悪の力? でもそれをどう使うかは私の勝手ですよね!?   作:蒼天 極

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うてな、もう大丈夫ですからね〜

 その後不機嫌なまま特売で手早く安売りの商品をゲットするとそそくさと帰宅。

 そして手早く肉や野菜などの材料を切って具材を炒め、水と共に鍋に放り込み弱火で煮詰める。

 さてこれから野菜がほろほろになるまで煮込まないと行けないし、煮込んでる間にうてなに報告でもしておきましょう。

 

「もしもし、うてなですか?」

 

『どうしたのえりすちゃん? というかもしかして怒ってる……?』

 

「怒っては……そうですね、私は今御機嫌斜めです。正確には推しの魔法少女が闇堕ちしそうだったタイミングで横槍が入って、せっかくの闇堕ちフォームが見れなくて落胆したときと同じくらい不機嫌です」

 

『……何を言ってるのえりすちゃん? ダメだよ、闇堕ちなんて絶対ダメ。変身ヒロインは誇りを持つべきであって悪の組織に媚びへつらうなんてあってはならないの。そんなの解釈違いも解釈違いだよ』

 

「何言ってるんですかねこの子は。変身ヒロインも人間、ましてや中学生の少女。だからこそ弱く、ときには闇に堕ちてしまう事もある。そんな心の未熟さを見れるのも魔法少女の醍醐味でしょう?」

 

『はぁ? 心の未熟さならば葛藤と挫折で充分でしょ、一度折れたらまた立ち上がるのが熱いのに、それをせずに闇に堕ちるだなんて断じて認めるわけには行かないよ……?』

 

「ですが葛藤の果てに闇に堕ちるとはそれほど悩んでしまったという事、闇堕ちなしでは果たして本当に葛藤したのかどうか? 疑問が残りますねぇ」

 

『……相容れないね』

 

「そうですね。……まぁそれは明日にでも言葉の殴り合いで決着をつけようじゃありませんか。今日はそれより先に要件を済まさせてください」

 

『まだ話し合いは……そうだね。このままじゃ埒が明かないし、顔を見合わせて決着をつけよ? それでどうしたの?』

 

 ついつい解釈違いによる口喧嘩から初めてしまったが、そんなもの私とうてなの間では日常茶飯事。というか魔法少女オタクのうてなに対して、私はジャンル問わずアニメ全般を広く浅く嗜むタイプであり、そもそも根本的な所が違うのだ。

 まぁ私達の趣味に関してはこれくらいにしておいて早速本題へ……。

 

「黒い妖精に無理矢理悪の女幹部に変身させられました」

 

『えぇ、エリスちゃんも!?』

 

「えぇ、うてなの変身シーンで脅迫されてやむを得ず」

 

『そ、そんな……私のせいで…………』

 

 電話の向こうから重苦しい雰囲気がこっちまで漏れて来る。

 すみませんね、ここは優しい嘘の一つでもつけば良いんでしょうが、私は生粋の正直者なので嘘はつきたくないんですよ。

 ……というのは建前で友達が曇るのってなんだか興奮する。出来ることならこのまま電話を切ってうてなの家に突撃したいのです。ハァハァ

 

『……ご、ごめんなさいえりすちゃん。私のせいでえりすちゃんまで悪の組織に入る事に……』

 

「えぇあなたのせいです。……ですが安心なさい、一瞬の隙をついてスマホを強奪してデータを消してスマホは噴水に沈めてやりました」

 

『……え?』

 

 直後、電話の向こうからの重苦しい空気がこちらに伝わらなくなり、うてなの困惑した様な声が電話から漏れる。

 

『え、えっと……ごめん、えりすちゃん。私聞こえなかったなぁ?』

 

「聞こえなかったなら仕方がありませんね。それではスゥ………………おっと、よく考えたらここアパートだから近所迷惑になりますね」

 

『何をしようとしたのかな、えりすちゃん!?』

 

 え、何ってそりゃあ聞こえないっていうから、大声で叫べば聞こえると思ったんだけど。

 そう伝えると電話の向こうで大ブーイングのうてな。仕方ないですねぇ、それではおふざけなしでもう一回教えてあげようではないか。

 

「黒い妖精の不意をついてスマホを強奪して、スマホ内の動画データを削除。アカウントの削除。ダメ押しにスマホを噴水に投げ入れてやりました。上手い事コントロールして噴水の縁に一度当たってから水に落ちたのでほぼ確実に壊れてるはずです」

 

『……えぇええええええええ!!??』

 

「あ"ぁああああああ!? 耳がぁあああああ!!」

 

 な、なんて女だ。私がやろうとしたらブーイングする癖に自分はやるだなんて…………なるほど。なぜうてなが黒い妖精の餌食になったか疑問でしたが納得行きました!!

