悪の力? でもそれをどう使うかは私の勝手ですよね!? 作:蒼天 極
「……ん…………」
……ここはどこでしょうか?
ここは……部屋? 一体どうして……確か私先ほどまでのアズールと戦ってたのに。
そんな事を考えていると私のすぐ隣から寝息が聞こえ、チラリとそちらを向くと小夜が寝ていた。
「…………あ〜、はいはい。大体分かってきましたよ」
大方アズールのあの一撃を受けた私は意識を失ってしまい、無茶をしていたアズールも撃ち終わった直後に倒れてしまったのでしょう。
そしてマゼンタとサルファに運ばれたと。と言う事はここはトレスマジアの誰かの家って事ですか。
「……ん」
私の置かれた状況を把握してマゼンタとサルファに運んでくれたお礼を言いに行こうかとベッドを出ようとすると、小夜も目が覚めたようでゆっくりと身体を起こす。
「起きました?」
「あ、おはよぉ、えりす………………え、えりす?」
寝ぼけてたように挨拶をする小夜であったが、何故かピタリを動きを止めて顔を真っ赤に染め上げていく。
「どうしました? 無茶しすぎて熱でも「ひゃぁぁああああああ!!!!」うわっと!?」
突如大声で叫ぶ小夜。ちょ、やめて下さいよ近所迷惑でしょうが!!
「ど、どど……どうして私とえりすが一緒の布団で寝てるの!?」
「私も起きたらこの状況だったので分かりません。と言うか隣で眠っていたくらいで流石に動揺しすぎではありませんか?」
「だって……だって…………「大きな声聞こえたけど小夜ちゃん大丈夫!?」あ、はるか……」
小夜の声が別の部屋にも届いたのだろう。慌てた様子のはるかさんが部屋に飛び込んでくる。
そして彼女に続くように薫子さんも部屋に入って来た。
「なんやのもう、うるさいなぁ……。なんかやったんか自分?」
「いいえ、私の顔を見るなり急に叫んでしまい……。全く失礼しちゃいますね」
「う……ご、ごめんなさい」
ようやく小夜も自分の置かれた状況を把握したのか、俯いて小さく謝罪をした。
それを見て何もなかったと判断した薫子さんは腰に手を当てて「それで?」と続ける。
「ノワールの正体がえりすだったのは一旦置いとくわ。どうしてあんなガチな喧嘩しとったん?」
あぁ、それは私も気になってたんですよね。
私も本気で戦って欲しいと言われたから戦っただけで、戦闘中に向き合うとか言われてましたけど正直戦う事と向き合う事がどう繋がるのか理解してないですし……。
今回の勝負の発端となった小夜に視線を向けると、私の方を向き直る。
「今回の戦い、ほとんど同時に倒れたとはいえ私の勝ちよね?」
「そうですね。私が先に倒れましたし、何よりあの場にマゼンタとサルファが来ていた時点で引き分けに終わったとしても私を煮るなり焼くなり出来た……。完敗です」
「そう。なら言わせてもらうわ、えりす。…………私はあなたに勝ったわよ。エノルミータの元トップと同じ強さのあなたに、私一人で……」
彼女はそう言って私の両手を包むように握る。
「あなたは言ったわね。トレスマジアの正反対の力を持ってるって、闇が深いって……。でもそんな事はなかったわ、なにせ私でも倒せちゃうくらいなんだもん!!」
「っ!!」
そう言う事ですか……。
私の闇が深いのは自覚していましたが、それはちょっとしたコンプレックスになっていた。でも小夜は私のエノルミータの才能に対して真っ向から討ち倒すことでその事を否定しようとしてくれたんだ……。
「あなたが相手を甚振るのが好きなのは認めるわ。でも大丈夫。あなたはそこまで闇は深くない。私が保証するわ。だからもっと自分に自信を持って!!」
「……ありがとうございます。元気づけようとしてくれてたんですね」
口ではなんとでも言えますが小夜は私に勝つ事で証明をしてくれた。今はそれがとても嬉しいです。ありがとう小夜…………ですが
「これを見てもそれは言えますかねぇ?」(ゲス顔)
「え? …………え? さ、流石にこれは……」
そう言ってスマホを操作して、ロコルベをお死おきした結界内の様子を納めていた動画を再生すると、動画の内容に小夜は顔を青くする。
フフフッ、私の闇を舐めすぎましたねぇ。さぁ、これを見ても闇が深くないと言えますか!?
「えっと……うん。相手をちゃんと選んでるからあなたはまとも……だと思うわよ?」
「目を逸らさずに真っ直ぐこっちを見て言ってくれませんか?」ニヤニヤ
「……あんたええ趣味しとるなぁ。もうここでトドメ刺した方がええんちゃう?」
「ま、まぁまぁ……。そう言えば小夜ちゃんとえりすちゃんって前から正体知ってたんだよね? 何があったのかいい加減教えてもらってもいい? 話についていけなくって…………」
◇
その後改めてはるかさんと薫子さんに、私と小夜が正体を知った経緯や昨日の事などを私の過去を含めて事細かく説明すると、突如はるかさんが泣き出してしまった。
「えりすちゃん苦労したんだねぇ! うぇぇええええん!!」
「泣きすぎやろはるか。……にしてもなるほどなぁ。闇堕ちしかけたって謝りきたときに憑き物が落ちた顔しとったけどあんたが励ましてくれてたんやね」
「大した事はしてませんよ」
ぶっちゃけ私は引退を薦めただけで後は勝手に立ち直りましたしね。あれなら私がいなくても勝手に立ち直ったんじゃないでしょうか?
