悪の力? でもそれをどう使うかは私の勝手ですよね!?   作:蒼天 極

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すみません、サブタイトル変えました。


私は闇が深すぎるんです

 師匠と出会ったのは私がちょうど こりすちゃんと同じ年齢……9歳の頃でした。

 当時私のクラスは俗に言うクラス崩壊というものをしており、授業中にも関わらず騒いでる人や自宅からゲームを持って来ている人までたくさんいました。

 ですが当時の私にとってそんなものは関係なかった。周りの声がうるさくて先生の声が聞こえないなら自分で勉強すれば良いのだから。

 

 ……ですがクラスを崩壊させて暴れている子達はそんな私が鬱陶しかったようでしてね、ある日を境に虐められるようになったんですよ。

 

 最初は持ち物を隠される、上履きを隠されると言ったものでしたが、やはり受け流しているだけでは次第にエスカレートしていくもの。

 日に日に上履きに画鋲を入れられる。着てきた服を破られるなんて事もありました。

 

 

「そしてある日バリカンを持ってきた奴らに私の髪の毛全部剃られてしまいまして……ハゲにされてしまったんですよね」

 

「髪を……!?」

 

 スマホで当時の私の惨状を見せると小夜は青い顔を浮かべて当時の私を見る。

 ……フフッ、最近この写真を見るたびに思いますが、頭を丸めた私と言うのはなんだか笑えてきますね。……え、笑うべきではない? いいんですよ自分のことなんですから。

 

 

 当時のあれは流石に困ってしまいました。なにせ当時お母さんもお仕事が忙しい上に妹もまだまだ幼い。だから虐められてる事を隠していたのに、こんな事をされてはどんなに隠そうとしてもバレてしまうのですから。

 その後私が虐められてる事を知ったお母さんが学校に苦情の連絡を入れたり、私の髪を剃った連中の親に文句を言おうともそれは変わらず、ウィッグで頭を隠して登校してもウィッグを取られて笑い物にされる日々でした。

 

 頭をみんなに見られて笑われても、別に悔しくも悲しくもありませんでしたが、そのとき私は思ったんです。

 

 あぁ……なんて幸せそうな顔をしているんだろう? もしその顔を絶望で歪ませられればどんなに気持ちがいいんだろうって…………。

 

 その思いは日に日に大きくなって行って、でも行動に移そうにも相手は複数人……と言うかクラス全員で私は一人。どうやっても勝てるとは思えず生殺しの日々に悶々とするようになりました。

 

 

「……そう。えりすの相手を傷つけたいって感情はその時に…………」

 

「いいえ。この感情は元々あったんですがあの一件がきっかけで自覚したってだけです。幼い頃からダンゴムシに砂糖水を塗ってアリの巣の近くに設置して食われる瞬間とか眺めてるタイプでしたし」

 

 むしろいじめっ子達には感謝してますよ。この感情に気がつくきっかけをくれたんですからね。

 おかげで幼いこりすちゃんが笑うたびに、お母さんが笑うたびに込み上げる得体の知れない感情の正体について知ることが出来たんですから。

 

 

 ……話を戻しますが、そんな生殺しの毎日に嫌気がさした私はお母さんからも、もう学校に行かなくていいと言われてたのもあり、学校をサボってあてもなく街を散歩していたんです。

 そしてその際に魔物に襲われて、もうダメだと思ったその時に当時魔法少女だった、マジアカーネリアンが助けてくれた。

 

 それが私と師匠の出会い。

 

 私はマジアカーネリアンに憧れて、私も魔法少女になりたくて、当時の師匠にストーカーと同じレベルで付き纏って弟子にして欲しいと懇願したんです。

 雨の日も風の日も休日だって街中を歩いて師匠を見つけて、弟子入りを懇願し続けましたね。

 

 

「その度に師匠は言ってましたよ。お前は私に憧れているんじゃなくて、アタシの持つ力に惹かれているんだって。そんな私を魔法少女にはさせられないって。……当たり前ですよね」

 

「…………」

 

 

 ですがそれでも諦めきれなくて、何回も何回も彼女に頼み込んで遂に師匠も根負けしたんです。

 

「魔法少女にはさせられないけど、いじめっ子をぶっ飛ばせるように鍛えてやる。アタシは鬼だけど逃げ出すんじゃないよ!」

 

 そう言って師匠は暇さえあれば私をジムに連れて行ったり、公園なんかで身体を鍛えてくれましたし、人としての在り方なんかも教わりました。そういえば修行を頑張れば喫茶店でスイーツを食べさせてくれましたね。……私がスイーツが好きなのはその名残なんです。

 

 

「結局不登校になった私にとって師匠との時間は楽しくて、かけがえのないものになっていったんです」

 

「そうだったのね。……でもこれでわかったわ。あなたが魔法少女をやれない理由……お師匠様に止められてたからだったのね」

 

「いいえ違います。当時の私はあわよくば魔法少女の力をと考える野心家でしたから。それとは別に魔法少女の道を諦めるきっかけがあったんです」

 

 

 私が師匠と出会ってから一年経った夏の日の事だった。修行の途中に師匠が倒れたのは。

 私はすぐさまお母さんに連絡をして、師匠を病院に連れて行ってもらいお医者さんに見てもらったんです。

 

 ……師匠は末期の癌でした。

 

