第5話 調査
「おかえりなさいませ、お嬢様!」
レミリアが紅魔館の門をくぐると目の前に咲夜が現れた。
「ただいま、咲夜。留守中なにか変わったことはなかったかしら?」
「特にはございません。」
咲夜は両手を前で組んで言った。
「それなら良かった。そうそう、フランはもう起きたのかしら?」
レミリアが聞くと咲夜は苦笑いして言った。
「妹様ももうお目覚めになっております。しかし、起きた矢先に遊びに行ってしまわれました。時間的にもそろそろ帰ってくるとは思いますが…。」
咲夜が言うとレミリアは微笑んで言った。
「遊びに行くくらいには、元気なのね。それならまあ良いわ。そうそう、霊夢達に紅茶とお茶菓子を出してあげて。」
「かしこまりました。それでは皆様こちらへ。」
咲夜は頭を下げ、霊夢達を部屋に案内した。咲夜と入れ替わる形でフランが帰ってきた。
「ただいまー!あ、お姉様帰ってきてたのね!おかえりなさい!」
「あら、フラン。身体の具合はどう?」
レミリアが聞くとフランは腕を回しながら答えた。
「もうすっかりよくなったわ!」
屈託のない笑顔をして言った。そんなフランを見てレミリアは心のなかで思った。
(あ〜フランマジ天使だわ。めっちゃ可愛いもう撫でくりまわしたいくらい好き。)
レミリアは、人前ではカリスマのイメージを崩さぬよう自重しているが心の中では時々こんなことを考えたりする親ばかならぬ姉ばかの一面もあるのだ。
「お姉様?顔が赤いけど熱でもあるの?」
レミリアは、ハッとした顔で我に返った。
「べ、別に何でもないわよ!ほら、私達も早く紅茶飲みに行くわよ!」
レミリアは小走りで咲夜達の向かった部屋に走っていった。フランは、首をかしげて後をついて行った。
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咲夜達に少し遅れる形でレミリア達も部屋に着いた。
咲夜が全員分、紅茶とお茶菓子を配り終えるとレミリアが口を開いた。
「咲夜含めみんなお疲れ様。色々あったけどまずは、気持ちを落ち着けるという意味でも紅茶とお茶菓子を召し上がって。」
その言葉を待ってましたと言わんばかりに霊夢はお茶菓子に食らいついた。霊夢の姿に一同は大笑いしてその場の空気が和んだ。そんな様子を見ながらレミリアは話し出した。
「それじゃあみんな、食べながらでいいから今回魔法の森で得た情報をまとめて今後の動きを決めましょう。」
その言葉を聞いた魔理沙は、誰よりも早く言った。
「まず、今回1番大きい情報はアリスが黒幕じゃなかったってことなんだぜ!」
それを聞いたレミリアは少し言いづらそうに付け加えた。
「いいえ、アリスが黒幕で無いとはまだ言い切れないわ。」
「それは…どういうことなんだぜ?」
魔理沙は、不安そうな表情で聞いた。
「例えばアリスが黒幕だったとしてもしかしたら被害者を装うためにわざと自分に寄生させたのかもしれない。もしくはアリスが誰かを操る魔法を開発したのかもしれない。可能性はまだあるということよ。」
「…………。」
魔理沙はうつむいて黙ってしまった。霊夢がたまりかねたように叫んだ。
「でも!レミリアも見たでしょ!?メディスンが寄生霊を操って私達を襲ったことを!」
「確かにメディスンは、異変を起こそうとしている。でもよく思い出してみなさい。あいつの操る人形は私達に“直接”攻撃を仕掛けてきた。対して今までの寄生霊は、私達を“操って”攻撃を仕掛けてきた。メディスンが今回の異変の犯人なら寄生霊を私達に寄生させてしまったほうが早いはずよ。なのに寄生させなかったということは寄生霊を作った黒幕は別にいるかもしれないということ。」
レミリアは淡々と説明して紅茶を一口飲んで続けた。
「まあまだ可能性の段階だからね。まだ黒幕と決めつけるのは時期尚早ということね。」
少し間が空き霊夢が口を開いた。
「なら幻想郷中を飛び回って調査するしかないわね。私は妖怪の山のほうを探すから魔理沙は人里を、レミリアは…。」
今にも飛び出していきそうな勢いで役割分担していく霊夢をレミリアは静かに止めた。
「待ちなさい霊夢。さっき帰ってきたばっかでみんな疲れてるでしょう。今はゆっくり休んで調査は明日からでもいいんじゃないかしら?一生懸命なのは結構だけれど周りを気遣わないとついてくる者もついて来なくなるわよ。」
