この話を終わらせること
霊夢達は倒れたアリスと必要数の幻葬石を抱えて飯綱丸の屋敷に戻った。典は一同を見るなりすぐに布団を敷いてアリスを寝かせた。アリス以外は客間に通されそこでアリスが目覚めるのを待った。典は聞いてはいけなそうな空気は感じていたが我慢できなくなり霊夢達に聞いた。
「あの…いったい鉱山でなにがあったんですか?その…疲れてるだけかもしれませんが皆さん顔色が悪いように見えますし、アリスさんも力を使い果たしたように眠り込んでしまっているので。」
一同は口を開こうとしなかった。しばらくして魔理沙が沈黙を破り鉱山で起きたことを話した。典は目を見開いた。
「そんなことがあったんですか。ということは、アリスさんの正体は…魔族?」
その時部屋の入り口の方から声がする。
「ああ、そうだろうね。」
見るとそこには飯綱丸が立っていた。どうやら盗み聞きしたようだった。飯綱丸は部屋に入り座って続けた。
「おそらく魔族の中でもかなり上位のクラスだろう。そうでなければそもそも人間に化けることすら出来ないだろう。しかし、魔族が幻想郷に入り込んでいたか…。今のうちに仕留めておかないと厄介なことになるかもしれんな。」
「なんでなのぜ!?」
魔理沙は声を荒げた。飯綱丸は穏やかに続けた。
「まあ落ち着いて考えろ。そもそも魔族というのは普段魔界で暮らすものだ。魔界の神の統治の元な?そんな魔族がなぜわざわざ人間に化けてまで幻想郷で暮らしているのか…理由はわかるか?」
魔理沙達は考え込んだ。しばらくして百々世が呟いた。
「幻想郷の支配のため…か?」
飯綱丸は静かに頷く。魔理沙達は絶句した。小さい頃からよく一緒に遊んでいたアリスが?誰よりも心優しかったあのアリスが?目の前で魔族の姿になったとはいえとても信じられる話ではなかった。いや信じたくなかったのかもしれない。部屋は静まり返り重苦しい空気が漂った。その時玄関の方から声が聞こえた。
「飯綱丸今いる!?私よ、レミリアよ!一刻を争う事態だから早く開けて!今回の異変の黒幕が分かったのよ!」
飯綱丸は驚き急いでレミリアを部屋に入れた。レミリアは呼吸を整えてから話しだした。
「霊夢達も居るなら話が早いわね。私が寄生霊の内の一体をパチェと一緒に分析する為に持ち帰った話は覚えているわね?私達は地下図書館で成分や宿っている力を細かく分析してみたのよ。それである特別な気が宿っていることがわかったの。」
レミリアは出されたお茶を一口飲んで続ける。
「神特有の気、『神気』が宿っていたのよ。」
あまりにも突然で複雑な話に霊夢達は混乱した。早苗がレミリアの話を遮り聞いた。
「えぇと…つまりどう言うことなんですか?そもそも黒幕が結局誰なんですか??」
レミリアは一息ついていった。
「そうね…順を追って説明するわ。まず寄生霊の正体、それは『埴輪』よ。」
「埴輪…神…もしかして今回の黒幕は、埴安神!?」
霊夢は驚き叫んだ。レミリアは静かに頷いた。
「その通りよ霊夢。それじゃあ次に神気について。これは美鈴から聞いた話になるのだけれど神気というのは神なら誰でも持っているらしいわ。そして美鈴が能力で気を操るように神も神気を操れるのよ。気弾にして打つこともできるしこれみたいに物や人に宿らせることもできる。そして人に宿らせたらその人に力を分け与えたりその気になれば操ることもできる…けれども欠点もあるわ。神気はいわば神の力そのもの。それを気弾にしたり物に宿らせたりして神気を体外に放出したらその分だけ神の力が弱まる…つまり今回の異変のように大量の寄生霊を使って人々を操ったらおそらく今の埴安神の力は並の妖怪程度以下よ。」
早苗は身を乗り出して言った。
「つまり今のうちに埴安神を探し出して戦えば…!」
「埴安神を倒せる…ということだな。」
飯綱丸は少し考えていった。
「よし、埴安神の捜索は私達天狗で行う。お前達は確か…河童にスマホを作ってもらう予定だったろう。埴安神は私達に任せてお前達は河童の研究所に行ってくるといい。私達の分も忘れないでくれよ。」