そんな事を考えていると、小夜がついて来ていたヴァーツに目を向ける。
「ねぇヴァーツ。えりすが持ってるマジアカーネリアンのトランスアイテムなんだけど、もし壊れてるなら修理できないかしら?」
「いいえ、これは壊れてません。……ですが変身できないというのはおかしいですね」
「え?」
ヴァーツ曰く、トレスマジアのトランスアイテムとエノルミータのトランスアイテムは属性が違うだけで性質は同じなため、ノワールに変身できる私ならばトレスマジアに変身できるとのこと。
……つまり闇が深いというのは実は関係ないようだ。
「え? ……て事は私がえりすと戦った理由って…………」
「だ、大丈夫だよ小夜ちゃん! おかげで真化を習得できたんだから!!」
ガックリと項垂れてしまった小夜をはるかさんがなんとか励ます横で私は思案する。
……ですがそれならなぜ私は変身できないんでしょうか?
師匠は自らの欠点と向き合えと言いましたね、それに自分磨きをすれば魔法少女に変身できるとも。
だから私は自らの悪い所であるリョナ好きな一面と向き合って来ました。
その感情を受け入れたにも関わらず変身が出来ないのは私の闇が深すぎるからと考えてましたが、それが関係ないと言う事は根本的な所を間違えていたと言う事でしょうか?
「…………」
『あなたの闇はそこまで深くない。私が保証するわ。だからもっと自分に自信を持って!!』
「…………自分に自信を持つですか」
…………ちょっとやってみましょう。
「私を信じる…………。
師匠の遺したハートのエンブレムを手に持ってそう唱えると、トランスアイテムが輝き出した。
「え、えりすちゃん!?」
「え? も、もしかして……!!」
……そっか、そうだったんですね。
私は今まで自らの欠点、闇と向き合うあまり自分に自信が持てていなかった。だから無意識的に変身することを拒否してしまっていた。
私の本当の欠点は闇なんかじゃなくって自分自身に自信が持てなかった事だったんだ……。
「……小夜、ありがとうございます」
「え?」
「自信を持つ事、それが私に足りなかったものだったんです。それをあなたが気づかせてくれた。私と戦ってくれた事……無駄じゃなかったよ…………!」
やがて光が止み、私はゆっくりと目を開ける。
これが私の魔法少女としての姿…………!!
「…あれ?」
「……いや、なんで全裸やねん?」
薫子さんの指摘の通り、今の私は何も身に纏ってない生まれたままの姿。
一体どうして…………あー、なるほど。そう言う事ですか。
「も、もしかして失敗しちゃった!?」
「そんな……せっかく本当の欠点と向き合えたのに……!!」
「安心してください、小夜、はるかさん。単純に魔力切れだから衣装の構築が出来ないだけです」
よく考えればついさっき魔力全部を必殺技に使ってしまいましたしね。気絶した間に魔力回復したかと思ってましたがそんな事なかったみたいです。
仕方がない為変身を解除して元の姿に戻る。
「…………これは魔力が回復した時のお楽しみにしましょう」
「そうね。……ねぇ、えりす。改めて誘ってもいいかしら? 私達とトレスマジアをやりましょう?」
そう言って手を差し出してくる小夜。
私が本来トレスマジア入りを拒んでいたのは、変身が出来なかったからであり、小夜のお陰で勧誘を断る理由は無くなりました。
ですがはるかさんと薫子さんは大丈夫なんでしょうか?
「……私でいいんですか?」
「うん! ノワール……えりすちゃんなら大歓迎だよ!!」
「なかなかおっそろしい趣味持っとるけど、それを言ったらウチかて敵を気持ちよくぶっ飛ばす為にトレスマジアやっとるからなぁ……。妹の不始末はキチンととってもらうで?」
そう言って笑うはるかさんと薫子さん。二人はどうやら大丈夫みたいですね。
「……ではよろしくお願いします」
「えぇ、よろしくねえりす!!」
小夜の手を握ると、彼女は満面の笑みでその手を握り返してくれた。
……魔法少女は一度は諦めた夢ですがやるからには全力で務めさせていただきましょう。私を魔法少女に導いてくれた小夜に報いる為にもね!!
えりすが魔法少女に変身できなかった本当の理由は自身の悪い事を自覚するあまり自信を持つ事が出来なかったからです。
ですが小夜に励まされた事がきっかけで変身出来るようになり、トレスマジアの一員になりました!!
〜おまけ〜
その夜……
「〜♪」
「……」
「〜♪」
「……」グイグイ
「おや、どうしましたこりすちゃん?」
「?」
「え、とても機嫌がいいけどどうしたのか? フフッ内緒です♪」