悪の力? でもそれをどう使うかは私の勝手ですよね!? 作:蒼天 極
ハートの女王モチーフの女幹部の正体が私だと気がついたうてなの絶叫の後、うてなは路地裏のすみの壁に体操座りをして項垂れていた。
「……あの、うてな? 大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃないよ……えりすちゃんに全部見られちゃったよ……」
「大丈夫です、うてな。うてなとトレスマジアが戦ってるシーンを動画に撮って投稿していた人がいたんですけど、それ見てうてながトレスマジアに何したか知ってるんで!!」
「あ"ぁああああああああああ!!!!」
と言っても仕方がないだろう。昨日糖分不足で働かない頭でぼーっと動画見ていたときに、オススメで上がってきたんだから。
「スパンキングにくすぐり責めとなかなかマニアックな趣味をお持ちだったみたいですが、大丈夫ですようてな!!」
「え……えりすちゃん……やめ……もうやめて……」
「実は私がうてなのベッドのした漁ったときにSM系のエロ本が出てきたから、うてながSMに興味あったの前々から知ってましたから!!」
「」サラァ……
あ、砂になって崩れ落ちてしまった。つついてみるが返事はない。ただの砂の塊のようだ。
いやぁ、それにしてもよくよく思い返してみるとうてなってSだったんですね。性格的にMだと思っていましたが予想をひっくり返されちゃいましたよアッハッハ!
そんな事を考えていると、ヴェナリータは何を思ったのかうてなだった砂の元へ行き、それの耳だった箇所に話しかける。
「えりすの衣装って結構着込んでるけど、それをひん剥いたらどうなるんだろうね」
「…………」ピク
「それにこうは思わないかい? なんで自分だけって……。こうなったらえりすも巻き込んでやろうじゃないか」
「……」ピクピク
「大丈夫、相手はトレスマジアじゃなくて同じ女幹部。めちゃくちゃにしても問題ないよ」
「……」ユラリ
やりやがりましたねヴェナリータ。まさか勧誘がうまくいかないからとうてなを利用しやがるとは……。
悪魔の囁きに乗ってしまったうてなはゆらりと立ち上がると、なんとも危険な笑顔でこちらに詰め寄る。
「フ、フフフそうですね。こうなればえりすちゃんも道連れです。えりすちゃん……いえ、…………ごめん、変身したときの名前って何?」
「決めてませんよ?」
「ごめん、今決めて」
「えぇ、私ネーミングセンスないんですけど……」
でも確かに変身状態で本名名乗るわけもいかないし、この場で決めてしまっても良いかもしれない。
うーん…………私のイメージカラーは赤と黒。赤は師匠の色と通じるところがあるから、師匠の名前をもらおうかな? それじゃあ黒については……よし。
「そうですね。ノワールカーネリアンなんてどうでしょうか?」
「うん。良いと思う。それじゃあ改めて……ノワールカーネリアン! この私……いえ、マジアベーゼと戦っていただきましょうか!!」
◇
その後私とうてな……マジアベーゼは河川敷でお互い相対していた。
流石にこんな目立つところでやりあってはトレスマジアの邪魔が入りそうではあるが、ヴェナリータが結界を張ったらしくこの中でなら魔法少女に見つからないのだとか。
「ねぇベーゼ。本当にやるんですか? あなたも今日サルファと戦ったんでしょう?」
一応衣服は魔力を流して元に戻しているとはいえ、こういうのってお互い万全なときにやるべきものじゃないんですかね?
「おやおやぁ? あれだけ大口叩いておいて、怖気ついたのですかノワールカーネリアン? それなら尻尾巻いて逃げても構いませんよ?」
すっかりドSモードのベーゼはなんともムカつく笑みでそう言う。
なるほど私の神経を逆撫でして戦わせる気なんですね? いいでしょうならば……。
「お言葉に甘えて帰らせていただきますね? それではベーゼ、明日は土曜なんで月曜に学校で!!」
「あ、ちょっと待って! そこで帰らないで下さい。煽りに乗って下さいよ!!」
「あのですね。私にこの手の煽りは無駄ですよ?」
何せ相手がされたくない事を進んでやるって言うのが私の心情なのだ。相手が煽って来たならそれをスルーするのは当たり前でしょうが。
「はぁ、えりすちゃ……ノワールちゃんはそう言う性格だよね。でも……だからこそ…………そんな余裕そうなノワールちゃんの顔を恥辱に塗れさせたいと思ってたんだよねぇ♡」
「おやおや、随分と好かれてしまっていたようですねぇ」
すっかりやる気なベーゼ。
流石にこんなドSの標的にされたのは初めてだから、身の危険をブルブルと感じてしまうが正直銀行強盗との戦いは一方的過ぎてつまらないと思っていたところだ。
それにあれだけスイーツを爆食いしたのだから、良い運動になるだろうし乗ってあげようではないか。
「ですが我慢の出来ない子猫ちゃんをお預けにするのも一興……良いですよ。やってみなさい?」
「えぇ、それでは……」
そう言ってベーゼが持っていたムチでペシンと雑草を叩いた瞬間、目の前に巨大な植物のモンスターが現れる。
植物……それに丈夫そうな蔓ですね。ならばチェーンソーで切ってしまいましょうか!!
