悪の力? でもそれをどう使うかは私の勝手ですよね!? 作:蒼天 極
「待っていろ……ベルゼルガ…………」
あんな事をされたと言うのにベルゼルガ救出のためにマジアベーゼの反応のある場所へ移動するイミタシオ。
いや〜、メンタル強いですねぇ。精神疾患患ってくれたら面白かったんですが……。
もう一回ノワールサンクチュアリに叩き込んであげようかと考えながら移動しているとエノルミータのいる地点へと辿り着く。
そこには蜘蛛の巣に捕えられたベルゼルガとそれを見張るエノルミータの面々が…………。
「マジアベーゼッ!」
「おやぁ……やっと来ましたか。イミタシオ、パンタノペスカ……それにトレスマジアの皆さんまで」
そう言ってニヤニヤと笑うベーゼ。
……彼女も昨日の一件でイミタシオの正体については分かったはず。なのになぜベルゼルガの公開処刑という形で彼女を呼び出したのか……もしかしたらここで大々的にイミタシオの正体を晒すつもりなんでしょうか? いえ、うてなに限ってあり得ませんね。私じゃあるまいし。
「ご苦労な事ですねぇ、我々を止めに来ましたか。……しかも敵対してたはずのトレスマジアを味方につけて……。私に勝てないからとプライドはないのですかぁ?」
「貴様……ッ!」
悪役スイッチの入ったベーゼがイミタシオを嘲笑すると、プライドの高いイミタシオは額に青筋を浮かべながらも努めて冷静になろうと深呼吸をすると静かに彼女を見据える。
「貴様の相手をするのは私一人だ。パンタノペスカ、トレスマジア……貴様らはレオパルト達を頼む」
「ちょ、何言うてんねん! 見てみいマジアベーゼのあの姿、エラい魔力しとるわ!!」
真化したベーゼを脅威に思ったサルファが、バカな事を口走るイミタシオを咎めるが彼女は「分かっている……」と一言。
「ですがあなた昨日あの姿のベーゼに敗北したのでしょう? エノルミータの構成員一人に対して一人が対応すれば、一人余るのでせめて誰か助っ人をつけたほうが楽ですよ?」
「分かってる……だが! あいつは……ベルゼルガは……! 私が助けなければ意味がないのだ……!!」
「イミタシオ……?」
……本当にベルゼルガに愛着があるんですねぇ。ロコやルベルもそれくらい可愛がっていれば裏切らなかったでしょうに。
…………もし次喧嘩を売ることがあったら今度はロコとルベルにやったような事しましょうかね? しかし同じネタは面白くないですからねぇ…………。
次のお死おきメニューを考えているとアズールが静かに頷く。
「分かったわ……それならベーゼはあなたに任せる。私達は他の相手に専念するから必ずベルゼルガを助けて頂戴! ベルゼルガへの愛……確かに感じたわ!!」(サムズアップ)
「なんだいきなり……だが、分かった!!」
アズールの言葉に頷いたイミタシオが大剣を構えると、それを見たエノルミータの面々も戦闘態勢に入る。
それを見た私達も武器を構えると、しばらくお互いが膠着状態になる。
……………………。
「行くぞエノルミータぁ!!」
「来なさい魔法少女!!」
二人の掛け声と同時にトレスマジア、シオちゃんズ連合とエノルミータがぶつかり合う。
さ〜て、今回はベーゼとやり合う予定でしたが誰と戦いましょうかね? 別にレオと殴り合いに興じるのもありですが、先ほどのお愉しみタイムで魔力をかなり消費してるので今日は激しく動き回りたくないんですよね。
ならば明確な弱点があるルベルを狙うのが楽なんですが、昨日の一件を聞くと今日くらいは暴れさせて鬱憤を晴らしてあげたほうが良さそうですし…………。
…………だとするとアリスちゃんですかね。
「……マゼンタ、加勢しますよ」
「ありがと〜、もぉ。アリスちゃんおもちゃ持ってきすぎだよぉ!!」
「!」
アリスちゃんは今回大量におもちゃを持って来たらしく、おもちゃ軍団をマゼンタ一人で捌けなさそうだったため、今回は私とマゼンタでアリスちゃんと戦う事にした。
「敵として戦うのは何気に初めてですねぇ、負けても怪我はさせないので安心してかかって来なさい!!」
「ん」コクリ
だがアリスちゃんも私には勝ちたいのか、まだ巨大化させていなかったおもちゃを巨大化させて私にけしかけてくる。
マゼンタよりも数が多いですねぇ……それほどお姉ちゃんが脅威だと思ってくれたって事ですかね?
