転生したら両親が魔法使いだった件
1980年、ルーカス・ウィリアムズは魔法が使える世界に2度目の生を受けた。
これは、トラックに跳ねられたと思ったら、自我を持ちながら赤ん坊の体に魂が移り変わっていた事や、ぷかぷかと何もない虚空に呪文を唱えながら杖を持っておもちゃを浮かせている事から、ルーカスが理解した事実である。
ルーカスは最初、自分があの世にいるのかと疑ったが、2~3か月が過ぎても平穏な日々が過ぎていった為、これは現実であると考えたのだ。
それを受け入れたルーカスに、第二の生での目標が生まれた。
鉄の塊に跳ねられて死んだルーカスにとって、当然それは「頑丈な肉体」を手に入れる事だった。
いくら魔法使いであっても、肉体が弱ければ物理攻撃で再びあの世に行ってしまうし、体が頑丈なら敵対する魔法使いの攻撃を食らっても、耐えられる確率が高くなるからである。
しかし、現状の状態では肉体トレーニングを始める事は難しい為、幼少期特有の無駄に有り余った時間を利用し、ルーカスはひとまず魔法の練習を始める事を決めた。
「おとなしく寝ていましょうね、ルーカス」
「あー」
なお、練習の第一段階はあっけなく失敗した。
手っ取り早く、杖を拝借して練習を始めようとしたルーカスだったが、やはり大事な物なのか両親が肌身離さず持っている上、ルーカスの赤ちゃん用ベッドに何らかの魔法を掛けて、そこから脱出する事すら出来ない状態になってしまったのである。
物理的に何も出来なくなったルーカスは、仕方なく前世の知識にあった瞑想の様な物を行い、魔力を感じられる様に努力する羽目になった。
幸いな事に体感2~3か月程で、ルーカスは魔力を感じる事に成功した。
前世の体には無かったエネルギーを体内に確認したのだ。
嬉しくてしばらくニッコニコだったので、事情を知らない両親には変な目で見られていたが、邪魔をされる事は無かった為、その後も問題なく練習を続ける事が出来た。
ルーカスが最初に気が付いたのは、魔力を感じる練習をしているだけなのに、やたらと体力を持っていかれるという事である。
まだ小さいからというのも理由の一つだと推測出来るが、それにしては消耗が激しかったのだ。
ルーカスには、魔力そのものについて、いまいち理解が出来ていない。
そもそも前世の世界には魔力が存在しなかった為「そもそも魔力とは?」と、基本的な部分から理解出来ていなかったのである。
それでも、毎日魔力を感じられる様に練習をするのだが、体力の消耗が激しくなる一方なので、どうしたものかと考えると、ルーカスは一つの結論に至った。
やはり、必要なのは屈強な肉体である。
魔法を使うだけで、毎回息も絶え絶えになっていてはやっていられない為、やはり体を徹底的に鍛え、体力切れで動けなくなる事を防ぐ事が重要だとルーカスは考えたのだ。
「流石は我が息子だ」
「やるじゃない、ルーカス」
魔力トレーニングを続け、6歳になる頃には、魔力を魔法として現象化出来る様になった。
しかし、実際に魔法が使える様になるにつれ、ルーカスは別の問題に悩まされる事になる。
それは、魔法の制御があまり出来ないという事だ。
「水を出したい」「風を起こしたい」など、大まかな方向性を指定する事は出来るのだが、例えば水ならやたら大量に出てきたり、泥水が出てきてしまったりと、上手く指定出来ないのである。
困ったルーカスは、ニコニコしながらこちらの魔法の練習を観察していた父親に質問をしてみる事にした。
「父上、どうすれば魔法を上手く制御出来る様になりますか?」
「そうだな、やはり魔法使いには杖が必要不可欠だ。そもそも杖が無ければ人間は魔法を使う事が出来ん」
「私が今使っているのは、魔法では無いのですか?」
「いや、それは魔法で間違いないが、いずれ杖なしでは使えなくなる」
『なぜ、魔法そのものが杖なしでは使えなくなるのか?』など、要領を得ない部分はあるものの、確かに両親が魔法を暴走させている所を見た事が無い為、杖を使用する事で魔法を制御出来る様になるというのは間違いなさそうだ。
しかし、杖はホグワーツ魔法学校に通う11歳の年にならないと、手に入れる事が出来ない。
両親はルーカスに魔法の才能があるからと、諸々を管轄している魔法省に「うちの息子に杖の購入許可を!」と詰め寄っていた様だが、上手くいかなかった様なので、これは仕方が無い。
かといって、11歳になるまでの5年間、無駄な時間を過ごしている暇はないので、ルーカスは魔力の制御にも力を入れる様になった。
それと同時に、満を持して行っていたのが肉体トレーニングである。
両親には『何をやっているんだこいつは』という目で見られていたが、ルーカスにとっては最重要事項であり、また魔法新聞や本で見る限り、屈強な肉体を持つ魔法使いというのはほとんど存在していなかった為、戦闘の際の純粋なアドバンテージにもなると考えていたというのも、理由の一つだ。
あのヴォルデモートとかいう闇の帝王や、現ホグワーツ校長であるダンブルドアでさえも、肉体的に優れている訳では無さそうだし、ヴォルデモートに至っては、何か白くて骸骨みたいな見た目をしていたので、邪悪な感じはあるものの、見るからに貧弱そうである。
だから、ハリーポッターという名前の赤ん坊に返り討ちにあうという、意味の分からない最期になったのだと、ルーカスは闇の帝王を嘲笑っていた。
都合が良い事にルーカスは前世で、護身の為に格闘技を習っていた為、その一環として体の鍛え方は理解していたのである。
父親にも一応、魔法技術を応用した良い鍛え方が無いかどうか、一応聞いてみたのだが「的がでかくなるから、魔法使いに筋肉はいらん」とか「箒に乗れば良い」とか、全く参考にならない答えが返ってきたので、運が良かったというべきだろう。
ただ、体面積が大きくなる事により被弾が多くなりやすいという点については、確かに一理あるとルーカスは考えていた。
巨人族という、その名の通り体の大きい種族もこの世界には存在しているが、巨人族には高い魔法耐性がある為、ただの人間とは根本的に訳が違うのである。
流石にこればかりはどうしようも無い事から、ルーカスは肉体と魔法を鍛え上げ、巨人族までとはいかずとも、同じ人間であるヴォルデモート程度なら対抗出来るだけの、魔法耐性を手に入れる事を決意した。