具現化したチェーンソーによって私を縛り上げようと襲いかかった蔓はあっさりと切り刻まれ、それに対してベーゼは驚愕の表情を浮かべる。
「な……これって!?」
「私の能力って具現化というイメージしたものを実体化させ操る能力なんですよねぇ。ベーゼは雑草を鞭で叩いて急成長させてましたね? つまり私の能力はベーゼの上位互換という事です」
「へぇ……私の上位互換……これでも本当にそう言えるのかなぁ!?」
「うわっと!?」
突如として地面から生えて来た蔓。完全に不意を突かれてしまった私はなす術もなく捉えられてしまった。
それを見たベーゼはニヤニヤと笑いながら拘束された私の元へ行く。
「ありゃりゃ……油断してしまいましたね」
「フフフ、前から思ってたんです。ノワールちゃんって胸が大きいよね?」
ビリビリィ!!
「えぇ、胸の大きさは自慢ですから。……それで、私の服の胸を破ってどうするつもりですか?」
「すでにサルファにやった事で、あれから何も発展させてないんですけど……こうします」
そう言って取り出した蝋燭に火をつけると、私の胸の上に蝋燭をかざす。
直後溶けた蝋が私の肌に落ち、想像を超える熱さで顔を顰める。
「あつ……へぇ、蝋燭責めとはマニアックですねぇ。所でそれはちゃんとSM用なんですよね? あと、顔はダメですよ? 目に入ったら失明の可能性もあるんですから」
「随分と余裕そうだねノワールちゃん……。それじゃあもう一本……出しちゃおうかなぁ?」
「っ!!」
蝋燭がもう一本追加されて、私の露わになった胸はどんどんと溶けた蝋で彩られていく。
「さぁ、もう終わりなわけはないでしょう? あなたに限ってこんな一方的に負けるなんてないはずです。さぁ、見せてください。必死に抵抗する姿を!! さぁ! さぁ! さぁ!!」
「……フフ、ベーゼは欲しがりさんですね。でも……私にばかり集中するのはいかがなものでしょうか?」
「え? きゃ!!」
私が無抵抗でやられるわけが無いでしょう?
ベーゼが興奮して私に集中しているうちに、こっそりとベーゼの背後にベーゼが呼び出したのと同じ植物のモンスターを具現化させて、いつでも拘束出来るようにしておいたのだ。
そして私の拘束に関しては、召喚しておいた巨大なチェーンソーでモンスター本体を斬ることで無事脱出。
「あ……くぅ……!!」
「これで立場は逆転ですね」
「……私としたことが、あなたに集中し過ぎてしまったようですね」
「えぇ、その隙を突かせて頂きました。それにしても……お友達に蝋を垂らすような悪い子にはお仕置きが必要ですねぇ」
ベーゼは持っている鞭を使って魔物を作り出した。つまり彼女が鞭を持っていると、何かの拍子に逆転されてしまうことがある。
と言うわけでこの鞭は没収。せっかくだからこれを使わせて貰おう。
「それでは……!!」
〜♪ 〜♪
ベーゼから強奪した鞭で、ベーゼを引っ叩こうとした瞬間、5時を知らせるアラームが辺りに鳴り響いた。
「……時間切れですね」
具現化していたモンスターなんかを消してベーゼを解放する。
「……おやおや? 解放して良かったんですか?」
「もう時間切れですよ。これから夕飯作らないとならないんで」
ベーゼは……うてなは我が家の事情を知っており、夕飯の文字を聞くと我に帰ったのか交戦的な笑みをやめて顔を青白くさせ始める。
「……わ、私またやっちゃった!! えりすちゃんになんて事を……!!」
「完全に我を見失ってたんですか? それは流石にタチが悪くありません?」
「うぅ……」
「ところで今回の勝負はどっちの勝ちなのかな? ボク的には総合的なダメージの観点からうてなの勝利だと思うけど」
「いや、タイムリミットの時点でベーゼは追い詰められてましたし私の勝ちです。いいですね?」
「う、うん。私は別に構わないけど……」
「それじゃあこれから夕飯作らないといけないんで失礼します」
諸悪の根源であるヴェナリータはうてなに任せて私は一足先に家へ帰らせてもらうのだった。
「ん!!」
「なんですかこりすちゃん? また一緒にお風呂? すみません、今日は勘弁して貰えませんか?」
「……」ウルウル
「いえ、別にこりすちゃんが嫌になったとかではなく、今日はちょっとダメなんです!!」
胸に付着した蝋をそのままにしていて風呂場で蝋を落とすのに苦労した私であったとさ。
ドS対ドSのどつき合いでした。
でもこれじゃあベーゼと変わらないし、なんとか戦い方とか責め方を差別化させなければ……