Green Archive ー自衛官先生と生徒の青春ー 作:和菓子甘味
あ、イベント系は書く予定です。
第1話「アビドス廃校対策委員会」
俺がシャーレの顧問教師に就任して数日。
俺は色々なことが数日間で起こって、机に突っ伏していた。
そんな中でも、目の前のタブレットスタンドに立て掛けた、シッテムの箱の住人は大きな声を出してくる。
「おはようございます、先生!」
「おはようアロナァ......」
元気が良いのはいいことなんだが、あいにく俺の心は既にHP0である。
原因はリンから「シャーレの公用車です」と言われて送られた資料にあった。
物自体は既にシャーレの駐車場に停めてあったのだが......。
「なんで自衛隊の車両がシャーレにあるんだよ......」
そう、シャーレの公用車として用意されたのは「1/2tトラック」と「3 1/2tトラック」、「高機動車」の3台だった。
よく見てみれば、どれも銘板が付いており、れっきとした自衛隊車両であることに違いはなかった。
ナンバーは元の自衛隊ナンバーのままで所属部隊名が消えていること以外は何も変わらない。
「まあ、考えてもキリがないか......」
防衛省との連絡が取れない現状はいたし方ないので、リンと調整の上で「シャーレの公用車」でありながら「自衛隊の公用車」ということにしてもらった。
簡単に言えばシャーレに貸し出しているという体になるので、基本的に所有権はこちらになる。
ただし運用面で出る金は連邦生徒会が負担するということだ。
まあ、連邦生徒会長がどっかから拾ってきたそうで、リンも扱いに困ってたみたいだし。ここがいい落とし所だろう。
「それよりも先生。ここ数日間、シャーレに関する噂もたくさん広まってるみたいですし、他の生徒達から助けを求める手紙も届いてます。良い兆候です!私たちの活躍が始まるということですから!」
「いい事なんだろうけどね......」
正直不安しかない。
ここ数日間で各学園の勢力や特性についてユウカ達の助けもあり、概ね調べ上げた。
三大校のミレニアム、ゲヘナ、トリニティ以外は連邦生徒会からの情報提供だが、何処もかしこも治安で不安事項を抱えている。
やれ革命だの、やれ伝統だの聞きたくない単語もあったが、とりあえずは置いておく。
これらは先生としての経験を積んだ後でいいだろう。
トリニティとゲヘナの「エデン条約」なる物も小耳に挟んだが、内容は機密事項らしく詳細は不明なのでこれも置いておく。
とりあえずは各校の小さな問題から始めよう。
そう思い、レターケースにある鬼ほどの手紙に手を伸ばすと、アロナが止めてきた。
「あ、先生!実は手紙の中に......ちょっと不穏な、こんな手紙がありまして。これは先生に一度読んでもらった方がいいかなと」
そう言ってアロナが表示した封筒を選んで取り出す。
差出人は......「アビドス廃校対策委員会」?なんとも奇を衒った名前だなと思いつつ、封を開けて中身を読む。
内容は簡潔にまとめるとこうだ。
『地元の暴力団的組織にボコボコにされているので、助けて欲しい』
うーん、我ながら短節明瞭じゃないか?とはいえ、かなりやばい状況らしい。
「うーん......アビドス高等学校ですか......」
アロナが悩ましい声をあげる横で、俺は席を立って近くの書棚を開ける。中に格納されたファイルの中から『アビドス高等学校』と背表紙に書かれたファイルを取り出し、中を確認した。
「昔はとても大きい自治区でしたけど、気候の変化で街が厳しい状況になってると聞きました。どれほど大きいかというと、街のど真ん中で道に迷って遭難する人がいるぐらいだそうです!あはは、まさか、そんなことあるんでしょうか......?いくらなんでも街のど真ん中で遭難だなんて......さすがにちょっと誇張だと思いますが.......」
「あるぞ。俺の故郷の国じゃ東京か梅田の地下街がそれに該当する」
「あるんですか!?」
「『事実は小説よりも奇なり』ってな......あ、こっちの資料にも書いてる。『砂嵐が酷く、人口減少による過疎化が問題』ねぇ......何処もかしこも自然災害には頭を悩ませてるって訳だ」
アロナの解説と手元のファイルを照らし合わせる。このファイルの中には学校の概説と諸元、所属生徒や所持銃器等が記載されている。
流石にマンモス校は量が多いが、アビドス位なら1冊で纏まるので見やすい。
所属生徒も5名しかおらず、手紙の差出人の「奥空アヤネ」の資料もすぐに見つかった。
「奥空アヤネ。年齢15歳。アビドス高等学校一年生でアビドス廃校対策委員会の書記......いかにも真面目って感じの子だな」
資料の生徒写真を見ると、明らかに委員会顔の優等生って感じだ。可愛い。
「それより学校が暴力組織に攻撃されているなんて......ただ事ではなさそうですが......何があったんでしょうか?」
「少なくとも平穏な出来事じゃないのは確かだな。アロナ、今すぐ支援物資の積載を3トン半に行う。連邦生徒会に人員と物資の準備を。リストは......」
「流石大人の行動力......」