典も言った。
「アリスさんは私に任せてくださいね〜。」
霊夢は頷き言った。
「それもそうだったわね。じゃあ私達はにとりのとこまで行きましょうか。レミリアも来る?」
霊夢はレミリアの方を向いていった。レミリアも頷き立ち上がった。
「それじゃあ決まりね。あぁそうだ、レミリアこれ持ってちょうだい。」
霊夢はそう言いながらレミリアに幻葬石含む鉱石の袋を渡した。ざっと十キロはありそうだ。
「重!!流石にこれ一人は無理でしょ!?あんた達もそう思うでしょ…!?」
言いながらレミリアは魔理沙達の方を見た。しかし三人はとっくに出発しており典が気まずそうな顔でレミリアを見ていた。
「……あいつら。はぁ仕方ないわね。」
レミリアはため息をついて外に出て羽を広げて飛び立った。
にとりの研究所。霊夢達に少し遅れる形でレミリアが追いついた。レミリアは鉱石袋を置いて座り込んだ。
「はあああ…疲れた。全く紅魔館の主にこんな肉体労働させていったいどういうつも…。」
「にとりー!素材集まったわよー!」
霊夢はレミリアの言葉を遮り叫んだ。まもなくにとりが出てきて袋の中身を確認した。
「…うん!これだけあれば人数分作れるね。二時間くらいで出来るからそれまではここでゆっくりしていてくれ。」
「それならお言葉に甘えてゆっくりさせてもらいますね〜。」
早苗はそう言いながら研究所に入っていった。後にレミリアも続いた。しかし魔理沙は立ち止まっていった。
「いや、私達は飯綱丸の屋敷に戻るのぜ。アリスの様子が気になるから…。」
魔理沙の言葉に霊夢も頷き言った。
「そうね、私達はアリスの様子を見に行きましょう。」
「鉱山で何かあったのかい?」
にとりは霊夢達に尋ねた。霊夢は鉱山で魔獣と戦ったこと、その戦いの間にアリスが魔族の姿になったこと、今は飯綱丸の屋敷で眠り込んでいることを話した。話し終わるとにとりは興味深そうに言った。
「魔族…か、私も今すぐ付いて行って本人から話を聞きたいくらいだけれど今はスマホが先だね。うん分かった。二時間くらいしたらもう一度ここに戻ってきてくれよ。」
そう言うとにとり達は研究所に入っていった。霊夢達もアリスの元へと向かった。
飯綱丸の屋敷に戻った霊夢達は早速アリスの居る部屋に案内してもらった。アリスは既に目を覚ましており典の作ったお粥を食べていた。魔理沙はアリスを見ると心配そうに言った。
「アリス…身体の具合はどうなのぜ?」
「あぁ魔理沙…それに霊夢も。身体の具合はもう大丈夫よ。」
アリスは微笑んで答えた。三人の間にしばしの沈黙が走る。やがて霊夢が話を切り出した。
「ねぇ、アリス…。話せる範囲で構わないのだけれどその…あの鉱山での姿って。」
「まぁそりゃ気になるわよね。少し長くなるけど私が幻想郷に来た理由やらなんやら全部話してあげるわよ。」
アリスは笑って言った。そしてぽつりぽつり話し始めた。
「あれは…確か貴女達が五、六歳の頃だったかしらね。私知ってると思うけど魔界から幻想郷にやって来たのよ。貴女達と出会ったのもその頃だったわね。あの時の魔理沙は可愛らしかったけど大変だったのよね〜。霧雨家の血筋とは言え幼い頃から魔力が高かったから暴走して周りの物を壊しちゃうことがよくあったのよ。」
「あぁ思い出したのぜ!」
魔理沙は小さい頃の事を思い出して言った。
「確かあの時は私寺子屋に通っていたんだけど魔力が暴走しちまってな…慧音先生が対処してくれたから他の人に怪我はなかったけどあれから他の人に怪我させるかもしれないと思ったら怖くなってな…。家にひきこもってたんだ。アリスとはたまたま魔法の森を散歩してたときに出会ったのぜ。」
アリスもしみじみと言った。
「それで話を聞いて私が魔力の暴走を抑えられるように基礎的な事を教えてあげたり空飛べるように教えてあげたりしてたのよ。しっかしあの頃は大変だったわよ。魔理沙ったらほとんどの人に心開かないんだから。」
「えへへ…そうだったのぜ?」
