ガンダム ヘッドクオーター   作:白犬

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第5話 「初陣」

「どうだい、アマノ君?」

 あまりにも唐突な申し込みにツカサは言葉を失うが、すぐに考え直す。

 

(どうせ、遅かれ早かれガンプラバトルをするんだ。だったら今が絶好の機会じゃないのか?)

 

「わかりました。是非お願いします」

 そう言いながら頭を下げるツカサを見て、レンは立ち上がった。

 

「それじゃあ、さっそくはじめるか」

 

 ツカサとレンは、バトルシステムをはさんで対峙する。

 

《Plaese set your GP-Base》

 

 ツカサは無言のまま、GPベースをスロットにセットする。

 

《Beginning Plavesky particle dispersal》

 

無機質なアナウンスとともに、バトルシステム上にプラフスキー粒子の光が充満する。

 

《Fiard 1 SPACE》

 

 バトルシステム上に煌めく青白い光が、一瞬のうちに無数の星々が瞬く宇宙空間へと姿を

変える。

 

《Please set your GANPLA》

 

「あれが、ハヤミさんのガンプラ」

 Hi-νガンダムをセットしながら、ツカサはレンのガンプラを擬視した。

 背後からハルナの声が聞こえた。

「あれはガザCだよ。『機動戦士Zガンダム』に出てきたMSなんだ。武装は右胸のナックル・

バスター。それにリアユニットにビーム・ガンが二門、あっ、それとビームサーベルも持

ってるよ」

 

 ハルナの説明にいちいち頷きながら、ツカサは全身をほぼピンク色で塗装されたガンプ

ラを見た。

 見た目は両肩に装備されたシールドのようなものと、背部から突き出した推進ユニット

のせいで力強さを感じたが、腰の辺りなど内部構造がむき出しになっており、お世辞にも

耐久性に優れているようには見えなかった。

 

《BATTLE START》

 

 バトルの開始を告げる声に、ツカサは我に返った。

 

「ハヤミ・レン、ガザC、いく!」

 

 一瞬遅れてツカサも叫ぶ。

 

「ア、アマノ・ツカサ、Hi-νガンダム、発進します!」

 

2機のガンプラは、絶対零度の戦場へと同時に射出された。

 

                    ※

 

「あれ? ハヤミさんのガンプラ、さっきと違う」

 星々をバックにこちらに向かってくるレンのガンプラを見て、ツカサは眉をひそめた。

 

「うん、ガザCは可変MSなんだ」

「可変? つまり姿を変えられるってこと?」

「そうだよ。人型のMS形態と。スピードや火力を重視したMA形態、用途に応じて使い分け

ることができるの」

 

(そういう大事な情報は、事前に教えてください……)

 

 心の中でツッコみながら、ツカサはバトル前に抱いていたガザCへのイメージを頭の

隅に追いやると、眼前のガンプラへの対処を検討しはじめる。

 

「それじゃあ、いくぞ!」

 レンの声とともに、ナックル・バスターとビームガンが同時に火を噴いた。

「わ!?」

 ツカサは慌ててHi-νガンダムに回避行動をとらせる。

 

「なるほどね、ミサキさんの言うとおりだ」

 猛スピードでのすれ違いざま、ガザCを横目で追いながらツカサがつぶやく。

 リアユニットに固定され、対空用にしか使えないと思っていたビームガンもMA形態なら

前方の敵も狙える。

 しかも、火力を一点に集中させることで、攻撃力を強化することができる。

 

「でも、それゆえに弱点もある」

 ツカサは武器スロットを開くと、そのひとつをクリックした。

「いけ、ファンネル!」

 Hi-νガンダムから、フィン・ファンネルが全て射出される。

 

 前方から向かってくるフィン・ファンネルに気づくや、レンは迎撃の準備に移る。

「ん?」

 だが、2基のフィン・ファンネルはガザCを避けるように左右に大きく迂回すると、

そのまま後方の闇に姿を消してしまった。

 

「ほう、気づいたのか? 的確な判断だ、だが!」

 そうつぶやきながら、レンは操縦桿をひねり込む。

 背後からガザCめがけてビームが放たれるが、間一髪で攻撃を回避する。

 

「避けられた?」

 MAは武装を一点に集中することにより火力を強化する。しかし、それにゆえに他の場所

の武装が手薄になり隙が生じる。

 それを看破しての背後からの攻撃だったが、ツカサよりはるかにガザCの特性を知り尽く

しているレンは、その事にとっくに気づいていた。

 

「でも、ファンネルはハヤミさんのガンプラを包囲してるんだ。一斉攻撃をかければ……」

 ツカサのつぶやきに答えるかのように、通信機からレンの声が流れてきた。

 

「こいつが可変MSだってことを、もう忘れてしまったのかい?」

 ガザCは変形を解きMS形態に戻ると、周りを取り囲んでいたフィン・ファンネルに攻撃

を加え始める。

 MAでは到底不可能な軽やかな動きに、あっいうまに2基のフィン・ファンネルが撃ち落

とされてしまう。

 

「ああ、やられちゃった」

 バトルステージ上に小さな閃光が2つ輝き、ハルナはツカサに振り向く。

 だが、当のツカサは冷静そのものであり、口元には笑みすら浮かんでいた。

 

 残ったフィン・ファンネルがめぐるましく動き周り、ガザCを攻撃するが、レンはなん

なくそれを回避すると、また1基撃墜する。

 

(やれやれ、少しばかり買いかぶりすぎたかな?)