アロナが何か言っているが、急がないと彼女たちも危ないだろう。ひとまず、アビドス学生の使用銃器の弾薬規格を資料から引っ張ってきて各人4000発が配当される様に発注、ミニガンを持っている2年生の十六夜ノノミの分だけ2万発分を請求。後は5人分の水と食料を3週間分と医療品を要求した。
リンは電話口で唸っていたが、事が事なだけにすぐ了承してくれた。
俺の方は89式用の私物PMAGと演習で携行していた9mm拳銃の弾倉に弾を込め、鉄帽と私物の腰周り装備を装着。
防弾チョッキは中のプレートがまだ連邦生徒会に届いてないので、私物の防弾板入りチェストプレートを着ていくことにした。
その後は3トン半に乗って連邦生徒会に出向き、連邦生徒会の生徒と共に荷物を積載。今から出ると夜に着くため、1泊車中泊をして、明日の朝一で現地に向かうことにした。
数日後、俺は街のど真ん中で途方に暮れていた。
アロナに地図を用意してもらったものの、砂嵐による砂漠化の被害と道路の保安整備不良で迂回を繰り返し、道は分かるものの、辿り着けない状況となっていた。
「地図がだいぶ前のものってどういう事よ......」
「すみません先生......最新版だと思ったのですが......まさか最終更新が何年も前なんて......」
「アビドスから人が離れる原因はこれだな.......」
とりあえず住宅街のど真ん中で長時間停車も迷惑なので、降りて周囲の状況を確認しようと下車する。
とはいえ似通った建物が多いので、どうもこうも行かない。
「仕方ない......大通りまで戻って再度迂回路を追求するか」
「......あの......」
一旦引き返そうとボヤいていると、後ろから声をかけられる。
振り返れば、そこには耳が生えた銀髪の生徒がロードバイクに乗っていた。
服は恐らくアビドス高等学校の制服で、俺の資料が正しければ、彼女はアビドス高等学校2年生の砂狼シロコのはずだ。
「......大丈夫?」
「ああ、ごめん。実は自分、土地勘がなくて......」
「土地勘......?トラックってことは配送の人......?」
「実は.......」
俺はシロコに簡単に事の顛末を話した。話す中で、現役自衛官が迷子という事実に、恥ずかしくて死にそうなるが、ぐっと堪える。な、泣いてないもん!!
「なるほど......アビドスに用があったと.....見た所連邦生徒会の大人の人みたいだけど......お疲れ様」
「いやぁ......まさか地図が更新されてないとは......自衛官として恥ずかしい限りだよ」
理由を聞いたシロコから労われ、少し泣きそうになる。
もう1回地図判読練習し直そうかな。
「『アビドス』に行くの?」
「そうだね」
「......そっか。久しぶりのお客様だ。それじゃあ、私が案内してあげる。すぐそこだから」
「なら、その自転車を3トン半に載せて。助手席に乗って案内を頼むよ」
「わかった」
3トン半の荷台へシロコのロードバイクを載せ、シロコが助手席に座ったのを確認してから出発した。
道中シロコが汗をかいていたので、エアコンをつけたら。予備の服がないからと何やらモゴモゴし始めたので、別にいい匂いだし、職業柄気にならない事を伝えると、「まあいいか」と納得された。
もしかして選択肢ミスった?女の子はわからん。
程なくしてアビドス高等学校に着いた俺達。
3トン半から荷物を下ろしやすいように、正面玄関にバックで駐車した後、エンジンを止めて輪止めをかける。降りてきたシロコの自転車を荷台から下ろし、2人で校舎内に入る。
校舎内も砂まみれで、まともに使える場所は少ないように見受けられた。こりゃ生徒数も5人になる訳だと1人納得していると、シロコが「着いた」と言ってきた。
本来部屋の札がかかる場所には、手書きで「アビドス廃校対策委員会」と書かれた紙が貼られていた。
お手製感が半端ないが、自衛隊でもよくある事なので珍しくは感じない。
シロコに続いて部屋に入ると、中にはアビドス高等学校の生徒たちが集まっていた。
「おかえり、シロコせんぱ......い?うわっ!?何!?その大人誰!?」
まあ初対面ならそうなんだろうけど、女子学生に言われるとおじさん心が折れそうになる。
「わあ、シロコちゃんが大人を拉致してきました!」
「拉致!?シロコ先輩がついに犯罪に手を......!!」
「みんな落ち着いて!!とりあえず倉庫に縄があるからそれで叫ばれる前に雁字搦めにして......!!」
「アビドスって物騒なのか?」
「それは心外」
恐らく一年生の黒見セリカに奥空アヤネ、2年生の十六夜ノノミと思われる生徒からの言葉は学生とは程遠い。
シロコに聞けば少し怒った様子だ。可愛い。
「いや......普通の大人だから。うちの学校に用があるんだって」
「え?うちに用......?」
「拉致したんじゃなくて、お客さん?」
「そうみたい......」
一年生ズとシロコがこっちを見てくるので、とりあえず挨拶をする。
「お、おはようみんな」
「わぁ、びっくりしました。お客様がいらっしゃるなんて、とっても久しぶりですね」
「そ、それもそうですね......でも来客の予定ってありましたっけ......」
