悪の力? でもそれをどう使うかは私の勝手ですよね!? 作:蒼天 極
絶賛滝行をお愉しみ中だったアズールに呆れたような顔をするサルファ。
「滝行で煩悩が増えるって一体どんな神経してはんの?」
「はっ! こ……これは違うのよ!」
「どう違うんや?」
「そ、それは……そう、自分の弱みと向き合う為に一度自分に正直になってただけで……!!」
ってコラコラ、私が教えた師匠の受け売りを言い訳に使ってんじゃないですよ。正直に愉しんでましたごめんなさいでいいでしょうに……。
流石にムッとしたため、笑顔で滝行中の彼女に近寄る。……もしかしたら意地悪な笑みをしているかも知れませんねぇ。
「それで、滝行で気持ちよくなってしまったアズールは一体何を学べましたかねぇ?」
「そうね……前回のロコムジカとの戦いで気がついたんだけど、私は痛みや苦痛を快感に変えられるようになって相手の攻撃が怖くなくなってたの。……でもこの感情のままに動いてしまったら私はまた堕ちてしまう。だからこの感情を受け入れつつも制御できるようになる為の強い心と、前回のように途中で倒れないような強い力が必要だと感じたわ」
……意外としっかりと自分の心のうちと向き合っていたようで、滝の水圧に快感を感じるのと同率並行で滝行の本来の用途もこなしていたみたいですね。
「今必要なのは強い力と強い心……だからその為には……マゼンタ、サルファ、ノワール、一個お願いしていい?」
「なんでしょう?」
「ちょっと滝上から飛び降りて私をブッ叩いてもらえないかしら?」ハァハァ
「こっわ、何言うてんねんアンタ」
アズール、ヨダレ出てますよ? それと滝上から飛び降りたらケガするかもしれないんで嫌です。
その後サルファによって強制的に滝行を中止させられ、滝から引きずり出されたアズールに対し、サルファは呆れたようにため息を吐くと話し始める。
「はぁ……なぁ、アズール。あんた自分の武器について考えたことってある?」
「武器……?」
「文字通りの話や。うちは拳、マゼンタは槍……せやけどあんたは大気中の水分操って剣の形にしとるだけやろ?」
いや、それ強くありません?
大気中の水分を操れるってことは、大気中に水分がある限り氷で武器作り放題な上に、水分を集めて水球にして相手の頭にまとわりつかせれば窒息させることも……それは素敵ですねぇ……。
「え……えっとノワール? 顔怖いよ?」
「お構いなく」
「……変なこと考えとるこいつは無視するけど、あんただけの武器が必要や、アズール。そしたらうちらもっと強くなれる」
「…………私だけの……武器……」
……それは私にも言える事かもしれませんね。
思い返してみれば私は武器を具現化する事はあれど、チェーンソーとか剣とかありきたりなものを作ってしまっている。
この際、しっかりと武器のイメージをしっかりと固めて性能のいい武器を作ってみるって言うのもありかもしれませんね……。
「……っ!!」
「この反応は……」
「エノルミータ!!」
武器についてのイメージを膨らませていると、トレスマジアが反応する。どうやらエノルミータが出現したみたいですね。
「おそらくロコムジカ辺りがリベンジに来たのかもしれませんね……。来て早々で申し訳ありませんが、私はこれにて」
「あ、待って。私も「アズール、アンタが今するべき事はなんや?」そ、それは……」
「そうですよ。ここは私に任せて下さい」
私と一緒に行動しようとするアズールを止めると私は転移門を開く。
心配しなくても一度戦った相手。やり方は理解していますよ、だから安心して修行に専念して下さい。
「……フフッ、私に任せてってまるで仲間みたいね」
「あ、それいいね。ノワールもトレスマジアやろうよ!!」
「……ってマゼンタとアズールは言っとるけどどないするん?」
「え、流石にそれは困ります。というかサルファはそれで良いんですか!?」
「トレスマジアなってネロアリスのケジメつけたらええんやない? 別に光落ちしたいならかまへんよ。アズールを闇堕ちさせられかけた仕返しになるさかい」
「えぇ…………」
◇
転移門を潜ってエノルミータの反応のある場所へ移動すると、そこには既にうてな達も来ていた。
「あ、ノワールちゃんも来たんだね」
「えぇ。……ところであれはなんですか?」
私が地上に目を向けるとそこには即席のライブ会場。たくさんの観客に囲まれる中、ステージでは首にマフラーを巻いたロコムジカが元気にライブを行っていた。
……チッ、後遺症は残らなかったみたいですね。後遺症が残って戦えなくなってれば楽だったんですが……。
もう少し強く突いておくべきだったと後悔する私をよそに、レオパルトは驚愕の表情を浮かべる。
「な、なんだよこれは……おかしすぎる、アイツの歌にこんな集客力があるワケねーのに……!」
「す……好きな人もいるんじゃない……?」
「いやだって聞いてみてよベーゼちゃん!」
見るとアリスちゃんもとっても微妙な表情をしている。……そんなに彼女って音痴なんですか?