魔理沙とアリスからは思い出が湯水のように湧いて出た。霊夢は少しイライラしながら言った。
「はいはい思い出話ならまた今度聞くから…そろそろ幻想郷に来た理由とかも聞かせてちょうだいよ。」
「あぁ…そうだったわね。それじゃ続きを。私がここに来た理由はシンプルに家出よ家出。」
「………家出?」
霊夢達は飯綱丸が幻想郷の支配の為に来たのだろうと言っていたのでアリスと争う覚悟さえ決めていた。しかし蓋を開けてみれば意外にもシンプルな理由だったので霊夢達は呆然とした。
「……飯綱丸の言う事も案外あてにならないんだな。」
魔理沙はぼそりと呟いた。霊夢は少し笑いを堪えながら言った。
「な、なんで家出したのよ…。」
「そんなの決まってるじゃない、家に居るのが嫌になったからよ!魔界の中でも名家だか何だか知らないけどもっと強くなりなさいとかってうるさいのよ。だからもう面倒くさくなっちゃったから魔族としての自分を捨てて幻想郷で生きる事を選んだのよ。」
「は、はあそうでございますか…。」
霊夢と魔理沙はアリスの勢いに驚きを隠せなかった。
アリスの話はまだ続く。
「本当だったらこのまま魔法使いとして生きていくつもりだったけれど…まさかこんな形で正体をバラすことになるとは予想外だったわ。地位は捨てられても魔族としての自分は捨てられていなかったようね。」
アリスはふっとため息をついた。少し空気が重くなる。
魔理沙はアリスの目を真っ直ぐ見て言った。
「…別に魔族としての自分まで捨てなくてもいいんじゃないか?」
アリスは一瞬驚いた顔をしたがすぐに否定した。
「いやよ。あんな醜い姿…それに貴女達だって怖いでしょ…?」
「いや私は結構カッコよくて好きだけどな〜。」
魔理沙は真顔で言い放った。その言葉にアリスだけでなく霊夢も静かに驚いた。アリスは頬を赤らめながら言った。
「カッコ…イイ?ん〜そうかしら、ね。カッコイイ…ね。ふふっありがとうね、魔理沙!」
霊夢は笑い合う二人を見ながら心の中で思った。
(カッコいいって何だっけな……?まぁ…二人が楽しそうならそれでいっか。)
その後もしばらく三人で談笑していた。その時飯綱丸が部屋をノックして言った。
「あ〜楽しそうなところ悪いが…少しだけ博麗の巫女を借りたいから来てくれ。」
「え?何よもう…。」
霊夢はブツブツ文句を言いながら飯綱丸に付いて行った。
飯綱丸は霊夢と共に部屋から離れたところに行くと声を潜めて言った。
「それで、アリスは何て言っていた?」
「え?何てって?」
「ほら魔界とかの話だよ。アリスからそれとなく聞いていたんだろう?幻想郷に来た理由によっては寄生霊を対処した後にアリスの対処もしなくてはいけな…。」
「家出よ。」
霊夢は飯綱丸の話を遮り言った。飯綱丸は目を丸くしていた。
「……?イエデ?」
「うん、家出。」
「……そうか。うんそうか。良かったな、埴安神倒せば幻想郷は安泰だぞ。」
飯綱丸は半笑いを浮かべて言った。霊夢は飯綱丸に向かって冷たく言い放った。
「要件はそれだけ?もう戻ってもいいかしら?」
「あ……あぁ、時間を取らせて悪かったな…。私は埴安神の捜索に戻るとするよ。こちらは私達に任せてもらえばすぐにでも…。」
「あぁ、さっきは言い忘れたけどあいつなら多分霊長園に居るんじゃないの?私昔なりゆきであいつと戦ったことあるし。知らなかった?」
霊夢は飯綱丸の話をまた遮り言い放った。飯綱丸はとても悲しそうな顔で言った。
「…そうか。なら、今出払っている天狗達を呼び戻して総攻撃を仕掛けるとしよう。君達やレミリア殿達にも戦ってもらいたいのだがよろしいか?」
「別に構わないわよ。私も元から戦うつもりだったし。レミリア達には私から伝えておくわね。それじゃ私達はにとりのとこに帰るわ。」
「感謝する。」
飯綱丸はそう言うと天狗達を呼び戻しに行った。霊夢も魔理沙とアリスを連れてにとりのところへと戻っていった。
