まずはプロローグ、ですがオリキャラしか出てきません。
ここは、現代からおよそ数百年前の世界。
まだ武士と、忍者と、そして鬼がいた時代。
男は前線に出て、女は男を支える時代。
それに反発する女が、二人いた。
「何があっても、この城を出ていくわ!」
「……ほんまに行くんですか?」
豪華な着物を着た黒髪の少女が、はっきりとそう言った。
呆れながらそう呟くのは、黒い髪と青い忍装束が特徴的な人間と天狗のハーフ、葵。
猿飛町の領主に仕え、その娘である雅とは主従以上の関係に当たるが、
雅は風の呪術師でもあるため、彼女がたびたび城を抜け出す事に胃を痛めている苦労人である。
噂によればある天狗とは母親が異なる姉妹らしいが、
それについてはこの世界では分からなかった。
「行くわ。真相を知りたいし」
雅はとても正義感が強い。
何か事件が起きた時には服を着替えて外に出るし、
その上、攻撃呪術で切り刻んでいくのだから始末が悪い。
なので、葵は彼女を心配し、首を横に振った。
「なりません。姫様は呪術師である以前に、猿飛の姫君です。
今度の今度こそは、城で待機していただきます」
雅のお転婆ぶりは葵も承知してはいるが、それでも今回ばかりは許すわけにはいかなかった。
今回の出来事は、雅の命に関わるかもしれないからだ。
雅にはまだ兄弟姉妹や夫がいないため、彼女を失えば事実上の後継者が失われてしまう。
葵としては、それが一番悲しく、そして起きてほしくない出来事なのだ。
「もし姫様を守れなければ、ウチは間違いなく抜け忍として処分されるでしょう。
ほんまに分かってはるんですか? 姫様の旦那様が次期猿飛領主だという事を」
「そんなの、知ってるわよ。どうせ誰かと結婚するんでしょ?」
雅はいずれ誰かと結婚する運命にある。
それは分かっている雅だったが、彼女としては、あまり本意ではないらしい。
やはり、この時代は女性の立場があまり高くないと思っているからだろう。
「……そう言うても、姫様は変わらない、と思うんですけどね」
「なんか言った? 葵」
「いえ、何も言うてませんよ。では、ウチは巡査に向かいますね」
そう言って葵は印を結ぶと、早着替えの術により一瞬で服を着替えた。
葵は雅に目配せしながら、城を出て行った。
「何よ、葵ばっかり。私だって、できるんだから」
雅もまた、葵には内緒で、こっそりと城を出ていくのだった。
それから数百年。
鬼の伝説と伝承は、町中から忘れ去られていた。
もちろん、武士と忍者がいた事実も、忘れられている。
――だが。
その町に再び、鬼が現れようとしているとは、まだ誰も、知る由もなかった。