この時霊夢は思った。
(またレミリアのカリスマかぶれが始まったわね…。このかりちゅまが。)
この時レミリアも思った。
(ふ…。決まったわ。)
少し気まずい状況の中お茶会はお開きになり各々自分の家へ帰った。
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翌日、10月31日A.M6:00。霊夢は妖怪の山へ向かった。山は紅葉の季節のためか木々は赤や黄色といった色とりどりの葉をつけていた。霊夢が妖怪の山に入ろうとすると一体の白狼天狗が近づき叫んだ。
「お待ち下さい、いくら博麗の巫女といえど妖怪の山に勝手に入ることは許されませんのでお引き取り願います!」
「あら椛、相変わらず仕事熱心ね〜。だけど私も異変解決という大切なお仕事があるの。そのために妖怪の山の中をちょーーと調査させてほしいからそこどいて。」
無理やり入ろうとする霊夢を椛は慌てて止めた。
「ちょ、だから駄目ですって!これ以上入ると不法入山者として霊夢さんと闘わないといけなくなっちゃいますよ!お願いですから帰って下さい!」
霊夢はどうしたものかと考え込んだ。少し経って霊夢は去年の出来事を思い出した。
(そういえば去年レミリアの家でハロウィンパーティーを開いたわね。レミリア曰く仮装してトリック·オア·トリートって言えばお菓子を合法的にふんだくれるんだっけ。それでお菓子をくれなきゃイタズラとして弾幕を撃ちまくっていいんだったわね。うん、きっとそうだったわ。)
椛は困った顔で言った。
「霊夢さん?早く帰ってもらわないと私も持ち場に帰れな…。」
「トリック·オア·トリート!!」
「……へ?何言って…。」
「お菓子くれないってことは、イタズラしていいってことね!はあ!」
霊夢は、イタズラと言う名の弾幕を椛の懐に撃ち込んだ。
「何でなのおおおおおおおおおお!?」
椛は何が何だか分からないうちにふっとばされてしまった。
「椛、もしかしたらハロウィンのこと知らなかったのかしら?まあいっか。早く寄生霊について調べないと!」
霊夢は妖怪の山の山頂、「守矢神社」へ向かって飛んでいった。
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その頃幻想郷のとある場所にて。
「ふふ。いくら幻想郷の賢者の紫でも私の作った寄生霊·紅の支配力には敵わなかったようね。」
ほくそ笑む者の前に無表情で棒立ちしている紫がいた。彼女も寄生霊に操られてしまっているのだ。そして彼女の後ろには大量の寄生霊軍団がいた。
「それじゃあ手始めに妖怪の山から寄生霊軍団をばら撒くとするか。紫、貴女のスキマの力を使ってこの軍団を妖怪の山に連れていきなさい!」
紫は、スキマを開けると寄生霊軍団と共に姿を消した。
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霊夢は守矢神社を目指して飛んでいると一体の鴉天狗がこちらに向かってくるのが見えた。
「ん?あいつは…。」
鴉天狗は異次元の速さで霊夢の前にくるとカメラを構えて言った。
「あやややややー!霊夢さんがここにいるという事は、椛はもう倒してしまったようですねえ!それで、今回はどのような異変の調査で妖怪の山まで来たのですか!?場合によっては是非私の文々。新聞で取材を…。」
霊夢はうんざりした顔で喋りまくる鴉天狗を止めた。
「相っっっ変わらずうるさいわね、文は!まだジャーナリスト気取りで新聞作ってんの?」
彼女の名前は、「射命丸 文」。文々。新聞という自分の新聞会社を設立しており天狗の仕事の傍ら新聞制作のためにこうして幻想郷中の異変やら事件やらのネタを探している。文は苦笑いして言った。
「あややー、ジャーナリスト気取りとは酷いですねぇ。私は、れっきとしたジャーナリストですよ~。ところで霊夢さん。もしかして寄生霊について調査するためにこちらへいらしたのではないですか?」
「あら、知ってるなら話が早いわ。そのために守矢神社へ向かってる最中だから邪魔しないでもらっていいかしら?貴女にも天狗としての立場もあるでしょうけど面倒ごとは嫌いだからスッと通してくれるとありがた…。」
「別に邪魔しませんよ〜、どうぞどうぞ。あ、でも飯綱丸様には“懸命に戦った末負けた”ということにしておいてくださいね〜。」
