悪の力? でもそれをどう使うかは私の勝手ですよね!? 作:蒼天 極
それから翌日、流石に二日連続でのスイーツのお預けで我慢の限界を超えた私は、一人学校をサボって喫茶店に来ていた。
ここは本当に目立たない所にある喫茶店で、知る人ぞ知る名店。
もし目立つ所にあったら絶対大行列が出来るほどのクオリティのスイーツやコーヒーなんかを提供してくれる。
「ご注文は何になさいますか?」
「フワフワクラウディパンケーキ、トッピングはメイプルシロップと生クリーム……あとバニラアイスもつけて。あと、ジャンボメガ盛りパフェにコーラフロートお願いします」
「かしこまりまし……え、一人で食べるんですか? そんなに食べられます?」
「食べられます、残しません。なので早く持って来てください」
「か、かしこまりました」
普段は飲み物はブラックコーヒー飲むんだけど、いかんせん糖分が不足している。今日くらい飲み物も甘いもので攻めて大丈夫だろう。
店員さんに手早く注文を済ませると、十字星のエンブレムを取り出してぼーっとそれを眺める。
「昨日はトレスマジアに絡まれて散々だったみたいだね」
聞きたくなかった声が聞こえて、横の席を見るとそこにいたのは忌々しい黒い妖精、ヴェナリータだ。
「…………」
「キミには期待してるんだよ。キミの力はボク達の希望になるからね」
コイツがいるんじゃせっかくのスイーツも楽しめないし、ここで排除してしまおうかと考えているとなんか話し始めた。
「……ボクはこの世界とは別の世界、マスコット達が暮らす世界から来たんだ」
「お待たせしました〜、コーラフロートとフワフワクラウディパンケーキ、メイプルシロップと生クリーム、バニラアイストッピングですね〜」
「はい、どうも〜」
あ、やっと来た。
うーん、いい匂い。ここのパンケーキは何回も食べてるけど定期的に食べないと落ち着かないんだよねぇ。
「……と言うか今このぬいぐるみなんか話してませんでした?」
「あぁ、お喋り機能がついてて誤作動起こしてしまったみたいです。すみません」
「そうですか。それではごゆっくり〜」
さーて、それでは頂きますか。
ナイフとフォークで一口サイズに切り分けて、まずはメイプルシロップだけの所をあーん……。
「はぁああああ♡やっぱりスイーツは最高ですね〜♡」
「……マスコットが暮らす世界でボク達の一族は酷い迫害を受けていてね」
さてお次は生クリームを乗せて……
う〜ん、メイプルシロップの甘みとは別ベクトルの生クリームの甘味がお互いを高め合って幸福感が二乗しています……。
「彼らは魔法少女を使ってボク達を滅ぼそうとしてるのさ」
おっとアイスクリームが溶けかけてますね。まずはアイスだけで……
は〜、この甘さと冷たさの絶妙なハーモニーはアイスでしか味わえませんね。
「だからボクは魔法少女に立ち向かえる人間を探すためにこの地球にやって来たのさ」
それではここで豪快にパンケーキとメイプルシロップ、そしてアイスクリームを乗せて……あーん。
「はぁあああああ♡幸せです。生きててよかった……♡」
「……ボクの話聞いてたかい?」
「聞いてません。聞く気もありません。今はスイーツに集中したいんです」
パンケーキで口内がパサついて来ましたね……。そろそろコーラフロートをチュ〜……
ん〜、タダでさえ甘いコーラが上に乗ったソフトクリームで更に甘くなっていて、それでいて炭酸のシュワシュワ感のお陰で爽快感もあって素晴らしいです。
「……もし学校サボって喫茶店でスイーツ食べてるのをキミのお母さんが知ったらどうなるかな?」
「怒られる覚悟はして来てるんで無問題です」
と言うか学校サボってスイーツ堪能してたのがバレたくなければ、エノルミータに入れって流石に私のこと舐め過ぎでしょ。
怒られるのが怖ければそもそも学校サボって来て無いですよーだ。
「君は中々に強敵だね」
「褒め言葉と受け取っておきます」
……おや? もう食べ切ってしまったみたいですね。念願のパンケーキ、美味し過ぎてすっかり夢中になってしまいましたよ。
「お待たせしました〜。ジャンボメガ盛りパフェですー」
「はーい♪」
来た来た。女の子の夢のお城♡
普段は流石の私もカロリーを気にして食べる事は出来ないけど今日は特別。
別に食べた分は運動すればいいもんね〜。
「あーん……ん〜。クリームの甘さとチョコソースのほろ苦さがたまりませんね〜」
「……美味しそうに食べるね」
「あげませんからね」
◇
「……ふぅ、堪能しました♡」
「そうかい、それは良かったよ。それじゃあ今から食後の運動でもしようじゃないか。丁度魔法少女の反応があるんだ」
「食後の運動はこれからジムでやるんで大丈夫です。と言うかいい加減諦めたらどうです? 私はエノルミータなんてやる気は無いですよ? あなた方の事情なんて興味ないし、たとえ迫害されてたとしても脅迫まがいな事をする奴を手伝おうとは思いませんので」
「なんだ聞いてたんじゃないか。……やれやれ今日は何を言っても無駄みたいだね。仕方ない、今日のところは諦めてうてなでも誘うよ」
そう言って黒いモヤの中に消えてしまったヴェナリータ。
……出来ればあんまりうてなも利用しないで欲しいところなんだけど、なんか最近あの子やけに肌がツヤツヤしてるんだよね。
元々一緒にプリキュアとか見てるとき、うてなはプリキュアがやられるシーンとかに対して一番反応してたけどあの子トレスマジアを痛めつけて興奮とかしてないよね?
