第2話 紅魔館崩壊
半泣きになった魔理沙を連れて霊夢は紅魔館を目指して飛んでいた。
「なんで私までついていかなきゃいけないんだよ。異変解決は、博麗の巫女の仕事だろ?」
魔理沙は文句を言いながら霊夢のあとをくっついて言った。
「黒幕が分かってたら私一人で潰しに行くけど今回は何も分からない、だから黒幕を探すために人手が出来る限り必要なのよ。それにあんたは、私に問答無用で攻撃仕掛けて迷惑かけてんだから手伝うのは当然でしょ!」
霊夢はそう言って魔理沙を睨んだ。
「だから私は記憶に無いって言ってるのぜ。魔法の森でいつものようにきのこ狩りしてたらオレンジ色の精霊?らしきやつがこっちに全速力で飛んできたんだ。そして気づいたら境内で全身痛いまんま倒れてたんだ。」
魔理沙の言葉に霊夢は、ハッとした顔で考え込んだ。
(魔理沙が見た精霊、特徴だけ聞くと私が見たのっぽいわね。)
霊夢は、振りかえり魔理沙に尋ねた。
「見た目はどんな感じだった?」
魔理沙は少し考えて答えた。
「見た目は顔のない全身オレンジの小さい人型、、だったかな。」
「やっぱりね。」
霊夢は何かを確信したかのような表情で再び紅魔館に進路を定めて飛び始めた。
ーーーーーーーーーーーーーー
紅魔館に向かって飛んでいると2体の妖精の少女が霊夢達の方向に飛んできた。一人は青い髪に宝石のような氷の羽をもう一人は緑の髪に透き通った蝶のような大きな羽を生やしている。青髪の妖精の少女が叫ぶ。
「出たわね博麗の巫女!今日こそあんたを倒して、アタイが最強だってことを幻想郷中に知らしめてやるわ!」
この妖精の名前はチルノ、氷の妖精だ。妖精の中では強いのでこうして最強の称号を手に入れるため日々喧嘩を売って回っている。
もう片方の緑髪の妖精の少女は少し怯えた様子で言った。
「チルノちゃん、やめたほうがいいよ〜。絶対負けるよ。」
この妖精の名前は大妖精、チルノの友達でいつも喧嘩を売るチルノのことを心配してついて回っている。
「大丈夫だよ大ちゃん!アタイ最強だから!」
そう言った瞬間幾千ものお札がチルノ目掛けて飛んできた。チルノは避けることも出来ずにあっけなくやられ声も出せずに落ちていった。
「チ、チルノちゃーん!」
大妖精はチルノのことを追いかけて下に降りていった。
「またチルノのやつが喧嘩売ってきたか。あいつも懲りないやつだな。どうせ負けるのに。」
魔理沙は、呆れた顔で言った。
「あんなやつ準備運動にもならないわ。」
霊夢は鼻で笑って再び紅魔館に向かった。
「ようやく紅魔館が見えてきたわ…。」
そう霊夢が言いかけたとき ドッカーン! 紅魔館の西の塔が爆発した。
「な、なんなのぜ!」
魔理沙が叫ぶ。その間にも爆発は起こる。
「また、フランとレミリアが喧嘩してるんでしょ。」
霊夢は呆れ顔で言った。
「いやあいつらだったら紅魔館の外でやるだろ。おそらくそんな単純な話じゃなさそうなのぜ。」
魔理沙がそう言ったと同時に弾幕と共に二人の人影が見えた。一人はコウモリの翼に青い髪と白い帽子。もう一人は七色の宝石の翼に金髪と白い帽子。どちらも吸血鬼のようだ。
「あいつら、何で暴れてるんだ?しかも自分家破壊して。」
魔理沙の問いに霊夢が簡潔に答える。
「おそらくあの二人は人型の精霊らしきナニカに操られてるのよ!」
「そんなバカなことがあるのぜ?」
「私の想像だけど恐らくね。あんたも多分操られてたのよ。人型の精霊が突っ込んできたんでしょ?」
「あ、ああそうなのぜ。私も操られてたのか…。」
そんな話をしてる間にもレミリアとフランと呼ばれる吸血鬼達のほうから弾幕が飛んでくる。
