悪の力? でもそれをどう使うかは私の勝手ですよね!? 作:蒼天 極
「はぁああああ!!」
「くぅ! ……はぁっ!!」
「カハッ!!」
アズールの一閃をランスで受け止めて、再び回し蹴りを彼女の腹に打ち込む。
この形態では筋力に補正がつく為、一撃でも貰えば大ダメージ。痛いのが気持ち良くなってしまうとしてもこれは辛いでしょう?
「くぅ……まだよ!!」
「っ!? まさかあれで立ち上がるとはねぇ!!」
しかし流石に近接では分が悪いと察したんでしょう。バックステップからの氷の剣の射出に切り替えたアズール。
飛んでくる氷の剣を回避、ランスでも防御、具現化の能力での相殺をしながら、隙をついてアズールにランスを投げる。
「っ!」
「さぁ、近接で戦いましょうねぇ!!」
「しまっ……!!」
彼女の右足に足枷と鎖を具現化して、鎖を引っ張り距離をとっていたアズールを無理やり引き寄せる。
そして引きずられながらもなんとか氷の剣で鎖を斬ろうしていたアズールの右肩を思い切り踏みつける。
「あぁっ!!」
「……この状態でどう対応してみますか?」
「…………こうするわ!!」
「おっと」
左手に新たに呼び出した氷の剣で攻撃を加えようとしていたので咄嗟に回避。
ゆっくり立ち上がったアズールは、肩で息をしながらも笑ってみせた。
「無駄よ、あなたの攻撃は私には効かない……!!」
強がっているのではなく、本音で言ってますね。しかも顔赤らめてますしヨダレも出だしちゃって……アズールのMっ気は私の想像以上のものみたいですね。
「ですが動きにいつものようなキレがないですよ。昨日のジムでの疲労……残ってるんじゃないですか!? 私のことが心配だからと焦りすぎましたねぇ!!」
「そんなものハンデにすぎないわ!!」
「ほぉ、星四相手に随分と余裕ですねぇ!!」
アズールは真っ直ぐこちらに突っ込んでくると、私に対して刺突を放ってくる。それに対して私もランスの突きで応戦。
「く……うぅ……絶対に負けないわ……!!」
「残念ながらそれは無理な話です。刺突に関しては剣よりもランスの方が強く、そして氷の強度もたかが知れています。それでまともに打ち合おうなんて間違いなんですよ!!」
「うぁあああ……っ!!」
武器の差で押し負けてしまったアズールは吹っ飛ばされて、木に叩きつけられてしまう。……あ、血を吐いてしまいました。流石にやりすぎてしまったでしょうか……?
「う……くっ……まだよ。まだ私は負けてないわ……」
「いいえ、私の勝ちです。これ以上は命に関わりますよ!?」
「……別に構わないわ。あなたを倒せるなら…………!!」
「何を言ってるんですか、このバカっ!!」
私なんて命を賭けて倒すような相手じゃないでしょうに!!
仕方ありません! 気絶させて治療してしまいましょう!!
「そんな身体で何が出来ますか! 今回は私の勝ちです。どうしても勝ちたいならば別の機会になさ「何してんねん、このボケがぁああああああ!!!!」がはっ!!」
倒れながらもなんとか戦闘を継続しようとするアズールの後頭部に手刀を入れようとした刹那、背後から強い衝撃が走り吹っ飛ばされて私も木に叩きつけられる。犯人は……サルファですか。
なるほど、このシーンだけ見れば私が一方的に痛めつけているように見えますからねぇ。
「アズール、大丈夫!? しっかりして!!」
「やってくれたなノワールゥ。アンタん事を信用しとったアズールをよくもまぁこんなに甚振って「やめてサルファ! これは私がお願いしたの!!」……はぁ?」
私が裏切ったと勘違いしたサルファが、すごく冷たい顔で両拳を打ちつけながらこちらに来ていたがアズールの一言でアズールの方を見る。
「な、なんでそんな事を……修行だからって無茶しすぎだよ!!」
「いいえマゼンタ、これは修行じゃない。ノワールと……もう誘わないでって言ったときにとても寂しそうな顔をしていたえりすと向き合うための戦いよ!!」
「だからって……え、えりすちゃん? もしかしてノワールってえりすちゃんなの!?」
「……驚いたなぁ。最近やけに仲良いと思っとったら、そう言うことやったんか……」
あ、あのアズール?
