悪の力? でもそれをどう使うかは私の勝手ですよね!? 作:蒼天 極
今日はなんとなく寝られないため眠くなるまで勉強をしていた。
やっぱり眠くないのにベッドに潜ってるのも眠るまで時間の無駄ですし、こういうときは頭を疲れさせるのが一番ですよね。
それに夏休みだからと宿題以外はしないというのもいけません。少しでもやっておかなければ二学期以降授業についていけなくなってしまう可能性もゼロではありませんからね。
「……ふわぁ……あぁ、もうこんな時間ですか」
時計を見るととっくに日付が変わっている。
丁度眠くなってきましたし、これ以上は明日起きれない可能性も高いのでここらでやめますか。
……あ、そう言えばなんか面白いトピックありますかね?
布団に潜って寝落ちるまでネットサーフィンでもしようと、スマホのSNSを覗き込む。
……あ、この際私の活動はネットでどんな反応なのかを見てみるのもアリですね〜。少し覗いてみましょう。
トレスマジアっと…………あ、注目の記事がありますね。少し見てみましょ──
『アズール……今夜は離しませんよ……』
『だ……ダメよベーゼ……私達は敵同士なのに……』
『アズール……目を閉じて……』
『ん……♡』
直後私の目に飛び込んで来たのはディープなキスをするマジアアズールとマジアベーゼの姿。
………………。
「あぁ、これが脳破壊というものですか。精神的負担が非常に大きい……これは相手を甚振るのに使えますね。知りたくなかったですね。アッハッハ……」
……ま、まぁ? 私はアズールに告白できなかったチキン女ですし、ベーゼに先を越されたならこれ以上は執着せずにキチンと受け入れるのが正解でしょう。
だからダメです。小夜のスマホに電話をかけるな。せっかくの情事に水を刺そうとするんじゃありません…………。
『はい、もしもし? 夜も遅いけどこんな夜中にどうしたの?』
「え、えっと小夜……そのぅ…………う、うぅ……ゔぅゔううううううう!!」
『ほ、本当にどうしたの!?』
ベーゼに取られた悔しさ。二人の幸せな時間に水を刺してしまった罪悪感なんかの感情がぐちゃぐちゃになって泣くことしか出来ない私であった。
その後電話越しに小夜に慰められ、なんとか落ち着きを取り戻した私は何があったのかを聞かれる。
「えっと……あの闇堕ち許さないウーマンのベーゼとどうやって結ばれたのかは知りませんがおめでとうございます……し、しかしいくら結ばれたからと情事の瞬間を撮ってネットにあげるのはいかがなものかと……ほ、ほら、私達は社会的な信用問題もあるんですし…………」
『は? 私とベーゼが結ばれた……? 何をあり得ない事を……悪い夢でもみたの?』
「夢なら覚めて欲しいと思ってますよ。これの事です」
そう言ってLINEに先ほどの動画のリンクを貼っておく。
だがしばらくした後、電話の向こうから『なによこれはァ……』とビックリするほど低い声が聞こえる。
だがやがてなんとか心を落ち着けようと深呼吸を数回したかと思うと、努めて冷静に放す。
『……これは私ではないわ、身に覚えがない。それにこれはライブ映像なのに通話してる私が映ってないっておかしいでしょう?」
「そう……ですね。じゃあこれは偽物って事ですか」
『間違いないわ。……でも誰がこんな事を…………』
「…………あ、既に場所が特定されてますね。……行きますか?」
『もちろん、流石にこれは許せないわ……現場で落ち合いましょうえりす!!』
「えぇ! じっくりお死おきしてやろうじゃないですか!!」
◇
現場で合流する予定であったが偶然途中でアズールの合流したためそのまま一緒に向かう事にした私達。
SNSの情報を頼りに今なお撮影が行われている現場へ向かうと二人の人影が見える。
あらあら。どうやら特定を頼りに間近で見に来た人がいるみたいですねぇ。