「とりあえずあいつらを倒すわよ!人型精霊が出てきたらすぐにトドメをさすのよ!私はレミリアのほうを相手するからあんたはフランを相手にしなさい!」
「なんかよくわからないけど分かったのぜ!」
二人は各々吸血鬼のほうへ飛んで行った
霊夢は青い髪の吸血鬼「レミリア・スカーレット」のところまで行って叫んだ。
「レミリア!聞こえる!?私よ博麗の巫女よ!」
「………………。」
しかし、レミリアは何も喋らなかった。
レミリアは表情一つ変えずに攻撃を仕掛けてきた。ただ、魔理沙の時と違い動きがとても俊敏だ。それもいつも以上に。
(魔理沙みたいに動きがぎこちなくない?仮に原因があの人型精霊だとして精霊にも操る能力に差があるのかも…。)そんなことを考えながらお札を飛ばしまくった。しかし、お互い中々当たらずどちらも疲れが見えてきた。
(仕方ない。スペルカードで蹴りを…。)
霊夢がスペルカードを発動しようとした瞬間。
紅符「スカーレットシュート!」
レミリアがスペルカードを発動した。
「くっ!」
霊夢は必死に避けたがそのうちの一つに当たってしまった。
(こいつ、スペルカードまで使うの!?魔理沙の時の何倍も強い…。早めに決着つけるわ!)
霊符「夢想封印!」
霊夢の周りにいくつもの大きな弾幕が現れ、レミリア目掛けて飛んでいった。
「………!」
レミリアは片手に槍を顕現させ弾幕を全て振り払った。
「……え?」
霊夢は一瞬の出来事に唖然とした。レミリアは霊夢に狙いを定め槍を構え、韋駄天の如き速さで突進した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「おーいフラーン!私が分かるかー?」
金髪の吸血鬼の少女「フランドール・スカーレット」に声をかける。
「……………………。」
しかし、こちらも無言を貫き通している。
「仕方ないな」
魔理沙は、持ち武器の「ミニ八卦炉」を構えた。このアイテムは魔理沙の魔法力を高めてくれる便利な魔法道具だ。今にも弾幕勝負が始まろうとしてたとき、
「魔理沙ー!」
崩壊した紅魔館のほうから魔理沙を呼ぶ声がした。驚いて紅魔館の方を振り返るとそこには紫の長い髪を垂らした少女が宙に浮いていた。頭には三日月の飾りのあるレミリアやフランの色違いのような薄紫の帽子を被っていた。
「なんだパチュリーか。」
魔理沙はそう言ってフランに向き直った。パチュリーと呼ばれた少女は頬を膨らまして不満そうに言った。
「なんだとは失礼ね!私は魔理沙を助けるために……。」
そう言いかけたときフランの放つ弾幕が容赦なく二人に襲いかかった。
「くっ!おいパチュリー!助けに来たんだったらなにか打開策があるんだろ?」
「ええあるわ!簡潔に説明するとあの二人は操られているの!その元凶は二人の中に取り憑いてるの。そいつらを叩き出すための魔法を準備するから発動するまで私を守って。準備できたら合図するから二人をできる限り近くに集めて!」
「ああわかったのぜ。だけど霊夢にどうやって伝えるんだ?この弾幕の嵐の中伝えるのはムズいんだぜ。」
そう魔理沙が言うと紫髪の少女は微笑んで言った。
「大丈夫よ。あっちにもすでに最強のメイドを派遣したから。私たちは自分の役割を全うするまでよ!」
そう言って魔法陣を空に描き詠唱を始めた。
彼女の名は「パチュリー·ノーレッジ」7属性を使う程度の能力を持つ大魔法使いである。
「見せてあげるわ、貴女達に魔法の真髄を!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
