悪の力? でもそれをどう使うかは私の勝手ですよね!? 作:蒼天 極
街のスライムはアズールに任せて、転移門をくぐりナハトベースへやって来た私は建物に入りベーゼを探す。
流石の私でも蘇生薬なんかを具現化出来るかどうかは分からないため、ベーゼがピンチならば死ぬ前になんとか合流しなければならない。
ぶっちゃけベーゼの死に様には興味あるんですけど、流石に友人と二度と話せなくなるのは嫌ですしね。
「フン……やはりこの程度か。そのまま眠るがいいマジアベーゼ」
「ん?」
しばらく建物を探し回っていたが、声のした方向に向かってみると一番広い所に出る。
そしてそこにはスライムで拘束されたベーゼと、彼女の近くに和服の女性が立っていた。
「……どうやらあなたがロードエノルメみたいですね」
「……ノワールカーネリアンか」
「ノ、ノワールちゃん……」
ロードがこちらに振り向くと彼女の額には四つの星…………分かってはいましたが私と同格という事ですか。
対応するのが面倒くさいし、星四つと言う情報が間違いだったらどれだけ良かったことか……。
「裏切り者の貴様がなにをしに来た? よもや今更になって我が僕になりに来たとは言うまいな?」
「んなわけないでしょう? 街にばら撒いたスライム兵のせいでお気に入りの喫茶店が壊れたからお礼参りに来たんですよ。最も今ここで降参して街にばら撒いたスライム兵と……そうそう、ベーゼの拘束も全部消すならばトレスマジアに突き出すだけで許して差し上げますが?」
「……フッ、よもやそんな下らない理由で勝負を挑みに来るとはな。貴様が私と同格なのは知っているが、魔法少女狩りをして力をつけた私と魔法少女の真似事をしていただけの貴様……一体どちらが上かなんて分かりきっているだろうに」
「どちらが上かなんて関係ありませんよ。ムカついたから殺す、それだけです」
直後私の首にロードの鞭が巻き付くと、私の首をこれほどかと言うほどに締め上げ呼吸を出来なくしてくる。
おやおや。話し終わってないのに攻撃を仕掛けてくるなんて、とんだ悪の組織のボスもいたもんです。
「クッ……」
「吠えるな小娘。貴様如きに何が出来る?」
そう言って近くに控えていたスライム兵に命令して、ベーゼほどの厳重なものではないとは言え私も拘束される。
……服が解けてますし肌もヒリヒリ痛い。このスライムは弱いですが酸性だったんですね。
それにしても拘束したら首の締めを弱めるとは随分と甘ちゃんですねぇ。私だったら死ぬ直前まで締めてから解放して、落ち着いたら再び締めてを数セットやるというのに……。
「貴様は後でじっくり相手をしてやろう」
そう言ったロードはベーゼの方を向く。
……え、具現化の使い手の私に対して拘束程度で済ませて背中を見せるってどんだけ自分の実力に自信あるんですか?
「ノワールちゃ……ぐ……!!」
「まだ動くか。私に歯向かえばこうなる事は分かっていたであろうに。何故我が野望に歯向かった? 破滅主義者か貴様…………それともよもや、後ろの裏切り者同様正義の心にでも目覚めたか? 私の世界征服から有象無象の愚民どもを守ろうとしたのか?」
ロードは傲慢な態度で続ける。
「理解しろ。貴様らも魔法少女も等しくあの愚民と同じだ。力無き弱き者だ。そして強き者はこの私のみ……これが如何なることか分かるか? 強き者が弱き者から奪う。すなわち摂理であり真理。……この世界は私が統べるために在るという事だ」
「「…………」」
「……フン、最早聞こえぬか」
……痛い! 痛すぎる!! この人の発言の何もかも全部が痛い!!
あなた顔つきとか身長的に大人でしょう? 私達と同い年ではないでしょう?
そんな良い歳になって強いだの弱いだの、挙げ句の果てには世界征服だのってどんだけですか。今の中学二年生だってそんな事言いませんよ?
全くもぅ。ベーゼはこんな人に負けたんですか?
そう思ってベーゼの方を向くと、拘束された彼女は俯いているがよく見るととてもつまらなそうな顔をしていた。
…………私はロードに悟られないようにこっそりとベーゼに念話をかけてみる。
『もしもし、ベーゼですか?』
『……うん。ノワールちゃんどうしよう? 私、つまらなすぎて力が出ない…………』
『あぁ、やっぱり? こういう系はベーゼのタイプじゃないですもんね』
『こんなにもテンションが上がらないのは初めてだよ。ロードエノルメ……別の意味で手強い…………!!』
まぁエノルミータも魔法少女も想いの力を原動力にしてるから、テンションが下がったら大きく弱体化しますもんね。
そういう意味ではベーゼが満足に戦えないのは仕方ない事なのかも知れませんね。
……では私がテンションを最高潮に引き上げてあげましょう。
『大体なんだ世界征服って……いい歳してそんな子供みたいな………………子供みたいな? ……あ、そうだ!!』
『あら、いい事を考えたみたいですね。ですが行動に移すのは後にしてもらっていいですか?』
『え?』
『一生に一度見れるか見れないかの貴重な瞬間……特別に見せて差し上げますんで、しっかり目に焼き付けるんですよ?』
「そ、それってまさか!!」
これから私がする事を察したベーゼは目をキラキラ輝かせてバッと私の方を向く。
急に叫んだ彼女にロードは一瞬驚いたような表情を浮かべるが、すぐに元の表情へと戻ると私の方を向く。
「まだ息があったか。だがこの状況でこんな笑顔……走馬灯が見えているなら逝くのも時間の問題か。さぁノワールカーネリアン、今度は貴様の番だ。すぐにベーゼの元へ送ってやろう」
「……フフフ」
「何がおかしい?」
剣を具現化してスライムの拘束から脱出した私は、再び不意打ちを仕掛けられても対応出来る距離まで下がると笑った件について素直に謝罪する。
「すみません、あまりに滑稽だったもので。一体どんな理由で悪の組織のボスをやっていたのかと思ったらまさかのまさかで世界征服!! そんな下らないものの為に命を狙われていたかと思うと一周回って笑えてくるものなんですよ」
「……下らないだと?」
煽り耐性がないのかアッサリと青筋を浮かべて私を睨みつけて来てますけど、器の小さなあなたなんて怖くはありませんよ?