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その頃、自分の家で袿姫はもう一体の紅寄生霊を作っていた。側には磨弓が休んでいる。手を休めることなく黙々と作業する姿は何かに取り憑かれているようにすら見えた。やがて形を整えると袿姫は掌から怪しい光を放った。その光は紅寄生霊を包み込み吸い込まれていった。光を取り込むと紅寄生霊は宙を舞い、袿姫はそれを懐にしまい呟いた。
「これを博麗の巫女に寄生させれば…幻想郷は私の…。磨弓とまた一緒に暮らせるように…。」
袿姫はブツブツ呟きながら再び地底世界へと向かった。
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一方その頃、地底のほとんどが偶像軍団によって制圧されていた。剛腕を持つ星熊勇義でさえも大妖怪八雲紫にはかなわなかったのだ。倒れた地底の住民に次から次へと寄生霊が入り込んでいく。勇義はそんな様子を眺めることしかできなかった。勇義は破壊された家の瓦礫にもたれかかりながら呟いた。
「すまないね…さとり。地底を守りきれなかったよ。鬼が最強の時代は終わったのは分かっていたけれど、まさか地底を守りきれないとはちょっと予想外だったよ。ましてや地上の妖怪に負けちまうとは…昔は博麗の巫女にも酒を持ちながら渡り合えたんだけどねえ。」
勇義はそのまま気絶した。黒い寄生霊が勇義に近づき入り込んだ。ほとんどの住民に寄生した頃袿姫が地底に戻ってきた。地底の制圧された様子を見た袿姫は満足げに言った。
「思っていたよりも早く終わったようだね。紫、新たに寄生させた者も含めて一旦霊長園に戻り体制を整えるからこいつらをスキマで送れ。」
紫は返事の代わりに大きなスキマを開けた。偶像軍団はスキマにどんどん吸い込まれていった。その中にはやはり勇義の姿もあった。全員移動したのを確認すると袿姫と紫もスキマを通った。
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その頃さとりは飯綱丸に助けを求めるべく妖怪の山を登っていた。
「はあはあ、妖怪の山の勢力なら地底に大量に攻めてきた妖怪たちを一掃出来るはず…。早くしないと…!」
さとりは息を切らしながら山道を走った。しばらく走っているとさとりは何かが落ちているのを見つけた。
「あれは…?」
そこにはほのかに緑に光る宝玉が落ちていた。そんなものに構っている暇はないと思いながらも気づいたらさとりは拾っていた。宝玉をしまって再び走り出そうとしたその時突然後ろから声をかけられた。
「あーあったあった!探してたのよーそれ!」
さとりは驚き振り返った。そこにはうっすらと紫がかった白く長い髪をたなびかせ、赤く白のレースがついた長い服を着ている女性が立っていた。
「あ、あなたは誰ですか?これはあなたのものなんですか…?」
女性は髪を耳にかけて言った。
「ああいきなり声をかけてごめんなさいね。私の名前は神綺。そしてその宝玉は私の無くしたものだから返してくれるとありがたいのだけれど。」
「あ、え、ええはいどうぞ。」
さとりはかつてない恐怖に襲われていた。なぜなら名前も目的も“言われるまでわからなかった“からだ。いつもだったら初対面でも心を読めるさとりは会話せずとも名前も目的もわかるからだ。しかし神綺の心は全く読めない。
(こんなことはこいし以来ね…。)
さとりはなんとか平常心を保とうとしていた。神綺は相変わらずニコニコしながらさとりを見ている。神綺は笑顔でさとりに向かって言い放った。
「あら、心が読めなくて驚いたかしら。さとりちゃん?」
Next Phantasm
おまけ
〜紅魔の素敵な住民たち〜
お年玉争奪レース後編
「本来だったらとっくにゴールしていてもいい時間にも関わらず選手の皆さんは今ようやく倒した大木を片付けて人里へと入りました!大木の足止めにより差は無くなり全員が団子状態です!後半のレース実況も清く正しい射命丸文でお送り致します!」
