悪の力? でもそれをどう使うかは私の勝手ですよね!? 作:蒼天 極
「このタイミングでの真化はわたくし達の敗北フラグですからね……。安全に行かせていただきますわよ〜!!」
双方構え合う中で最初に動いたのはパンタノペスカ。杖の尻を地面に叩きつけた瞬間、部屋に積まれてあったガーデニング用の土の入った袋から大量の土が取り出されたかと思うと、それは部屋中を埋め尽くすほどの戦闘ゴーレムと化す。
すし詰め状態で正直苦しいですね……。
「ペスカ……作る量を考えるの…………!!」
「シオちゃんが近くに……エヘヘヘヘヘへへ…………」
「ナイスアングルですわよ〜、イミタシオ様〜、ベルゼルガ〜♡ ……こほん、土人形は壊してもすぐに再生できます……果たして耐える事はできますかしら〜…………?」
ゴーレム兵に押されて密着状態になっていたイミタシオとベルゼルガを写真に収めながらそうに言ってくるパンタノペスカ……。
なるほど、圧倒的な数で圧殺しようというのですね。
確かにこれほどの数を作られてしまうと、ゴーレムのコントロール権を奪えるであろうベーゼかタコ殴りにされた後にカウンターで一網打尽に出来るアズール以外は突破するのは難しいでしょう。
…………しかし
「タダでさえ多勢に無勢だというのに、これほどの量を相手にするわけないじゃないですか。真化した事で強化された具現化の新たな力……お見せしましょうか」
私を押し潰そうとするゴーレム達に手を翳す。すると次の瞬間、ゴーレム達はまるでパンタノペスカが能力を解除したときのように身体が崩れ始め元の土へと戻る。
その様子を見たパンタノペスカはしばらくヨダレを垂らした笑顔のまま表情も変えずに動きが停止していたが、やがて何をされたのか分かったのだろう。ポカーンとした顔で先ほどのように私とシオちゃんズしかいない部屋を眺める。
「…………は?」
「真化した事で具現化の能力が拡張したらしくてですねぇ。どうやら魔力的に作り出された物体のコントロール権を奪い取れるようになったんですよねぇ。……いやぁ、今知りましたよ」
「え……は…………?」
魔力的に作り出されたものとは、ベーゼの作り出す魔物や、アリスちゃんの動く人形達やドールハウス、そしてパンタノペスカの土人形にイミタシオの毒が該当するだろう。
真化をする事で私はそれらに干渉する事が出来るようになったのだ。
最も支配の力は弱めなのでやろうと思えば抵抗されてしまうのだが、魔力を抜いて崩すくらいなら朝飯前でしたね。
「は、はぁああああああ!!?? ちょ、それはいくらなんでもインチキ過ぎません!? そう言うのをチートと言いますのよ!!」
「知ってます、チートって最高ですね! ……所で大丈夫ですか? あれだけ大量にゴーレム兵を作ったら流石のあなたも疲弊するのでは?」
「……あ"」
私の指摘とほぼ同時に膝をついたパンタノペスカは「後はよろしくお願いしますわ……イミタシオ様 × ベルゼルガが見れてわたくしは満足ですわ……♡」と言いながら倒れてしまった。
なんと言うか……あなたは相変わらずですね…………。
「ふぅ、ペスカにも困ったもんなの……、でも一人倒したくらいで調子に乗るな」
「えへへへ……それでも威力の……高いものは……作り出せないでしょ…………?」
「えぇ、天雷もマテリアライズブレイカーも今は使えない。しかしやり方はいくらでもあるんですよ」
パンタノペスカが倒れたのを見て、今度はイミタシオとベルゼルガがこちらに斬り掛かって来るがサイドステップでそれを回避する。
そして流れるように具現化で作り出しますは、液体の入った巨大な容器とそれに繋がれたホース。
「今は夏ですからね。火属性ですがたまには趣向を変えて水遊びしましょうよ♪」
「な……わっぷ!?」
「う……なに…………冷たいんだけど……」
ホースから割と勢い強く水が噴射され、不意を突かれた二人は無様にも液体を浴びてしまう。あ、ついでにパンタノペスカにもかけておきましょうね。
……え? 私の事だからどうせまた硫酸かなんかを具現化したんだろ?