限界近くて頭が回ってないのは分かりますがこんな形で正体を明かすのやめてもらっていいですか? これ戦いが終わった後絶対に面倒くさいことになるパターンじゃないですか……。
「……ごめん、どいててマゼンタ。これは私の戦いだから一人でやらせて…………」
「あ、アズール!!」
マゼンタの制止を押し切って無理やり立ち上がったアズールはおぼつかない足取りでゆっくりとこちらに歩いてくる。
それを見たサルファは盛大にため息を吐く。
「……ウチらを蚊帳の外にして何やってたかは後で聞くわ。理由も聞かずぶん殴って悪かったなぁえりす」
「……これで二回目。殴られ損なんで今度ケーキバイキング奢ってくださいね薫子さん?」
「はぁ、こっちこそ殴り損やわぁ……。ほら行くでマゼンタ、喧嘩しとったんなら邪魔するのは野暮や」
「う、うん……」
喧嘩の邪魔をした野暮なサルファがマゼンタを連れて離れたところまで下がる。
……よし、これで決着をつけられますね…………おっと、その前に……
「サルファのダメージ分は回復させていただきますよ。でないとあなたは納得しないでしょう?」
「……えぇ」
回復ポーションを飲んでサルファに殴られたダメージを完全回復させると、震えながらも剣を構えたアズールにランスを向ける。
「……いくわよ?」
「……いつでもどうぞ」
氷の剣とランスをぶつけ合わせる私達。
満身創痍のアズールの一撃を軽く受け止めながら反撃を行い、アズールもなんとかギリギリ剣で受け止め続ける。
「……くっ、うぅ……!」
「私と向き合うですって? 別に向き合っていただかなくてもこちらは問題ないんですがねぇ!!」
「…………嘘よ。問題がないんだったら、あのときの寂しそうな……悲しそうな表情はなんだったの!? 魔法少女になれない事が……本当は悲しいんじゃないの!?」
「えぇ、悲しいですよ! 現実を叩きつけられると悲しいと言ったでしょうが!!」
「えぇ! だからこそ私はあなたに向き合って……勝つの!!」
「私に向き合う? 私に勝つ? 自分とも満足に向き合えないあなたが? バカも休み休み言いなさい!!」
そう言ってランスに力を込めてアズールの剣を破壊して薙ぎ払ってやろうとしたが、アズールの氷の剣は壊れない。それにアズールすらも押し込むことが出来なかった。
……一体どこにこんな力が?
「……全く持ってその通りだわ。私はまだ自分と向き合えてないし、私だけの武器だってイメージは出来ていない。でも…………っ!!」
直後アズールの力が異常なまでに上がる。私でも抑えられないくらいに……!
「く……なんですかこの力は……!?」
「でもそれは……私が落ち込んでいるときに励ましてくれたあなたを……私の我儘に付き合ってくれた優しいあなたを……放っておく理由にはならないわ!!」
「ぐぅ……!?」
……これほどの凄まじい力……これ以上の鍔迫り合いは危険でしょうか……?
「私は助けたい……! エノルミータから街の人達を……友達を……家族を……そして、目の前で寂しがって、悲しんでいる大切な親友をっ!!」
「くぁ!!」
押し負けて吹っ飛ばされてしまった。
イタタ……まさか離脱するより前に押し負けてしまうなんて……。
そんな事を考えながら立ち上がると、アズールに異変が起きていた。彼女の身体から凄まじい量の魔力が溢れ輝き出したのだ。
これは…………。
「な、なんやあれ……!?」
「何が起きたの!?」
「あ、あれは……アズールは魔法少女として新たなステップに上ろうとしているんです!!」
ヴァーツの言葉に、昔師匠は言っていた事を思い出す。
魔法少女の力は想いの力。想いが溢れたその時魔法少女は覚醒して新たな力を得ると。確か名前は…………
「
そう唱えたアズールはボロボロの衣服が消えて、巫女のような、天女のような美しい姿に変貌する。
マジアアズール
「……すごい。力が溢れるわ……!」
「……なーんだ。向き合えてないとか言って、ちゃんと向き合えてるじゃないですか…………。まだ続けられますね、アズール!?」
「……えぇ、もう負けないわ。いくわよ、えりす! あなたの全力……受け止めてみせる!!」
「っ!!」
…………あぁ、小夜。なんて素晴らしい顔をするんですかあなたは。
そんな顔をされるとぶち壊したくなる。その真っ直ぐな瞳を濁させて絶望に落としたくなるというのに……!!
……ですが流石にここでこの性癖を表に出すのはダメですよね…………。
「良いでしょう! チュートリアルだと思って油断してたら大怪我しますよ。小夜!!」
マジアアズール覚醒。
本編では正義感にドMが重なった結果真化出来るようになりましたが、こっちでは正義感とドMに加えてえりすへの気持ちが重なって真化の領域に達しました。