レイマリペアを先頭に選手達は人里を駆け抜けた。時には弾幕を撃ち合い皆が先頭に出たり後ろに行ったりしていた。選手達が鯨呑亭の前に差し掛かった時中から萃香が出てきた。相変わらず酔っているようだ。
「ん?あいつ萃香じゃないの。今日はここで飲んだくれてたのね…。」
レミリアが呟いた瞬間コース上で萃香は口を抑えるといきなりゲロゲロパーした。しかもコースを遮るほどの量だった。走っていた選手達はドン引きして全員立ち止まった。
「おーっと!ここでまさかの障害物だー!これは絶対に通りたくない!この状況を一体どうやって打破するのか楽しみですね〜!」
霊夢は鼻を抑えて叫ぶ。
「全く萃香きったないわね!こんなんどうやって通れって言うのよ…。」
流石にこの状況を見て渡ろうとする選手はいなかった。
しばらく立ち往生していたがレミリアは静かにグングニルを構えて言った。
「フラン、レーヴァテインを出しておきなさい。」
「え?お姉様どういう…?」
レミリアは答える代わりに助走をつけグングニルをゲロゲロパーに触れるギリギリに突き立て棒高跳びのようにして飛び越えた。
「あぁなるほどね。なら私もレーヴァテインで…ほいっと!」
フランもレーヴァテインを突き立て棒高跳びをした。
「ああ!あいつら…くそ、霊夢私達は回り道するぞ!急がば回れだ!」
魔理沙は叫んで元来た道を戻った。
「おお〜レミフラペアが頭を使った〜!他の選手はどうやら回り道をするようだ!これはレミフラペアの独壇場になりそうだ〜!」
レミフラペアは一足先に霧の湖に差し掛かった。その時どこからか声が聞こえてきた。
「あーはっはっは!やっと来たわね、アタイ待ちくたびれたわよ!ここまでお疲れ様、そしてここはアタイが通さないわよ!」
レミリア達の前に何かが飛んできて通せんぼした。レミリア達は驚き立ち止まった。そこにはチルノがふわふわ飛んでいた。フランは呆れ顔で言った。
「何だチルノじゃないの。今はあんたと遊んでいる暇はないのよ。それとも…私に破壊されたいのかしら?」
チルノは少したじろいだが腕を組んで言い放った。
「冬のアタイはいつもと違うぞ!いつもの何倍も力が増すからあんた達にも負けない!」
「へぇ…面白いわね。お姉様、手…出さないでね。」
フランはそう言うとレーヴァテインを構えた。レミリアはため息をついて下がった。
「おお、フランが相手か!負けたからって泣くなよ?いざ勝負!」
チルノはフランに向かって冷気を放つ。フランは軽々と避けるとチルノに向かってレーヴァテインを思い切り振った。
「お〜っと!一瞬でフラン選手がチルノさんをホームラン!チルノさんは後で回収しておきますね〜。」
フランはチルノをお星さまにするとレミリアと共に紅魔館に向かった。
「はあはあ…フラン、家の門が見えてきたわよ…って。」
レミリア達は門の前で絶句した。
「……ねぇお姉様。これ多分あいつらに追いつかれるやつじゃない?」
フランは呟いた。彼女達の目の前には氷漬けにされた門がそびえ立っていた。
「フラン、貴女のレーヴァテインの火力なら直ぐにでも溶かせないかしら?」
「この厚さだと相当の火力が必要よ。こんなのがあったら優勝はおろか…ゴールも帰宅も無理よ…。」
二人はすっかり諦めムードになってしまった。このままゴール出来ずに終わってしまうのか。
「あら〜大分大きな氷ね〜。それじゃ、妹紅よろしくね?」
「ああ。」
レミリア達は驚き振り返る。そこにはいつの間にか他の選手達が立っていた。妹紅は手に炎を宿している。
「いくぞ、はあああ!」
妹紅は氷の壁に向かって炎を放つ。それは鳳凰の形となり氷を溶かしていくが通れるようになるにはまだ火力が足りないようだ。レミリアはため息をついた。
「やっぱりだめなのね…。これが定められた運命だというのなら受け入れるべきなのかしら。」
霊夢と魔理沙は後ろの方でこそこそ話した。
「あいつら氷くらいで大袈裟じゃないかしら?」
「察してやれよ。吸血鬼にだってそういう時期くらいあるのぜ…。」
