悪の力? でもそれをどう使うかは私の勝手ですよね!? 作:蒼天 極
「ヴォア・フォルテ!!!!」
マイクを構えたロコムジカは大声を発するとその声が音符の形になって私に襲いかかる。
なるほど声を固めての攻撃ですか……。
咄嗟に目の前に壁を展開して、音符が私に当たらないようにするがその瞬間重い衝撃が走ると共に壁が砕け散る。
「ぐうぅ……これレンガ製だから丈夫なんですけどねぇ!? こんな事なら鋼鉄製の方が良かったかもしれません!!」
どうやら彼女の攻撃力がかなり高いみたいです。それに音符の数も多いから避けるのもなかなかに至難の業……。これは適当に魔物とかを具現化しても魔力が無駄になるだけですかね。
「流石はうちの妹と同じ星の数って事ですか!!」
「ほらほら、どうしたの〜!! 星が二つあるならもしかしたらなんとかできるかもしれないわよ〜!!」
そう言って再び音符を撒き散らすロコムジカ。
……さて、そろそろ動きますかね。
ドレスに具現化の能力を付与して、スピードスタイルにスタイルチェンジして大量の音符の中に突っ込んでいく。
「なんですって!?」
「いくら数が多くとも素早く動けば良いって事ですよ!」
「くぅ!?」
音符の嵐を全て回避して、具現化した棒を彼女の頭に振り下ろすがギリギリの所で避けられる。
そしてすぐさまマイクを構えて……っ!!
「この……離れなさーい!!!!」
「くぅ……!!」
急いでロコムジカから距離をとって音符を回避する。
スピードスタイルは速さに特化する分、防御力がダウンすると言うなんともお約束な弱点があるんです。まともに食らわないように注意はしていますとも。
「私の懐を取るなんてやってくれるじゃないの。ならもっと激しくいくわよ! ヴォア・フォルテ!!!!」
そう言ってロコムジカが再び音波攻撃を行うけれど、確かに威力も上がって、音符の数も増えている。
ここからなら避ける事はできそうですけど、これでは彼女に近づくのは難しいかもですね……。
「ならばこちらも広範囲攻撃をしてみますか」
周りに誰もいないのを確認すると、ロコムジカとその周辺の空中に大量の剣を具現化する。
これを落とせば剣は雨となってロコムジカを串刺しにする……。ちょっと殺意マシマシかもしれませんが別に良いですよね? 悪の組織だから容赦なくやっても怒られなさそうですし。
「レイン・オブ・ソーズ……なんちゃって」
なんかそれっぽい技名を適当につけて剣を降らすと、ロコムジカは流石に危ないと思ったのか焦り顔で音符で自分に襲いかかる剣を防ぐ。
「……ちょっと! 危ないじゃないの、ロコを殺す気なの!?」
「当たり前じゃないですか。あなた生きてても私の邪魔になりますし」
「っ!?」
ごく自然とそう返すとロコムジカが一瞬私をまるで化け物でも見るかのような視線を向ける。
いやなんであなたがそんな目をするんですかね? こちらを攻撃する時点で自分も殺られる覚悟は出来ているでしょう?
撃っていいのは撃たれる覚悟のあるやつだけって言葉もあるんですから、覚悟決めておいてくださいよ。
「恐ろしいわねぇ……一歩間違えたら本当に危ないかもだから早く終わらせないと!! ヴォア・フォルテ!!!!」
「バカの一つ覚えみたいに同じ攻撃を「ノワール!!」っ! アズール!?」
良い加減見飽きた音符攻撃を別の手段で相殺しようとしていると、見知った声が聞こえて音符が氷で固められて動きが停止する。
とっさに背後を見るとアズールがこちらに来ていた。
「アズール、なぜここに!?」
「助けに来たわ! もぅ、途中で電話を切って……!!」
「すみません」
途中で電話を切ってしまったことで心配をかけてしまったみたいですね。悪い事をしました。
ですが……
「助かります。一人よりも二人の方が確実ですからね!!」
「ふん、たかが一人増えたくらいでなんだって言うのよ!? 丁度いいわ。アンタの首とトレスマジアの変身アイテムも持って帰ればロード様に褒められるってもんよ!!」
そう言って再び音符を飛ばしてくるロコムジカ。それを私は避けて、アズールは氷で迎撃しながら前へ進む。
対応する人の数が二人になった分、音符の量が若干減りましたね。これなら懐を取れるってものです!!
「っ! このぉ!! なんで当たらないのよぉ!!!!」
「狙うのが下手すぎるからですかねぇ!?」
「な!? どいつもこいつもロコをバカにしてぇ!! 許さないんだからぁ!!!!」
っ!? おっと怒らせすぎたのか音符の量がまた増えて来ましたねぇ。これは粘って相手の声が枯れるまで耐えた方がいいでしょうか?
そんな事を考えているとアズールが私の前に立つ。
「ノワール、私の後ろに! 一気に行くわよ!!」
「行けそうですか?」
「無傷では難しいかも。でも欠点と向き合えば……でしょ?」
「……分かりました。ではよろしくお願いします!!」
先ほどまでは音符を確実に撃ち落として一歩一歩進んでいたアズールだが、彼女はゆっくり進むのをやめて走ってロコムジカとの距離を詰める。
「ぐうぅ……!!」
「大丈夫ですか!?」
「えぇ……まだ耐えられる……!!」
「っ!? こいつロコの攻撃が効いてないの!?」
その際に音符攻撃を撃ち落としはしているが、防ぎきれなかった攻撃はその身で受けてしまっている。
「〜〜っ!! くぁああああ……っ!!」
「アズール! ……っ! 助かりました!!」
そしてアズールの活躍である程度距離を縮めた所でとうとう耐えきれなくなったアズールがぶっ飛ばされてしまう。
でも充分です! ここまで距離を縮められたならば!!
