悪の力? でもそれをどう使うかは私の勝手ですよね!?   作:蒼天 極

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もしかして……これが恋?

 それから数日後、魔力や無茶をした疲労が癒えた頃、こりすちゃんはどこかへ出かける準備をしていた。

 

「お出かけですか? 気をつけて行ってきて下さいね」

 

「…………」

 

 こりすちゃんはしばらく私の顔を見たかと思うと、私の袖をぐいぐいと引っ張る。

 あら何かを訴えてますがどうしたんでしょうか……あぁ。

 

「お小遣い足りなさそうですか? 今月の分はお母さんからもらったでしょうが特別ですよ〜?」

 

「……」ブンブン

 

 あら、どうやら違うみたいですね。ならば一体…………も、もしかして。

 

「私も来いと? ダメですよ、どうせエノルミータの面々と遊びに行くのでしょう? そこに私がいたらみんな楽しめないでしょうし」

 

「や」グイグイ

 

「それにお姉ちゃんもこれからトレスマジアで対シオちゃんズに備えて特訓があるんですが……」

 

「や」グイグイ

 

「ちょ、こら無理矢理引っ張ろうとしないで……駄々っ子はめ! ですよ?」

 

「……」グスッ

 

 ちょ……な、泣き落としは卑怯でしょう泣き落としは……!!

 分かりました、行きます。行けばいいのでしょう!?

 

 

 ◇

 

 

「……というわけで無理矢理連行されて来ました」

 

「……ま、仕方ないわよね。こりすもアンタのこと凄く心配してたし」

 

「あれだけ心配かけりゃこうなるのも仕方ねえよなァ」

 

 私にくっつくこりすちゃんを見て、真珠とネモは納得したような表情で頷く。

 ベーゼの暴走したときはとても心配かけてしまったせいか、あれ以来こりすちゃんったら隙あらばすぐに私の側に来るようになってしまいましたからねぇ。

 お姉ちゃんとしては嬉しい反面、お姉ちゃんっ子がこのまま加速してしまって学校に行かなくなってしまわないか不安です。

 不登校は私一人で充分ですからね。

 

「……それで、この前の戦いから数日経ったわけだが……トレスマジアもシオちゃんズとやらも未だ動きはねぇ……だよな?」

 

「えぇ、シオちゃんズは元エノルミータの私のいるトレスマジアにも敵対を表明してますからね。それにベーゼの暴走の件を鑑みて更に力をつけるべく現在は修行中です」

 

 それを聞いたうてなはピクリと反応するが、あなた今はそれどころじゃないでしょう?

 せめて暴走の原因の究明とその克服をするまでは大人しくしていなさい。

 

「うてなちゃん……これから……どうするつもり……?」

 

「アンタもあんなことになって辛い思いはしてるんでしょうけど……正直言って……組織……続けていけるの?」

 

 ……私としてはエノルミータなんて解散してしまえと言ってやりたい気分ですが、流石にこりすちゃんのついでに来ただけの私がそれを言うのもKYでしょうね…………。

 真珠の問いに対してうてなは静かに口を開く。

 

「私たちは……転がる岩だから…………本来ならばあそこで止まるべきだったものを……私が歪めてしまった……」

 

 そう言ってうてなは凄い顔で涙を流しながら続ける。

 

「であればぁ……ふぐ……転がり続けるしかないのでぇ……、ただ……そのぉ、総帥として……力の管理できるようっ……努めたいですぅ……」

 

「えらいよ、うてなちゃん。アタシ感動した〜!!」

 

「ゔぅ〜〜〜〜」

 

「メンタルはボロボロだが……」

 

「覚悟は凄いわね……」

 

 転がる岩ですか……それに付き合わされる私達の身にもなって欲しいところですが、それは魔法少女になってから覚悟していたことですしね。

 ならば次こそは受け止めてやるのがトレスマジアとしての使命というものでしょうね。

 

「うてな、ハンカチどうぞ」

 

「あ、ありがと……え"りずぢゃんこの前はごめんね"ぇ……。あと、ありがと〜、まさか真化して止めてくれるだなんて〜〜。でも、な"まで見たがった〜〜!!」

 

「いえいえ」

 

「チーン!!」

 

「…………」

 

