悪の力? でもそれをどう使うかは私の勝手ですよね!? 作:蒼天 極
とうとう真化の領域に至ったサルファが落ち着いた顔でベーゼの方を向き直ると、そんな彼女に対してベーゼは興奮したような危険な笑みを浮かべながらニヤリと笑った。
ベーゼからしたら嬉しいでしょうねぇ。サルファの覚醒……新フォームへの初変身を拝む事が出来て……特に闇堕ちした失望感があっでしょうし、その分の上がり幅が大きいでしょう。
『ォ終わりましたか!?』
『なんや、待っててくれたん? そらすんませんなぁ』
『えぇ……新フォームのお披露目を邪魔するなど以ての外でしょう!?』
分かってないですねぇ。新フォーム覚醒中に邪魔をして覚醒フラグをへし折れば相手の絶望感半端じゃないと思いますよ? ……流石に空気読めなさ過ぎますかね?
牽制のつもりなのか魔力を纏わせた鞭からメナスヴァルナーを複数放つベーゼに対して、サルファが両腕を振るうとベーゼの攻撃を弾き、それとほぼ同時にベーゼを殴り飛ばす。
『!?』
『チッ、全部は当てられへんかったか……』
「す、すごい……」
「腕輪から手が……これがサルファの新しい武器なのね」
「え……え〜、サブアームはいけませんよ。もう既に私が使ってますし…………」
……ま、まぁ私が具現化で産み出す腕とは違って雷を纏っているし、主に妨害なんかに使ってた私と違い攻撃に転用している点でしっかり差別化出来てますけど……えぇ…………。
「……う〜ん。これはもう具現化で腕を呼び出さない方がいいですかねぇ?」
「サルファは気にしないと思うわよ?」
ま、まぁ同じ能力でも用途が違いますしね。そこら辺は終わった後にサルファと要相談と言った所でしょうか?
『これは……全力でいかなければですねぇ……!! メナスロンド!!』
ゆっくりと起き上がったベーゼは鞭を伸ばして、サルファの周りを取り囲んだかと思うと、360度から出鱈目に鞭での攻撃が飛ぶ。これは防御力が高く、攻撃を受ける事前提のアズールくらいしか耐える事のできる人はいないでしょうね。
だがサルファはサブアームを腕輪に戻して足に装着すると、凄まじい速さで鞭を避け始めた。
『っ!?』
『なんやこれっ!? 目で追える!! アンタの攻撃止まっとるみたいやわぁ!! 自分の身体とちゃうみたいやっ!! めっっっちゃ!! 楽しいっっっ!!』
楽しんでますねぇ。でも今まで散々煮湯を飲まされ、今回もあれだけ一方的にボコボコにしやがったベーゼに対してやり返せるのだから楽しくないわけがないでしょうね。
サルファは凄くいい笑みを浮かべながら高速移動でベーゼの懐に潜り込み殴り飛ばす。
『せやねんっ!! うち、こういうのっ!! やりたかってんっ!!』
『ッ……!! いっ……いいな、いいな、いいなぁっ!! ズルイですよ一人だけぇっ!!』
「いや、あなたさっきまで愉しんでたじゃないですか」
おっと、思わず口に出ちゃいました。
ですが先ほどまで……いえ、昨日からずっとベーゼがやりたい放題やったんだから、そろそろ痛い目見てもいいとは思いません?
『私だって愉しみたいのにぃっ!!』と叫びながら鞭をふるうベーゼだが、サルファはそれを余裕そうな表情で弾く。
『ふふっ、やっぱしアンタ……おもろいわ』
直後サルファは尋常じゃない踏み込みで一瞬でベーゼの懐に潜り込むと、左手での裏拳でベーゼの鞭をはたき落とす。
『くっ……!』
『……さっきから散々嬲ってくれた借り、利子をつけて返したる!!
『ガハッ……!』
そして全ての腕輪からサブアームを呼び出して、自らの両腕をも使ったラッシュをベーゼに叩き込む。
しばらく殴り続けて右腕でベーゼを思い切り殴り飛ばすが、サルファの猛攻はまだ終わらない。今度は腕輪を六つ重ねて、普段サルファが使う様な巨大なガントレットを形作ったかと思うと、宙を舞うベーゼの真上へ高速移動する。
『ついでや!
『あが……っ……はっ……』
サルファの巨腕をまともに食らい地面に叩きつけられたベーゼは白目を剥き、血を吐いて動かくなる。…………サルファの勝ちだ。
「やったよ! サルファが勝った!!」
「すごいわ。サルファ…………」
「それに散々調子に乗りまくってたベーゼをこれでもかとボコボコにしましたね。スカッとしました」
サルファは倒れたベーゼの元へ歩いて行く。
『……これで仕舞いや。カーネリアンの変身アイテムは返してもらうで。これ持って土下座せなあかんからなぁ』
そう言ってベーゼの懐をまさぐろうとしたその瞬間、ベーゼの足下に転移門が現れてベーゼは消える。
『っ!? チィ……』
それと同時にサルファは凄まじい殺気を感じたのか、崖の上を見る見るとそこにはベーゼとアリスちゃん以外のエノルミータメンバーがサルファを睨みつけていた。
よかった、流石にアリスちゃんは来てないみたいですね。来てたらお説教ものでしたよ……ってそうではなく!!
