悪の力? でもそれをどう使うかは私の勝手ですよね!? 作:蒼天 極
覚醒したならばまずはどう動くべきでしょうか? ……取り敢えず牽制目的で一発打ってみますかね。
ランスに魔力を込めると、それを思い切り投げる。
アームドスタイルで強化された膂力で投げられたランスは真っ直ぐアズールの方へ飛んでいく。
「さぁ、これを防ぐのは危険ですよ? 回避してはいかがですか?」
「大丈夫よ。はぁ!」
アズールは身に纏っていた羽衣を操ってランスを絡めとる。
へぇ、この一撃を受け止めますか。ですが止められたときの対策はしているんですよ!!
直後ランスが爆発を起こし、アズールはその爆発に巻き込まれてしまう。
「ランスに魔力を込めて爆発するように具現化し直しておいたんですよ。だから言ったじゃないですか。チュートリアルだからと油断したら大怪我する「……これは何かしら?」……え?」
煙が張れると、爆発の衝撃で衣服のあちこちがコゲ、顔に煤をつけながらも無傷なアズールがいた。
結構強い爆発だったはずなんですが……どうやらアズールは防御型に進化したみたいですね。
「痛みはあるし、とても気持ちがいい……。でも快楽の中に暖かいものがあるの。これはなんて現したら良いのかしら……?」
「暖かいものですか? 確かに爆発の熱気ならありましたけどねぇ……それにしても随分と余裕そうですね。ではこう言うのはいかがでしょうか?」
積乱雲を周辺に具現化。その直後大粒の雨粒が大量に私達の身体に打ち付けられる。
……水属性のアズールに対して水をバラ撒くなんてぶっちゃけ危険すぎるんですが、この一撃で沈めれば良いですもんね。
「天雷!」
「くぁあああっ!!」
直後積乱雲から雷の槍がアズールに目掛けて降り注ぎ、それは彼女を貫く。
……雨に濡れたことで回避したとしても感電は避けられない。いくら防御が堅牢といえども自然の力には逆らえない。……さぁ、どうですか?
「やっぱり感じる、暖かいものを」
「……マジですか」
ボロボロになりながらもそう言ってのけるなんて……真化、こんなにも強化されるものなんですか?
もうノワールサンクチュアリで結界内に閉じ込めて、真化を強制解除させる以外に勝つ方法はないかと考えていると、考え込んでいたアズールが顔を上げた。
「そう。これは愛なのね……」
「愛? ……そりゃ確かに私の攻撃はいつも愛情山盛りですけど」
「とても真っ直ぐで優しい愛……。どうやら私は攻撃の中に込められた愛を受け止められるようになったみたい。……これならもう砕けることはない。あなたの攻撃も、ベーゼの責めだって全てを受け止めてあげられるわ!!」
そう真っ直ぐ私に宣言したアズール。……素晴らしい。素晴らしいです!!
今のあなたはベーゼに堕ちかけて、情けなくて泣いていたあの時の姿が嘘のように凛々しく輝いてますよ!!
「結界に閉じ込めて真化を強制解除させようと考えた自分を恥じています。……これほどの輝かしい姿、こちらも真っ直ぐ受け止めた方がいいですよね!!」
「えぇ、……今度はこっちから行くわよ。羽衣・白藍、剣之型!」
アズールは纏っていた羽衣を束ねて剣の形にするとこちらに斬りかかってくる。
それに対して私も再びランスを具現化して打ち合う。
「くっ……それがあなたの武器……。ちゃんとサルファの言葉も自分のものにしていますね!!」
「えぇ。私がこの領域に辿り着けたのはみんなのおかげよ!!」
「っ!?」
直後剣の形になっていた羽衣がハラリと解けると、流水の如く羽衣を鞭のようにしならせてこちらに振るってくる。
なるほど羽衣だからこそ出来ることですね……ですが!!