そんなワケないじゃないですか。同じ甚振り方はあんまり趣味ではないんですよ。今日は硫酸なんかよりももっと素敵なものです。
「な……ぐ…………ゔぁあ"あ"あ"あ"!! な、なんだごれはぁぁああああああ!?」
「う……いたい…………これもしかして……」
「う〜、これイミタシオ様のペインフルですわ〜……この間これでお仕置きされたばかりですのに〜……」
「ご名答♡」
イミタシオが以前私にかけたペインフル#8と言う毒、一度身をもって体験したときに相手を甚振るには丁度いいアイテムだと思ったんですよね〜。
なにせ少し動くだけで引きちぎられそうな痛みが走るんですもん。もしこれでとっても痛い事をしたら……アハッ、痛過ぎて廃人になっちゃうかもしれませんねぇ♡
「と言うわけで痛がってもがいてないで立ってくださいね〜」
「ぐぁ"あ"……くぅ…………ッ!」
「シオちゃんに酷い事はさせない……エヘ」
痛みに耐えきれず大剣を落としてうずくまっていたイミタシオの胸ぐらを掴もうとするが、間にベルゼルガが入ってきた。
どうやら彼女は痛みに耐える事ができる……と言うか痛みを気にしていないようでイミタシオを守るように大鎌を振るって来る。
「邪魔しないで下さいよぉ……今からお楽しみの時間なんですからぁ……。あ、私が代わりに責め苦を受けるだなんて言わないで下さいね。ベルゼルガは見た感じマグロっぽいんで甚振っても面白くなさそうです……し!!」
「ぐぅ!!」
「あ"──────!!!!」
大鎌を杖で受け流すと流れるようにベルゼルガの頬を殴りつけてパンタノペスカの方へ殴り飛ばす。……痛みを気にしていないみたいですけど、負傷が響いているようで動きにキレがありませんね。あと殴り飛ばされたベルゼルガの下敷きになったパンタノペスカはドンマイという事で。
……さーて、今度こそお楽しみの時間ですね。
「あ"ぁ……ぎぃい……」
彼女の胸ぐらを掴んで無理やり立たせると、具現化を応用して両手を縛り天井にくくりつける。
そして「お尻が弱いならやはりこれですよねぇ……」とイミタシオに聞こえるように呟きながら取り出しますは金属バット!!
それを見たイミタシオは顔を真っ青にする。
「な……貴様、それで何をするつもりだ……ぐぅ!」
「悪い子にはお尻ペンペンと相場が決まっています。ですがあなたはお尻ペンペンでは釣り合わない悪い子ですからね……。真っ赤に腫れ上がり裂けて血が出てもやって差し上げますからいい声で鳴いてくださいね♡」
「な、ま、待て……!」と言っているイミタシオは完全無視して、バットを全力で振り上げて……せーの!!
バァアアアン‼︎
「っ!! …………ぎゃぁぁああああああああ!!!!」
「あら、素敵な声ですね♡ それではもう一発……えい!」
バァアアアン‼︎
「ゔぁ"あ"あ"あ"ああああああ!!!!」
「シオちゃん! ……ぐっ!!」
なんとか助けに行こうとするベルゼルガだが、怪我に引っ張られて満足に動けない。
うんうん、大人しくしていてくださいね。せっかくオモチャで遊んでいるときに邪魔されるのは楽しくないので。
「ゔぁ……ゔぅ……き、貴様は絶対……私がぁ…………倒すぅうう……」
「あら、まだ敵意を抱いてましたか……。ここでしっかりへし折っておかないと後が怖いですね。よーし、さっきの二倍の力で殴ってみましょう!」
「え……今の二倍……ま、待てそれは耐えられ「えーい!!」ぐぁあ"あ"あ"ああああ!!!!」
「もう一発!」
「あ"ぁぁああああああ!!」
「ついでにもう一発!」
「ぎぇええええええええ!!」
ふぅ、いっぱい殴りましたね。真っ赤に腫れてますし、魔法少女の防御力で耐える事が出来てますがこれ以上やったら尾骶骨が砕けて歩く事が出来なくなるかもしれませんね。
「ゔ……ゔぁ、あ……あぁ…………」
「あら、とっても素敵な顔ですね♡ しかも近くのベルゼルガも絶望したようないい顔をしていて……そろそろ達してしまいそう……♡」
……しかし私は今魔法少女ですからね。
相手を障害者になるまで追い込んだってバレたら面倒です。かと言ってノワールサンクチュアリにぶち込もうにも、パンタノペスカの能力でこの屋敷を作ったならばノワールサンクチュアリに閉じ込めて魔力の供給を絶ってしまうと、屋敷が崩れて中にいるこりすちゃん達が怪我するかもしれないですし…………。
「……最後に一発叩き込んでもうやめにしますか」
その言葉に涙や鼻水を垂れ流し息も絶え絶えだったイミタシオは少し表情を明るくするが、直後彼女の顔が絶望で歪んだ。
それもそのはず、なにせ最後はちょっとした特別製のバットでぶっ叩きますからね。先ほどの金属バットとは天地の差でしょう。
「……そ、それは……なんだ…………」
「ん? なんでも出来ちゃうバット、エスカリボルグです♡」
エスカリボルグ、撲殺天使ドクロちゃんと言う原作がライトノベルのアニメに出て来る棘バット。
2トンもある本物と比べてずっと軽い上に、私のような小娘が振るうので威力はたかが知れてますが、これでぶっ叩かれたらお尻は穴だらけになってしまうでしょうね。
「…………ぐぅ……!!」
おや、流石にここまでしたら謝罪の一つでも出るかと思いましたが、この期に及んで睨みつけて来るとはなかなかガッツがありますね。
ならばよろしい。お尻に穴を開けて差し上げようではありませんか!!