 あとそのハンカチは差し上げます。そろそろ買い替えようと思ってましたし、隣で凄い顔してるキウィにでもプレゼントしてください。

 あとキウィそんな顔するくらいなら、こういう場面で積極的に好感度を取りに行きなさい。

 

「おっと、もうこんな時間ですか。そろそろトレスマジアの特訓の時間ですね。それでは私は失礼します」

 

「…………」

 

 こりすちゃんも流石にトレスマジアの所まで付いて来るわけにはいかないと思ったのか、渋々ながら手を離してくれた為、早速集合場所へ向かおうと…………

 

「あ、そうそう。うてな……いえ、マジアベーゼ。せっかく来たので一つだけ忠告させてください」

 

「え……?」

 

「マジアカーネリアンとしてあなたを見てみると、最近のあなたはどうにも欲望に忠実になりすぎているように感じました。今回の暴走の原因は欲望を理性で御しきれなかったからではないですか?」

 

「!!」

 

「この際だからはっきり言いましょう、今のあなたは本能のままに欲望を満たすだけの(ケダモノ)ですよ。……一度、自分の在り方を見つめ直してはいかがでしょうか?」

 

「……うん、そうだね」

 

 うてなも内心ではどうして暴走したのか気づいてるみたいなので余計な事を言ったかも知れません。しかし指摘される事でより深く自覚するものですからね。

 

 

 ◇

 

 

「私をビンタして欲しいの」

 

 集合場所時刻に少しだけ遅れてしまい、マゼンタ達に謝ってから早速特訓を開始しようとするとアズールがそんな事を言い出した。

 

「……は?」

 

「何も言わないで」

 

「な……何言ってるのぉ? そんな事出来るわけぇ「「せい」」あれぇ!?」

 

 ビンタしてもいいと言う事で、喜んで右頬を引っ叩くがその瞬間にサルファもアズールの左頬を叩いた事で衝撃の逃げ道がなくなりアズールは膝をつく。

 

「ダメだよサルファ、カーネリアン!!」

 

「い……いやついにおかしなったんかと思て……」

 

「せっかく叩いてもいいなら叩いておかなければ勿体無いですもんね」

 

 いやぁ、それにしても初めてアズールの頬を叩きましたが、アズールの頬はいい感じに柔らかくて叩き心地が良かったですねぇ。後三十回くらい叩きたいです。…………流石にそんな事したら本気でマゼンタ達に怒られそうだから我慢しなければですが。

 

「だからって……」と言うマゼンタを手で制したアズールはゆっくりと立ち上がって、赤くなった両頬を愛おしそうにさする。

 

「……そう。サルファとカーネリアンは私を思ってビンタしてくれたの。私の精神状態を案じまともになって欲しいと思いながらも、ケガをさせまいとした力加減……。口では自らの欲望の為と言いながらも、耐えられると確信して容赦無くやってくれる信頼……」

 

 そして恍惚な笑顔で両手でハートマークを作る。

 

「そこにあるのは……“愛”……そうよね?」

 

 愛……攻撃の中に感じる暖かいものですね。私はMではないので攻撃を受けることは不快でしかないですけど、愛を感じる事で攻撃を受ける際の不快感は半減するようになったんですよね。痛みはそのままなんで積極的に攻撃を受けようとは微塵も思いませんけど。

 

 愛についてまだ分からないらしいマゼンタとサルファが呆然としたような顔をするが、「驚かないで」と言いながらアズールは続ける。

 

「私は人の力から愛をはっきりと感じ取れるようになってきたみたいなの」

 

「怖いけど……」

 

「サルファが泣いちゃったぁ!?」

 

「ま、まさか……そこまでの領域に至ってたんですか!? 私なんて曖昧にしか愛を感じられないと言うのに……!!」

 

「え、アズールの言ってること分かるのぉ!?」

 

「思えば私たちの戦いの中にはいつも愛があったわ」

 

「一人でズンズンいかないでよぉ!! …………ぜぇ、ぜぇ……ツッコミ疲れた…………」

 

 ツッコミすぎて肩で息をするマゼンタを尻目にアズールは続ける。

 

「先の戦いでレオパルトやロコムジカ、ルベルブルーメの攻撃に愛を感じたわ。……でも暴走したベーゼの攻撃からは愛を感じなかったの」

 