その時氷の奥から声が聞こえた。どうやら咲夜の声のようだ。
「お嬢様!ご自分の能力をお忘れですか!?」
「…咲夜?」
「貴女の能力は“運命を操る程度の能力”!紅魔館の主であるあなたは、今までも幾度となく困難な運命を捻じ曲げてきました!此度もお嬢様ならばきっとこの氷の壁も打破出来るはずです!昔ご自身でおっしゃられたことをお忘れですか?運命とは操られたものではなく操るもの、これまでも、これからも運命を操り自分の味方につける、そうおっしゃっていたではないですか!」
レミリアは立ち上がった。
「紅魔館の主が情けない姿を晒してしまったわね…。妹紅、退きなさい。紅魔館の問題は主の問題…自分のケジメは自分でつけるわ。」
「お、おうそうか?(そういう時期なんかな?)」
レミリアはグングニルを片手に持ち妹紅に向き直って言った。
「ここに貴女の炎をつけなさい。」
「あ、ああ分かった。(自分の手でやるだけで自分だけの力で解決しないんだな。)」
レミリアは炎を纏ったグングニルを構えた。
「ルーンが刻みし運命を操るは『揺れ動くモノ』。受け入れなさい、我が炎からは逃れられない。神槍!スピアザ…」
「妖夢ちゃん!私お腹すいちゃったわ~!」
「わー!幽々子様、今いいところだったはずなんで少し静かにしてあげて下さい!」
「……。」
レミリアはかつてない形相で幽々子を睨んでいた。霊夢達は必死に笑いをこらえている。
「…ふん。」
レミリアは無言でグングニルを投げた。氷に大きな穴が空き通り道ができた。
「ほら、お姉様いくわよ。さっさと咲夜の試練突破してゴールするわよ。」
「ふん!」
レミリアは拗ねながら入っていった。
「皆様ようこそいらっしゃいました。本来だったら来た順に試練を行う予定でしたが、今回は全員揃っていらっしゃるので全員同時に行います。試練の内容は単純、ここに三種類の肉があります。一つは超高級牛、他は普通の牛肉と鹿肉です。これらをペアのどちらかに食べ比べていただき超高級牛を当てた方が優勝でございます。」
レミリアは笑って言った。
「なによ簡単ね。フラン、お姉ちゃんに任せておきなさい。」
他のペアも食べる人を決めていった。食べる人はそれぞれレミリア、霊夢、幽々子、輝夜、神奈子だ。
「それではまずはAの肉です。」
目隠しをして一口食べた。一同は少し頷いてみたり首をかしげてみたりしていた。
「次にBの肉です。」
食べた人のほとんどが首を傾げる中レミリアは満足げに頷いた。
「最後にCです。」
食べた人全員がこの肉で頷いた。どうやら回答が決まったようだ。
「それでは皆様、超高級牛肉はどれですか!?」
一同が札を上げる。レミリアだけBそれ以外は皆Cだった。レミリアは自信たっぷりに言った。
「皆バカ舌ねえwまあ私の一人勝ち…。」
「結果発表ーーー!」
いきなり叫んだ咲夜に皆ドン引きし、話を遮られたレミリアはまた不機嫌になった。
「ちょ、咲夜まだ私がはな…。」
「正解はCです。Bは鹿肉です。」
「へ??」
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
こうしてレミフラペア以外のペアが見事優勝を果たした。文がマイクを持って叫ぶ。
「皆様お疲れ様でした!これにてお年玉争奪レースは終了です!優勝者の皆様にはそれぞれ百万円、計八百万円が贈られます!」
レミリアは隅っこの方で泣き崩れておりフランが慰めていた。
「ちなみにこの八百万円は飯綱丸様の提供です!もう引き出しておりますのでご安心を!」
「は???」
飯綱丸もレミリアと一緒になって泣き崩れた。
「それでは最後に優勝者を代表して霊夢さんにお話を伺いたいと思います。どうでしたか!?」
「…まあうん。短時間に大の大人二人が泣き崩れるのも珍しいし、神奈子たちはほぼいない扱いだし、レースですらなかった気がするけどお金が入るなら何でもいいや!うん。楽しかったわ!」
「はいありがとうございました~!それでは皆様さようなら~!」
終わり