「……さて、今日は食べ過ぎてしまいましたしジムで身体でも動かしましょうか」
ピルルルルル ピルルルルル
ん? お母さんからだ。
「はいもしもし?」
『えりす? あなた今ちゃんと学校にいるのよね?』
「サボって喫茶店行ってました。ごめんなさい」
『あなたねぇ……』
あの妖精本当にチクリやがった。
〜数分後〜
『えりすには家事とかお願いしてて、普段から苦労をかけちゃってるからこれくらいにしておくけど、喫茶店に行くなとは言わないからせめて放課後とかにしなさいね?』
「はい、本当にごめんなさい。次からは気をつけます」
その後電話越しにお母さんの説教を受けてようやく解放されると、今日はもうサボりを許してもらったため食べた分を燃焼する為にジムへ向かう。
「でも、食後のジムは中々に気が進みませんね〜……」
そりゃあれだけ食べたと言うのに動かなければ太ってしまうだろうから、きっちりと運動はこなす予定だけど、こうもお腹いっぱいだと動く気になれないなぁ。
「はぁ……カロリーのないケーキなんかがあれば良いんですけれど……ってそんな都合のいいものは……あ」
そうだ。よくよく考えてみれば私の能力は具現化。
私の能力を持ってすればスイーツとかを具現化することが出来ちゃうのでは無いか? それは食べてもお腹の中で具現化解いちゃえば吸収もされずにカロリーゼロなのでは……?
「……これは試してみる価値がありますねぇ」
そうと決まればちょっと試してみましょう。
大丈夫、魔法少女の下にはうてなが行っているはず。ならばちょっと変身したくらいじゃトレスマジアも来れないだろう。
そうと決まれば、人気のない路地裏に移動して…………あ、一応ヴェナリータが覗いてないか最大限の警戒もしてから……
「
再びお姫様の姿になった私。
うーん、改めて自分の姿見てみると年齢的にこれはどうなのだろうか?
こう言う某夢の国のお姫様の姿はもう少し小ちゃい子……それこそこりすちゃんにこそぴったりなものだろうけど……。
「おっと、ダラダラしてると魔法少女が来てしまいます。さっさと試しておきましょう」
それでは無難にクッキーを具現化……出来た。
でも問題は味だよね。いくらクッキーの姿をしていても味がしなかったりそもそも食べられなければ意味はない。
「いただきます。あーん…………!」
ちゃんとクッキーの味がする!!
しかも食感もしっかりクッキーだ!!
「……これは素晴らしい。これならカロリーもお値段も一切考えずに食べることが出来るじゃないですか。問題はこの力がエノルミータのものと言う事ですが……」
……まぁ、それはそれ、これはこれ。
どっちにしろ目をつけられてるならこれくらい美味しい思いをしてもいいだろう。
「こんな素晴らしいものだったとは。明日のゴミでこのエンブレムは捨てようと思ってましたけど前言撤回、私が持っておきましょう。それじゃあそろそろトレスマジアも来るでしょうし、変身を解いて「きゃああああ!! 強盗よぉおおおお!!」……え?」
路地裏からこっそりと最寄りの銀行を見てみると、ガラスの向こうに銃を持った女がいて……えぇ、とんでもない場面に遭遇してしまったのでは私……。
まほあこって男の人出てこないから、銀行強盗も女の人にしておかなければ……。
あ、あとえりすは砂糖依存症予備軍です。