「……そこのお二人、夜は危険なので帰った方が…………あら」
「……!」
「あ……」
「ゲ……」
その人影の正体はなんとベーゼとレオであった。
そうか。今回はベーゼもネタにされてしまってる上に、この手の悪の組織と正義のヒロインのイチャラブは地雷も地雷。そりゃ来ますよね。
そんな事を考えていると無言でアズールとベーゼが歩み寄ると互いに睨み合う。
「こんな夜更けに奇遇ですねぇ……?」
「……そちらもメンツを潰されてカチコミに来たようね」
「えぇ、悪の組織と正義のヒロインがイチャイチャするだなんてあり得ないじゃないですか……」
「全くもってその通りだわ」
「……目的は同じみたいですねぇ。今宵はこちらも悪さをする気はありません。共にいかがですか?」
「いいわよ。今夜だけ共闘と行きましょうか……」
このまま一戦交えるのも時間の無駄と思ったのか、あのアズールとベーゼが手を組む。今回はそれほどまでの大事件という事ですね。
「つーかなんでカーネリアンまでいるんだよ? オメー関係ねぇじゃん」
「あなたと同じ理由ですよ……」
「……そうかよ。んじゃ、アタシらも今は仲良くするか」
という事で協調性皆無のレオも今日だけは合わせてくれるという事で、トレスマジアとエノルミータの混合パーティーは立ち入り禁止と描かれた看板を無視して撮影が行われている建物へ入る。
しばらく建物を進むと、灯りのついた部屋からベーゼとアズールにそっくりな喘ぎ声が聞こえ、そこをチラリと覗くと……
「い〜いですわよ〜! ハイもっとくんずほぐれつ!! 表情見せてくださいまし〜♡!!」
「……またこいつですか」
そこにいたのはパンタノペスカ。
なるほど。土を操る能力を駆使して本物と瓜二つな土人形を作ったという事ですか。それにしても本当に凄まじいクオリティですね。細かいところまで再現されているとは……
まぁいいです。犯人がこいつならば手加減する必要はないでしょう。
「あいつ……!」
「待ちなさいレオ。……ここは私が」
青筋を浮かべながら部屋に入ろうとするレオを止めると、私は無言でパンタノペスカに歩み寄る。
足音が立たないように移動した事で、パンタノペスカは私に気が付かずに「盛り上がってまいりましたわ〜♡」と左手で事をいたそうとしている。
「……さぁ、ここからが佳境ですわ「そうですか」……ほぇ?」
「せい」
「あいたー! ですわ〜!!」
無言でパンタノペスカの頭を掴むとそのまま勢いに任せて思い切り地面に叩きつける!
そしてパンタノペスカの胸から転げ落ちたスマホを拾い上げると、そのまま本物のベーゼとアズールを映して差し上げる。
『え……は? どゆこと……?』だったり『え、これ偽物だったの……?』だったりと色々なコメントが映し出される中、私はカメラにニコリと微笑む。
「誤解を解くために撮影現場に向かったらエノルミータやってきてビックリしてしまいましたが、これでマジアアズールとマジアベーゼの誤解は解けましたかね……? もしこの動画を見てアズール素敵、だったりどんな活動をしてるか気になる〜って方は是非本物のトレスマジアの事もよろしくお願いします。それでは配信者にお仕置きをして、エノルミータと決着をつけなければならないのでご機嫌よう」
そしてそのままスマホの配信画面を切ると…………
「レオ、パスです!!」
「おっしゃ」
ドォオン‼︎
「あ"あ"ぁあ"あ"!? ……こ、これ買い替えたばかりなのに……なんでことをするんですのカーネリアン様!! レオパルト様!!」
頭に大きなタンコブが出来たパンタノペスカがこちらを睨みつけてくるが、私の代わりにベーゼが彼女をギロリと睨む。
「それはこちらのセリフですよ、パンタノペスカ。SNSでの情報操作とはやってくれましたねぇ……」
「…………あなた達がエノルミータやカーネリアンを狙っているのは知っているけど、まさかこんな卑怯な手段をとってくるだなんて……」