「そりゃ正気を失ってたのに攻撃に愛を込められませんからねぇ」

 

「えぇ。だからこそ私は愛についてもっと深く知る必要がある……その為に今はこの力について一人で考えたいの。ワガママを許して貰えるかしら?」

 

「いやそれやったら修行は「それがあなたにとって今一番必要な事だと思うなら止めません。合流した時に何を得るのか……楽しみにしてますよ」おいコラ何勝手に送り出そうとしてんねん?」

 

「えぇ。必ず三人の元に私は帰って来るわ!!」

 

「ちょっ、待たんかいコラァッ!!」

 

「……行っちゃったねぇ」

 

 アズールの独断について気に入らなかったのか、サルファはアズールが飛び去っていった空をしばらく睨んでいたが、一瞬マゼンタを見ると顔を赤らめる。

 

 ……はて、一体なにがあったんでしょうか…………そう言えば遠目でチラリとでしたが、暴走したベーゼの魔力を受けているときに操られてたマゼンタがサルファを押し倒してましたねぇ。

 もしかして…………。

 

「なるほどなるほど~」ニヤニヤ

 

「……おい、言いたい事があったらハッキリ言えや?」

 

「別に〜、青春ですね〜」

 

「……それ言うたらお前とアズールもやろ、このバカップル」

 

「え? どうしてここでアズールが出て来るんです?」

 

「は? だってあんた小夜んこと好きなんやろ?」

 

「え?」

 

「え?」

 

 ……いや確かに彼女の在り方には惹かれますし、最近は行動の一つ一つを愛おしく思い、最近は模擬戦で痛めつけてるときに恍惚な表情をされても、萎えずに寧ろそそられるようになってきましたが……。

 

「……ですがそれはあくまでライクでしょう?」

 

「ちなみに聞くけどアズールがベーゼに悪戯されてモヤモヤしたりは?」

 

「そうですね……なんかムカつきます。イミタシオがアズールのお尻を叩こうとしたときも実はかなり殺意が湧いてました。我ながらよく平静を保てたものです」

 

「いやそれ確定やろ?」

 

「そうなんですかね……?」

 

 これが恋……?

 もしこれが恋ならばアズールにはっきり伝えるべきか、胸の内に留めておくべきか…………なんだか恥ずかしくてなって来たのでもう考えるのやめましょうかね。

 

「おやおやぁ、顔赤くしてどおしたん〜? なんならアズールについていってもええんやで〜」ニヤニヤ

 

「いえいえ、私も青春を満喫しているんだなぁと自覚しただけですよ〜。しかし今私に必要なのは愛ではないのでお気になさらず〜」ニコニコ

 

「アズール……小夜ちゃんも薫子ちゃんもえりすちゃんも……凄いなぁ」ボソ

 

 私が恋を自覚した瞬間にニヤニヤ笑ってそんな事を言うサルファ。彼女のペースに飲まれるのも面白くないので受け流して反撃のタイミングを伺っていると、マゼンタの呟きが聞こえて彼女の方を向く。

すみません、サルファとのお話に集中しすぎて聞いてませんでした。なんと言いました?

 だがマゼンタは首を横に振る。

 

「ううん! あたし達だけでも修行頑張ろぉ! せっかくだからカーネリアンの真化も見せてね!!」

 

「せ……せやね?」

 

「分かりました」

 

 という事でアズールが修行に行ってしまったので、マゼンタとサルファと修行に励む事になった。

 …………なんだか少し寂しいですね。やはり私は小夜に恋してるのでしょうか?




 えりすは小夜に恋心があるのかどうかが気になるようだ。

 〜おまけ〜

「くそ、余計なこと言うからうてなちゃん帰っちゃったじゃん。えりすのやつ〜!!」

「!!」ビクン

「……ん、どしたんこりす〜?」

「〜! 〜!」バッ! シュバッ‼︎

「え? ねーちゃんに春が訪れたような気がする?」

「ん!」コクコク

「春……つまり恋かしら? アイツおっかないし目をつけられた人可哀想ね〜」

「それは言えてるが……なんで姉に春が来たって分かんだよ…………?」

「姉妹だからじゃね?」
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