悪の力? でもそれをどう使うかは私の勝手ですよね!?   作:蒼天 極

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悪癖……見事克服できたみたいですね

「おはよう、えりすちゃん」

 

「おはようございます、うてな」

 

 ……おや?

 昨日まではいつにも増してどんよりとしたオーラを纏って目も死んでいたというのに、今の彼女は暴走する前から変身前にあったどんよりとしたオーラがなくなって目も光溢れていますねぇ。

 

「……随分と雰囲気が変わりましたね。ケダモノと言われたのに傷ついて、人格が分かれてしまいました?」

 

「それだけで精神崩壊するほど弱くはないからね!? …………実は昨日ね」

 

 うてな曰く、私にケダモノと言われた事で悪の総帥になって今まで以上に自由にやりたい事をやれる環境を得たことで増長していたと自覚したらしく、キウィ達と分かれて当てもなくフラフラと街を彷徨っていたそうだが、そこで小夜と会い彼女と一緒に滝行をして来たのだと言う。

 

 …………何やってるんですか小夜?

 マジアベーゼが立ち直るキッカケ作ってるんじゃないですよ……。まぁ小夜もうてなもお互いがアズールとベーゼである事は知らないから仕方ないのかもしれませんが…………。

 と言うか私がパンタノペスカに絡まれてる間にうてなは小夜と二人きりで……。少し嫉妬してしまいますね。

 

「ヒッ!? な、なんでそんな睨みつけてくるの!?」

 

「あ、すみません。うてなは悪い事してないのでお気になさらず……それで?」

 

「……た、滝に打たれながら欲望と対話をして自分なりに色々考えてみたんだ。そして私なりに自分の在り方を見つけられたつもり」

 

「マジですか、数日は悩むだろうなぁと思ってましたけど、まさか一日で持ち直すとは…………」

 

「……一日じゃ早すぎるかな? もっとじっくり考えた方がいい?」

 

 流石に答えを見つけるのが早すぎた自覚があるのかオドオドとそんな事を言ってくるうてな。

 しかし反省と言うのは時間をかければいいってものではありませんからね。反省して納得がいく答えが見つけられたならこちらも文句はありません。

 

 ……ですがせっかく忠告したんです。ならば最後くらい付き合ってやるべきですよね。

 

「……うてな、どうせ今日放課後はナハトベースに入り浸るだけでしょう? 少し私に付き合って下さいな」

 

「え……?」

 

 

 ◇

 

 

 放課後、私とうてなは数日前に全面戦争を繰り広げた思い出の場へとやって来ていた。

 

「……ここに私を連れて来たって事は、そういう事でいいんだね?」

 

「えぇ、全面戦争のときは結局シオちゃんズに邪魔されて私は参加出来ませんでしたしね。……それにあなたとしても私の真化を拝みたい筈です」

 

「めっちゃ拝みたい! ……ですが、そう簡単には拝ませてはくれなさそうですね」

 

「もちのろんです」

 

 互いに変身アイテムを取り出すとマジアベーゼとマジアカーネリアンに変身、お互いに鞭とステッキを抜いて構え合う。

 

「今回ノワールモードを使いませんので、自力で私を真化しなければならない状況まで追い込んでみなさいな」

 

「……分かりました。では容赦無く行かせていただきますよぉ!!」

 

 先手必勝とばかりにこちらに魔力を乗せた鞭を振るってくるベーゼ。だがそんな彼女に対して私も炎を纏ったステッキを振って対抗する。

 

 ですが大丈夫ですかねぇ!? うてなも最近前線で戦うことが増えて来ましたけど、それでも実力は私の方が上。そしてベーゼの強みである魔物も私の能力で焼き尽くすことが出来る!!

 それに……

 

「弱点の水も今この場にはありません……!! さぁ、どうやって完封して見せますか!?」

 

「完封なんてする必要がありません……屈服させて仕舞えばそれでいいのでねぇ!!」

 

「それが出来るとでも!?」

 

「えぇ、出来ますよ。こうすればねぇ!!」

 

「おっと!?」 

 

 ベーゼが鞭を振るって私のステッキを絡め取ると、それを奪い取らんと引っ張ってくる。

 

「ロードエノルメも似たような事して来ましたねぇ……ですがそれは無意味と知っている筈です!!」

 

 かつてのロードエノルメ同様逆にステッキを引っ張り返してベーゼを引き寄せようとした次の瞬間、ベーゼはニヤリと笑った。

 

「っ!?」

 

 なんとベーゼは私が鞭を引っ張り返した瞬間に合わせて、ハサミの蝶を作り出して自らの鞭を切ってしまったのだ。

 その結果重心が後ろに傾いて大きく体勢を崩し、その隙をついたベーゼに懐に入られてしまった。

 

「メナスヴァルナー!!」

 

「ぐぅう!?」

 

 ベーゼの魔力で再生された鞭の一撃を防御も出来ずに受けてしまい、ぶっ飛ばされるとステッキを持った右手を踏みつけられてしまう。

 

「さぁ、これでどうですか?」

 

「……やってくれますねぇ。まさか対策法を逆手に取ってくるとは……流石は悪の組織の総帥と言ったところでしょうか?」

 

「おや、ありがとうございます。……これはもう真化しなければどうにもならないんじゃないですかぁ? ほら、ほら?」

 

 そう言いながらニヤニヤと右手をグリグリと踏んで来るベーゼ。……確かに追い込まれてしまいましたね。ですが一度押し倒したからと油断しすぎではないですか?

