悪の力? でもそれをどう使うかは私の勝手ですよね!? 作:蒼天 極
「みなさん!!」
「カーネリアン!?」
「やっぱ来たか……でもナイスタイミングや!!」
「ナイスタイミングではありません! 私一人を置いて行って……後で覚悟してくださいよね!!」
今回の件は流石の私も怒っているんですからね?
彼女達を睨むと、アズールが「ご、ごめんなさい!!」と頭を下げてきた。全く、後でどんなお仕置きをしようかしら……いえ、マゼンタとサルファはともかくアズールにお仕置きしても喜ぶだけでしょう。
洒落になる範囲内でアズールに精神的ダメージを与える方法考えておかなければなりませんね。
「……と、ところでどうしてカーネリアン、服ボロボロなの?」
「変な三人組に襲撃されました」
「変な三人組?」
「ええ。近くで戦ってたんですが、マゼンタの先ほどの回復魔法が私の元に来なかったらどうなっていたか……ありがとうございます」
「……うん!」
さて、合流の会話はここまででいいだろう。
私は凄まじい魔力とオーラを発するマジアベーゼの姿のモンスターを睨む。アイツは私達を見るなり『アヒヒ……ハヒ……』と変な笑い声を発する。
「な……なんやアイツ…………」
「確認なんですが……あれはどこから?」
「……ベーゼにトドメを刺そうとしたら、様子がおかしくなっちゃって…………。黒い魔力の塊になったと思ったらあんな風に…………
あの怪物はマジアベーゼを模しているではなく、マジアベーゼ本人でしたか……。
一体どうして暴走なんか…………負ける直前まで来て、まだ私とマゼンタの真化見てないとか駄々を捏ねて暴走フォームとかになったとかでしょうか?
全く、悪役たるもの負けフラグが立ったら素直に倒されるべしったら言葉を知らないんですかねぇ。
そんな事を考えているとヴァーツから『み……皆さん!! 気をつけてください……!!』と念話が来る。
『マジアベーゼ……恐らく彼女の魔力が暴走しています……。何が起こるか分かりません……ッ!!』
直後、暴走ベーゼが黒い魔力の糸……と言うよりも触手を操ってこちらに攻撃を仕掛けてくる。
「アズール、これを受けるのはやめなさい! 多分食らったらヤバいやつです!!」
「え、えぇ!!」
ランスで薙ぎ払いながら触手を追い払うとランスの先端が真っ黒に染まり、黒い侵食は持ち手の方へと迫って……
「マゼンタ、カーネリアン!! 武器しまえェ!!」
「う、うん!!」
「しまうだけでは勿体ありません。せぇい!!」
消すくらいならこのランスは差し上げます。
暴走ベーゼに思い切り投げつけると、彼女に届く前にランス全体が侵食により真っ黒に染まったかと思うとドロリと溶けてしまった。
「あ、危なかった……」
「あの触手触れたらアカンで……!」
「くっ……厄介ね……!」
「タチの悪い能力ですねぇ……ならば!!」
マジアモードに変身して弓を取り出す。
先ほどノワールモードに強制変身してしまったんで、マジアモードになれるか不安でしたが異常事態って事で頭が冷えたのか無事変身出来ましたね。
「なるほど、カーネリアンの武器は弓……」
「そう言う事です。いい加減目を──」
「危ない!!」
「「「え…………」」」
直後、私とアズール、サルファの三人はマゼンタに背後から押される。
そして私達がいた地点から黒い触手が大量に生えたかと思うと、私達を庇ってくれたマゼンタが触手に捕まり服を破かれ始める。
「いやぁっ!! やっ……やめてぇええっ!!」
「「マゼンタぁ!!」
「チィ!!」
彼女を捕らえたベーゼに対して、炎の矢を放つが彼女は胸元に突き刺さる炎の矢を一切意に介さず、逆にこちらにも触手を向けてくる。
「くぅ!!」
あ、危ない危ない。
……私の炎を持ってしてもダメですか。随分とタチの悪い化け物に成長したようで「いやぁああああ!!」っ!?
マゼンタの悲鳴が聞こえ咄嗟にそちらを見ると、彼女の全身に黒い触手が突き刺さっておりそこから魔力が流されているのか、マゼンタの身体にエノルミータ特有の十字星が現れていた。
「やだっやだぁっ!! はっ……あっ…………はいっ……はいって…………はいってこないでっ……」
「クソッ! マゼンタ、すみません!! ブレイジングダイナマイト!!」
火球をマゼンタの方へ蹴り飛ばして爆発させる。
マゼンタも巻き添えになってしまうが、このまま内側を侵食されるよりはマシでしょう!? なので仲間を攻撃してゾクっとしてしまった私は悪くありません!!
