エロゲーオブザデッド (仮)   作:にーと戦士

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1話

 

 

 “ステータス”という概念を知っているだろうか。

 

 

 ステータス。

 それは自己の地位や能力を表す言葉である。

 

 

 昔は三次元的、現実の自分のみに評価される言葉であった。

 それが今や一般的にゲームキャラ情報としての意味合いが強くなって来ている。

 

 

 昨今の小説でもそうだ。

 

 冒険小説等、毎度お決まりのように可視化されたステータスが表示されるようになるほど、創作界隈でテンプレートになっている。

 

 その類に漏れず、俺も死んだ際の転生特典として“ステータス”を望んだ。

 

 最初から無双チートしてはどうか、と神様に尋ねられたがそんなものRPGのクリアデータを渡されて、ほら遊んでいいよ、と言われる様なものだ。

 

 ストーリーが無い無味乾燥な力なんて誰が欲しいのか。少なくとも俺は御免だった。

 

 当然神様の提案は断ったが、別種のチートは追加で頼んだ。

 

 

 良くよく考えれば、自分は平々凡々な一般人である。

 

 故にステータスを貰った所で自分の大してない才能が判明するだけだ。

 

 

 結局チートを貰ってるんじゃないかって? 

 

 

 それはそれ。これはこれ。

 必要なのは納得と達成感なのだ。

 

 最初から無双するのはつまらないが、肝心の才能が無くてはまた雑踏に紛れる一般人Aな人生が繰り返されるだけ。

 

 最低限の保証は欲しかった。

 

 俺は成長を早めるチートと、あらゆる事象に関して人類最高峰の才能を貰えるようにして新たな人生を送る事にしたのだ。

 

 

 

「ーーそうして俺が生まれたってワケ」

 

 

 ポツリ、と誰に聞かせる訳でもなく呟く。

 

 

 現代に産まれ直し早十六年。

 

 

 両親の愛情をたっぷりと受け取り健やかに育った俺は前世の平凡丸出し男とは違い美形になっていた。

 

 

 美に関するステータスを育成し磨きに磨いたこの美貌。街中を歩けば百人中百人が振り返る色気。

 

 背中まで伸びたロングヘアーは艶やかな光沢を表し、思春期にありがちな出来物等一切ない白磁のような滑らかな肌。

 

 

 立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花。

 

 

 

 ーーそんな“美少女”に俺はなっていた。

 

 

 

 性別は希望しなかったのでランダム、ということになったのか女の子としてこの世に生を受けてしまったのだ。

 

 

 後悔先に立たず。

 ワンチャンハーレムとか出来るかも、と淡い期待を抱いていた夢が誕生したその日に打ち砕かれた。

 

 

 ハーレム(女)ではなくハーレム(男)なら作れるが、そんな気色悪い事は死んでも御免だ。

 

 

 俺の身体の性別は女だが、魂の性別は男なのだ。

 

 自分の肉体で男の逸物を抜き差しするなんて考えただけで身の毛がよだつ。

 

 自分の逸物は見慣れても、他所の男の逸物なんて見れたもんじゃない。

 

 

 

 だからーー教壇に立つクラスメイト。

 その男子が皆に見せびらかすように逸物を公開しているのを見て、思わず現実逃避した俺は悪くないだろう。

 

 

 

 何だ。これ……? 

 

 

 新手のドッキリとか……? 

 

 

 いやドッキリにしては不適切過ぎる。

 男同士で罰ゲームでもやってたのか? 

 

 そういう身内ノリはやってて楽しいのは分かるが、悪ふざけは女子を巻き込むと後が怖いぞ。

 やるなら男子しかいない場所でやるべきだ。

 

 

 

 ……だが、やはり何かがおかしい。

 

 

 いくら何でも静か、というか。

 こういう場面にありがちな囃し立てる声が全く聞こえないのだ。

 

 きょろきょろと教室を見回しても誰も笑いを堪えたりしておらず、真剣な目で男子に注目している。

 

 クラス内で早々お調子者の位置を獲得した池田、という男子でさえダンマリを決め込んでいる。

 

 

 教壇の前に降り立つクラスメイト。

 名前は田島。彼はこの期に及んで弁明すらせず堂々と仁王立ちをしている。

 

 いや隠せよ。なにモロだしてるんだ。

 ニヤニヤと笑みを浮かべるだけで無く、むしろ見せびらかしたい、とでも言うように腰を左右に動かし始めた。

 

 それに合わせて彼の象さんもぷらんぷらん揺れている。

 

 

 

 ええ……こいつ、何がしたいの? 

 

 

 地獄のような空気が流れ、誰しもが沈黙を貫いている。

 

 もしや皆もツッコミ辛くて言うタイミングを見逃したとか? 

 

 いや精神が元男の俺ならともかく普通の女子なら逸物を急に見せられたら叫ぶよな? 

 

 特に今みたくぞうさん鼻がぷらんぷらん揺れてたら気色悪い、みたいな反応するよね? 