迫り来る人形の蹴りや突きを回避し、受け流しながらぬいぐるみを投げ飛ばすがアリスちゃんの物量は圧倒的で徐々に押されてしまう。
「う……くっ……」
「カーネリアン、大丈夫!?」
「結構ハードですがなんとか……流石は我が妹です」
「♪」エッヘン
私の賛辞に胸を張るこりすちゃん。しかしどう攻略したらいいものですかねぇ……このままではジリ貧です。
というのも魔力の使いすぎで残り少ないため、魔力消費の少ないマジアモードで戦闘しているのだが、私の能力は炎……アリスちゃんのぬいぐるみを燃やしてしまうため能力が使えないのだ。
もしアリスちゃんがレオみたいな関係なら容赦無く燃やして燃えカスをこれ見よがしに踏み躙るんですが、アリスちゃんは大切な妹でありこのおもちゃもお母さんやおばあちゃん、そして私が買ったもの。つまりどういうことかというと…………
「……勿体無くて壊せません…………」
「き、気持ちは分かるけど……あ、でもノワールモードなら……!!」
「魔力が足りなくて…………」
「あぁ……」
納得した表情のマゼンタ。
まぁ今回はイミタシオがベルゼルガを救出してベーゼを倒すまで時間稼ぎ出来ればそれでいいんですけど、姉として簡単に負けるわけにはいかないんですよ姉として!!
ですが炎は使えず、ランスもぬいぐるみが極力傷つかないように振るわないといけない。……ならばどうするべきですかね…………?
…………あ、そうだ。
「せぇい!! そして……!!」
「!?」
私の周りを取り囲んでいたぬいぐるみ兵をランスで薙ぎ払うと、そのままぬいぐるみ兵は完全無視してアリスちゃんとの距離を詰める。
それを見たアリスちゃんは焦ったような顔で、ストックのぬいぐるみを巨大化させようとするがそれよりも先に私がアリスちゃんを確保。
「〜!!」ジタバタジタバタ
「ウフフフフ〜、捕まえましたよ〜♡」
ぬいぐるみを狙えないならばどうするべきか……答えは簡単。術者をなんとかして仕舞えば良いのですよ!!
と言っても相手はアリスちゃんな上に、今日は達するまでイミタシオで遊べてすっかり満足しましたからね。ここはアレでいかせていただきましょう。
「ほ〜ら、こちょこちょこちょこちょ〜」
「んん!?」ビクッ
アリスちゃんの脇に手を突っ込んで、優しく優しく……割れ物を扱うかのように優しくさするとビクリとアリスちゃんの身体が跳ね上がる。
アリスちゃんはくすぐりに弱いですからねぇ〜。ほら、ここが弱いんでしょ? ほらほら?
くすぐり攻撃により術者の集中力が阻害された事でマゼンタを取り囲んでいたぬいぐるみは途端に動きを停止する。
「や……やぁ…………」
「あら、嫌ですか? なら降参しても良いんですよ、さぁどうしま「〜!!」んん!? ……や、やってくれるではないですか……!!」
まさかくすぐり返して来るとはね……。確かに私もくすぐられるのは苦手ですが、果たして私の手を止めることは出来ますかねぇ?」
「ん……んん……!」
「く……うぅ…………!!」
両者一歩も引かないくすぐり合い。
周りがシリアスな戦いをしているだけに微笑ましい戦いに見えてしまうかもですが、私達姉妹は真剣そのもの。お互い少しでも気を抜いたら一気に相手のペースに持っていかれそうなのでね。
「……っく! ……し、しかしアリスちゃん……あなた肝心なこと……フッ……忘れては……ないですか?」
「〜! ……?」
「ごめんねアリスちゃん。でもこれは戦いだから!!」
「んん!?」ビクッ
マゼンタに首筋を撫でられて私へのくすぐり攻撃が止まってしまったアリスちゃん。
私に気を取られすぎて二対一で戦っているのを忘れてましたね?