 

 あまりにも単調な攻撃に、レンはツカサに対して内心落胆するが、爆発の光を背に1基

のファンネルがガザCめがけて突き進んでくことに気づく。

 

 ガザCは、慌てることなくナックル・バスターを持ち上げるが、激しい衝撃とともに両

腕の自由が利かなくなる。

 真下から飛来したフィン・ファンネルが、射撃体勢のままガザCの両腕を挟み込み動き

を封じているのだ。

 

「これは…うお!?」

 さらに、正面から飛来したフィン・ファンネルがガザCの胴体を挟み込む。

 ビームを撃つためにUの字という独特の形状になるフィン・ファンネルをツカサが利

用した結果だった。

 

 唖然とするレンの耳に、ツカサの声が聞こえてきた。

「ハヤミさん、もう勝負はつきました。降参してください」

「おいおい、ずいぶんと気が早いな? こっちにはまだコレがあるんだぜ」

 レンは苦笑しながら操縦桿を動かす。

 ガザCのナックル・バスターが持ち上がり、Hi-νガンダムに照準を合わせる。

 

「……それじゃあ、仕方がないですね」

 どこか悲しそう声でつぶやくと、ツカサの指が操縦桿の上を走る。

 ガザCの動きを封じていたフィン・ファンネルが微かに震えだし、本体の大半を占める

粒子加速帯に光が走るとエネルギーをチャージしはじめる。

 

「な、何? これは……」

 フィン・ファンネルは、チャージを終えると同時にガザCを挟み込んだままビームを発

射した。

 ガザCの機体が、フィン・ファンネルの誘爆に巻き込まれる。

 

 3つの小さな光と、それらを上回る大きな光の玉がひとつ、真空の闇の中に輝いた。

 

《BATTLE END》

 

「やったね、アマノ君!」

 操縦スペースのホログラムを突き破り、ハルナがツカサに抱きついてきた。

「い、いや、ま、まぐれだよ、まぐれ!」

 ツカサは顔を真っ赤にしながら、ろれつの回らない口調でそう言うのが精一杯だった。 

 

「いやぁ、まいったまいった、完敗だよ」

 レンが頭を掻きながら、ツカサたちのもとに歩いてきた。

「まさかファンネルを射撃ではなく、拘束用に使うとは思いもしなかったよ」

「ああでもしないと、ぼくの腕ではとてもハヤミさんに勝つことなんてできなかったから。

ハヤミさん、今日は色々とありがとうございました」

 ツカサは深々と頭を下げた。

「そう言ってもらえると、おれも嬉しいよ。それにしても……」

 

 レンは破損したガザCを横目で見た。

「しかしまあ、こりゃ修理が大変だ。こんなことなら、さっきの降伏勧告を素直に受けと

きゃよかったかな?」

 不平を漏らすレンを見て、ツカサとハルナなつられて笑ってしまった。

 

「しかし、アマノ君も初陣でフィン・ファンネル全損とは、大変だな?」

「いえ、ファンネルは駒にすぎません。あの程度の被害で勝利を得られるなら安いもんです。

それに、HI-νガンダム本体が壊れたとしても所詮ただのプラモデル。幾らでも換えは……

あれ、どうかしたんですか?」

 長々と持論を展開していたツカサは、レンの表情にわずかな陰りが差したのに気づき、

首を傾げた。

 

「あ、いや、なんでもない。アマノ君、また機会があったら一戦お願いできるかな?」

「もちろんです。こちらこそ是非お願いします」

 レンの差し出した手を握り返し、ツカサは頭を下げた。

 

「ねぇ、アマノ君」

 店を去るレンの後ろ姿を見送っていたツカサは、車いすを旋回させる。

「ん、何?」

 ハルナは両手でエプロンの縁をいじりながら、気まずそうに話しかけてくる。

「あ、あのね、さっきアマノ君が言ってたことなんだけど……」

「ぼく、何か言ったっけ?」

 ツカサは問いかけるが、なぜかハルナは口を閉ざしたままだ。

 

「ううん、なんでもない。 あっ、それよりアマノ君がバトルで勝ったって、おとうさん

に教えたあげなきゃ、わたし、行くね」

 ハルナはツカサに背を向けると、店の奥へと走り去ってゆく。

 

「ぼく、変なこと言っちゃったのかな?」

 ひとり取り残されたツカサは、考え込む。

 

(ぼくはただ、ゲームにおける持論を話しただけだ。それにガンプラだろうとミニチュア

だろうと、ゲーム上ではただの駒にすぎないはず……)

 

 ツカサはふと、顔を上げた。

 

「それとも、ガンプラは違うのだろうか?」

 ツカサはバトルシステムの上に置かれた自分のガンプラを見た。

 

 

 

 だが、Hi-νガンダムは何も答えてはくれなかった。

 




次回予告

初めてのガンプラバトルで勝利を収めたツカサ。

数日後、ツカサはクラスメートのジョウジマ・コウタからガンプラバトルを挑まれる。

バトルシステムを前に対峙するふたり。
レンとはまるで違うコウタの戦い方に、ツカサは改めてガンプラバトルの奥深さを知ることになる。

次回「ガンダム ヘッドクオーター」

第6話 「盾と矛」


『完璧』と呼ばれたファイターが、ツカサの前に立ち塞がる。
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