「それでは最後の一撃…………せー「シオちゃん!!」おっと!?」
エスカリボルグを振りかぶり、思い切り振り下ろそうとした瞬間、無防備な所をベルゼルガに突き飛ばされてしまった。
私、遊んでるときに邪魔されるの嫌いなんですけどねぇ…………。
「シオちゃんに酷いことするの……許さない」
「……あ、そう。ですが喧嘩売っといてどの口がいうんですかねぇ!!」
「グフッ!!」
「ベルゼルガ……!?」
私を取り押さえようとするが力の足りていないベルゼルガを棘バットで殴り飛ばすと、気を取り直してイミタシオのお尻にエスカリボルグを叩き込もうと──
だが次の瞬間、棘バットに付着した血液が刃と化してこちらに襲いかかって来る。
「っ!? しまった……ベルゼルガの能力は…………」
「ペスカ!」
「分かっておりますわ! 撤退して仕舞えばこっちのものです!!」
頬を掠りながらもなんとか刃を避けた一瞬の隙に、ベルゼルガは血の刃でイミタシオの拘束を外すと彼女を抱いてパンタノペスカが開いていた転移門に逃げ込む。そして残ったパンタノペスカも「今回はわたくしらの負けですから、もう許してくださいまし〜!!」と泣き喚きながら転移門に逃げ込んで行ったのだった。
「……私としたことが、遊ぶのに夢中になり過ぎて油断してしまいました。せっかくのオモチャだからと興奮し過ぎてしまいましたね…………」
これでは以前うてなに指摘したただ欲望を満たすだけの
直後、部屋内にヒビが入り始める。
どうやらこの屋敷を作ったであろうパンタノペスカが逃げ帰った事で、屋敷が姿を維持できなくなったのだろう。
……今なら屋敷のコントロール権を完全に掌握できるでしょうし、私はここの維持に努めて、小夜達に念話して先に脱出するように伝えておきましょう。
「…………それにしても、うまく逃げおおせたとはいえイミタシオ達は地獄ですね。なにせ真化した事で、具現化したものは
真化したことで相手の作り出したものを掌握する力と、具現化したものの存在を固定……つまり変身解除しても半永久的に具現化したものが存在させ続ける力を得ました。チートですね!!
〜おまけ〜
「に、逃げたのになんで痛みが引かないんですの〜〜……」
「カーネリアン……よくもシオちゃんを……ぜったい許さない…………シオちゃ……みっちゃん大丈夫?」
「……ぐううぅ…………この借りは必ず……」
「…………あ、あの、みっちゃん様……もうカーネリアン様を狙うのやめません…………? なんだか彼女に喧嘩売っても酷い目に遭ってばかりなような気がしますわ……」
「百花黙って……そんなことできるわけないでしょ……」
「ですがカーネリアン様ってロードだったみっちゃん様を倒しただけですわよね? お尻を叩いて屈辱を与えたのはベーゼ様ですわよね……? ならば優先度はエノルミータが上のはずですわ……。せめて今はエノルミータの方々を優先して、その後じっくりリベンジをしませんこと……?」
「…………そう……だな。悔しいが……今の私ではまだ力が足りない……まずは憎きエノルミータにじっくり屈辱を与え、その後改めて力を蓄えるとしよう……。覚えていろマジアカーネリアン……今は諦めるが…………いずれ貴様を倒してやる……!!」
負けが続いていた上に今回あまりにボコボコにされたため、シオちゃんズのターゲットからカーネリアンが一時的に外された。