悪の力? でもそれをどう使うかは私の勝手ですよね!? 作:蒼天 極
「シオちゃんをいじめる奴は許さない……」
「あぁ、いいのベルゼルガ。ラヴポーション#13」
「っ!?」
剣で仮面女……イミタシオに斬りかかろうとしていた私だが、直後私の身体に異変が訪れる。
なんですかこれ……ゾクゾクしますね。動くだけで立ってられないような……。まるで薄めて使うタイプの媚薬の原液を一気飲みしたような…………。
ですが…………。
「それがどうしたというのです!!」
「おっと、まさか動けるなんてね」
「どうやって媚薬漬けにしたかは知りませんが、舐めないで欲しいものですね」
これはつまり動けば強制的な快楽で動きを奪うものでしょう。ですが私は激しいのが好きなんですよ。動くと性的に気持ち良すぎるからって、動くのをやめる理由にはなりません。
私の身体に襲いかかる快楽は完全無視してイミタシオに剣を叩きつけるが大剣で塞がれてしまう。そしてベルゼルガーの妨害が来る前に下がって投げナイフを投げつけるが、快楽が邪魔をして集中力が阻害されたのか、見当違いな方向に投げてしまった。
「くっ…………これは遠距離攻撃はやめた方がいいですかね」
「見て下さいなベルゼルガ! カーネリアン様ったらすごくそそられる顔をしてらっしゃいますわよ!! これって誘ってる? 誘ってますわよね!?」
「パンタうるさい」
あら、そそられる顔ってそんなに酷い顔してますかね? 確かに快楽が凄まじすぎてヨダレは止まらないわ、どことは言いませんが濡れてしまうわで散々ですが……。
それにしても怒りに任せて適当に襲いかかりましたが、流石は真化しているというべきか、なかなかの強敵ですね。いくらなんでも馬鹿正直にぶつかりに行くのは愚策でしたか。
「ならば安全に遠距離から殺ってしまいますか。レイン・オブ・ソーズ」
「あっぶねぇですわ! 殺意高すぎではありませんこと!?」
「こいつはそういう奴なの」
具現化を使い空中に大量の剣を召喚して、無差別に振らせるとパンタノペスカが一瞬驚愕の表情を浮かべるが、本を模した様な杖を地面に叩きつけると地面が三人を包み込んで剣をガードする。
なるほどパンタノペスカは地面を操る能力と言った感じですか。……ならば
「こんがり焼いて差し上げましょう」
土塊を取り囲む様に炎を具現化。
いくら土といえど熱は通すでしょうし、このまま蒸し焼きにして差し上げますよ。
「熱いんだけど?」
「おっと!?」
直後土塊が真っ二つに割れたかと思うと、中から大鎌を持ったベルゼルガの姿が現れこちらに斬りかかってきた。
咄嗟にランスを具現化して防御するが、凄まじい重圧に押されてしまう。
「ぐっ、まさか無理やり突破してくるなんてね……」
「アハッ、こんなものなの? なんでシオちゃんがこんな奴にこだわるか分かんないなぁ……」
「ブツブツうるさいですよ」
ランスを引いてベルゼルガーの体勢を崩すと、そのまま足を払ってランスで薙ぎ払う。
私だって魔力だけ、筋肉だけの人間ではありません。小手先の技術だってしっかり鍛えているんですよ────っ!?
「カハッ……なんです……これ?」
急な痛みとそれを伴う快楽に顔を歪めながら私の鳩尾を見ると、血のように赤い刃物が突き刺さっていた。咄嗟にベルゼルガの方を向くとランスで斬り裂かれた部分から溢れる血が結晶のように固まっていて…………
「
「ベルゼルガの能力は血ですか…………」
血が武器になるだなんて、相手を傷つけたい私からしたら天敵みたいな能力ですね。
先ほどの土塊から脱出したのはベルゼルガだけ、残りの二人はまだ脱出できていないから今のうちになんとかしたいところですが……
「それくらいにしておくのベルゼルガ。今倒しても意味がないからね」
「!?」
そんな事を考えていると、近くの地面が盛り上がりそこからイミタシオとパンタノペスカが現れる。どうやらパンタノペスカの能力で地中を移動して脱出していたみたいですね。
「くっ……!」
「そろそろ大人しくしろなの☆ ポーション転化、ペインフル#8」
「っ!! ぐ……あぁぁあああっ!!」
直後媚薬による快楽がなくなった代わりに、鳩尾や背中の傷が激しく痛み始める。まるで引きちぎられるように……。
こ、今度は痛覚倍増ですか……なら回復ポーションで……
「ベルゼルガ」
「は〜い」
「うぐっ!!」
回復アイテムを具現化し飲もうとするが、そうはさせまいと取り押さえられ回復ポーションは踏み砕かれてしまった。
クソッ、こんな事なら濃硝酸にしておけばよかったですねぇ……!!
