悪の力? でもそれをどう使うかは私の勝手ですよね!? 作:蒼天 極
エノルミータの面子がロードエノルメ打倒の慰労会も兼ねて海に一泊二日で旅行に行くとのことで、うてなとキウィがこりすちゃんを迎えに家まで来ていた。
本当は私もうてなから誘われていたが、流石にエノルミータにトレスマジアの私が加わったらヴェナリータにまた弱みを握られそうだから今回は遠慮させていただいた。
「日焼け止めは取りました?」
「ん」コクン
「サンダルとかは?」
「ん」コクン
「お小遣いは足りますね?」
「ん」コクン
「よし。それではうてな、キウィ、妹をよろしくお願いしますね?」
「お〜任せとけって、お前の分まで楽しんでくるから」
「もうキウィちゃん? ……せめて写真撮って来るね」
「私の事は気にしないで楽しんでらっしゃい」
……三人は行きましたね。
いけなくて少し寂しいですがそれは仕方のない事。せっかくこりすちゃんがいないならば、この際普段は出来ない自宅でのスイーツパーティーと洒落込むのもありかもしれませんね。
〜♪ 〜♪
そんな事を考えているとスマホの着信が鳴る。
こりすちゃんが忘れ物に気がついたのかもとすぐさまスマホを撮ると着信は……はるか?
「もしもし?」
『ちょっとえりすちゃん!? 明日海で撮影があるから今日のうちに海に行こうって言ってたでしょ!? 早く来ないと電車来ちゃうよ!!』
…………は?
◇
「……全く。まさか連絡し忘れていたとはね」
「う……ご、ごめんなさい」
現在私は電車の中ではるかにお説教していた。
と言うのも明日は雑誌の撮影会があるらしく、私が雑誌デビューする極めて重要な日だったにも関わらず、なんと連絡係のはるかは私へ連絡し忘れていたという致命的なミスをしていたのだ。
大急ぎで準備して転移門というチートを使ってなんとか間に合ったものの、もしあと少しでも遅かったら乗り遅れて一人で海に向かうことになってましたよ!!
「こんな事ならうてな達と一緒に海行けばよかったです」
「うてなさん?」
あ、しまった。うっかり声に出してしまいましたね。
ありのままに伝えてしまうと、マジアベーゼ=うてなってバレてしまうので適当に嘘つきますか。
「えぇ。福引が当たったとかで海に旅行に行こうって誘われてたんですけど、遊んでいる間にエノルミータが出ても困るから妹だけ参加させて私は残ってたんですよ。そして今回撮影しに行く場所とうてな達の旅行先は丁度一緒だったんです」
「そうだったんだ。てことはうてなちゃん達も海来てるんだね」
「うてなはんが来てるって事はあいつもおるって事か……うわぁ、せっかくの海やったのにテンションダダ下がりやわぁ……」
ほんと薫子はキウィの事嫌いですよねぇ……。
あ、そうだ。急に行ったらうてな達も混乱するかもしれませんし、一応LINEでうてな達には連絡の一つでも入れておきますか。
えぇっと……トレスマジアの仕事で急遽そっちに行くことになったけど、偶然はるか達に会ったんで一緒に行きます。っと……。
ピロン
お、返信早いですねぇ。なになに…………
『くぁwせdrftgyふじこlp』
…………あ、トレスマジアの仕事と聞いて興奮してますね?
明日は私の雑誌デビューだから頼むから邪魔するなとも送っておきますか。やったら正体バラすって脅しておけば来ないでしょう。
『そんなご無体な!? せっかくのチャンスなのに……!!』
あきらメロン♡っと。
◇
その後海に到着した私達はうてな達と合流する。
双方に上手く情報操作して私が原因でお互いの正体が悟られないように手を回しましたけど、エノルミータにもトレスマジアにも正体が知られてるって言う微妙な立場だと本当に面倒くさいですねぇ……。
「みんな〜こっちこっち〜!」
「この子がこりすちゃんね? それにこっちの二人は知り合いかしら?」
「真珠ちゃんとネモちゃんです」
「ども」
「どーも〜♡」
「よろしくね〜」
うてながはるか達に変身してない状態では初対面の真珠とネモを紹介していると、こりすちゃんがこちらに駆け寄って来た。
「あら、ぶち壊したくなるほどのいい笑顔ですね。お姉ちゃんと一緒で嬉しいですか?」
「ん」コクン
「このお姉ちゃんっ子め〜」
「♪」
「えりすちゃんとこりすちゃん仲良いんだ〜。偶然でもみんなで集まれて良かったね!!」
「そ……そうですね」
お互いの正体を知らないうてな達とはるか達が偶然会えた事を喜び合っていると、薫子が面白くなさそうに舌打ちをする。
「こんな遠く来て見たなかった顔もいてはるけど」
「あぁン? それはこっちのセリフなんですけど〜?」
「だぁれもあんたはんのことやなんて言うてませんけど?」
「舐めた口聞いてっとお団子引きちぎんぞ。アタシのマネしてんじゃね〜よ」
「望むところやちぎり返して3兄弟にしたるさかい」
「…………」
「…………」
「ちょ、ちょっとキウィちゃん? 薫子ちゃん?」
青筋を浮かべていたキウィと薫子は無言で海まで歩いて行くと、せーので飛び込んで泳ぎ始める。
「っしゃ、かかってこいオラァ!!」
「海の藻屑にしたるわぁ!!」
「仲良いですねぇ」
「いや、あれ普通に仲悪いでしょ。もぅ、キウィちゃんったら……」
「薫子も……彼女最近機嫌が悪いのよ」
キウィと薫子が水泳勝負で白黒つけ始めたのをキッカケに、一同は散会して思い思いに遊び始める。
さーて、こりすちゃんははるかが遊んでくれてますし、私は無難に海の家のかき氷とかクレープでも全種類制覇しに行きましょうかね?