 

 え、じゃあ一体何が起きてるんだ。

 

 

 混乱の極み状態であったが、原因が分かるはずもなく。

 

 担任の烏丸先生が教室の扉をがらがらとスライドさせて登場した事で地獄のような空気は終わった。

 

 

 いつもは仕事だりぃ、働きたくねぇと教師に有るまじき発言を繰り返すクズ教師だが今程頼り甲斐のある大人だと思ったことは無い。

 

 

 頼む、烏丸先生。田島についてツッコンでくれ。

 

 なんでお前、フルチンなん? と。

 

 

 

 だが俺の縋る視線に反して先生は田島を軽く一瞥した後、うむ。と頷く。

 

 

 

 うむ、じゃないが。

 

 

 

「えー、田島は今日から性活指導委員になりました。正しく性行為を理解する為に、女子の皆さんは必ず一度、彼の指導を受けるようにしてください」

 

 

 この男も大分頭がイカレてるようで、エロゲーに出てきそうな設定を真面目くさった表情でのたまった。

 

 

 

 な、なんだこれ……一体何が起きているんだ? 

 

 

 

 流石にこれが異常事態だと言うのには気付いた。

 

 

 さしもの烏丸先生もフルチンの生徒がいれば悪ノリせずに注意するだろう。

 

 だが俺以外の女生徒も烏丸先生もこの異様な状況下にもかかわらず、さもそれが当然です。と言わんばかりに佇んでいる。

 

 

 

 昼前までこんな珍事が起きた事は一度もない。

 問題は昼休憩が終わった後。

 

 

 俺が気持ちよくうたた寝をして、目覚めたら田島が急に逸物をオープンにしだしたのだ。

 

 

 俺が寝ている間に、一体何があったと言うのか。

 どうしてクラスメイトは無反応なのか。

 何故田島はアホみたいに露出しているのか。

 

 

 それを探る為にいそいそと俺は貰ったチートを使う事にした。

 

 

 

 俺が神様貰った三つのチート。

 その内の一つ、ステータスの異能は能力値上げとスキル獲得が主な能力だ。

 

 

 その獲得したスキルの中にシステムログ、と言うのがある。

 

 これが中々便利なもので。

 

 起動している間はさながらギャルゲーの如く、下画面に会話文が表示されるようになる。

 

 会話ログを遡ることも出来、頼まれた事をついド忘れした時とかに重宝する能力だ。

 

 

 今回はそんなシステムログを使い、丁度睡眠中に何が起きたのか履歴を検索する事にした。

 

 

 これを見れば原因が分かる。

 

 あと早く田島は逸物をしまってくれ。

 そう期待を込めてログをスクロールして行くと、ある一文に辿り着いた。

 

 

 

『藤村ユリカは常識変換催眠攻撃を受けた』

 

※精神耐性Lv:MAXにより完全レジスト

 

 

 

 ーー常識変換催眠攻撃ってなに?? 

 

 

 藤村ユリカ。それが今世での名前なのだが。

 俺の目を疑いたくなるような一文が表記されてあった。

 

 何だこのエロゲーに出てきそうな頭の悪い催眠は。

 

 

 ゴシゴシ、と腕で目を擦っても映る文字は変わらない。相も変わらず常識変換催眠攻撃を受けた、と出力されている。

 

 

 すると何か? 

 

 俺が寝ている間にクラス内全員に催眠が掛けられてしまったって事? 

 

 

 そんな馬鹿な。

 だが俺の目にはクッキリとシステムログに常識変換催眠攻撃を受けた、と履歴に残ってあるのが見える。

 

 

 なんとも言えない苦さが胸中に広がる。

 

 

 

 正直に言おう。

 俺は異能バトル、というものに憧れていた。

 

 というか、俺は当然の如く転生するのは中世ヨーロッパ的な世界だ、と勘違いしていた。

 

 

 だから現代に転生した時は女になってしまったこともあり大分落ち込んだ。

 それでも諦め切れず、この世界にファンタジー要素が無いか探してみた。

 

 だが世間に流れるニュースは前世と変わらず。

 やれ誰が不倫しただの、脱税しただのと陳腐な情報が伝達されるだけ。

 

 地名、地理も前世と変わらず。

 

 人名だけは多少違いはあったものの、ほぼほぼ前世と相違ない世界だった。

 

 

 だから俺も仕方がない、と思っていた。

 

 この世界じゃあ闇を抱えた謎のヒロインも。

 特殊な血筋を引いている主人公も。

 世界を征服しようと企んでいる悪の組織も。

 

 

 そんな“特別”はなくて。

 ありふれたどうしようもない日常しかないのだと。

 

 無いなら無いで、どうしようも無いじゃないか。

 

 

 そう、踏ん切りを付けていたのだが。

 

 

 

 よりにもよって、エロゲー式異能かよ。

 

 

 

 バン、と机を台パンしたい衝動に駆られたが何とか堪える。

 

 あほくさくて真面に相手をしたくないが。とりあえず敵の正体を知らねばどうにもなるまい。

 

 

 俺はログから攻撃して来たのが誰か探ると、やはり、と言うべきか。分かりきっていたと嘆くべきか。

 

 この事件の犯人は未だに局部モロだしの腰振りダンス男。

 もとい田島であった。

 

 

 

 ……さて。どーすっかなぁ。

 

 

 

 

 

 

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