ノノミとアヤネの会話から、どうやら俺がシャーレの人間とは気づいてないようだ。まあ、迷彩服姿なら仕方ないか......。
「俺は陸上自衛隊......じゃなかった。シャーレの先生です。よろしくね」
「......え、ええっ!?まさか!?」
「連邦捜査部『シャーレ』の先生!?」
俺の自己紹介でセリカとアヤネが驚いた。
一方ノノミははしゃいでいる。
「わあ☆支援要請が受理されたのですね!良かったですね、アヤネちゃん!」
「はい!これで......弾薬や補給品の援助が受けられます。......あ、早くホシノ先輩にも知らせてあげないと......。あれ?ホシノ先輩は?」
アヤネの言葉で思い出した。
確かアビドスは5人いるので1人足りない。
確か名前は「小鳥遊ホシノ」だったはずだが......。
「委員長は隣の部屋で寝てるよ。私、起こしてくる」
そう言ってセリカは部屋を出ていった。
俺は荷物が外のトラックにある事を伝えようと口を開いたが、声は突如鳴り響いた銃声でかき消された。
「みんな伏せろ!!」
俺の言葉で全員が伏せる。部屋に着弾した訳では無いが、俺は姿勢を低くしたまま窓際に行き、双眼鏡で外の様子を伺う。
何やら校門前でヘルメットを被った集団がたむろしており、足元の薬莢から彼女達が発砲の犯人であることは明白だった。
何やら騒いだ後、また銃を乱射しながら校内へと押し入ってきた。
「わわっ!?武装集団が学校に接近してます!カタカタヘルメット団のようです!」
「カタカタヘルメット団!?資料にあった不良グループか!!」
カタカタヘルメット団。資料で見た不良グループの1つ。強盗傷害恐喝等、かなり悪どい事をしているらしく、過去には何度かヴァルキューレ警察学校と衝突していることもあるとか。最近もアビドスで暴れ回ってるって情報を聞いたが、結構過激だなコイツら......。
「あいつら......!!性懲りも無く.....!」
「シロコ、怒る気持ちはわかるが落ち着け!」
今にも飛び出さんとするシロコを抑える。敵が数で勝るなら、こっちが単発で出れば各個撃破されかねない。
俺が敵情判断をしていると、セリカが物凄い勢いで扉を開けて入ってきた。
「ホシノ先輩を連れてきたよ!先輩!寝ぼけてないで、起きて!」
「むにゃ......まだ起きる時間じゃないよ〜」
「君委員長だよね!?なんでそんな呑気なの!?」
セリカにひっさげられてきたピンク髪の小柄な少女──3年生の「小鳥遊ホシノ」は欠伸混じりに返事をしていた。キヴォトス人、銃声に慣れすぎてないか?いや、彼女が異質なだけか......。
「ホシノ先輩!ヘルメット団が再び襲撃を!こちらの方はシャーレの先生です」
「ありゃ〜そりゃ大変だね......あ、先生?よろしく〜むにゃ」
「幸先不安すぎる......!!」
アヤネが説明するが、相変わらず寝ぼけているホシノ。冬場の74式戦車よりエンジンのかかり悪くないか!?
そんなホシノをセリカが肩を掴んでブンブンと振り回す。
「先輩、しっかりして!出動だよ!装備持って!学校を守らないと!」
「ふぁあー......むにゃ、おちおち昼寝もできないじゃないかー、ヘルメット団めー」
やっとエンジンがかかったのか、目を開けたホシノは近くに置いてあるショットガンを手に取った。
シロコ達も準備万端だった。
「すぐに出るよ。先生のおかげで、弾薬と補給品は十分」
「はーい、みんなで出撃です☆」
シロコとノノミが銃を取り出してそのまま教室の外へ走っていった。いや、ノノミにはここから射撃支援してもらいたかったんだが......まあいいか。
「私がオペレーターを担当します。先生はこちらでサポートをお願いします!」
「了解した。当初は各人今まで通りの戦闘方法で交戦開始。アヤネも普段通りみんなのサポートを頼む!」
「先生はどうされるんですか?」
「適時指示を出す!その時はアヤネが伝達してくれ!」
「わかりました!」
俺はアヤネに最低限の指示を出し、89式に初弾を装填して教室の窓の縁に依託する。距離はおよそ150m。89式の照門を150に合わせ、照門を覗いて周囲を見回す。
今回は拠点防衛が主任務であり、殲滅では無い。となれば敵の指揮官クラスを排除すれば、敵は崩壊して撤退するだろう。
現状、先頭部隊は大まかな班規模に分かれてるヘルメット団だが、必ず指揮者がいる。そいつを叩けば、班内の指揮系統に混乱が生じるはず。
「......見つけた!アヤネ!俺が今から撃つ敵を集中攻撃する様に伝達!」
「は、はい!」
アヤネに指示を出しながら、指揮を取っている敵に狙いを定め、安全装置を「タ」に切り替えて引き金を絞り、発砲する。
弾着はやや右上に出たものの、頭部には命中しており、ヘルメット団員は周囲を見回している。
「流石に倒れてはくれないか!!」
弾着を元に、照準をやや左下にずらして続け様に3発発砲。全て頭部に命中し、団員は困惑しているようだった。
そんな団員にアビドス生の攻撃が加わりノックダウン。
周囲の団員は困惑していたが、その隙を突いてホシノとシロコの肉弾戦で吹っ飛ばされていった。
......いや怖!アビドスの女子高生ってこんな血気盛んなの!?