「あ、えりす日焼け止め塗ったの?」
「おっと、そう言えばまだでしたね。塗らないと後が辛いんです」
「背中塗ってあげるから横になって」
「助かります」
背中も自力で塗ることは出来ますけど、目で見えない分塗り残しができるかもしれませんしね。せっかくの好意を無碍にするほど落ちぶれてはいませんしお願いしますか。
横になると小夜が日焼け止めを背中に塗り始める。くすぐったいですがこう言うのもいいですね〜。
「あ、私も日焼け止め塗らなきゃ……」
そんな姿を見たうてなもいそいそとバッグから日焼けクリームを取り出していそいそと塗り始める。
「あ……あの、うてなさんそのバッグ……トレスマジアがお好きなのかしら?」
「……このバッグ雑誌の応募でしか手に入らないものでして当てるために何冊も買ってやっと…………」
本当にやっとの思いでそのバッグ手に入れてましたからね。途中でお小遣いなくなった上にお小遣いの前借りを断られたからって、私にお金借りに来たりしてやっとの思いで。
「え、えぇ。知ってるわ」
「知ってるんですか!? 小夜ちゃ……さんもトレスマジアお好きなんですか!?」
「え!? そ……そうね。私も好き……なの」
そりゃトレスマジアご本人ですしね。
小夜がぎこちなく肯定すると、オタクモードになったうてなが興奮してマシンガントークを繰り出し始める。
「推しとか誰ですか!? マゼンタの元気いっぱいなところもいいし……! アズールの凛としたところも素敵ですよね! サルファははんなりしてるようで実は……みたいなところも……! あとカーネリアンも丁寧な言葉遣いとは裏腹に荒々しくもカッコいい戦い方なんかも良いですよね! あっ……もしかして箱推しですか!? 私も本当はそうなんですけど……!! あ、えりすちゃんはアズール推しだったよね!?」
「えぇ!?」
「はい。凜としているけれど欠点もあって。ですが欠点すら飲み込んで前に進むその姿に私は惚れてしまい……」
『……や、やめてえりす!! ……て、照れるわ』
赤面しながら念話で私を止めようとする小夜にニマニマしていると、うてなも熱がおさまって来たようで顔を真っ赤に染めながら「す、すみません……」と謝罪する。
「うぅ……そ、その……うてなさんはどうして魔法少女を好きになったの? トレスマジアを」
「そう……ですね。悪に立ち向かう……決して折れない姿がとっても素敵で…………」
「きっと喜ぶんじゃないかしら? 彼女たちが聞いてたら……」
「えっ? えへ……へへへ…………あ、小夜さんの背中塗りますよ?」
「え、べ、別に大丈夫よ!!」
「そうですよ、小夜の背中は私が塗り返して差し上げる予定なんで。それにあなたセクハラするでしょう?」
「し、しないよトレスマジアにし……ごめんなんでもない」
墓穴を掘りかけたうてなは大急ぎで日焼け止めを塗り終えると、逃げるように海へ入っていったのだった。
〜おまけ〜
「あのとき見てたならうてなさんを止めてほしかったわ……んっ」
「すみません、友人だし下手したらボロが出そうだったんで……」
「それにしても……んっ…………うてなさんあんなにもトレスマジアの事を…………あん!」
「彼女は筋金入りの魔法少女オタクですからねぇ」
「そう……ん、くっ……私の考えすぎだったのかしら…………あっ!」
「……ところで普通に日焼け止め塗ってるだけで変な所とか触ってないのに喘がないでいただけますか? なんか周りの人達に変な目で見られてるんですけど」