 こうも性格が悪ければそりゃ悪の組織の一つや二つ勧誘されるはずですね!!

 

『え、ほんと? ほんとにほんとなの!? すごいよえりすちゃん!! え、てことはもうヴェナさんから脅されることは無いって事なのかな!?』

 

「いてて、耳が……ヴェナさん? ……あぁ、あの黒い妖精の事ですか。まぁ少なくとも私はもうやりませんよ」

 

 そりゃバイト感覚で給料とかが出るならスイーツ代とかこりすちゃんのおもちゃ代とかの捻出の為にやるよ? やりますよ?

 でもあれは明らかに給料くれるタイプじゃ無いんだもん。

 なら自分から魔法少女と戦いに行くだなんていつ大怪我するかも分からない環境に身を置くつもりもない。

 

『そっか、なら私もやめようかな。ヴェナさんが来たら追い払うよ』

 

「そうですか。……おっと、そろそろ煮込みもいい頃合いですかね。それではこれからカレーの仕上げをしなければならないので失礼しますね」

 

『う、うん。えりすちゃんは私の恩人だよ。ありがとね』

 

「恩を感じてるのなら喫茶店の高いスイーツでも奢ってもらいましょうか?」

 

『えぇ!? せめて安いやつでお願い、今月マジアアズールとサルファのストラップとかグッズとか買っちゃったからお金ないの!!』

 

「来月でいいですよ♡」

 

『来月も買う予定のものが色々と──』と最後まで何か言ってたうてなを無視して電話を切る。

 よし、うてなが高いスイーツを奢ってくれるみたいだし、これで今日スイーツが食べられなかった分の代わりになるね!!

 

「おっと、そろそろこりすちゃんの帰ってくる時間ですね。早いとこ作ってしまいましょう」

 

 ガチャ

 直後玄関から鍵が開いた様な音がする。

 どうやらこりすちゃんが帰ってきたみたいだ。

 

「……」ビシッ

 

「お帰りなさい。そろそろご飯できるから手洗いとうがいをして来てくださいね?」

 

「ん!」

 

「そしてご飯の後はお部屋のお片付けをしましょうね。……そんな顔をしてもやりますよ。整理整頓出来ない子はモテませんよ〜?」

 

「!!」( º ㅿº)ハッ!!

 

 確かにそうだって顔で頷く妹。

 もしかして気になる男の子でもいるかな? 気になる子がいるならうちに連れて来てください。ただし料理のレベルや学力に運動神経、性格その他諸々が私が定めた基準を突破してない子とのお付き合いは認めませんからね!! ……なんでそんな目で見るんですか? え、鈍感?

 

 その後、一緒にカレーを食べてこりすちゃんのお部屋の片付けとこりすちゃんの宿題を手伝って終わらせるとお風呂が沸いたアラームが鳴る。

 

「こりす、お風呂沸きましたよ。先に入っちゃって下さい?」

 

「……」グイグイ

 

「え、私もですか? すみません、私はこれから自分の宿題を……」

 

「」フルフル

 

「え、後にしろ? 全く、こりすは甘えん坊ですね。分かりました、では一緒に入りましょうか」

 

「♪」

 

 はぁ、やっぱり日常こそが素晴らしい。明日も明後日もずっと平和な日が続けばいいのに……。

 

「?」

 

「あ、こりす。これは触っては行けませんよ。なし崩し的に持ち帰って来てしまったタダの呪いのアイテムなので」

 

 この十字星のエンブレムは次のゴミの日にでも捨ててしまおう。




 〜おまけ〜

「それにしても……ハァ…………」キュン

「今日はずいぶんと愉しんだみたいだね」

「そっ……そんなわけありませんけど!! ……と言うか手伝うのはもう今日で最後ですからね? えりすちゃんから聞きましたよ? 私を人質に無理やり変身させたんだとか……」

「おや、怒ってるのかい?」

「当たり前です! 私だけじゃなくてえりすちゃんまで……流石に怒りますよ!?」

「あの動画をえりすが見たら流石に引くだろうね」

「脅しのつもりですね!? ……フフン、えりすちゃんから動画とかは全部消してスマホも壊したって聞きましたよ? つまりもう私はあなたの言いなりにならなくていいと言う事! さぁ、変身アイテムは返すのでそれ持って帰ってくだ「バックアップ取ってるよ?」……え?」

「壊された時対策にバックアップ取ってるから新しいスマホ買ったら復元出来るよ? ……消された動画とかも別のUSBに保存済み。……流石に撮ったばかりのえりすの変身シーンはダメだったけど、うてなのは復元出来るから安心してトレスマジアと戦っていいよ」

「…………た」

「た?」

「助けてトレスマジアァアアアアアアアアアア!!!!」
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