とりあえず怖くて現実逃避がてら、ほかの指揮官クラスの団員を狙撃する。
その後は気づいたアビドス生から攻撃を受けてノックダウンされ、団員が吹き飛ばされるという繰り返し作業になった。
校庭を出てからは俺も合流したものの、今回は初めてのアビドス生の指揮かつ戦闘指導も不十分なので、主体は彼女達の本来の戦い方とした。
指揮官との連携が取れない部隊ほど瓦解しやすいものは無い。
彼女達の今までのやり方を無理矢理変えるのではなく、良くするように補助するのが「先生」の役目だ。
各人の連携に問題はなく、オペレーターのサポートも十分。不十分なのはセリカの練度と各人の状況判断能力だろう。相手が目ざとい奴ならばそこが弱点と分かりうる。
となれば、俺がやるべき所はそこになってくるので、狙撃をしつつ、周囲の状況を伝えてノノミの支援射撃とその他の攻撃タイミングを適度に統制した。
敵の4コ班が壊滅する頃にはヘルメット団も堪らずに退避していき、何とかアビドスの郊外エリアまで撤退させることが出来た。丁度その時、アヤネから通信が入る。
『カタカタヘルメット団残党、郊外エリアに撤退中』
「わあ☆私たち、勝ちました!」
「あははっ!どうよ!思い知ったか、ヘルメット団め!」
『皆さんお疲れ様でした。学校に帰還しましょう』
なんか......喜ぶノノミとセリカは学生らしいんだが、ほんの数秒前までドンパチしていたって考えると複雑だな......まあ、このキヴォトスでは日常茶飯事らしいので、気にすることなく俺も彼女達に付いていき、アビドス高等学校へと帰還した。
「いやぁ〜まさか勝っちゃうなんてね。ヘルメット団もかなりの覚悟で仕掛けてきたみたいだったけど」
「まさか勝っちゃうなんて、じゃありませんよ、ホシノ先輩......勝たないと学校が不良のアジトになっちゃうじゃないですか......」
どこまでも呑気なホシノにアヤネが怒った。アヤネの言うことは最もだが、こうして見るとどっちが先輩かわからんな。
「先生の指揮が良かったね。私たちだけの時とは全然違った」
「ありがとうシロコ」
「これが大人の力......すごい量の資源と装備、それに戦闘の指揮まで。大人ってすごい」
「別に大人だからって訳では無いんだけど......」
何やら勘違いをしているシロコを正そうとすると、ホシノが言葉を発した。
「今まで寂しかったんだね、シロコちゃん。パパが帰ってきてくれたおかげで、ママはぐっすり眠れまちゅ」
「いやいや、変な冗談はやめて!先生困っちゃうじゃん!それに委員長はその辺でしょっちゅう寝てるでしょ!」
「そうそう、可哀そうですよ」
危うく犯罪者のレッテルが貼られかけたところでセリカとノノミが助けてくれた。
シロコみたいな娘がいるなら嬉しい限りだが、俺の年齢と職業柄で犯罪臭が半端じゃない。
というかホシノが嫁というのもまたお巡りさんに逮捕されるレベルだ。
「あはは......少し遅れちゃいましたけど、あらためてご挨拶します、先生。私たちはアビドス対策委員会です。私は委員会で書記とオペレーターを担当している1年のアヤネ......こちらは同じ1年のセリカ」
「どうも」
アヤネは真面目な優等生、セリカは年頃の女の子といった感じだ。
......セリカの耳は本物なのかな?さっきから動いてるし。
「2年のノノミ先輩とシロコ先輩」
「よろしくお願いします、先生〜」
「さっき、道端で最初に会ったのが、私......あ、別にマウントを取ってるわけじゃない」
ノノミはゆるふわ系、シロコは......我が道をゆくって感じだな。
「そして、こちらは委員長の、3年のホシノ先輩です」
「いやぁ〜よろしく、先生ー」
ホシノはなんだかほんわかした様子だが......なんだろう。どっかで感じた雰囲気があるんだが......どこだっけな?