「「不快感を禁じ得なかったわ(ませんでしたよ)……!!」」
敵の癖に息ぴったりですねぇ……。そう言えば二人は正体を知らずとはいえ一緒に滝に打たれたり、よく会話をしているし案外お似合いなのかも…………こ、これ以上考えるのはやめましょう。また脳が破壊されそうです……。
そんな事を考えていると、パンタノペスカは一瞬キョトンとした顔をしていたが、やがて納得した表情で弁解を開始する。
「いやこれはわたくしが趣味でしている創作活動でして「は?」イミタシオ様の目的とはなんの関係もございませんことよ? 「へ?」それにカーネリアン様の件についても「私?」前回本当に酷い目に遭ったので「確かに……」これ以上相手をするのは危険と判断して攻撃対象から外れていますわ」
朗報、どうやら私はシオちゃんズの攻撃対象から外されていたようだ。もしかしたらパンタノペスカの嘘の可能性も十二分にあり得ますが、本当ならばおめでたい話です。明日早速マゼンタとサルファに報告しないといけませんね。
……まぁそれは今は一旦置いといて…………
「イミタシオの目的と関係ないならどういうつもりなんです? ありもしない大スキャンダルをでっちあげて社会的抹殺するのが趣味なんですか?」
「まさか! わたくしは自カプの良さを伝えたいだけですの♡ ベーゼ様 × アズール様、正義と悪……素晴らしき禁断の愛をご覧くださいまし♡」
「貴様……!」
直後レオが銃火器を取り出してベーゼ人形とアズール人形を破壊する。
「やるならアタシとベーゼちゃん絡ませろボケェ!!」
うん、あなたならそう言いますよね。
「なんでそこのアホマゾ女なんだよ! アタシとで撮り直せ、言い値で買うから!! あとアホマゾ女とはカーネリアンで絡ませろぉ!!」
「「なっ!?」」
ちょ、レオ! あなた余計な事言わんでいいんですよ!! 私チキンで自分の気持ち伝えられてないんですから!!
アズールと二人で顔を赤らめていると、パンタノペスカは青筋を立てて中指を立てる。
「ハァ? 他カプなんてクソくらえですわ。地雷なんで話題に出すのもやめてくださる?」
「あっコイツ、コロすぅ〜!!」
「へぇ、他カプは地雷……ならマゼンタとアリスちゃんっていいですよね。姉属性と妹属性が上手くハマってますし。それにベーゼと一番付き合いが長いのって実は私なんですよねぇ。あぁ、レオとサルファなんかも気性が似ているから案外お似合いだと思いません?」
「お前もコロすぅ〜!!」
「全部地雷ですわバカ野郎!! えぇい、耳が腐りそうですわ!! あなた方はこれでも相手にしていなさいな!!」
敢えてパンタノペスカが関心ないであろうカップリングをあげると、パンタノペスカは青筋を浮かべながら杖の尻を地面に叩きつける。
その直後、地面が盛り上がったかと思うと、私やアズール、ベーゼにレオに瓜二つな人形が大量に姿を現した。
〜おまけ〜
「……」(お昼寝しすぎて眠れない……)
「!」(そうだ、お姉ちゃんと一緒にねよう。お姉ちゃんの胸って柔らかくて落ち着くんだよね……)
ガチャ
「♪ 〜……?」(お邪魔しま〜……あれ?)
「……?」(いない。お手洗いかな? でも電気ついてないし……)
「…………?」(一体どこに……もしかして外に出ちゃった?)
「…………!!」(もう! 私には夜は外に出ちゃダメって言ってるのに……呼び戻して今度は私がお姉ちゃんをお説教しなくっちゃ!!)
「……」(ママを起こさないようにこっそり玄関を出て──)
「う〜ん、トイレ〜……あら? こりすったらそっちは玄関よ?」
「!?」(ば、バレちゃった……!!)
「寝ぼけちゃったのね? あ、そうだわ。今夜はママと一緒に寝ましょ〜。あ、ママトイレ行ってくるからママのお部屋で待っててね〜」
「…………」
自宅からの脱出に失敗したこりすちゃんであった。