霊夢はレミリアの槍に貫かれた………はずだった。レミリアの突進と同時に霊夢の姿が消えた。そしてすぐ近くに霊夢の服の襟を掴んだ銀色の短い髪のメイドと一緒に現れた。
「……………!」
流石のレミリアもこれには驚いたようだ。霊夢は相変わらず何が起こったか分からない顔をしていたが、メイドの顔を見て何が起こったかようやく理解できたようだ。
「博麗の巫女になってからここまで命の危険を感じたのは初めてよ。助けてくれてありがとうね咲夜。」
霊夢はそう言ってレミリアに向き直った。そのメイドは銀色の短い髪をなびかせて言った。
「お嬢様のお客様に怪我をさせるわけにはいきませんもの。でも私が一人で相手できる方ではないから貴女も手伝ってね。そうそう貴女にはお嬢様の弾幕を捌きながらパチュリー様の方に誘導してもらうわ。」
「分かったけど何か作戦でもあるの?」
霊夢がそう尋ねるとメイドはにこやかに笑いパチュリーの魔法の話やレミリア達が何かに操られていることを話した。
「だいたい内容はわかったわ。」
霊夢がそう言うとメイドも笑顔で返す。
「飲み込みが早くて助かるわ。さてと、私もお嬢様を助ける為に全力を出しますか。お嬢様、待っていてください。私が必ず元に戻してみせますわ。この完全で瀟洒なメイド『十六夜咲夜』が!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
一方こちらは、魔理沙組。フランの容赦のない弾幕に流石に疲弊している様子の魔理沙。
「おいパチュリー!まだ魔法は出せないのか!」
パチュリーは少し焦った様子で答える。「あと五分くらいよ!もう少し耐えて!」その時疲弊した魔理沙達に追い討ちをかけるようにフランはスペルカード
禁忌「カゴメカゴメ」を放った!
幾千もの刃の弾幕が魔理沙に襲いかかる。
「まずい、もう避けきれない…。」
その瞬間どこからか「気」の力を纏った弾幕が飛んできてすべての刃弾幕を叩き落とした。
「危ないとこでしたねえ。大丈夫ですか?」
そこには拳法の道着に身を包み「龍」と書かれた帽子を被ったサラサラで長い赤髪の美しい女性が立っていた。
「助かったのぜ美鈴。」
「ふふっ。大丈夫そうでなによりです。」
彼女の名前は「紅 美鈴」気を操る程度の能力を持つ妖怪である。
「それでパチュリー様、魔法はもう発動できそうですか?」
「ええ、もういつでも発動できるわ。霊夢と咲夜はレミイを誘導できたかしら。」
パチュリーがそう言った瞬間隣に咲夜が現れた。
「もう、お嬢様の誘導も完了しています。いつでもどうぞ。」
咲夜はそう言って指を差した。その先にはレミリアとその弾幕から必死に逃げてる霊夢が見えた。
「上出来よ。さあ行くわ!」
パチュリーが高々と手を掲げると同時にレミリアとフランを温かい光が包む。
「眩しい!!なんなのよこれえ!」
霊夢は光の中で目を押さえて叫んだ。光がやんだ頃二体の黒い人型精霊が現れた。と、同時にレミリアとフランは気を失って落ちていった。
「いけない!お嬢様!妹様!」
咲夜は叫びその場から消え、次の瞬間にはレミリアとフランを抱えて飛んでいた。
彼女の能力は「時間を操る程度の能力」一瞬で動けるのも時を止めて行っているからだ。
「それでは私は元凶の方を叩くとしますか!」
美鈴はそう言って片手に気を溜めて一気に解き放った。
「はあああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」
たった一撃で黒精霊は消え去った。
「終わったのね。ようやく終わったのね。」
パチュリーは目に涙をためて呟いた。