「引きちぎられるような痛みは辛いでしょ♡ お前にお似合いの惨めな姿なの。あ、見るのカーネリアン。もう向こうも決着がつくみたいだよ?」
そう言って私の髪を掴んで見てみると、アズールの愛のアヴァランチを受けてやられたのだろう。
ズタボロになったエノルミータの面々と、限界を超えるダメージで倒れたアズールとサルファ。
かろうじて生き残っているのは、マゼンタとボロボロのマジアベーゼ。そして自身の人形を盾にしたのか、意識を失いかけてたアズールが軌道を逸らしてくれたのか近くでゆっくり身体を起こそうとしているネロアリスだけであった。
「あーあ、マジアマゼンタとマジアベーゼじゃどっちが勝つかなんて決まったようなものだよね。お前みたいな裏切り者を仲間にした報いだね☆」
「…………フフフッ」
「ん?」
「確かに今のマゼンタではベーゼを倒すことは難しいかも知れません。なにせマゼンタの武器は槍くらいしかないですもんね……」
サルファのように雷を纏った拳で泥臭く戦うわけでも、アズールのように回避を捨てて真っ向から攻撃を受けるわけでも、私のように能力を使い分けたりするわけでもない。
はっきり言って今のマゼンタはトレスマジアの中で一番弱いと言ってもいいだろう。
…………しかし
「こういう絶体絶命な状況だからこそ、新たな力を開花させる。それが正義のヒロインってもんですよ」
「……はぁ?」
私の話がつまらなかったのか、冷たい目をするイミタシオ。しかしその直後、マゼンタを中心にリボンのような形をした光が溢れ出したかと思うと、戦闘不能になったマゼンタやサルファを…………そしてリボンの一本が私を包み込む。
「何……!?」
「…………これは!!」
私の身体から激しい痛みが消えて、どんどんと傷が癒えていく……。
マゼンタ……あなたの能力は回復だったんですね……。それにしても、もしかして私に気がついて? ……いえ、多分がむしゃらにやっているだけで私はついでなんでしょう。
しかし!!
「天雷!!」
「なっ──!? ぐぁああああ!?」
「シオちゃ──っ!?」
「きぇええええええ!?」
こっそりと私の真上に具現化していた雷雲から雷を落とす。
マゼンタの急な覚醒と私の回復に驚愕していた三人組は対応するのが遅れて、私ごとまともに落雷を受けた。
「ぐぅぅううううッ! 道連れにする予定で私の事考えずに仕掛けてたからキツいですねぇ……ですがマゼンタが回復してくれたおかげで耐え切ることが出来るってもんです!!」
ありがとうございますマゼンタ。おかげでこの意味の分からない三人組にもう一発撃ち込めるってもんですよ!!
「マテリアライズブレイカァァアァアアアアアアアアッ!!!!」
いくら相手が真化するほどの実力者だろうと、急な落雷攻撃を受けてすぐさま立て直せる人はいない。一切の慈悲も容赦もなく粒子砲を具現化して彼女らに全力の砲撃をくれてやる。
三人組はなす術もなく粒子砲の攻撃に飲まれていった。
◇
「……ぜぇ、ぜぇ……はぁぁあああ…………過去一番で苦戦をしましたねぇ。マゼンタの助けがなければ死んでたかも知れません」
ゆっくりため息をついで粒子砲を消すと、そこにはボロボロで倒れる三人の姿。
イミタシオは倒れながらも顔を上げてギロリと私を睨んで来る。
「お、おのれぇええ…………一度ならず、二度までもぉ……」
「一度? 二度? 何を言ってるかは知りませんが、調子に乗るからそうなるんですよ。さーて、私も今昂りまくってますし、ベーゼもアズールとサルファでなんとかなるでしょう。…………あなた方は簡単には死なせませんよぉ……」ギロリ
「ぐっ……」
ノワールサンクチュアリに閉じ込めた上でじっくりと遊ぶのは確定として、今回は結界から出た後も身体の状態を反映させてやるとしましょう。
こいつらを殺したところで巨大ミキサーでミンチにして埋めてしまえば問題はない。せいぜい私に喧嘩を打った事を心の底から後悔しながら地獄へ堕ちればいい。
「ノワールサンクチュア────っ!?」
直後、凄まじい魔力がマゼンタやベーゼのある方向から溢れる。
咄嗟にそちらを向くと、そこにあったのは真っ黒い蕾……そしてそこから出てきたのはマジアベーゼの姿を模した化け物だった。
…………。
「……あなた達は次の楽しみにしておきます。せいぜいやり残した事を終わらせるなり、遺書を書くなり、逃げるなりしなさいな」
これは明らかに異常事態だろう。ならばこんな奴らと遊んでいる場合ではない。
この三人組で遊ぶのは諦め、すぐさまマジアベーゼの姿の化け物と対峙するトレスマジアに加勢へ向かうのだった。
Q:なぜマゼンタはサルファとアズールだけじゃなく、カーネリアンまで回復できたの?
A:みんなの力になるとサルファやアズールだけではなく、この場にいないカーネリアンのことも強く意識して力を行使したから。