悪の力? でもそれをどう使うかは私の勝手ですよね!? 作:蒼天 極
「う〜ん…………」
マゼンタとサルファが戦う横で私も新たな戦い方を模索していた。
と言うのもベーゼの暴走事件で真化を習得したが、それはあくまでマジアモードの変身アイテムを用いた真化であり、今回の覚醒に伴ってノワールモードの変身アイテムを用いての真化もできる可能性があるのだ。
「……ってそんな美味しい話はないですよね。闇真化まで出来るようになったらそれこそパワーバランスが完全崩壊するじゃないですか。……ですが試しに…………
直後十字星の変身アイテムが輝き初めて、ノワールモードの衣装が消えて新たな衣装が……
「やめやめ! やっぱり真化中止!! ストップストップ!!」
…………と、止まりましたか。危ないところでした……。
いくら光真化を習得したからと言って闇真化まで習得していたなんて夢にも思わないでしょう?
こう言う新フォームのお披露目は実戦でないと面白くないので、日の目を見るのはまたの機会です。
「フフフ……これはエノルミータとしての力ですし、お披露目するのはやはりシオちゃんズですね。調子に乗りに乗りまくったここぞのタイミングで使えばウフフフフフフフフフ…………」
「ハッ!!」
「てやぁっ!!」
「あら……おぉ…………」
真化をお披露目する展開を思い描いていると、マゼンタとサルファの掛け声で正気に戻る。
見ると真化したサルファのサブアームの一撃を、マゼンタが槍を振り回して全てを打ち落としているところで…………。
……真化してるサルファの攻撃を打ち落とした?
以前までのマゼンタならサルファのサブアームの速度に追いつけずに殴り飛ばされてたでしょうに…………。
「やるなあマゼンタ!! 強くなって来てんとちゃうか!?」
「そ、そうかなぁ? でもこれじゃあまだまだだよね。もっと強くならないと……」
「いえいえ充分強くなってますよ。これは真化も近いんじゃないですかね?」
「えへへ、そうかなぁ……ってどうして裸なの!?」
「え? あらやだ」
「お前なぁ、暑いからって脱ぐなや。羞恥心ないからってどこでも脱いでええわけちゃうぞ?」
中途半端に真化を中断しまっていたせいで、服だけなくなってしまったみたいですね。
すぐマジアモードに変身して魔法少女の服を見に纏うと、「お見苦しいものを……」と謝る。
「闇真化をダメ元で試してみたら、変身開始してしまって……この手の新フォームは実戦で出したい私としては、ここで変身するのが嫌で無理やり中止したんですが、そのときに服が消し飛んだみたいです」
「中途半端でやめるからや。……ってちょい待てぇ、闇真化ってエノルミータの変身アイテムでの真化っちゃう事か?」
「え、二通りの真化出来るの!? ズルいよ〜!!」
「この世は不平等なんですよ〜」
フフフ、あなたも力が欲しければエノルミータから変身アイテムを奪い取るんですねぇ。……まぁそれはベーゼのブチギレ案件なんでおすすめはしませんが。
「…………」
「……おや?」
ズルいズルいと私に抗議しているマゼンタの姿をボーッと見つめるサルファ。彼女の姿を見て初恋のように頬を赤らめており……いや、今の駄々っ子のどこにときめいたんですか?
「……ん? どしたのサルファ?」
「あ……いや、やっぱ真化は魔力消費が凄くてな、なんとかせなあかんわ……思たんよ」
「そっか、それじゃあ一緒に頑張ろぉ!」
「…………」ドキッ
マゼンタの顔を見たサルファの顔が赤くなる。あらあら、青春しちゃって。ならば私は少し撤収しましょうかねぇ。
サルファもマゼンタも私の存在は忘れてしまっているみたいなので、ゆっくりと数歩後ろに下がって二人の様子を見守る。
「サルファ?」
「……いや、スマン。ボーっとしとったわ」
「大丈夫? 少し休もっか…………?」
「…………いや、ちが……」
ま、マゼンタ。様子がおかしくて心配なのは分かりますが、恋の病を患ってるサルファに顔を近づけたらサルファの理性が死にますよ?
これを無意識にやるだなんてマゼンタ、恐ろしい子ですねぇ!!
ズルッ
「!?」
「キャーッ!!」
「ちょ、二人とも!?」
だがその直後、突如二人が足を滑らせて盛大に転ぶ。
何もない所で転びますか──っ!?