「ご覧になった通り、我が校は現在危機に晒されています......そのため『シャーレ』に支援を要請し、先生がいらしてくれたことで、その危機を乗り越えることができました。先生がいなかったら、さっきの人たちに学校を乗っ取られてしまったかもしれませんし、感謝してもしきれません......」
「ありがとう。ところで対策委員会ってどういう活動をしているか教えて貰っても?」
「そうですよね、ご説明いたします。対策委員会とは......このアビドスを蘇らせるために有志が集った部活です」
「うんうん!全校生徒で構成される、校内唯一の部活なのです!全校生徒といっても、私たち5人だけなんですけどね」
「他の生徒は転校したり、学校を退学したりして町を出ていった。学校がこのありさまだから、学園都市の住民もほとんどいなくなって、カタカタヘルメット団みたいな三流のチンピラに学校を襲われてる始末なの。現状、私たちだけじゃ学校を守り切るのが難しい。在校生として恥ずかしい限りだけど......」
アヤネ、ノノミ、シロコから現状を聞いたが、ふむ......事前の資料と同じか。連邦生徒会のデータベースにおいても同じことが書かれており、アビドス自治区が消滅する可能性が高いとされていた。加えてカイザーグループと呼ばれる胡散臭い企業が幅を効かせているとも書いてあったな。
特にアビドスの治安悪化はヴァルキューレ警察学校も頭を悩ませているらしく、そこから出たチンピラが周囲の治安を悪化させているという悪循環らしい。ヴァルキューレもアビドス高校がこのザマなので一斉摘発も難しいらしいが......多分カイザーも噛んでそうな匂いがするんだよなこれ。
「もし『シャーレ』からの支援がなかったら......今度こそ、万事休すってところでしたね」
「だねー。補給品も底をついていたし、さすがに覚悟したね。なかなかにいいタイミングに現れてくれたよ、先生」
「うんうん!もうヘルメット団なんてへっちゃらですね。大人の力ってすごいです☆」
ホシノとノノミが安堵しているが、事態はそう単純じゃない。
こちらは強固な防御陣地を築いている訳じゃなく、通常、防御を突破するには攻撃側の戦力の3倍が必要とされているが......現状を見れば容易く突破されるのは明白だ。
早急な防御陣地構築を進めるべきなんだろうが......彼女達は学生。防御陣地の作り方なんて知るわけはないだろうし、知っていても時間と物資と人手が足りない。
となれば、敵勢力の本拠地を叩くしかないが......情報が少なすぎる。
敵の規模と兵装、補給兵站能力を調べあげなければ、こちらも大きな動きはできない。
「かといって、攻撃を止めるような奴らじゃないけど」
「あー、確かに。シロコ先輩の言う通りしつこいもんね、あいつら」
「こんな消耗戦を、いつまで続けなきゃいけないのでしょうか......ヘルメット団以外にもたくさん問題を抱えているのに......」
「おそらく敵は再度攻撃を仕掛けてくるだろう。俺たちはそれまでに陣地を構築するか......あるいは敵本拠地を叩くか......どちらにせよ情報を手に入れないことにはなんとも言えないな」
セリカとアヤネが頭を抱える。そりゃこんだけ問題のバーゲンセールが開催されてるならそうもなるわな......。
俺たちが頭を悩ませていると、ホシノが手を挙げた。
「そういうわけで、ちょっと計画を練ってみたんだー」
「えっ!?ホシノ先輩が!?」
「うそっ......!?」
セリカとアヤネの1年ズは酷すぎやしないか?いくらなんでも先輩のホシノにその反応は......いや、さっき来た時の様子からして普段からあまり何もしてないんだろうな。
「いやぁ〜その反応はいくら私でも、ちょーっと傷ついちゃうかなー。おじさんだって、たまにはちゃんとやるのさー」
「......で、どんな計画?」
塩対応は酷いなセリカ。もう少しホシノに手心を加えてやれよ......。
でもその態度が普通なのか、ホシノは気にすることなく続けた。
「ヘルメット団は、数日もすればまた攻撃してくるはず。ここんとこずっとそういうサイクルが続いているからねー。だからこのタイミングでこっちから仕掛けて、奴らの前哨基地を襲撃しちゃおうかなって。今こそ奴らが一番消耗しているだろうからさー」
「い、今ですか?」
「そう。今なら先生もいるし、補給とか面倒なことも解決できるし」
......ホシノは戦闘に関しては頭がきれるようだ。のほほんとしつつも戦況を把握して戦術を考えている。陸自なら佐官クラスがやるような事を平然とやってのけている。俺は陸曹だからそこまでは詳しい訳では無いが、彼女の捉え方は間違っていないだろう。
だが決定打がない。向こうがどの程度疲弊しているか分からない状況で突っ込むのも危険がある。
やはり情報が......。
「なるほど。ヘルメット団の前哨基地はここから30kmくらいだし、今から出発しよっか」
「良いと思います。あちらも、まさか今から反撃されるなんて、夢にも思ってないでしょうし」
「そ、それはそうですが......先生はいかがですか?」
やる気満々のシロコとノノミだが、アヤネが待ったをかけて俺に意見を聞いた。
「やるのはいいが、敵の情報が分かりきってない今動くのは危険だ。もう少し情報を収集整理してからでも遅くはないだろう。とりあえず荷物の準備や銃の手入れを含めて、明朝0800作戦開始でいいんじゃないか?その間に俺が情報収集と車両の準備をしておく」
俺の案に皆は賛成してくれたようで、明日の朝に攻撃を仕掛けることになった。
その為、解散後に3トン半に載せていた物資を全員で卸下してしまい、アビドス生達には休息を取らせる。