「ええそうよ。とりあえずはこれで安心よ。私の目が予告なくいきなり放たれた強い光の魔法で失明しかかった事実を除けば"無事"解決ね。」
霊夢は目をしぱしぱさせながら恨めしそうに言った。
「まあ結果的には誰も何も失ってないし一件落着だな!それよりあの人型精霊はなんなんだ?私が見たのとは色が違ったようだが。」
魔理沙がそう言ったところに咲夜が二人を抱えて戻ってきた。
「その話の続きは紅魔館でしましょう。幸い紅魔館も全て崩れたわけではないし、お嬢様方をベッドに横にさせたいから。」
「そういうことなら地下図書館が良いわ。あそこなら本を守るためにこあが結界を張ってるから全て使えるはずよ。」パチュリーの提案もあり一行は紅魔館の地下図書館に行った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「パチュリー様ーおかえりなさいませ!よくぞご無事で!」
図書館に入った途端パチュリーの使い魔、小悪魔の「こあ」が飛んできた。
「ただいまこあ。早速だけど二人をひとまず私のベッドに寝かせるから整えてきてくれるかしら。」
「お任せください!」
そう言ってこあは、すっ飛んでいった。その後を咲夜が二人を抱えてついて行った。しばらくして咲夜が二人を寝かせて戻ってきた。
「お嬢様方はぐっすり眠ってらっしゃるけどあの様子なら今晩には目覚めそうね。」
咲夜はそう言って紅茶を注いでいた。
「それなら良かったわ。それじゃあ、本題に入りましょうか。単刀直入に聞くわ。どういう経緯でこうなったの?」
霊夢がそう聞くとパチュリーが答えた。
「あれは私達がみんなで夕ご飯を食べている時だったわ。突然あの黒い人型精霊が現れたの。そして二人に取り憑いた。初めは私が簡易魔法結果で閉じ込めていたのだけど抑えきれなくなって結果が壊れた。あとは貴女達が見たことに繋がるわ。」
パチュリーの話を聞き終えた霊夢は深刻な顔で口を開いた。
「やっぱり今回の異変はその人型精霊が原因ね。でもその精霊の正体も目的もは不明…。パチュリーはその精霊について何か知らない?」
霊夢がそう聞きかけたときどこからともなく声が聞こえた。
「その精霊については私が教えてあげるわ。」
言い終わると同時に空間が裂けてそこから妖怪が姿を見せた。真ん中に紫の太い線が入った白の服を着た髪の長い金髪の女性だ。頭には細く大きなリボンを付けた帽子をかぶっている。この妖怪の名前は「八雲 紫」幻想郷の賢者で「境界を操る程度の能力」を持っている。紫に向かって霊夢は嫌な顔をしながら言った。
「なんでここに紫がいるのよ。それに『精霊について教えてあげる』ってあんたなんで精霊について知ってんのよ。」
霊夢の問いかけに紫はニコニコしながら答えた。
「あらあら質問が多いわねえ。まずなんでここにいるのかというとスキマからずっと"見てた"から。槍で貫かれそうになった時は流石に助けようと思ったけどそこの優秀なメイドさんのおかげで出ていかなくてもなんとかなったわー。ありがとうねえ。」
「ずっと見てたなら最初から加勢してくれればよかったじゃない。」
霊夢はぼやいたが紫は無視して続けた。
「次に何で知っているか。それは私が私なりにしらべていたからよ。今回の異変は流石に霊夢だけじゃ心配だからねえ。私も独自にしらべてみたのよ。その結果今回の異変が相当厄介だって事もわかったわ。」
「良いから早く教えなさいよ!」
「まあまあ霊夢、そう焦らないで。そうねえまず奴らの名前から教えようかしら。」
紫は一拍置いてから言った。
「奴らの名前は『寄生霊』人々に寄生して破壊の限りを尽くす最悪の精霊もどきよ。」
Next Phantasm