「ナイスやカーネリアン! おいマゼンタ、しっかりせぇ!!」
「マゼンタ!!」
「う、うぅ……」
爆破の近くで倒れていたマゼンタに駆け寄る二人に遅れて私もマゼンタの元に駆け寄る。既に彼女の全身に十字星が浮かび上がっている。
どうしたものかと考えていると、私達に気がついたマゼンタが鬼気迫る表情で叫ぶ。
「三人とも! あたしから離れて!!」
「ど、どしたんや!?」
「いいから早く!! う……あ……うぁぁあああああっ!!」
アズールとサルファをマゼンタから引きずり離した直後、マゼンタから黒い魔力が溢れ出たと思うと、悲鳴をあげる彼女に纏わりつく。
「マゼンタ……」
「そんな……」
「これは胸糞悪いですね……」
マジアベーゼの魔力に侵されたマゼンタは、魔力で出来たら黒いドレスを身にまとい虚ろな目で私達を見る。
そんな彼女を正気を失ったマジアベーゼがベロリと舐めて…………。
「マジアベェエエゼェエッ!!」
「殺すぞゴラ"ぁッ!!」
「やっていい事と悪い事があるでしょうがぁあああああ!!」
流石の私も仲間をやられたら頭に来るくらいには仲間意識を持ち合わせている。
頭に血が昇った私達はその怒りに任せてマジアベーゼに襲いかかるが、直後ベーゼの支配下に置かれたマゼンタが私達に襲いかかってくる。
「ぁぐ!!」
「がぁ!!」
「ぐぅ!!」
彼女は縦ロールをまるでサブアームのように操ると、私達が反応し切れない速度で振るって来たかと思うとアズールと同じ方向に殴り飛ばされてしまった。
「く……カーネリアン……無事……?」
「えぇ。かろうじて……っ!! アズール!! ガハッ……」
「え──?」
直後アズールの胸元にまるで槍のように触手が迫って来ており、咄嗟に彼女の間に入り触手を私が受けてしまった。
そして私の胸にも黒い魔力が…………あぁ、これは……クソ…………。
(ヴェナリータ視点)
「う……うぁぁあああああああ!!!!」
アズールを庇い、暴走したベーゼの侵食を受けたカーネリアン。
そんな彼女を見たアズールはまるで仇を見るような顔でベーゼに襲いかかるが、そんなボロボロで何ができる?
触手で全身をめったうちにされぶっ飛ばされる。
「あっガ……いっ……ギあああああ"ああ"ぁあああ!!??」
よほど痛いのだろう。今までにない絶叫をあげていたがるアズール。
そんな彼女をベーゼはニヤリと笑い、彼女の足の間をグリグリと踏みつけ始めた。
「はっ……ぁゔぅ!? あああっ、やっやめ……そんな"……とこ……いぎ……っひあああああ!!」
「……いや、彼女のことはいいだろう。今はそれよりカーネリアンだね」
彼女の方を見ると、カーネリアンはベーゼの魔力が身体に入ったショックで意識を失ったのか、力無く侵食を受け入れていた。
やがて、カーネリアンの全身に十字星が現れたと思うと、ベーゼのような黒い魔力ではなく血のように赤い魔力をあたりに撒き散らし始め、やがてそれは赤い蕾と化した。
「フフ、フフフ……ついに
カーネリアンはベーゼ以上に才能に満ち溢れていた。
しかし彼女には一つ大きな欠点があった。それは自制心が強すぎることだ。
彼女の強靭な自制心は変身アイテムで高ぶった感情すらも抑制し続けて、トレスマジアに危害を加える事はおろか、一般市民を守る為に使うと言う欲望とは正反対のことに使うようになってしまった。
だがそれはつまり、欲望を我慢すると言う事……本当はベーゼやレオパルト、ロコムジカにルベルブルーメ、そしてネロアリスをズタズタにしたいと考えているのに、友達だから、妹だからと耐え続けて来たんだ。その欲望は欲求となり彼女の中で燻っていたんだ。
「そしてその欲求はベーゼと言う欲望の華の魔力を浴びて、自制心を上回った事で溢れ出し……咲いた。もう一輪の欲望の華が……」
赤い蕾から出て来た赤黒いドレスを見に纏い、相手を殺さんとするほどの恐ろしい笑みを浮かべるカーネリアン。
「か、カーネリアン? あ、あぁ……あぁああぁあああ……!!」
絶望し涙を浮かべるアズールにゆっくり歩み寄るカーネリアン。彼女の欲求は他者を傷つける事……きっとボロボロのアズールを標的に定めたのだろう。
カーネリアンはアズールの元に辿り着くと、そこにいたベーゼを蹴り飛ばしてアズールと向き合う。
「あぁあああああああ!!」
泣き続けるアズールにカーネリアンはニヤリと笑いながら、ゆっくり彼女の顔に掌を近づけると…………
「……え、カーネリアン…………?」
「…………なんて素敵な顔してるんですか。ほら、しゃんとしないと殺してしまいますよ? 立ちなさい。まだマジアベーゼを殴り倒してないんですから」
そう言ってアズールの頭を撫でた。
…………は?
カーネリアンもベーゼの魔力を受けて暴走してしまったがあれ? 様子が変だぞぉ?
暴走形態──暴走したベーゼの魔力を流し込まれた事で、自身の溜め込まれた欲望が増幅し、自制心を超えてしまった結果暴走してしまった形態。マゼンタのようにベーゼの支配下に置かれたわけではなく、独立した存在であり、自らの欲求を満たすために行動する殺意と破壊願望の塊………………なはずなのだがどうやら理性を残しているようで……?