俺は3トン半の荷台で寝るので、特に準備するものもなく、荷台に残された銃架を組み立てて荷台に固定し、1つの木箱を開ける。中にはアメリカで開発され、100年以上世界中の軍隊で愛用され、12.7mm弾を発射する歴戦の猛者「M2重機関銃」が格納されている。
これも車両と同じで連邦生徒会長が用意していたらしいが、細部は不明との事。
恐ろしい限りだが、現状では心強い火力であることに変わりは無い。
M2を銃架に搭載して、銃身をセットする。QCBタイプなので取り付けは差し込んでひねるだけで完了だ。銃身を引いて抜けないことを確認し、シッテムの箱を起動する。
「アロナ。ここから30km先にあるカタカタヘルメット団アジトの警備状況と武装状況を知りたい」
「分かりました。少し待ってください。......出ました!警備状況はお世辞にもいいとは言えませんが、レーダー等を配備しているようです。武装も一般的な銃器のようです」
「つまり歩兵程度の装備って事か......戦車や装甲車もない......いけるな」
「先生、大丈夫ですか?」
「ん?大丈夫大丈夫。俺は自衛官だからね。こういう時のために訓練してたから」
「なら......いいんですが......」
アロナが心配そうにしているが、それもそうだろう。
前線に行くなんて正気の沙汰じゃない。
特にキヴォトスにおいては。
ただ、「先生」としてだけではなく「自衛官」として俺はここにいる。ならばそれなりに前線に行かなきゃならない「義務」がある。
ともかく明日に備えるため、俺は荷台の座席で横になった。
翌朝、校庭に集合した生徒達の目の前には俺が用意した3トン半があったのだが......。
「先生......これで行くの?」
「ないよりはマシって事で」
どうやら頼りにはならない様子。まあ、幌を前から3分の1剥がして重機関銃載せただけだからなぁ......。
「とりあえず運転は俺で、機関銃手を誰かにお願いしたいんだけど......M2重機関銃の扱い方わかる人って......いないよね」
念の為聞いてみるが、皆目をそらす。
いくらキヴォトスといえど、こんなごついもん普段から扱う生徒なんていないわな。
俺が頭を悩ませていると、アヤネが手を挙げた。
「先生、提案があります」
その後、俺達はカタカタヘルメット団のアジトと推定される地域の15km前まで進行してきた。
今回は運転ができると申し出てくれたアヤネに3トン半の操縦手を頼み、俺は荷台の重機関銃手。他のアビドス生は俺と共に荷台に乗っている。市街地ということもあり、3トン半で快適に進めている。
ある程度進んだところで3トン半が停車して、操縦手のアヤネが声を上げる。
「カタカタヘルメット団のアジトがあるとされるエリアに入りました。半径15km圏内に、敵のシグナルを多数検知。おそらく敵もこちらが来たことに気づいているでしょう。ここからは実力行使です!」
「了解!総員下車!前方に展開!機関銃射撃支援の元、行動開始!」
『了解!』
俺の号令を皮切りに皆が荷台から飛び降りていく。
自衛隊なら安全管理上、激指導だろうがいつも通りといった様子で配置について行く。
全員が前方の遮蔽物へ隠れた瞬間、前から敵部隊が進行してきた。
「アヤネ!右にハンドルを切って少し前進後停車!以降は停車前に左右どちらかに頭を振って停車してくれ!」
「分かりました!移動します!」
「機関銃手、半装填!」
アヤネが右に頭を振って停車したのと同時に、俺はM2の槓杆を目一杯引いて放す。
「半装填よし!完全装填!」
もう一度槓杆を引いて放し、弾薬の完全装填を終える。これで引き金を引けば、重機関銃の射撃が可能になる。
次に、目の前の敵部隊を目測で距離を判定する。
おおよそ彼女たちの身長は150cm、大体今が1.5ミル程の大きさに見えるので、距離は約1kmと推定。
重機関銃の照門を再確認し、距離の相違がないことを確認する。
「射距離よし!機関銃手射撃する!目標、前方、部隊!射距離1000!連射!発射!」
号令に合わせて引き金を押し、連続で12.7mm弾が発射される。それを受けて敵部隊もたまらず近くの遮蔽物に身を隠した。
敵もまさか堂々と射撃してくるとは思わなかったのだろう。明らかに慌てている。
50発程射撃を加え、敵部隊が完全に停滞したのを確認して射撃を中断する。
「分隊前へ!操縦手は分隊最後尾に続行!」
「了解!」
号令と共にホシノ達が飛び出して前身。アヤネも指示通り前進し始める。
このガントラックした3トン半の弱点は、装甲がない事と、前方の俯角が全くないという点の2点が挙げられる。
その為、前線で盾となることが出来ないので、後方から建物上部に潜む敵を射撃で牽制するか、先程のように頭を振って俯角を得るかの二択になる。
「左ビルに敵狙撃兵確認!機関銃手射撃する!左ビル屋上狙撃兵!距離300!単連射!発射!」
左に見えた敵狙撃兵に弾幕を張って退却を促す。
たまらずヘルメット団員はその場から逃げ出したようだ。流石にキヴォトス人といえど、12.7mm弾はキツイんだろうな。
その後も敵の部隊の弾幕がキツくなる度に重機関銃の射撃で牽制を行い、ホシノ達がスムーズに進めるように指示を出す等、支援に徹した。
流石に航空機が攻撃してくることはなかったが、M2重機関銃の火力は確かなもので、流石元の世界で100近く世界の軍隊で使用されているだけのことはあった。
ある程度の敵部隊を蹴散らし、流石に小火器しか持っていない敵部隊は退却。俺達の勝利となった。
ただ、俺が重機関銃の弾抜け安全点検をしている横で、勝利の宴とばかりにシロコやノノミが敵施設を手榴弾やミニガンで破壊しているのを見た時はドン引きしたけど......。
俺が立ち尽くしていると、アヤネが報告に来てくれた。
「敵の退却を確認!並びに、カタカタヘルメット団の補給所、アジト、弾薬庫の破壊を確認」
「これでしばらくはおとなしくなるはず」
シロコさん?それフラグにならんかね?