「アズール、カーネリアン! 流石のサルファでも連戦は……助けに行こう!!」
「えぇ!!」
「了解です!!」
マゼンタが開いた転移門をくぐってすぐにサルファの元へ移動すると、その時には既にエノルミータは帰っており、サルファが力無く倒れていた。どうやら魔力が切れてしまったみたいですね。……あとレオとロコルベは何しに来たんですか? 牽制?
「……あかん、せめて一人しばいて変身アイテム取ろうと思ったのに、もう動かれへん…………」
「「サルファッ!!」」
「生きてますか〜」
「おー……三人とも……」
「おー、じゃないでしょう!? もぉおおおおおっ!! サルファってばあたしたちいっぱい心配したんだからぁ!!」
「あー、あー、そんなに泣かんでも……それと…………」
滝の様に涙を流すマゼンタを苦笑しながら見ていたサルファ。その直後私に非常に申し訳なさそうな顔をする。
……まぁ、ベーゼを油断させる為とは言え変身アイテムを強奪した挙句、奪われてしまいましたからね。勝負に勝ったとはいえ今回はサルファの負けでしょう。
「……ま、それについては今はいいですよ。お疲れ様でしたね。真化するなんて凄いじゃないですか」
「……おおきにな。それにしてもアズール……これ……めっちゃ疲れるなぁ……アンタに……ぎょうさん無理させとったかもな……」
「まったく……もう……」
◇
その後夜も遅いが、疲れを取るには風呂が一番!! と言うことで薫子の奢りで銭湯にやって来た私達。
「あ〜〜……しみるわ〜〜」
「まったく、一人で勝手にあんなこと……一言相談してくれてもいいじゃない! どれだけ心配したことか……」
「あらあら、独断でベーゼや私に喧嘩を売った小夜が何か言ってますねぇ。そう言うのをお前が言うなって言うんですよ?」
「それは……あ、あら? 泡が全然落ちないわ? どうして?」
それは私と同じことを考えたらしい薫子が追いシャンプーをしてるからです。シャンプー代が勿体無いでしょうが!! ってブチギレても良いですが、こう言う贅沢な使い方は銭湯利用者の特権ですかね?
「……そないに心配してくれたん?」
「あたりまえじゃないの! 本当はすぐに助けに行きたかったし、えりすも薫子がトドメを刺されそうだった時に凄く必死な表情でベーゼに不意打ちをかけようとしたんだから……」
「言わんで良いことを……!!」
「ちょ、やめてえりす! 冷たい、冷たいからぁ!!」
小夜のシャワーの温度を冷水にして頭にかけて差し上げる。余計な事を言う悪い子は風邪でも引いて寝込んでしまえばいいんです!! ……いえ、小夜は風邪の苦痛すらも快楽に変えられそうですしやめておきましょう。
「もぅ! ……はるかに止められたの。今は行く時じゃない、薫子を信じようって。だから……ね」
それを聞いた薫子は湯船で泳いでいたはるかを見ると、気恥ずかしく思ったのか泳ぐのをやめて湯船に顔半分を沈め始めた。
それを見た薫子は「そか……そうなんや……」と小さく呟く。
「その……あのな? どうしても……うちの……うちだけの力でアイツらに勝ちたかってん。……だから……今回は……その、ほんまに……えらい……すんませんでした。……そんで、ありがとうな」
「薫子……」
「……全く」
そう素直に謝罪と感謝をされてしまうと、お仕置きする口実がなくなってしまいますね。まぁベーゼに散々痛い目に遭わされたでしょうし今回は許してあげましょうか。
「薫子ちゃーんっ!!」
「わひゃあっ!?」
裏切られたと誤解した際に生じた殺意は近いうちに小夜に解消してもらおうと考えていると、湯船から出たはるかが薫子に抱きつく。
あら大胆。
「大丈夫、だって薫子ちゃんはたいせつな友達だもん」
「はるか……かなわんなぁ。アンタには……せやけど人前でこないなこと……流石に恥ずかしいねやけど?」
「ええ〜? あたしはそんな事ないよぉ?」
「なっ……何をしてるのあなたたちっ!!」
「百合百合してます。いや〜、尊いとはまさにこの事を言うんでしょうねぇ。あ、小夜、泡流します」
「あ、ありがとう」
はるかと薫子の微笑ましい様子に、ほっこりしながら薫子のイタズラによって泡まみれにされた小夜の身体を洗い流すのだった。
え、イタズラするのか? 別にセクハラしても面白くないですし。
◇
「ふぅ……いいお湯だったわね」
「そうですね。食後のアイス、楽しみです」
こりすちゃんに内緒で温泉を楽しんでしまいましたが、今日のことが知られたらジト目で睨まれるのは目に見えてます。
私の言いつけを守って今日は外には出てませんでしたし、ご褒美に連れて行ってあげなければ。……それに普段仕事を頑張ってるお母さんもね。
そんな事を考えていると、はるかは胸に巻いたタオルをジーッと見つめていた。