ちょっと聞いてみましょうか……。
「ズッキュンバッキュン狙い撃ち♡ぞっこんロックオンラブハートっ♡」
「「…………」」
「ほらそういう顔になるでしょ?」
なんなんですかねこの微妙な音程は……まさか喉を突いたからこんな感じに……だとすると悪い事をしてしまいましたかね……。
若干罪悪感を抱いていると、ステージの天井でスマホゲームをしながら寛いでいるフードの少女が欠伸をしてロコムジカに問いかける。
「……おいロコォ、もう終わったかよぉ?」
「ハァ!? なに言ってんの、まだアンコールが残ってるでしょ!!」
「ったく、めんどくせぇなぁ……まぁ、完治祝いだから今日は別にいいけどよぉ」
ん、完治? 今、完治と言いましたか? という事は元々あんな微妙な歌声をしていたという事では……私があなたに抱いた申し訳ないという感情を返してくれませんかね?
「見てみなさいよ、このファンの数! やっぱロコの歌は本物だわ! ロコにはアイドルの才能があるのよ!! この間喉を突かれたときは本当に肝を冷やしたけど、復帰早々これって流石は私ね!!」
「あ〜ハイハイ。気が済んだら言えよ〜」
「って、アンタも聞きなさいよ!!」
あら、初めて会ったときはビックリするほど顔を青くしてロコムジカを介抱していたのに随分と塩対応ですね。もしかしてツンデレってやつなんでしょうか?
「もう一人いるな」
「確かルベルブルーメ……」
「もうめんどい爆弾投げたれ」
「あっ!?」
どうやって襲撃するかなど一切考えずにライブ会場に爆弾を投げ込むレオ。
丁度良いです、私も仕掛けましょうかね。
爆弾が爆発したタイミングを狙って棒を具現化してロコムジカに急接近する。
「ギャーっ!! 何よ急にぃっ!! ────って危な!?」
「外しましたか」
「あ……アンタまたロコの喉を……っ! ヴォア・フォルテ!!」
後ろには観客がいますね。避けては観客に被害が及ぶでしょう……ならば防御ですね。
今度は鋼鉄製の壁を具現化して、ロコムジカの攻撃を防御。……流石に鋼鉄製なら壊れませんね。
「オィ、オマエ何やってんだ?」
「っ!!」
直後、背後からフードの少女……ルベルブルーメの低い声が聞こえた為咄嗟に振り返ろうとするが、身体が動かない…………これは?
「ロコの夢を奪おうとすんじゃねえよ。…………死ね」
「ん!」
「……チッ!」
「助かりました。アリスちゃん!!」
私の身体を拘束した隙に私の喉元にナイフを突きつけていたルベルブルーメだったが、アリスちゃんが人形を操ってルベルブルーメを追い払うと、私を抱きかかえてベーゼの下まで後退する。
今夜はアリスちゃんの好きなものを作ってあげましょう。
「……ねぇノワールちゃん? だから光落ち要員なんだから「嫌ですよ。私が相手を甚振るのは、ベーゼがトレスマジアにイタズラするのと同じようなものなので。それともなんですか? ベーゼは良くて私はダメって言いたいんですか?」……それを言われちゃうと弱い!!」
黒いオーラを噴出していたベーゼであるが、私に論破された事で悔しそうな顔をする。
タダでさえ私のこの趣味は相手を選ばないといけないんです。せっかくある程度までなら痛めつけて良い絶好の相手がいるのに逃すわけないじゃないですか。
「ノワールカーネリアン……! 一度ならず二度までもロコの首を……アイドル出来なくなったらどうするワケ!?」
「知りません。あなたが私を狙うから私もあなたの首を狙う……それだけです。首を狙われたくないならロード団なんてやめたらどうですか? 相手は傷つけるのに自分は傷つけられたくないと主張する腰抜けさん?」
「──っ! もうあったま来た!! 後ろのマジアベーゼらもろとも、ロコのコンサートを台無しにした罪……償わせてあげるわっ!!」
「落ち着けロコ、まずはノワールからだ。……オマエのやり方は流石のアタシでもブチギレ案件でな……楽に終われると思うんじゃねぇぞ……!!」
「あらあら、恨まれてしまいましたねぇ。行きますよベーゼ、レオパルト、アリスちゃん!!」
「う、うん!」
「ん!」ビシッ!
「ってオマエが仕切んなぁ〜!!」
……二人は私に対して大分憤りを見せてますね。ならば二人の注意を出来るだけ私に寄せて、その隙にベーゼに縛ってもらいましょうかね。
次回、エノルミータ+αVSロコルベ