「よーし、作戦終了。みんな、先生、お疲れー」
「ありがとうホシノ。皆もお疲れ様」
「それじゃ、学校に戻ろっかー」
「よし、全員乗車!アビドス校に帰隊する!」
全員が荷台に乗ったのを確認して、俺も操縦席へ乗り込んでエンジンを始動、アビドス高校へ帰隊を開始した。
「改めて皆さん、お疲れ様でした」
アビドス高校の教室へ戻ってきて、アヤネが皆を労った。
「アヤネちゃんも運転とオペレーターお疲れ」
「セリカちゃん、私より先生の方が......」
「俺は普段の訓練よりは楽だったから全然」
俺がそういうと全員が引き攣った顔をする。やっぱおかしいんか?
「とりあえず、火急の事案だったカタカタヘルメット団の件が片付きましたね。これで一息つけそうです」
「そうだね。これでやっと、重要な問題に集中出来る」
「うん!先生のおかげだね、これで心置きなく全力で借金返済に取り掛れるわ!ありがとう先生!この恩は一生忘れないから!」
ノノミとシロコに続いて安心しきったセリカだったが、とんでもない爆弾発言をしてくれた......。
借金返済なんて資料にはなかったが......?
「借金返済って......アビドスは借金をしてるのか?」
「あ、わわっ!」
「そ、それは......」
「ま、待って!!アヤネちゃん、それ以上は!」
俺の問にセリカとアヤネが言い淀んだ。
恐らく彼女達がしたものでは無いんだろうが......知られたくはないんだろうな。
深堀するのも悪いと思った時、ホシノが割って入ってきた。
「いいんじゃない、セリカちゃん。隠すようなことじゃあるまいし」
「か、かといって、わざわざ話すようなことでもないでしょ!」
「別に罪を犯したとかじゃないでしょー?それに先生は私たちを助けてくれた大人でしょー?」
「ホシノ先輩の言う通りだよ。セリカ、先生は信頼してもいいと思う」
シロコもホシノに加勢するが、セリカのヒートアップは収まらない。
「そ、そりゃそうだけど、先生だって結局部外者だし!」
そうだけど、目の前で言われると先生少し悲しいぞ。
「確かに先生がパパッと解決してくれるような問題じゃないかもしれないけどさ。でも、この問題に耳を傾けてくれる大人は、先生くらいしかいないじゃーん?悩みを打ち明けてみたら、何か解決法が見つかるかもよー?それとも何か他にいい方法があるのかなー、セリカちゃん?」
のほほんとした口調だが的確に相手を刺してるなホシノ......。それなりの場数を踏んでいるってことか。
会った時から思ってたけど、この子只者じゃない気がするんだよな。
「う、ううぅ......。でっ、でも、来たばっかりの大人でしょ!今まで大人たちが、この学校がどうなるかなんて気に留めたことなんてあった!?」
ないんだろうなぁ......大人なんて汚いもんだろうし。
俺も社会人になって汚いものしか見なかったしなぁ。
「この学校の問題は、ずっと私たちだけでどうにかしてきたじゃん!なのに今更、大人が首を突っ込んでくるなんて......私は認めない!!」
そう言ってセリカは教室から飛び出してしまった。ノノミが様子を見ると言って追いかけていく。
反抗期......って訳じゃないんだろうけど、大人に対する信頼感がないんだろうなセリカは。
まあ、今まで大人に見向きもされてなかったんだから当然と言えば当然なんだろう。
その絶望を埋めるために仲間たちと今まで頑張ってきた。その中に突然現れた俺という大人。そりゃ拒絶されて当然だな。
「えーと、簡単に説明すると......この学校、借金があるんだー。まあ、ありふれた話だけどさ」
「つまり借金があることが問題じゃなくて、その額が問題なんだな?」
「さっすが先生ー。よく考えついたね」
「借金なら若い頃にしたことがあるからな。で?額は?」
苦い記憶だが、人生の勉強代だったということにしている。
ホシノは少し言いずらそうにして目を背けながら額を言った。
「実は......9億円ぐらいあるんだよねー」
「......9億6235万円、です。アビドス......いえ、私たち『対策委員会』が返済しなくてはならない金額です」
アヤネがご丁寧に端数も教えてくれたが、俺は目元を右手で覆ってしまった。
「9億6235万円って......90式戦車位の値段じゃないか......」
因みに90式戦車が納入初年度が11億、最終納入年度が7億。10式戦車が15億、16式機動戦闘車で約8億する。
