ルーカスはハリーと同室になり『これは運命だ』と、ここぞとばかりに肉体改造の方法をハリーに伝授した後、共に筋肉トレーニングを行い、その後ぐっすりと眠って、ホグワーツ入学後、初めての快調な朝を迎えた。
少し筋肉痛に苦しんでいる様子を見せているハリーとルーカスが談話室に降りていくと、そこには少し騒いでいる赤毛の兄弟が2人と、その2人にからかわれている赤毛の少年がいた。
「よお! ルーカス! 今日も調子良さそうだな!」
「ルーカス! 頑張れよ! はっはっはっ」
「……誰だか知らんが、朝から元気だな」
ルーカスとハリーが、突然陽気に話し掛けられた事に戸惑っていると、からかわれていた少年が自分をロン・ウィーズーリーだと名乗り、兄弟のフレッドとジョージの事をいつもお調子者なのだと説明した。
「やあ、ルーカスだね? それに君はハリー・ポッターだ! 2人とも今、グリフィンドール寮の中で滅茶苦茶有名なコンビになっているらしいよ!」
「そうなのか……ハリーは有名だから、同室という事で俺の名も広まったのだろうな」
「いや、ルーカス……君の素晴らしい肉体と、組み分けの時の行動のせいだと思うよ……」
『組み分けの時の行動?』とルーカスが呟くと、ロンが衝撃的な事実を告げ、ハリーやウィーズーリー兄弟は何も反応しなかったが、ルーカスは予想もしていなかった情報に、驚いて目を見開いた。
「君……みんなに脳筋バカで異端の、危ないやつだと思われてるよ」
ホグワーツ構内での移動は、困難を極める。
途中で一段消える階段や、物理的に移動して違う場所へと繋がる階段、扉の様に見えるだけの壁、一定の行動をとらないと開かない扉など、入ったばかりの新入生には面倒で意味の分からない仕掛けだらけであり、初日の授業に遅刻しないという時点で、かなり労力を使わなければならないのだ。
ちなみに前世では階段も動かず、扉も鍵が掛かっていない限りは普通に開く様な一般的な学校に通っていたルーカスは、何の為にこんな面倒な事になっているのかが分からず、父親に理由を尋ねてみたが「魔法とはそういう物だ」という概念的な答えが返ってきたので、それ以上考えるのを止めたというエピソードがある。
そんな摩訶不思議な校舎を、ルーカスは他の生徒がひいこら言いながら必死に進んでいる中、少しの筋肉疲労と引き換えに、最短効率で進んでいた。
「フハハハハハ!」
「ねえ、君筋肉が絡むと、たまにテンションがおかしくなるよね!?」
「俺はいつも冷静だ! フハハハハハ!」
「落ちたら死んじゃうって! うぉっ!? 今絶対ヤバかったって!」
「フハハハハハ!」
「ねえってば!!」
ルーカスは暴れるハリーを右手で片脇に抱えながら、アスレチックを進むかの如く、階段をよじ登ったりショートカットしたりしながら、全速前進していたのである。
動く階段も、動いている最中に走り幅跳びの要領で飛び移ったり、落ちる階段は落ちた瞬間に反射で別の場所に捕まり、瞬時に体を引き上げたりすれば良いだけの話なので、ルーカスにとってはほとんど障害にならなかったのだ。
なお、ダーズリー家に閉じ込められてアトラクション経験の無いハリーは、ルーカスが勢い良く行動する度に、情けなく悲鳴を上げていた。
「ところでルーカス! 僕たち魔法使いもマグルと、根本的な体の構造や強度自体は変わらないのに、なんか君、身体能力おかしくない!?」
「ああ! トレーニングで気が付いたのだが、魔法も併用しながら鍛えているうちに、どうも少しずつ体そのものが、不思議な魔法パワーで強化されていったのだ!」
「なんでだよ!?」
「知らん! フハハハハハ!」
ルーカス達はエネルギッシュ溢れる移動で、あっという間に変身術の教室の前に辿り着くと、ハリーが止める間もなくルーカスが『俺に任せろ』と取っ手を掴んで思い切り引いた結果、あいにくと何も仕掛けが無かった扉だった為、ルーカスの筋力によって無駄に大きな音を立てて開く事となり、席に座っていた大勢と、教壇の上にいた猫から注目を集める結果となった。
ルーカスは無駄な待機時間を無くす為、アスレチック移動法の速さで、ちょうど授業開始直前ぐらいに教室に着くように、出発時間を調整していたのである。
「ふう……やっと、着いた……」
「なぜおまえが疲れているんだハリー……」
「いや、だって君が……あれ? 教室に猫がいるよ」
「ふむ、迷い込んだのだろう。俺が外に出してやろう」
静まり返った教室で、ルーカスが1人教壇へと向かっていると、猫がルーカスの方に歩いてきたと思うと、一瞬でマクゴナガルの姿へと変わった。