「甘いですよ!!」
「なっ!?」
羽衣を剣にしてるからそう言う事をしてくるって予想はしてたんですよ!! 羽衣を掴んでアズールをこちらに引き寄せると、彼女の腹に蹴りを叩き込む。
「カフッ……はぁ!」
「っ!?」
蹴りを入れて一瞬だけ苦悶の表情を浮かべたアズールだが、すぐさま私へ反撃をしてきた。
そのまま私達は再び至近距離で打ち合いを始める。
「もっと打ち込んで来なさいえりす! 全部、受け止めてあげるから……!!」
「……いいこと言ってますがヨダレ出てますよ! 痛みを快楽に変換して痩せ我慢してるだけでしょう!? 別に無理しなくていいんですよ!!」
「えぇ! 私は痛いのを気持ちいいって感じちゃう変態だもん!! 愛を感じるようになってもっと気持ちよくなっちゃった……!! でも変態だからこそ……あなたの全力を一身に受け止められるのよ!!」
真化の領域に至った時点で分かってはいた事ですが、しっかりと欠点をも克服しているみたいですね。
……耐久力が上がったアズールに対していつまでも近接でちまちま削るのも時間がかかる。ここは大技で決めさせていただきましょう。
「はぁ!!」
「くぅっ!!」
羽衣の剣を振るっていたアズールを引き剥がすと、瞬時にスピードスタイルに姿を変えて距離を取る。
そして巨大な粒子砲を呼び出して彼女に照準を向ける。
「……この一撃に全ての魔力を使わせていただきます。つまりこれを撃って耐えられてしまったら私の負けは確定……さぁ、避けずに耐えてみてください!!」
「ってアホォ!! さっきの落雷もそうやったけど流石にそれは殺意高すぎやろぉ!! アズール消し炭になってまうわ!!」
「アズール避けてぇ!! 死んじゃうよぉ!!」
流石にこれは危険だと思ったのかサルファとマゼンタが青い顔をして止めようとするが、そんな二人をアズールは手で制すとこちらにニコリと笑いかけて構えを解く。
「……さぁ、来なさい! あなたの全力の愛……溢さずに全部受け止めてみせる!!」
「よく言いました!! ではこの一撃で沈むんじゃありませんよ……っ!!」
これはなんとしても相手を倒したいときのために編み出した、私の最後の手段…………ですがあなたならこの程度の一撃耐えることが出来ますよね?
「マテリアライズブレイカァアアアアッ!!!!」
私の掛け声と同時に粒子方から極太の光線が射出されアズールに襲いかかる。
アズールは笑いながら無抵抗でそれを受け入れ、光線の中に消えていった。
…………さぁ、どうですかアズール? 果たしてあなたはその一撃を受けてなお立ち上がって見せますか……?
「……くっ!」
私の魔力が完全に切れて、立ちくらみで膝をついたと同時に粒子砲は消え、私の攻撃は止まる。
力が抜けて辛い身体を無理やり起こしてアズールの方を向くと…………。
「……やはり、耐え切ってくれましたね」
「えぇ……。今度はこっちの番よ」
そう言ったアズールは目の前に羽衣を円型に展開すると、そこに魔力が溜まり始める……。
「愛は愛で返さなければ……。全力……受けてくれる?」
「…………ま、あなたは無抵抗で私の必殺技を受けたのに、私だけ逃げるって言うのも違いますしね。……いいでしょう! こちらもあなたの全力の一撃、受け止めてやろうじゃないですか!!」
どの道魔力切れで避けることすら難しい。
ならば私の本気の一撃を耐え切ったアズールに敬意を表して、こちらも無抵抗で受け入れるのが礼儀というもの。
「さぁ、撃ってみなさい! あなたの必殺技……!!」
「えぇ、──愛のアヴァランチッッッッ!!!!」
アズールの掛け声に合わせて、円を描いた羽衣の中心から青白い極太の光線が私に襲いかかる。
私はアズールを見習って一切の抵抗をせずにその光線を受け入れる。
「く……う……っ! うぁあああああああああ!!」
激しい衝撃と冷たさ、そして全身の痛み……ですがその中には暖かいものがあって…………なるほど、これがアズールの感じていた愛ですか…………。
あぁ、これは私の負けですね────。
決着!!
勝者はアズールでした。まぁ、途中で覚醒なんて勝ちフラグを建てていましたし当たり前ですね。