悪の力? でもそれをどう使うかは私の勝手ですよね!?   作:蒼天 極

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パッと片付けてトレスマジアが来る前に撤退を……

 さて向かいの銀行が強盗に襲撃されていて、具現化を持つ私ならばワンチャン対抗できるかも知れない。

 

「…………やめておきましょう。いくらなんでも女子中学生が対応するにしてはスケールが大き過ぎます……」

 

 私は何も見なかった。

 トレスマジアもおそらく私の反応でも感知してこちらに向かってるでしょうし、変身解いて人混みに紛れてしまお……ん?

 銀行の中で銃突きつけられてるのって……もしかして我が家のお隣に住んでるおばさん!?

 

 …………。

 

「あーもう!」

 

 あの人には小さい頃よくお菓子もらったり、妹のこりすちゃんにもぬいぐるみを編んでくれたりと良くして貰っているんだ。なのに見捨てるなんて出来るわけないでしょうが!!

 パッと片付けてトレスマジアが来る前に撤退すれば大丈夫でしょう!!

 

「野次馬の方々、どいてくださーい!!」

 

「ちょ、あなたそんなに押さないで……え、エノルミータ!?」

 

「え、本当だエノルミータだ!!」

 

「え、もしかしてこの銀行強盗はエノルミータの……ヤバい逃げろぉおおおお!!」

 

「違いますからね!?」

 

 ほんとエノルミータは怖がられてますねぇ。まぁ、そのおかげで銀行周りで様子見てて邪魔だった野次馬を退かす事が出来たわけだけど……うん、流石に銀行強盗の犯人扱いされるのは遺憾ですね。

 

「でもま、取り押さえて仕舞えばこっちのものですよね!!」

 

 さて自動ドアは……あー、内側から閉じられてしまってますね。

 

「せぇい!!」

 

 ガシャーン!!

 

「な、なんてやつなの! 自動ドアを蹴破って……」

 

「トレスマジアは! トレスマジアはまだなの!?」

 

 …………まぁ私は正義の味方では無いし、あくまでお隣さんを助けに来ただけだから……うん。

 壊した自動ドアの修繕費は強盗に請求して下さいな。

 

「な……もしかしてエノルミータ!?」

 

「まさかウチらの稼ぎを横取りしに来たわけじゃ無いよなぁ!?」

 

「ふん、いくらエノルミータだからって相手はガキ。大人には勝てないもんよ!!」

 

 私が銀行に侵入した事で銃を構えた複数人の強盗は一瞬呆気に取られるが、すぐにこちらに銃を向けてくる。

 

 咄嗟に合金製の盾を具現化して自らの身を守ると同時にこちらにバカスカ撃ってくる。

 チラリと盾の向こうの様子を見てみると強盗のうち何人かは銃をこちらに向けていない。弾切れを狙ったところで残りの面子が銃を撃ってる隙にリロードされるのがオチですかね。

 

「ハッ! エノルミータも大した事ないじゃないか!! ほらほらどうした? このままじゃ蜂の巣になっちゃうよ!?」

 

「トレスマジアと戦ってるときみたいに尻尾巻いて逃げちゃどうだい!?」

 

「なかなか調子に乗ってますねぇ……それでは無難に……」

 

 こちらに銃を発砲することに夢中な強盗達の背後に、すっかりお馴染みとなった手袋を具現化すると強盗達から銃を強奪。銃はこちらで預からせてもらう。

 

「私別にガンオタでは無いので別にこれは興味ないですね。ポイっと」

 

「あぁ、コイツ……!!」

 

 銃は蹴破った自動ドアから外に放り投げる。今警察の方々も来たみたいだし即座に回収してくれるだろう。

 そのまま自然な流れで強盗達を具現化した針金で縛り上げて動けなくしていき、後一人といったタイミングで「動くんじゃないよ!!」と言う声がする。

 

「少しでも動いたらコイツの命はないよ!!」

 

「ひぃ!」

 

「……おや、人質ですか? 私が悪の組織の人間だと知って?」

 

 ……口ではそう言ってみたはいいが、ちょーっと面倒くさい事になってしまったようだ。

 何せ人質にされてしまったのはお隣のおばさん。私にとっての救出対象だったのだ。

 ご丁寧に隠し持っていたナイフをおばさんの首筋に突きつけられているから、一歩間違えればナイフはおばさんの頸動脈にブスリだ。

 

「さぁ、動いてみな! その瞬間にこいつを刺してやる!!」

 

「ん〜、困りましたねぇ。諦め悪くそういう事するんですか? 仮に貴女が彼女を刺した場合、私のせいで彼女は死ぬと言う意味になります。そうなると流石の私も不機嫌になって、人質を失った貴女をメチャクチャにしてしまうかも知れませんねぇ」

 

「っ!?」

 

「私ご覧の通りイメージしたものを具現化する程度の能力の持ち主ですので、拷問道具なんかも具現化出来るんです」

 

「……ぁ……あ……!!」

 

 おや、なんでそんなに怖がってるんだろう? 私別にそんなに怖い顔向けてませんよね?