 師匠は癌だったのを分かった上で無茶して魔法少女業をやっており、後数日持つか持たないかと言う所まで癌を放置していたんです。

 

 

「抗がん剤治療とか面倒くさいことをするくらいなら、短い命を全力で生きたかったんですって。呆れたものですよね、急にそんな事を言われて当時の私はショック受けましたよ。絶望しましたよ」

 

「…………」

 

 

 そして師匠は私に自らのトランスアイテムを渡しました。

 師匠のトランスアイテムを渡されたとき、すごく悲しかったですが、それと同時に喜びがありました。

 師匠が遂に魔法少女として認めてくれたんだと。師匠が私に力をくれたんだと。

 

 ですが私が嬉々として変身しようとして……変身は出来ませんでした。

 私の本性が危険すぎるから。魔法少女よりも悪の組織が向いているから変身できないんだと……そう言ってましたね。

 

 

 ◇

 

 

「…………私が師匠からトランスアイテムを受け取った数日後、師匠は亡くなりました。遺族の方のご厚意でお通夜とお葬式に参加して師匠を天国にお見送りしてからは、結局中学校に上がるまでは不登校で家事をしてたり、妹の面倒見たり、ジムで身体を鍛えたりしながら弱い自分と見つめあっていたんですが、結局変身できずに今に至るってわけです」

 

「……そう、だったのね」

 

 ってなに泣きそうな顔してるんですか。

 確かに私の半生はちょっとだけ重い自信はありますけど、今ではいい思い出なんで同情はいらないですからね!?

 

「それにしては重すぎるわよ。酷いいじめを受けて、お師匠様も死んじゃって……!」

 

「ほら、そんな顔をしないでください。私が過去を話したのは、これを魔法少女狩りで得たものと勘違いされて大切な形見を没収されたくなかっただけなんですから」

 

 本当に没収されたくないならトランスアイテムなんて取り出さなければいい話ではあるんですが、一度変身して見せて変身できない事を知ってもらわなければ諦めてくれないでしょうからね。

 

「……師匠には申し訳ないんですが、流石に中学にもなっても変身出来なければ諦めもつくものでしてね。私には魔法少女の才能がないと結論づけてすっぱり諦める事にしたんです」

 

「そんな事ないわ! だってあなたノワールに変身できるじゃない! ならトレスマジアにも……お師匠様のトランスアイテムをヴァーツに見てもらいましょう? もしかしたら壊れてるだけかも知れないわ!!」

 

 さり気なく失礼なこと言いますねぇ!

 壊れてませんよ、師匠が倒れる直前までこれでしっかり変身出来てたし、倒れた際の衝撃くらいで壊れるものでもないでしょうが!?

 一瞬ムッとしながらも、小夜には悪気はないのでこの件は流して、エノルミータのトランスアイテムでノワールに変身する。そして手袋を取って星を小夜に見せる。

 

「これは星? マジアベーゼやネロアリスにもあったけど……」

 

「どうやらエノルミータでは星の数が強さの指標になっているらしいです。星は多ければ多いほど強いんですが、私の星の数は離反したかつてのエノルミータのトップと同じ数だそうです」

 

 すぐに変身を解除。一瞬だけにしておかないと、周りが騒ぎ出してしまいますし、最悪ベーゼとかトレスマジアとか来られても面倒臭いですからね。

 

「トップと同じ……てことはえりすはそれだけ強いってこと!?」

 

「はい。そしてそれはつまりエノルミータとしての力が……トレスマジアとは正反対の力が強いと言うことです。……私は闇が深すぎるんです」

 

 そこまで言うと立ち上がる。しっかり休めましたし、今日はここで失礼させていただきましょう。

 

「誘ってくれたのは本当に嬉しかった、ですがもう誘わないで下さい。一度魔法少女を目指した私としては、現実を叩きつけられて少し悲しくなってしまうので。それでは私は帰りますね、それでは」

 

「あ、ちょっとえりす!!」

 

 私は呼び止めようとする小夜を放って帰路につく。彼女は現在疲労困憊、正直立つのも辛いでしょうし今の隙に逃げさせていただきますよ?

 これで諦めてくれればいいんですが…………。




 〜おまけ〜

 過去の回想中……

「あ、そう言えばえりすの髪を剃ったいじめっ子には仕返ししたの? もし良ければ私が怒ってあげるけど……」

「心配には及びません。あの人達私のザマをネットにアップしまったせいで大炎上して、住所特定されたんで。みんな引っ越してしまいましたし、残った人の中には中学で復学した時に絡んできた人もいましたけど、エスカレートしてまた髪の毛切られてもたまったもんじゃないので秘密裏に処理しました」

「処理?」

「と言っても大したことはしてないですよ。階段を降りるタイミングを予測して事前にそこにワセリン塗って置いて階段から……あ、なんでもないです」

「…………そう言えば一年の頃にクラスメイトが階段から落ちて大怪我を……あれえりすの仕業だったのね」

「心配しなくても他の人が滑らないようにとか、落ちた先の人を巻き込まないようにとか配慮はしっかりしたんで大丈夫ですよ?」

「大丈夫じゃないわよ? 被害者の子、頭を強く打って脳に障害が残ったんだから。ちょっと正座しなさい。バラす気はないけどお説教だけはさせてもらうわよ?」
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