「さぁ、行きますよマゼンタ。アリスちゃんが降参するまでくすぐり地獄です!」
「う、うん! これなら安全に懲らしめられるしね……!!」
「……!!」
「ほ〜ら、こちょこちょこちょこちょ〜。公開処刑の片棒を担ぐ悪い子にはお仕置きです……あ、いや。結界内で本当に殺してる私が言ってもお前が言うな案件ですよね……」
「参ったかこのこの〜! もう悪い事しないって誓いなさ〜い!!」
「ん、んぅ……!」
意外にも乗ってくれたマゼンタと一緒にくすぐり続ける私達。
普段ならこれだけやれば音をあげますけど、そろそろ降参してくれるでしょうか?
「ん……む……あうぅ………………」グスッ
しかし二人がかりでやってしまったのが悪かったのでしょう。アリスちゃんは目の端に涙を浮かべたかと思うと、メソメソと泣き出してしまった。
………………。
「すみませんやりすぎました。ごめんなさい」
「ご、ごめんね! 流石にこれは卑怯だったね!!」
「…………」プイッ
涙を浮かべながらそっぽを向いてしまったアリスちゃんをなんとか宥めようとしていた私達だが、その直後「あぁああああああああああ!!!!」とベーゼの断末魔のようなものが聞こえる。
それに気がついた私達が咄嗟にイミタシオの方を向くと、ベーゼを空の向こうに吹っ飛ばしたであろうイミタシオの姿。
「あ"────っ!! ベーゼちゃん!! 待ってよベーゼちゃ〜〜ん!!」
それを見たエノルミータの面々は撤退すると決めたようで、みんながベーゼのぶっ飛ばされた方向へと逃げ始める。
そんな中でアリスちゃんも泣きべそはやめてレオの後を追いかけ始めるが、一度こちらを向くと……
「べ」
「……見ましたマゼンタ? アリスちゃんのあっかんべー……可愛いですねぇ」
「う、うん。でも悪いことしちゃったねぇ。……アリスちゃんにはまた今度謝るとして…………それより見てカーネリアン」
「え?」
マゼンタに促されてイミタシオの方を向くと、丁度蜘蛛の巣を刈り払ってベルゼルガを解放していたイミタシオ。
「シオちゃん……」
「ベル……ゼルガ……」
「ありがとう……シオちゃ「ぐ……」シオちゃん!?」
しかしただでさえ私とお死おきで精神的にかなり疲弊してしまっていたであろうイミタシオはガクリと倒れると、そのまま意識を失ってしまった。
しかし彼女の顔はとても清々しいもので…………。
「……はぁ、全く。納得いかへんわ。いくら街のみんながイミタシオの正体知らんとしても応援するなんて…………」
「良いじゃないの。少なくとも、今のイミタシオの姿は魔法少女そのものだったわ……」
「そうだねぇ、アリスちゃんをくすぐりながら見てたけどカッコよかったよ」
別にベルゼルガが死のうがイミタシオがベーゼにイタズラされようが知ったこっちゃなかったんですが、街の人達のこれほどの大歓声…………
「嘘が本当になった……という事ですか…………」
「そうね。これでイミタシオが改心してくれるといいわね」
「……ま、そうやな。んじゃあいつはベルゼルガとパンタノペスカに任せてウチらは帰ろか?」
「そうだね」
「ですね」
シオちゃんズを見届けた私達は無言でその場を立ち去り、各々帰路についたのだった。
……帰りにおもちゃ屋寄ってアリスちゃんが欲しがってたの買って帰りましょう。
〜おまけ〜
夕方……
「こりすちゃん、ご飯ですよ〜」
「…………」プイッ
「……良い加減機嫌を直して下さいよ〜。戦いに正々堂々なんて言葉はないんですよ?」
「……」プクー
「…………そうですか。確かに簡単には許してくれませんよね。……それでは、これならどうです?」
「? …………っ!!」
「はい、お詫びの印に買って来ました。前回買い逃したシルバニアファミリーのドールハウスと動物さんご一家……。差し上げるのでどうか許して下さい」
「…………ん」コクリ
その後、大好物のカレーを食べた後シルバニアファミリーで遊び始めたこりすちゃん。
「〜♪ 〜♪」
「…………計画通り」ニヤリ
「君も案外腹黒いね。ところでカレーおかわりもらっても良いかな?」
「……おい、なぜしれっとウチでご飯食べてるんですかヴェナリータ」