 せいぜいほんの少し睨みつけているだけ、小娘の睨みなんて大の大人には怖がるようなものではないでしょう?

 

「アイアンメイデンがいいか、ユタの揺籠がいいか……あ、ファラリスの牡牛でガッツリ焼いてしまうのも良いですね。……そこの人を刺したら確実にやります。ですが人質を開放してナイフを捨てるならば考え直して差し上げましょう」

 

「……!!」

 

「無論私が嘘をついてる可能性もありますが、僅かな望みに賭けるか、確実に地獄を見るか……選択の余地は無いと思いますがねぇ」

 

「…………は、はは……お、脅したって無駄さ。私は本気で「そほまへはよ(そこまでだよ)!!」なっ、トレスマジア!?」

 

 ……あーあ、時間をかけ過ぎてしまったみたいだ。

 私が蹴破った自動ドアからマジアアズールと昨日ビンタし過ぎたのか、ほっぺがパンパンに腫れたままのマジアマゼンタが来てしまった。

 あ、強盗もトレスマジアに注目してて私から視線を外してる。

 ならば!!

 

「よそ見は禁物ですよ?」

 

「しまっ!?」

 

「はぁあ!!」

 

「がふっ!?」

 

 一瞬の隙に自立稼働手袋で強盗からナイフを奪い取ると、そのまま相手の鳩尾に蹴りを叩き込んで蹴り飛ばす。

 

「大丈夫でした?」

 

「え……あ、ありがとう……ございます」

 

 よし! これで目的だったお隣のおばさんの救出は完了、あとはトレスマジアだけど……

 

「……それじゃあ、後処理よろしくお願いしますね? 強盗どもを縛ってる針金は具現化したものなんで、急いで拘束し直すことをオススメします。それでは!!」

 

「あー! まはにへへ、まへぇええええ(また逃げて、待てぇええええ)!!」

 

「マゼンタ、彼女は一旦後! まずは強盗を警察に渡して、人質になった人達を開放しましょう!!」

 

わはっは(分かった)!!」

 

 

 ◇

 

 

 トレスマジアに後処理を押し付けたとは言え、あの場にはサルファがいなかった。

 もし別動隊で動いているなら、私のことを捕捉して追いかけて来るはず。昨日のあれで結構好戦的な性格なのは分かったし、流石に昨日の今日で戦う気力も起きない。

 

「…………ぜぇ……ぜぇ、ここまで来れば大丈夫ですかね……」

 

 ここは裏路地の奥の奥だし見た感じ魔法少女も来ていない……。よし、今のうちにさっさと変身を解除して……おっと。

 直後目の前にズズズと黒いモヤの中から、やたらボロボロの露出の多い悪の女幹部風の少女が出てくる。

 と言うか左半身ボロボロ過ぎてほとんど裸じゃないですか。

 

「うてな大丈夫かい? まさかサルファがあんなに強敵だとはね。これは考えなければ……おや?」

 

「そ、そうですね……サルファがあんな隠し玉を……ふふっ……って」

 

 女幹部風の少女が私を見るとしばらく硬直をする。

 ……えーとこの子どっかで……あ、そう言えば以前黒い妖精が見せてくれたうてなの変身姿……と言うことはうてなか。

 

「うてなじゃありませ「は? お姫様モチーフとか期待に答えすぎだろ」……え?」

 

 相手が友人という事で挨拶をしようとすると、なんかハァハァ言いながら、私のことをあっちやこっちと視点を変えてジロジロと凝視し始めたうてな。

 ちょっとあまりに真剣に見過ぎて目が飛び出すんじゃないですか?

 

「お姫様姿ってだけで激エモなのに、この配色はハートの女王モチーフ……しかもお姫様の重厚な装飾なのにおへそが見えてて悪の女幹部らしさもしっかりと踏襲してて……最高! あなた最高だよ!!」

 

 とっても良い笑顔でサムズアップするうてな。

 

「あの、すっかり盛り上がってるところ申し訳ないんですが……ちょっと興奮しすぎでは? ヨダレ出てますよ?」

 

「え……あ、ごめん!」

 

「と言うかうてなの服はなんと言うか……うん。上から何か羽織ることをオススメします」

 

「え……///そ、それはそうなんだけど……///……ってなんで私の本名知ってるんですか?」

 

 自らの姿を思い出したのか、顔を真っ赤に染めて胸を押さえるうてなだが、途中で頭にハテナマークを浮かべ始める。

 あら、私の事が分からない? ならばよろしい改めて自己紹介してやろうではないか。

 そう思ってポーズを取った瞬間

 

「あぁ、彼女はキミの友達の杜乃えりすだよ」

 

「……え、えりす……ちゃん?」

 

「なんで言うかなこの黒妖精……ここは私がカッコよく名乗り出るタイミングだったのに」

 

「…………えぇええええええええ!!??」

 

 しばらくヴェナリータの言葉が飲み込めなかったのか、ぼーっと私の事を見ていたうてなだったが、やがてボフンッと顔を真っ赤に染め上げた彼女の絶叫が辺りに轟いた。




変身状態のうてなとえりす邂逅。
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