 

「ブレイジングダイナマイト!!」

 

「!!」

 

 左手から火球を射出してベーゼの前で起爆。私の手口を知っているベーゼがバックステップでそれを回避するがそのときには既に起き上がり、ステッキに炎を纏っていた。

 

「甘いですよベーゼ、その程度で私を完封したと「思い込んでないですよぉ!」っ!?」

 

 炎の一閃をくれてやろうとステッキを振るった次の瞬間、私のステッキが右手からするりと抜けてしまった。

 彼女は私がステッキを払おうとした瞬間に植物を操って蔓でステッキを絡め取り、腕を振る勢いを利用してステッキを奪い取ったのだ。

 

 やられた……火がつけば一瞬で何もかもを焼き尽くせるとしても、火が燃え移る一瞬だけは蔓の役割は果たす……その一瞬のタイミングを合わせられてしまいましたか。

 

「心は熱くとも頭は冷やす……カーネリアンは油断した一瞬を突いて来ますからねぇ!! メナスロンド!!」

 

「ぐぅぅうううう!!」

 

 まるで踊るようにベーゼの鞭から放たれる連続攻撃の全てをまともに受けてしまった私は力無く倒れてしまうしかなかった。

 だがベーゼはそれ以上追撃しようとはせず、私に声をかけて来た。

 

「……どうかな、少しは成長できてる?」

 

「…………えぇ。あなたはイタズラをするときや相手を追い込んだときに油断する悪癖があり、そこから反撃の糸口を見つけていた。…………ですが、興奮しながらも私が反撃してくる可能性も視野に入れて、見事私の反撃を突破して見せた……あっぱれですね」

 

「何言ってるの、あからさまに手を抜いてたくせに……さっきからワザと攻撃受けてるよね?」

 

「まぁまぁ。……今回は魔法少女としてではなく、一友人としてキチンと成長できたかを確かめる為のテストでしたからねぇ。そして合否判定は見事合格です」

 

「ということは……」

 

「えぇ、約束通り見せて差し上げましょう。真化(ラ・ヴェリタ)

 

 今回私がベーゼに喧嘩を売ったのは、ベーゼがわずか一日で本当に自分を見つめ直せたかを確かめるため。……もし私を甚振るのに集中するあまり反撃を受けたならば、もう一度見つめ直して来いと言ってやれたんですが、ここまで見事に対応してくれたならば言う事はないでしょう。

 

「……これが私の真化、紅蓮ノ騎士(ブレイジングナイト)です。……いかがですか?」

 

「涙が出て来そうです。まさか第三勢力から光落ちして、ここまでの領域に到達するなんて……」

 

「せっかくの機会です、今日はとことん付き合って差し上げましょう。怪我して数週間動けなくても恨むんじゃありませんよぉ!!」

 

「そちらこそ、その余裕そうな顔を今度こそ屈辱で歪ませて差し上げます!!」

 

 互いにギラギラと笑いながら距離を詰めて、ランスと鞭がぶつかり合う────

 

「! ベーゼ、少しタンマです!!」

 

「えぇ、この反応……魔法少女ですねぇ…………」

 

 直前に魔法少女の気配を感知した私達はいったん距離をとる。

 ……今日はトレスマジアの修行の日ではありません。あの三人も今日は遊ぶと言ってましたし、変身する理由がない。

 ならば…………

 

『えりす、ベルゼルガが現れたわ! 彼女エノルミータを呼び出そうとしてるみたい!!』

 

『やはりシオちゃんズですか……』

 

『も、申し訳ないけど私達はイミタシオとパンタノぺスカに足止めされて身動きが取れないのの……! すぐには来れないけど何とか追いつくから、あなたは先にベルゼルガを抑えてくれないかしら!?』

 

『マジですか』

 

 どうやらトレスマジアを抑えてじっくり戦おうとしているようですね。

 ……ぶっちゃけじっくりベルゼルガを甚振るいい機会なんでしょうが、イミタシオがアズール達に危害を加えるのを見過ごしたくはありません。小夜には申し訳ありませんが救援を優先させていただきましょう。

 

「……だそうですが、どうしますか?」

 

 おそらくヴェナリータから念話が来たらしく、真剣な表情を浮かべていたベーゼに尋ねてみると彼女は顎に手を当てながら呟く。

 

「そうですね……正直今はカーネリアンに集中したいところですが、あなたとはいつでも戦えますし重要度の高いのはベルゼルガでしょう。残念ですがあなたとの戦いはまたの機会にしましょう。ですがあなたはどうです? トレスマジアとして私を抑えたほうがいいんじゃありません?」

 

「……確かに本当ならばマジアカーネリアンとしてあなたを抑えておくべきなんでしょうが、トレスマジアがイミタシオの襲撃を受けてるみたいなのでそちらの対応をさせていただきます」

 

「……は?」

 

 直後ベーゼは恐ろしい表情を浮かべる。

 

「いくらトレスマジアとも敵対してるとはいえ、仮にも魔法少女が他人の足を引っ張るなんて決してあってはならない。いけませんいけませんいけませんいけ────」

 

「それじゃあ私行きますね。それでは~」

 

 シオちゃんズの行動が地雷案件だったのか怒り狂うベーゼは放っておいて、小夜達の救援に向かうために転移門を開いて小夜の念話の発信地点に向かうのだった。




 ~おまけ~

「はぁ、真化の圧倒的力でベーゼをぶちのめしたかったのに。……イミタシオにはお死おきが必要ですねぇ」

 一方その頃……

「はぁ、真化したカーネリアンを愉しみたかったのに。……ベルゼルガにはお仕置きが必要ですねぇ」

「「ウフフフフフフフフフフ……」」


 こいつら似たもの同士である。
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