ルーカスがハリー、ハーマイオニーと共にホグワーツ城に入ると、ローブを纏ったグリフィンドール寮の寮監であるマクゴナガルから諸注意を受けた後、大広間へと案内された。
諸注意の内容自体は至って普通であり、どちらかというと生徒たちに気を引き締めさせる為に行われているのだと、ルーカスは感じた。
11歳の生徒が純粋に放置された場合、騒ぎだしたり暴れ出したりして、問題を起こすのが明白だからである。
3人がマクゴナガルに連れられ、大広間の真ん中へと進むと、檀上にいた校長であるダンブルドアが口を開いた。
「改めて注意事項がある。暗黒の森と、右側の3階廊下には近寄らぬ様に。そこには絶望と恐怖が待ち受けておる……よろしいかな? では、早速新入生の組み分けを始めよう!」
「名前を呼ばれた生徒は、前に出てきなさい……ハーマイオニー・グレンジャー!」
マクゴナガルがハーマイオニーの名前を呼んだ。
(絶望と恐怖が待ち受けている……? 今度こっそりと行ってみよう)
ダンブルドアがさらっと言ったとんでもない注意事項に、ルーカスは強い興味を示しており、これは実家暮らしの頃には出来なかった実践的なトレーニングが出来ると思ったからである。
また『何かあっても、自分の魔法と筋肉でどうにかなるだろう』とルーカスが高を括っていたのも理由の一つだ。
ハーマイオニーが緊張しながら組み分け帽子を被り、グリフィンドールに選ばれた事で、グリフィンドール寮から盛大な拍手を受けているのをぼんやりと眺めながら、ルーカスは今後の鍛錬についての思考を深めていった。
「……ムズ! ルーカス・ウィリアムズ」
「お、おい! ルーカス! マクゴナガル先生が呼んでいるぞ!?」
「ん……? おっと、ありがとうハリー」
ルーカスは色々と考え事をしていたせいで、マクゴナガルの呼びかけを結果的に無視する事となってしまい、ハリーに小突かれる事でようやく現実世界に意識を戻した。
「はい、私です」
ルーカスがそう言って、おもむろに前に出ると新入生と、席に座っている既存生徒の間でざわめきが起きた。
先ほどまでは新入生の中に紛れてあまり気が付かれなかったが、ルーカスの肉体は11歳にしては異常なまでに鍛え上げられており、当然魔法使いには非常に珍しい体格な事が原因である。
「……あなたでしたか。次からは呼ばれたら直ぐに返事をする様に」
「すみません、マクゴナガル先生……おい、お前が組み分け帽子だな。俺はクイズが嫌いだから、レイブンクロー以外の寮ならばどこでも良い」
ルーカスが組み分け帽子を手に取り、寮の希望を伝えながらマクゴナガルの横にあった椅子に座って組み分け帽子を被ると、生徒間でさらに大きなざわめきが起きた。
寮の希望を伝えたのは、こういった要望ははっきりと伝えた方が、誤解無く迅速に話を進められるとルーカスが判断した為である。
そして、組み分け帽子が口を開いた。
「ふむ……ここまではっきりと要望を伝えられたのは初めてだ……安心しろ、お前は学習意欲は特定の分野において極めて高いものの、レイブンクローに入るだけの知性も聡明さも兼ね備えておらぬ……よって、適正はあまり無い」
大多数の魔法使いが『半分悪口なのでは?』と思う様な事を、組み分け帽子がさらっと口にすると、ルーカスの耳に「あいつは馬鹿という事か……?」「そうよ、あの体……!」「知性が無い……ふっ!」などと言った言葉がルーカスの耳に届いたが、ルーカスは気にしない事にした。
周囲の評価は、筋肉にとってあまり重要では無いと判断したからである。
「勇敢さや決断力は持っておる……しかし、その一方で目的の為なら手段を選ばないという性格や、何かに対して非常に高いプライドも同時に……ううむ、難しい。これは難しい」
組み分け帽子はそう言って、うんうんと長孝モードに入ってしまったので、この時間を無駄にしない為にも、ルーカスは空気椅子で足の筋肉を鍛える事にした。
待機時間の間にも、再び生徒間で「手段を選ばない……思い付いた事を、そのまま何も考えずに実行しているだけなのでは?」「絶対、筋肉に対してのプライドだろ……!」「ふっ……面白い」などという言葉が飛び交ったが、トレーニングに神経を集中させていたルーカスの耳には何も届かなかった。
「よし、決まった……グリフィンドール!!」
寮が決まると、一瞬大広間が静寂に包まれた後、グリフィンドール寮から大きな拍手と、スリザリン寮から失笑が沸き起こる。
トレーニングを終了させ組み分け帽子を脱ぐ前に、ふと恥ずかしがり屋の友人の性格を思い出したルーカスは「おい組み分け帽子、ちなみにハリー・ポッターはスリザリンには入りたくないそうだ……覚えておけ」と、組み分け帽子に友人の寮希望を伝えると、ルーカスは堂々とグリフィンドール寮の席へと座った。
なお、肝心のハリーは『何でみんなの前であんな事を!?』と言いたげな少し恥ずかしそうな顔でルーカスを見ていたが、本人が組み分け帽子を被った際に「スリザリンは本当に嫌なのかね?」「はい……」「では、グリフィンドール!」と簡単なやり取りがあった後に即決グリフィンドールをされていたので、良い事をしたとルーカスは考えている。
その後、ルーカス達は筋肉の維持と友人との交流も兼ねて、ダンブルドアの用意した豪華な食事を楽しんだ。