「ですが今の私にとっては好都合です。世界征服を企む悪の親玉は魔法少女が倒してこそですからね」
そう言って私は懐からハート型のエンブレムを取り出す。
「な……!? き、貴様……それは!!」と驚愕の表情を浮かべるロードエノルメをよそに、ハート型のエンブレムを天に掲げた。
師匠から受け継ぎ、小夜のおかげで開花したこの力……今こそ見せて差し上げましょう。
「
直後ハートのエンブレムが光り輝き、身に纏っていたボロボロのノワールのドレスが消え、それと同時に朱色の光が私の身体を包み込む。
光はマゼンタやアズール達が身に纏っている服を形造り、最後に髪をポニーテールに結んで変身完了。
「あ、朱色の魔法少女……」
「き、貴様……我々を裏切っていただけでなくトレスマジアに取り入っていたのか……!!」
さてここはカッコよく決めるのがお約束というもの。
アニメを見て研究し、こりすちゃんに確認してもらって大好評だった決めポーズを取ると名乗りを上げる。
師匠……あなたの魔法少女としての名前、使わせていただきますね。
「マジアカーネリアン、ここに参上!! 悪の組織、エノルミータ! お死おきのお時間ですが、覚悟はよろしいですね?」
「……クク、フフフ、ハハハハハハハハハ!!」
私の決めポーズまで律儀に最後まで見たロードエノルメは突如大声で笑い始める。
「なるほど、身も心も魔法少女となっていたと言うわけか……。だが、私は魔法少女なんて何人も狩っている!! 貴様のそのうちの一人になるだけだ!!」
そう言ってロードエノルメはスライム兵を召喚して私に襲い掛からせる。
だがそれらが私に触れたと同時に、引火してスライム兵の全身に燃え広がり跡形もなく消えてなくなる。
「な、なに!?」
「私の炎は全てを焼き尽くす。触れると火傷じゃ済みませんよ?」
その直後、ロードの背後……ベーゼのいる地点から強大な魔力が溢れ出す。
「……最高。最高だよノワールちゃん。いや、カーネリアン! 魔法少女と和解して、こんな最高な展開で光落ちするなんて……こんな素晴らしい瞬間に立ち会えるなんて…………!!」
見るとベーゼは感動したのか大粒の涙を溢していた。
魔法少女オタクとしても、友人としてもこれはたまらないでしょう?
「な……今度はマジアベーゼからだと!? なんだこの魔力は!!」
「……ロードさん、私が正義に目覚めたと言いましたね? か弱き人々を守り、平和のために戦う……それはカーネリアンを含めた魔法少女の役目。そうあるべきです」
「貴様、なにが言いたい……?」
ベーゼが顔を上げると彼女は凶悪な笑みを浮かべていた。どうやら私の光落ちシーンは彼女のテンションを上げるには充分すぎたようで、ベーゼの目の下にあった星が大量に増えていた。
「だから私はマジアベーゼなんです……!!」
直後ベーゼがいた地点は大爆発を起こす。
そして爆発が止むと、ベーゼは髪が伸びて頭から生えてた角が更に凶悪なものになっていた。
「フフフ、ベーゼも新フォームのお披露目ですか」
「これは偶然ですよ。素晴らしい姿に興奮したらこうなっただけです。カーネリアン、私としては今すぐあなたをメチャクチャにしておきたいところなんですが……」
「ダメですよベーゼ。追加戦士の初登場は大活躍をするのがお約束、我慢していただきますよ?」
「えぇ、お約束は守らないといけませんもんね。楽しみは後に取っておきましょう。ですからまずは……」
「次変身したとき私とあなたが思う存分戦うために、ロードエノルメを倒して平和な日常を取り戻す。……いいですね?」
「はい。ここは共闘と行きましょうか……!!」
私とベーゼは並びたってロードエノルメを見据える。
ロードエノルメもこれは不味いと思ったのか、「き、貴様らぁ!!」と叫びながら巨大なスライムの怪物を呼び出す。
「さぁ、存分に魅せてくださいカーネリアン! あなたの戦いを!!」
「えぇ。ですがこちらに集中するあまり、怪我しても知りませんからね!!」
これが最後の戦いでしょうが、最早負ける気はしません。さぁ、良い声で鳴いてもらいますよ、ロードエノルメ!!
えりす、魔法少女に覚醒!!
二代目マジアカーネリアン──えりすが師匠である先代のマジアカーネリアンの形見である変身アイテムを使って変身した姿。見た目は朱色のトレスマジアの服。
炎──マジアカーネリアン時のえりすの能力。全てを焼き尽くすと豪語する通り、非常に大火力の炎を操る事が可能。初変身した際に魔法少女なるキッカケをくれた小夜ことマジアアズールを支えたいと強く意識した事で、彼女とは逆の属性の能力が芽生えた。