「アンタも吹き飛びなさーい!!!!」
その直後、ダメ押しと言わんばかりに巨大な音符が私を襲う。これを食らってしまったら私もぶっ飛ばされてしまいますね。
……ですが!!
「転移門はこう言う使い方も出来るんですよ!!」
「え……があぁぁ!?」
当たる直前にロコムジカの背後に通じる転移門を展開すると、音符を転移門に潜らせて彼女の攻撃をそっくりそのまま返して差し上げる。
背後から自分の攻撃を受けたロコムジカは私の方に吹っ飛んできて……
「これでチェックメイトです!」
「カハッ……!?」
具現化で呼び出した棒で、こちらに吹っ飛んできた彼女の喉元を狙って突きを打ち込む。
喉を潰されれば声を出す事はできない。つまりはもうあの厄介な能力は使えない。
もしこれで後遺症が残ったとしても私の知ったことではないんで、せいぜい私に喧嘩売った自分を恨んでください。
「やっつけたみたいね」
「アズール、大丈夫でしたか? 結構無茶したようですが……」
「うん、私は平気……でも彼女、大丈夫なの?」
「さあ?」
「さあって……」
「あ"……は……は……」
気道を潰したせいで息ができないのでしょう、喉を抑えてもがき苦しむロコムジカ……。
「見てくださいアズール、喉を潰されて息が立たずにもがき苦しんで……彼女はなんて可哀想なんでしょう!! あぁ、これはシャッターチャンスですね。こんな素晴らしい瞬間……後世に残さなければ……!!」
「やめなさい」
「いた」
軽くゲンコツされてしまいました。
まぁ興奮するのはこれくらいでいいでしょう。取り敢えず彼女はエノルミータに連れて帰るとしましょうか……。
「……あ、あなたに渡した方がいいですかね?」
よく考えたら今回はアズールと一緒に戦ったんです。別にエノルミータとの条約はロード団がいたら一緒に戦うってだけなんで今回はトレスマジアに引き渡した方がいいかもしれませんね。
「そうね。彼女はぜひうちで引き取りたいわ。色々と話を聞く必要もあるでしょう「っ!? アズール!!」きゃっ!?」
直後嫌な予感がした私が、アズールの手を引いてその場を離脱すると、私達がいた場所にナイフが飛んでくる。
危な……、一歩間違えたら死んでましたねぇ。
咄嗟に飛んできた方向を向いてみると、そこには誰もいない。
直後ロコムジカの方から声がする。そこにはロコムジカのそばによった緑のフードの少女がいた。
「ロコ……おい! しっかりしろ!!」
「あ……る……べ……」
「喋んな! すぐ病院に連れてってやるから!!」
そう言って転移門を開いたフードの少女は一度ギロリとこっちを睨みつける。
「この借りは絶対に返すからな……!!」
「何バカな事を。喧嘩を売った時点でそうなる事は想像がついたでしょうに。彼女の自業自得ですよ」
「うるせぇ! 覚えてろよ……!!」
そう言って転移門に潜り逃げて行ってしまった。
全く、言うだけ言って逃げるなんて三下のやる事ですよ。今回離反した人たちは随分と質が悪いんですねぇ。
「……すみません、逃げられてしまいました」
「うぅん、問題ないわ。でも大丈夫なの? 彼女に恨まれてしまったみたいだけど……」
「どうでしょうね? ですがその時はその時、ズタボロにして差し上げるだけです」
「ズタボロに……」
「おや、顔を赤らめてどうしました?」
「な、なんでもない……さ、彼女が壊した所を修理しましょうか! ノワールも手伝ってね!!」
誤魔化すかのようにそう言ったアズールであるが、今回戦った戦場を見てみると……ロコムジカが散々能力を使ったせいでボロボロになった道路になかには壁が壊れた建物もある。
確かに私も剣を降らして少しだけ壊してしまったが、それでも圧倒的にロコムジカの被害が凄まじい。
「……え? これを修理するんですか?」
「えぇ。今回の状態なら一時間程度で終わるでしょうし頑張りましょう!!」
「…………これじゃあもう今日はスイーツ食べに行けませんね」
私は無言で息を吸う。
「こっちこそ許しませんからねロコムジカァアアア!!!! フードの人ぉおおおおおおお!!!!」
〜おまけ〜
「いや〜、流石はノワール! スカッとしたな〜。アズールと一緒に戦ったのはよそーがいだったけど!!」
「……」ジー
「ん、どうしたよこりす? アズールの方なんか睨んで?」
「……」プクー
「……あぁ〜、もしかしてお姉ちゃんとられたのが面白くないとか? なんだよ、意外と年相応なところがあるじゃいたいいたい!! ちょ、やめろこりす叩くな〜! ちょ、危な!! 落ちる、落ちるからのわぁあああああ!!」
木から落ちたキウィであった。