霊夢は唖然とした。こいつには天狗としてのプライドが無いのかとも思った。複雑な心境のまま守矢神社に向かうのだった。
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ー守矢神社。霊夢は境内を掃除している緑の髪の巫女に向かって行った。緑髪の巫女は霊夢に気づくと手を振った。
「霊夢さーん!どうしたんですか?また何か異変でも起こってますー?」
このどこか間の抜けた感じの巫女の名前は「東風谷早苗」。緑の髪にかえるとヘビの髪飾りを付けた現人神だ。
「早苗久しぶりね。今日は寄生霊の巻き起こした異変について調査して回ってるのよ。早苗は寄生霊について何か知らない?」
霊夢が聞くと早苗は眉をひそめて言った。
「いえ、何も知りませんね。そもそも寄生霊って何です?」
「えーっと。寄生霊っていうのは小さい小人みたいな感じで〜。」
「ふんふん」
「オレンジとか白とか黒とかがいて〜。」
「ほうほう」
「それで人妖関係なく寄生して宿主を暴れさせまくる厄介な人形みたいなやつよ。」
「ほえ〜。それって今霊夢さんの後ろにいるやつですか?」
「は?」
霊夢は急いで後ろを振り返った。そこには寄生霊の群れがわらわら湧いてきていた。後ろの方には寄生霊で見えにくかったが紫らしき影が見えた。
「あれは…、紫?何であんなところに。」
霊夢は近づこうとしたがすぐに紫らしき影はスキマに入って消えてしまった。早苗は慌てふためいて叫んだ。
「あわわわわわ…れ、霊夢さん!こいつらお山の妖怪にどんどん寄生していってますよ!」
霊夢はハッと我に帰り早苗に言った。
「いけない!早苗、まずは寄生していない寄生霊からやっつけていって!あいつら自体はそんな強くないから!その後で寄生された妖怪を倒して寄生霊を叩き出してやるのよ!」
「わ、わかりましたー!」
霊夢達はそれぞれお祓い棒を構えた。
Next Phantosm
おまけ
〜紅魔の素敵(?)な住人達〜
紅魔館のハロウィンの巻
(私レミリアは500年以上生きてきた中で今最大の恐怖を感じているわ。なぜなら…。)
(咲夜が今までに見たことないくらいの君の悪い顔でネコ耳と尻尾を持って近づいてくるからよ!)
レミリアは部屋の隅っこに追い詰められていた。レミリアの見る先にはネコ耳と尻尾を持った咲夜がじわりじわりと近づいてくる姿があった。
「お嬢様ー。今日はせっかくハロウィンなんですからー。ほら、ちょっとこれ着てみてくださいよー。」
「そんなのフランに着せなさいよ!絶対そっちのほうが似合うわよ!」
レミリアは必死に訴えた。咲夜は少し悩んで鼻血を噴き出しながら言った。
「慎重に選考を重ねた結果やはりお嬢様に着ていただくのが一番だと判明しました。というわけで着替えましょうか。」
「絶対嫌よ!あんた絶対慎重に選考重ねてないでしょ!自分の欲望と主の欲望天秤にかけた結果自分の欲望が勝っただけでしょうが!」
「お嬢様……。よくぞおわかりになりましたね!やはりカリスマたるもの従者の考えなど一発で見抜けるのですね。」
「誰だって分かるわ!とにかく絶対来ないからね!そもそも吸血鬼自体が仮装みたいなもんだし。」
そう言ってレミリアは外に逃げた。
「あら、逃げられちゃいましたか。仕方ないあの手は使いたくなかったけど…。」
咲夜は能力を使い時間を止め歩き出した。妖怪の山に。
ー妖怪の山。咲夜は文を呼んだ。
「あやややややー。珍しいお客さんですねえ、何か頼みごとでしょうか?」
「ええ、そうなの。あなたの速さを見込んで頼みがあるわ、急遽お嬢様を捕まえて紅魔館に連れてきてほしいの。」
「あややー家出ですか?急になんで。」
咲夜はハロウィンのことやネコ耳のことを話した。
「あややー分かりました!ちなみにそのレミリアさんを写真に撮って新聞に掲載したりは。」
「この際許可するわ。ついでに私にも後で写真ちょうだいね。」
「それでは後ほど。咲夜さんは先に戻っててください。」
「ええ、準備して待ってるわ。」
その後幻想郷中にネコ耳レミリアがばら撒かれた。レミリアは文を永遠亭に入院させたあと一ヶ月紅魔館にこもって外には出なかった。
後にこの事件は吸血鬼猫化異変と呼ばれ後世に語り継がれた上寺子屋の教科書に載った。