にベーゼに一人で勝負を挑んだこと、負けて闇堕ちしかけてしまった事などを正直に話して謝罪したのだと言う。

 

「それでもう負けたくないから、いつもよりもキツめに修行してってお願いしてきたの」

 

「そうだったんですか」

 

 負けないように頑張る……その言葉は嘘ではないと言う事ですね。まぁ昨日の小夜の顔を見て分かりきっていた事ですけど。

 

「ならば私達も負けていられませんね。もう一戦、お付き合いいただけます?」

 

「うん。今度は負けないからね!!」

 

 アズールのやる気に触発された私とマゼンタはもう一回勝負をし、またも同じやり方でマゼンタを負かせて差し上げた。

 

「……なんで掴まれたら振り解けないのぉ?」

 

「数年前から週三から週四でジム行って身体鍛えてますんで。筋力には自信ありますよ?」

 

 

 それから数十分過ぎたあたりで時計を見てみると、そろそろ5時が回ってしまいそうな事に気がつく。

 

「すみません。私そろそろ失礼しますね」

 

「え、もう?」

 

「随分早いおかえりやね」

 

「家では私が家事担当なので。それでは失礼しますね?」

 

「あ、待って!」

 

 一礼してから転移門を開き潜ろうとすると、マゼンタに呼び止められた。

 

「どうしました?」

 

「前から思ってたんだけど……あなたって良い人だよね? 女の子を車から助けてくれたときも、銀行強盗を捕まえたときも、飛行機事故のときも……あなたは誰かを助けるためにその力を使ってる」

 

「……買い被りすぎです。私が良い人ならば以前アズールを襲っていませんよね?」

 

「でもそれに関してはアズールの許可を貰ってから戦ったんだよね? それに終わった後もキチンと謝ってる。……やっぱり良い人だよ。ねぇ、なんであなたがエノルミータに入ってるの?」

 

 あの、初めて会ったときに無理矢理入れられたって言いましたよね? あのときは信じてくれてませんでしたけど……。

 ですが理由を尋ねられたって事は私のことをある程度信用してくれた。信頼を勝ち取る事が出来たって事で良いんですかね?

 

「……以前も言いましたが、ヴェナリータに脅されて半ば無理やり変身させられました」

 

「あれは嘘じゃなかったのね……。嘘と決めつけてしまってごめんなさい……」

 

「いえいえ、気にしないでください。……以前アズールには言いましたが、私は相手を傷つける事、尊厳を踏み躙る事に興奮を覚える……いわばリョナ気質なんです。おそらくそれが気に入られてしまったのでしょう」

 

「随分厄介な性癖しとんやなぁ自分」

 

「でも、と言う事はあなたはエノルミータの被害者だったんだね……」

 

「まぁそう言うことになりますかね? それで一方的に顎で使われるのも腹立たしいから、隙をついて脅しの材料を隠滅して私は離反したと言うわけです」

 

 まぁそれ以降トラブル体質のせいで思わず次々と善行をしてしまっているんですがね。悪事をさせようとしてたヴェナリータからすれば面白くないでしょうね。アッハッハ!!

 

「……おっと、すみませんがそろそろ帰らないと夕飯遅くなっちゃうんで、失礼しますね」

 

「あ、待って──」

 

 今夜は煮物をする予定だったから、しっかり煮込まないといけないんです。申し訳ありませんが、話の続きはまた今度時間の取れるときにしましょう?

 転移門を潜って街に戻ると、誰にも見られない場所で変身を解除して帰宅した。

 

「ただいま〜、おや? こりす、友達が来てるんですか?」

 

「……」バッシュバッ!! (ジェスチャー)

 

「なるほど、うてなとキウィが……なら今日は晩ご飯食べて行って貰いますか」

 

「ん」コクン




 〜おまけ〜

「ね、ねぇやめなよキウィちゃん……えりすちゃん怒るよ……!」

「だいじょーぶ、だいじょーぶ。この際だからえりすの弱み握ってやろうぜ〜」

「ほぉ、私のベッドの下を覗いているのは弱みを握るためですかそうですか」

「なっ……えりすもう帰って来たのか……!!」

「えぇ、夕飯作らないといけなかったんでね。こりす、今日は煮物をする予定でしたが急遽予定を変更してステーキ作ることにしました。楽しみに待っていてください」

「!?」

「え、えりすちゃん!? 何でステーキ作ろうとしてるのかな!? なんのお肉を使おうとしてるのかな!?」

「人肉ですが何か?」

「ギャァアアア、食われる〜!!」

「ちょ、えりすちゃん落ち着いて、共食いはアウトだよ〜!!」

「ん!」(キッチンに引き摺り込まれそうになってたキウィの足を掴んで必死に抵抗している)

 こりすちゃんもうてなも人肉ステーキは反対だったため、仕方なく予定通り煮物にしました。
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