それぐらいの値段なんて俺でもやったことが無い。俺でも精々200万ぐらいしか経験がないのだ。
「これが返済できないと、学校は銀行の手に渡り、廃校手続きを取らざるを得なくなります。ですが、実際に完済できる可能性は0%に近く......ほとんどの生徒は諦めて、この学校と街を捨てて、去ってしまいました......」
「そして私たちだけが残った」
「学校が廃校の危機に追いやられたのも、生徒がいなくなったのも、街がゴーストタウンになりつつあるのも、実はすべてこの借金のせいです」
アヤネとシロコの説明で人口減少の理由に納得がいった。
まあ、それが一番良い選択なんだろう。去っていった人を恨むことは出来ない。各々の考えがあるんだろうし、借金返済なんて辛い上にキツイものでしかないからな。
しかし連邦生徒会のデータベースには借金の話がなかったが......リン辺りに何とかできないか聞いてみるか。
「とりあえず事情を説明してくれないか?」
アヤネに聞いてみると、詳しい説明をしてくれた。
数十年前にアビドス学区の郊外にある砂漠で砂嵐が発生。その地域では以前から砂嵐が発生していたものの、その当時の砂嵐は想像を絶する規模のものだったらしい。
当然そんなものが発生すれば、大量の砂が降り注ぐ事になる。
結果として自治区内のいたる場所が砂に埋もれ、砂嵐が止んでも砂が溜まり続ける結果となった。
当然そんなことになれば大規模な災害復興が必要になり、日本なら俺達自衛隊が派遣される訳だが、キヴォトスにはそんな支援制度は無い。
その為、アビドス高校は多額の資金を投入するために融資してもらおうとするが、片田舎の学校に巨額の融資をしてくれる銀行はなく、悪徳金融業者しかいなかったそうだ。
最初は完済できる算段だったのだろうが、砂嵐は毎年更に勢力を増して発生したらしく、自治区内の状況は手が付けられないほど悪化の一途を辿ったそうだ。
そしてついにはアビドスの半分以上が砂に呑み込まれて砂漠になり、借金はアホみたいに肥えていったわけだそうだ。
まあ、なるべくしてなった結果だが、彼女達が支払わらなければならないのはなんとも可哀想だ。
連邦生徒会はこの事を認識していたのか?
いやそもそも法律で支援制度とかがないからか......。
つくづく俺達自衛隊が便利屋って揶揄される意味がわかった気がするな。
「私たちの力だけでは、毎月の利息を返済するので精一杯で......弾薬も補給品も、底をついてしまっています」
「セリカがあそこまで神経質になってるのは、これまで誰もこの問題にまともに向き合わなかったから。話を聞いてくれたのは、先生、あなたが初めて」
アヤネとシロコが落ち込みながら言う。
......彼女たちも苦しい中頑張ってきたんだな。
「......まあ、そういうつまらない話だよ。で、先生のおかげでヘルメット団っていう厄介な問題が解決したから、これからは借金返済に全力投球できるようになったってわけー。もしこの委員会の顧問になってくれるとしても、借金のことは気にしなくていいからねー。話を聞いてくれただけでもありがたいし」
「そうだね。先生はもう十分力になってくれた。これ以上迷惑はかけられない」
ホシノとシロコに言われたが、こんな状況の子供を見捨てるなんて「先生」としても「自衛官」としても、何より「大人」としてあってはならない。
「対策委員会の皆を見捨てるなんて選択肢を取れると思うか?安心してくれ。一緒に頑張っていこう」
「そ、それって......あ、はいっ!よろしくお願いします、先生!」
「へえ、先生も変わり者だねー。こんな面倒なことに自分から首を突っ込もうなんて」
アヤネには感謝されたが、ホシノには変人扱いされたので、ちょっとお返ししてやる。
「昔からいらんことに首を突っ込んでは痛い目を見ないと気が済まない性分でね。こればっかりは死んでも治らんよ」
「へえー、本当に変わり者だね」
ホシノは何やら諦めた様子だが......まあよかろう。
「良かった......『シャーレ』が力になってくれるなんて。これで私たちも、希望を持っていいんですよね?」
「そうだね。希望が見えてくるかもしれない」
アヤネとシロコが安心しているのを見てなんだか嬉しい反面、これからの事に頭を悩ませる。
とりあえずリンに頭を下げて何とか助力を得られないかな......。
そんなこんなで、俺と対策委員会との日々が始まりを告げたのだった。