ルーカスとハリーが、驚いて声を上げる。
「「マクゴナガル先生!?」」
「席に着きなさい、ルーカス。もうすぐ始まりますよ」
「ハハハハハ、やはり君は頭が悪いみたいだね、ルーカス・ウィリアムズ。意味も無く教壇の上に猫がいるはずが無いだろう? ポッター、君も少しは友達付き合いを考えた方が良い」
マクゴナガルとの会話に、突然金髪の少年が割り込んできた。
ハリーは少年を睨みつけながら、反論する。
「……誰だが知らないけど、自分の友達は自分で決めるよ」
「おや、自己紹介がまだだったね、ポッター。僕はスリザリンのルシウス・マルフォイ。由緒正しき純血の家系だ。ルーカスの家も確かに純血ではあるが、生まれ持った格が違うのさ」
「余計なお世話だマルフォイ」
「いうじゃないか、ポッター! 後で後悔しても知らないからな!」
「放っておけ、ハリー。それより早く席に座るぞ」
青白く貧弱そうなくせに喧嘩を売ってくるマルフォイに、構っている時間が無いと判断したルーカスはハリーを促し、空いていたロンとハーマイオニーの横へと座った。
ルーカスの科目毎の出来、不出来は、極端に分かれている。
得意な科目は主に「呪文学・魔法薬学・闇の魔術に対する防衛術」であり、逆に全く出来ないと言っていい程苦手な科目は「変身術・薬草学・天文学・魔法史」である。
これは、ルーカスが戦闘力の向上という観点で、科目を見ているからだ。
その観点から見て、関係の無い科目は不要な物と捉えており、熱が入らないのである。
「なあ、見たかハリー! ルーカスが完璧に浮遊呪文を成功させたり、スリザリン贔屓のスネイプから無理矢理点数をもぎ取った時の、あのマルフォイの悔しそうな顔を!!」
「そうだわ! それよ、それ! ルーカス! いくらなんでもスネイプ先生にあんな態度を取るべきじゃないわ!」
絶妙に友達がいない同士で繋がりが出来たルーカス、ハリー、ロン、ハーマイオニーは大広間で夕食を食べながら、初日の授業についての話題に華を咲かせていた。
ハリーは薬草学での授業を思い起こす。
『ポッター、モンクスフードとウルフスベーンとの違いはなんだね? ふむ……分からんか、有名になって調子に乗っているのだろう。さて、他に分かる者は……』
『はい!!!!!!!!』
『……ふむ、誰もいないか、それではマルフォ』
『はい!!!!!!!!!!!』
『っ! ……ルーカス・ウィリアムズだな、グリフィンドール5点減点。無駄に大きな声を出すな、次にやったら教室をおい』
『無駄では無い! 減点を取り消してもらおうか! 嫌だというなら、出る所に出ても良いんだぞ! ダンブルドア校長に言いつけるだけだと思ったら大間違いだ! まず、魔法省の……次に父の伝手を使って……最後に……!』
『確かに類まれなる勇気と、手段を選ばない狡猾さを兼ね備えている様だ……忌々しいやつめ、グリフィンドール10点加点』
(ルーカスって、よくも悪くも本当に全力で真っすぐだよね……それに、なぜかハーマイオニーとマルフォイしか分かっていなさそうなスネイプの問題も、普通に理解してたし……思ったよりはバカじゃないのかも……?)
ハリーが考え事をしている間に、話題はルーカスの事へと移り変わっており、ロンとハーマイオニーからルーカスが、質問責めを受けていた。
「それにしてもルーカス、どうして変身術や薬草学はあんなに……こう、酷いの??」
ハーマイオニーが恐る恐る疑問を口にすると、ルーカスは何故か嬉しそうに答えた。
「簡単だ、変身術や薬草学は、戦闘力向上には基本的に役に立たないだろう?」
「いや僕、マクゴナガル先生みたいに何かに変身できれば、役に立つと思うけど……」
「それは違う!! いいか? まず、俺は自分の肉体に絶対の自信を持っている。それに体の一部だけ変身したら、体のバランスが悪くなるし、全身だと魔法が使えなくなるだろう??」
「……じゃあ、魔法薬学が得意なのはなぜなの?」
「薬で自らの筋肉をブースト出来るし、調合した毒を使いこなせれば相手を効率的に倒す事が出来るからな。ああ、もちろん相手から毒を受けた際の、解毒方法を学ぶという意味合いも込められているぞ!」
「ドーピングに毒殺か……君、グリフィンドールになったのに、ほんと発想がスリザリンみたいだね」
「フハハハハハ!」
筋肉に関する事となると、途端に人格が変わった様にハイになるルーカスは、ハリー達や周りの寮仲間に少し引かれながらも、楽しそうに説明を続けた。