「?」
「どないしてんはるか?」
「いやぁ、あたしたちっていろんな人の前で恥ずかしい格好させられてるけど……お風呂で体隠すくらいの感覚は残ってるんだなぁって思って……」
直後、なぜか小夜と薫子が涙を流し始める。
「ありがとうはるか……!!」
「その感覚、絶対に忘れたらあかんな……!!」
「え?」
「……それに対して…………」
そう言ってジト目で私の方を見る小夜と薫子。
急にどうしたんですか。百面相してないで早く身体吹かないと身体を冷やしてしまいますよ。
「……えりすに羞恥心がないのは知ってるけど、流石に隠したほうがいいと思うわよ?」
「何言ってるんですか。減るもんじゃあるまいし、むしろジムで鍛え上げた肉体……しっかり見せつけて差し上げませんとねぇ。って痛!? ちょ、はるか! 嫉妬してるのは分かりましたから、引っ叩かないでくれませんかね!?」
「……別に羨ましくなんかないもん…………」
そんな事を言いながらもなおペシンペシンと叩くはるかを薫子が止めてくれる。
彼女にお礼を言うと薫子は「礼を言われる資格なんてないで……」と言って頭を下げる。
「えりす……本当に今回は申し訳ない事をしてもうた……ほんまごめん!! うちが責任を持って絶対に変身アイテム取り返すさかい、待ってておくれやす!!」
「薫子ちゃん一人じゃないよ。あたしも手伝う!!」
「もちろん私もね。みんなで変身アイテムを取り返しましょう!」
「あ、いえ。別にいいです」
「「「え?」」」
私の言葉に目が点になる小夜達。
いやぁ、実はベーゼに盗まれたとしても別に私なんとも思ってないんですよねぇ。
え、こりすちゃんのを奪う? 何言ってるんですか。そんな事したら嫌われちゃうでしょう?そんな事をしなくても相手はベーゼ……うてなです。普通に頼むだけじゃ簡単には返してくれないかもしれませんが、やり方なんていくらでもあるんですよ。
「まぁ見てて下さいよ。明日にはバッチリ取り返して見せますんで」(サムズアップ)
「え、えりすちゃん…………笑顔怖いよ?」
〜翌日(うてな視点)〜
「災難だったわねぇ。まさかバナナの皮で滑って階段から転げ落ちるだなんて……命に別状なくて良かったわぁ」
「うん、心配かけてごめんね。お母さん……」
ピリリリリ ピリリリリ
「……あれ? えりすちゃんからだ。……もしかして…………はい、もしもし?」
『やっほ〜うてな。昨日は派手にやられましたねぇ。まぁ自業自得というものですが』
「や、やっぱりやり過ぎだっかな?」
『やり過ぎなんてもんじゃありません。一歩間違えてたらサルファ死んでましたよ? 流石の私も今回の件は腹が立ちました。怪我が治ったらお礼参りをするので遺書を書いておいて下さいね?』
「……それは怖い……楽しみにしておきますよ。…………それで? まさかこれだけのために電話をかけて来たわけではないでしょう。マジアカーネリアン?」
『あら、ベーゼモードになって……それでは単刀直入に、変身アイテム返してくれません? 人の物を取っちゃいけませんって言われてるでしょう?』
「……まぁあの姿もカーネリアンの姿の一つだから返すのもやぶさかでは無いんですが……私的にはやっぱりもう今回みたいな事はあってはならないし、そろそろカーネリアンも闇と決別してもいいと思うんですよね。…………それに悪の総帥に素直に返してと言うのもおかしな話ではないですか?」
『……つまり実力行使で取り返せと?』
「えぇ。私の怪我が回復したら何度だって相手をして差し上げましょう! 待ってますよ、マジアカーネリアン」
『……いいでしょう。そちらがその気ならこちらも考えがありますよ』ガチャ
「…………フフ、ウフフ。怪我が治ったら今度はカーネリアンとの戦いかぁ。今度はカーネリアンの真化が見れるかも……ウヘヘ、楽しみだなぁ……」
ピンポーン
「はーい……あらぁ、えりすちゃんじゃないの! うてなのお見舞いに来てくれたの?」
「え、うてな怪我したんですか? あの子に貸してたなりきり変身アイテムを昨日返すって言ってたのに返さないから回収しに来たんですが……」
「そうだったのね。全くあの子ったら……うてな〜、えりすちゃんが貸してた物返してって言ってるわよ〜!!」
「…………」
ガチャ
「昨日返してくれなかったのは怪我して動けなかったからなんですね。全く、気をつけないとダメですよ? という事で返してください。あ、返してくれなかったらおばさまに言いつけます♡」(ゲス顔)
「……えりすちゃん。流石にそれは卑怯だよ」
「褒め言葉です。あ、ヴァナリータが回収してしまったなら、ベーゼの変身アイテムを渡してくれても構いませんよ♡」
「…………くそぅ」スッ
うてなママンを味方につけたえりすが一枚上手でしたw