彼女らに近寄ろうとすると、私も地面のぬかるみを踏んでしまい盛大に転んでしまった。
いたた……ここにぬかるみなんて無かったはずなんですが…………。
「なんやここ、こないにぬかるんどったか……? なんやケガとかしてへんかマゼン……タ……?」
「うん、あたしは大丈夫。サルファも無事みたいだね。よかったぁ、ケガさせなくて……」
「いや……うちは……」
一人寂しく転んでしまった私と違い、覆い被さるように転んでしまった二人。
流石に今の状況で密着するのはサルファには刺激が強すぎるようで、サルファは顔を真っ赤にしてマゼンタを見ていた。
あらあら、めちゃくちゃラブコメしてますねぇ。色々なアニメを嗜む身として一つ言えるのは……
「尊いですね!!」(サムズアップ)
「やかましいわ!!」
サルファが真っ赤な顔で私に怒鳴ってきた直後、転んだ拍子にマゼンタの槍が突き刺さった地面が割れたと思うと、そこからいい感じの温度のお湯が噴出され始める。
天然の温泉の水柱を囲むようにそれはそれは綺麗な虹が姿を現し…………
「「「…………は?」」」
え、どう言う事ですか? 目の前で温泉が湧くなんてそんなミラクルありますか普通?
◇
「ふぅ、極楽極楽〜♪」
急に温泉が沸いたときは驚きましたが、大自然の中でも露天風呂だなんて銭湯とは違った良さがありますね。
え、なんで温泉を楽しんでいるのか? そんなのそこに温泉があるからに決まっているじゃ無いですか!!
「……どういう状況や? これ」
「さぁ? ……それにしてもいいお湯ですね〜。出来ればこりすちゃんも入れてあげたい所ですね〜」
「順応しすぎや「ふ〜っさっぱりしたぁ! お風呂セット持ってきてよかったよぉ!」っ!! せ、せやね……」
おやおや。気になる子が身体を洗い終わったみたいなので、私は少し離れた所へ移動するとしましょうか。
「お湯に使ってサッパリしたらえりすちゃんも薫子ちゃんも少しは休めるかなぁ? 急に温泉が湧いたのはビックリだけど、こんなこともあるんだねぇ……」
そう言って湯船に浸かって寛ぐはるか。
いつもならば彼女は泳ぎ出すのだが、彼女もどうやら修行で疲れているのかのんびりと温泉を楽しんでいる。
「気持ちいいねぇ……」
「あぶぶぶぶぶぶ」
「薫子ちゃあん!?」
あらあら、はるかにホの字の薫子にははるかの入浴姿は刺激が強すぎたみたいですねぇ……。
そんな二人の様子を眺めながらニマニマとしていると、急にはるかが「薫子ちゃん、えりすちゃん……ごめんね」と謝る。
「この前の戦い……途中から記憶がないんだけど、きっと三人には酷い事をしちゃったんだよね……。あのときもっとあたしに力があれば、結果は変わってたかもしれないのに……。あたし、こんなに悔しいの初めてかもしれないんだ。だから強くなりたいの……! みんなの力になれるように……!」
そう言って悔しそうに俯くはるか。
はるかの名誉のためにベーゼに操られてる間の出来事は気絶してたと誤魔化していましたが、どうやらなんとなく察してしまっていたみたいですね。
……本来ならばここでかっこいい事を言うべきなんですが、丁度はるかの隣に適任がいますからね。彼女にお任せしましょうか。
「……ちゃう。ちゃうで! 全然ちゃう!! はるかはあの時うちらより全然強かってん!! ウチの戦う力でもなく、アズールの守る力でもなく、はるかの助ける力が一番強かった……!!」
そう言ってこちらを向く薫子。私も何か言えって事でしょうか? ……ならば遠慮なく言わせていただきましょうかね。
「前回一番活躍したのは私だったと自負しています。なにせ暴走したベーゼを鎮めましたからね。しかしそれはあなたが傷ついた私を癒し、あのとき触手から庇ってくれたから…………。あなたがいなければ私は覚醒も出来ずに全滅していた可能性がある。私達は襲われた件について全然気にしていません、むしろあなたには感謝していますよ?」
これは本心だ。
確かに操られたマゼンタにアズール共々良い一撃をもらってしまったが、身を挺して私達を庇ってくれた結果そうなってしまったのに、そんな優しい彼女を誰が恨む事が出来ましょう?
薫子ははるかの手を包み込むように掴んでハッキリと告げる。
「ウチはアホやった。ごちゃごちゃ気にする前に、アンタに言わなあかん事があった……! はるか、助けてくれて……ありがとう!! おら、えりすも!!」
「ですね。助けていただきありがとうございました」
「……へへ、後で小夜にも礼言わせんとなぁ」
「薫子ちゃん……えりすちゃん……」
「薫子様……あとえりす様も…………裸での友情……あぁ、なんて素晴らしい!! ですがやはりマゼンタ様 × サルファ様ですわねぇ。カーネリアン様はネロアリス様との姉妹百合が最高なんですの……!!」
「「「…………え?」」」
せっかくの良い雰囲気をぶち壊すような事を言いやがった声の主を見ると、そこにいたのは涙とヨダレを垂らし自らの胸を揉みしだきながらマゼンタとサルファを凝視するパンタノペスカの姿だった。
どうやらえりすの真化はトレスマジアとエノルミータの二種類があるようだ……!!